2024/10/09 のログ
ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」にホロウさんが現れました。
■ホロウ > 常世の空を駆ける赫耀。
島中どこでも見れる観測機にもメンテナンスは必要である。
しかし、この観測機はこの世界線とは別の技術により作成された機械であった。
それをメンテナンスする術が確立されたのはつい先日の事。
長らく確認程度でろくなメンテナンスを受けられなかった訳だが、ついに本格的にメンテナンスを受ける機会を得た。
殆ど外すことは無いが、腰と足の装置は着脱可能。
日常生活に支障をきたす程の大きさであるそれが外された観測機は瞳に入った十字を除けばただの人間にしか見えない。
そんな機械は本体のメンテナンスを終え、装置類の確認を待っている状態な訳だが。
「私がホロウですが、どういったご用件でしょうか?」
そんな機械を訪れていたのは、風紀委員会の生徒。
監視対象を管理する部署の1人である。
初対面の生徒に声をかけられた機械は座っていた椅子から立ち上がり、声をかけた生徒を見つめた。
■風紀委員会の生徒 > 「本当に人間そっくりなのですね…。
ホロウ様にいくつかお伝えしたいことがあり参りました」
礼儀と好奇心の挟間で彷徨う態度の生徒はタブレットを手にして機械を見下ろす。
30センチほど背丈には差がある。
「まずはメンテナンスの結果についてです。
魔導回路の消耗や魔力油の揮発といった点が見られました。
ですが、いずれも些細なものでしたし問題なく修理完了しております。
付属装置についても、以前より確認されていた金属部品の疲労以外では小規模な損耗しか見られず、いずれも修理は容易とのことです」
すらすらと機械の状況について述べていく。
伝達する生徒自身は素人だが、報告書は実際にメンテナンスした技術者のものである。
要するに、数年間修理されていなかった機械は、ほぼ毎日空を飛び続けたにもかかわらず、一切故障などの重大なトラブルを起こしていない、と言う事だ。
「もう一つございます。
ホロウ様は現在第三級監視対象として登録されております。そして、コードネームが『正体不明』となっておりましたが、この度変更となりました」
■ホロウ > 生徒の報告を聞きながら何度か頷く機械。
生徒の伝達する内容は殆どが分かり切っていた事である。
かつて居た世界線では何度もメンテナンスを受けて来た、
同じ型の機械のメンテナンスの結果も聞いたことがあるが、この機械に故障は殆ど存在しない。
魔力による損傷や損耗からの保護や修復機構を備えている事や、そもそもが観測を目的とした構造であることもあり、持続性に非常に優れる。
発展した魔法と違わぬ技術に魔法そのものが重なった結果、非常に頑丈な構造を実現している。
「コードネームですか?」
そんな機械が首を傾げたのがコードネームについての報告。
確かに『アンノウン』という名称はありがちなものだし、未確認飛行物体を筆頭に正体不明な存在全てにあてはめられる言葉である。
むしろこれまでこの機械の名称として割り当てられていた事の方がなぞであるが、仮称などそんなものだろう。
「どのようなものに変更されるのでしょうか」
何でも問題はない。
相槌感覚で問いかけた。
■風紀委員会の生徒 > 「はい。ホロウ様の新しいコードネームは『赫耀』となりました」
命名はゲーム好きの委員会の生徒である。
ゲームに出て来るモンスターから持って来たらしい。
それは伝えないが。
「空を飛行されている際の姿を言い表したそうです。
報告は以上となります。
コードネーム変更やメンテナンスなどの手続きは全て完了しております。
付属装置の修理が完了し次第お持ち致します。
何か質問などございますか?」
確認の問いに機械は「ありません。ありがとうございます」と首を振る。
「では、失礼いたします」
伝達の生徒は去って行った。
■ホロウ > 伝達の生徒が去った後の本庁のとある休憩スペース。
昼前につき委員会の生徒たちが集まりつつある中、見慣れない顔に視線が集まる。
腰の大きなジェットが無くなるだけで誰か分からなくなるらしい。一部の生徒はすぐに気づいて口を大きく開けたり手を叩いたりして視線を逸らす。
それでも、他の大勢はやはり誰か分からないらしい。
空を見上げれば見る事が出来る存在も目の前に居るとよく分からない物だ。
それもそのはず、飛行中の機械は地上からは赤い光程度にしか見えないのだから。
そんな視線を浴びながらじっと座っている機械。
視る事にも視られる事にも慣れている機械にとってはこの程度何ともない。
じっと姿勢を正して待っている。人形かと見まがうぐらい。
任務中であれば見渡して情報収集をするのだが、ここは本庁の一部。
第三級であるとはいえ監視対象の身分で下手な事をするべきではない。
よって、一切の情報収集を放棄しじっとしている。
■ホロウ > そのまま機械は待ち続けた。
昼時を過ぎ、夕方から夜へとさしかかろうかという時間。
「お待たせしました。付属装置をお持ちしました」と現れる二人の生徒。
片方は銀髪の異邦人女性、もう片方は疲れた顔をした細身の男子。
銀髪女性が魔法で空間に穴をあけて取り出した装置を、細身の男子が機械に取り付ける。
装着作業は3分もかからず終了し、いつも通りの観測機がそこに居た。
そして、再び常世の空へと飛び出した。
今宵も常世の空には赫耀が映える。
ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」からホロウさんが去りました。