2024/10/16 のログ
ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」に鶴博 波都さんが現れました。
橘壱 >  
風紀委員会本庁 格納庫。
所謂現場での仕事へ使うための兵器等が格納されている。
一般的な銃火器や武器、車両から兵器まで色々だ。
勿論専用の整備班もいるが、鉄道委員会等の本職も手伝いに来ることもしばしばだ。
鉄と油の匂いが充満し、整備班の怒声も聞こえてくる。
当然、パワードスーツの類も此処だ。一列に並ぶ、鋼鉄の機人達。
その中の蒼白の機人の前で一人デスクに座り、
モニターとにらめっこする少年が一人。

「アイツのナノマシンの限界許容量は……、
 反応速度の限界も上げておいたほうが良いか……いや……」

ぶつぶつと独りごつ、視線の先には様々なデータがずらりと並ぶ。
自らの愛機の再調整だ。今日は所謂待機状態であり、
問題が発生すれば即座に出撃できるように、此処で待機してる。
その感にも自らの機体調整に余念はない。
特に、今は新装備の調整がだいぶシビアだ。
一歩間違えれば、此方が蝕まれる危険なナノマシン。
さて、どう使おうかな。そんな昼下がりの出来事だった。

鶴博 波都 >    
「おとどけものでーす!」

 格納庫に響く朗らかな声。
 声の主は充電式の運搬車で大量の荷物を運ぶ鉄道委員の少女。
 服もコートまでしっかり着用し、夏の終わりと秋の始まりを感じさせる装い。

「あれ、壱さん?」
 
 周囲の兵器よりも、デスクで物思いに耽る知己へと意識が向く。
 引っ張っていた運搬車を置いて、業務用スマートフォンを片手にこてこてこてと近づいた。

「なにしてるんですか?」
  
 

橘壱 >  
装着者(パイロット)の強さは勿論、兵器の強さも重要だ。
最新鋭の技術が使われると言えど、物足りなさは感じている。
並み居るバケモノと対等以上に戦うための(ツバサ)は必要だ。
常に磨かなければ、漆黒の翼(アイツ)にさえ置いていかれてしまう。

「……アイツにだけは、負けれないな」

常に進化し続ける機械。認め合う宿敵(ライバル)
レンズの奥に、瞳に宿す闘争心がかつての貪欲さを思い出させてくれる。
さて、そんな集中力に水を差したのは高らかな女性の声。
なんだなんだ、と振り返れば何時ぞやの先輩が見える。

「アレ、波都先輩。旅行ぶりですね、どうしたんですか?」

確か鉄道委員会の人だった気がする。
どうも、と座ったまま軽く一礼。

「今日は待機命令中なので、その間に愛機の整備を、と。
 何が起こっても出撃(スクランブル)出来るようにね。そういう先輩は?」

鶴博 波都 >  
「はい、旅行振りですね。私は風紀委員本庁格納庫の荷物を運搬に来ました。
 丁度良いので、品目の確認とサインをお願いできますか?」

 スマートフォンを取り出して、運び込んだ部材や兵器群のリストを提示。
 確認がなければ最下部に指で署名を行って貰う様、業務用スマートフォンを差し出した。

 憂い気な様子もなく、ニコニコしている。

ここ(格納庫)、何時来ても凄い所です。色々な兵器と……AFって言うんですよね。この子たち。
 名前と内容を知ってから見直してみると、ちょっと印象が変わります。この子達を使って、前線を維持しているんですね。」

 改めて周囲を見渡して、視線をAssaultFrameに向ける。

「壱さんは、この子達に乗って前線に出ているんですね……。」

橘壱 >  
「業務ご苦労さまです。……って、こうするとそれっぽくないかな?
 なんてね。はい、どうも。えーっと……確かに、確認しました、っと」

ぴしっとなんちゃって敬礼。
此処は決して軍隊ではない、軽いジョークで肩を竦める。
リストを目視しつつ、キーボードを謎ってリスト表示。
確かに今日付けで納品予定の資材や兵器があるようだ。
見比べてみても、間違いはない。さっと電子サインを署名。

「戦うための、皆の安全を守るためのものが格納されてますからね、此処は。
 ……そうですね。僕以外にも数名。此れを着て戦う装着者(パイロット)はいる」

特に学園の脅威と満遍なく戦い、
所謂最前線に出向く風紀委員の為の兵装は多い。
確かに兵器の殺傷能力は恐ろしいが、事実こうして
誰かの平和を守るためであり、自らを守るための鎧でもあるのだ。

立ち並ぶ風紀委員会所属のAF達の中で、
自身のAF「Fluegel(フリューゲル)」に視線を映す。
蒼白のボディに、一つ目(モノアイ)を宿す鋼鉄の翼。

「特に僕は、非異能者だからね。生身のままなら、
 下手をすると波都先輩に負けるかも。なんてね。
 ……最前線で戦うことに、僕の意味があるし、意義でもある」

「僕が此処に入学したのは、AF(コイツ)の宣伝活動も兼ねてるからね。
 だから、戦わなきゃ意味はないよ。……聞いてると、怖い人に思えてきた?」

鶴博 波都 >  
「ちょっとそれっぽいです! でも、普段の壱さんで大丈夫ですよ?」

 合わせて敬礼をしてから、楽しそうに笑って力を緩める。
 サインによって、要求されていたものが滞りなく納品される。
 もし納品が滞っていた貴重品や絶版品などがあったとすれば、それも納入されているだろう。

「壱さん以外にも着用者は居るですね。
 加速の重力とかどんな感じなんでしょう、少し気になってきました。」

 鉄道委員としての、ちょっとした興味と関心。
 視線はFluegel(フリューゲル)に注がれている。

「私も最近まで非異能者でした。異能とか前線とかは縁のないものだと思ってました。
 壱さんは非異能者なのにここまで出来るの、すごいですね。
 風紀委員にAFの広報や宣伝とはいえ、魔法みたいな異能力なしで渡り合うなんて……。」

 そうそう出来ることではない。
 感心と尊敬の混じった声色だ。

「うーん……怖くはないです。ちゃんと前線を守ってくれるんですから。
 すくなくとも、旅行の時に屋根に登って居た変な風紀委員の人達……
 その人たちに比べたら、すっごく親しみやすいオーラが出ています!」

 委員の合同旅行の際に"何か"を見たらしい。
 恐怖と聞いて比較できそうなものがそれ位しかなかったので、そんな感想を口にした。
  

橘壱 >  
「ほんのお茶目みたいなものですよ。
 にしても、手際が良い。車掌さんって聞いてましたけど、
 結構こういう輸送のお仕事も多かったりはするんですか?」

こういうジョークも言ってみたくなる。
はにかみ笑顔で指先でくるりとペンを回す。

「AF以外にも採用されてるパワードスーツは幾つかありますけどね。
 そう、ですね。流石に鍛えておかないと拙いですよ。推力自体、
 結構ありますからね。僕も初めての時は"ゲロ塗れ"になりましたから」

腐っても此れは兵器だ。
ある程度耐Gを機体側が軽減するとは言え、限度がある。
特にパワードスーツは装着者(パイロット)に直にくる。
実際自分も初めての時はひどい目にあった。
ゲロ以外にも色々出たのだが、そこは敢えて言わぬが花。

「……、……へぇ、それは。何か検査で判明した、とか?」

かたん、デスクに回していたペンが落ちる。

「まさか。非異能者だけっていうなら、凛霞先輩や他にもいますよ。
 所謂達人、超人たちがね。僕はアレほど動けないですけど、
 AF(コイツら)があれば負けないって位です。人が作った技術なんだ」

「今の御時世、科学が魔術に淘汰されてないのはそういうことですよ」

並み居る神秘さえ取り込み、文明は上手く融合した。
科学も確かにそこに生き残ったのだ。ともなれば、
その数ある神秘に対抗できるようになるのも必然と言える。

「屋根の上……?凄い所にいる人もいるんだな。
 ……けど、そうですかね。結構思われますよ。
 戦うってだけで、最前線にいるだけで、そう思われる事も」

特にこの島は違反生徒や組織だけではない。
「門」により突発性の"災害"から事故、
更には怪異による対処まで幾らでも問題はふっかかってくる。
全てが風紀委員一つではなく、全ての委員会が連携し対処しているが、
こういった最前線で戦うものは、あらゆる場面でひっきりなしだ。
力を振るうものは、色眼鏡で見られるのも不思議じゃない。
でも、彼女はそうでもないという。不思議だなぁ。
思わずちらりと、碧の両目が横目で見やった。

鶴博 波都 >   
「壱さん、意外とお茶目さんなんですね。よく考えたらマイクを急に振ってくれたりもしたし……」

 少し前の合同慰安旅行の話を楽しそうに語る。
 良い想い出だったらしい。

「んー……私の場合は前からちょくちょくありましたけど、
 本格的にやるようになったのは最近です。当然ですけど、お仕事自体はいっぱいあります。
 でも、人のために役立てている、っていうやりがいもいっぱいです!」

 インフラを担う鉄道委員。はとちゃん視点ではそれなりに激務。
 人的輸送から資源の輸送、物資の確保まで区分は様々。
 生活委員や祭祀局と並んで、他の委員と連携を取る事が多い。

 ……はとちゃん自身が頼まれたらNOと言わず、ガンガン引き受けている側面も大きい。

「速度の出るものはそうなるみたいですね。
 "そういうこと"にはならなかったけど、速度を出すケースや乗り物の時は大変でした。」

 ゲロ、の言葉を聞くと思わず苦笑い。それ以外を聞いたら、ちょっと困った顔をしたかもしれない。
 それでも直接口にするのは憚れたので、自分で口にする時はちゃんと言い換えました。
 飛ばしに飛ばしてキツイと思った時はあっても、吐く事はなかったそうな。

「──うん。検査の人曰く、『物資確保』の異能です。
 必要な物資を確保出来る。喪わず届けられる。無尽に使っても減らない。
 何なら増える。……無自覚に使って帳簿をめちゃくちゃにしちゃった時に、判明しました。」
 
「あと、異能が発覚する少し前にへんな悪夢を見ました。
 今思うと、それが異能の発現のトリガーなのかな……。」
 
 てへ。と、舌を出して茶目っ気混じりの声。
 ペンを落とす橘壱とは裏腹に、暢気に自分の異能を語る。
 
「凛霞さんはあの凄いお姉さんですよね。
 ……壱さんはこの子があれば、引けを取らないんですね。
 能力なしでも、能力者と渡り合えちゃうんだ……。」

 大変容を経て、異能や魔術が齎された現代。
 個々の力が強まった結果、古代のように個人の実力主義になるかと思えば、そうはならない。

 それらの異能者や超人と渡り合うものが開発されている。
 つまり──。

「壱さんは、力なきものでも戦える力が得られる事を、宣伝しているんですね。
 ……なのにちゃんとお仕事をしても、怖がられちゃうんですか?」

 鶴博 波都は、『まだ』落第街に足を踏み入れた事のない存在。
 現場や血生臭い争いを知らず、異能や魔法も領域が違うと知らずにいた純粋な存在。

 風紀委員の腕章や恐怖や殺戮でなく、ただ日常を守ってくれる象徴としか感じない。

 故に恐怖と紐づかない。橘壱の発言や雰囲気には、ただただ不思議そうだ。
 

橘壱 >  
「ふ、こう見えてメディア露出してた頃の"ウケ"があるので」

元プローゲーマー。それも業界ではかつてのトップ。
オタクで根は陰キャだが、そのために色々の話術位は学んでいる。
得意気眼鏡をかちゃりとして、なんか不敵な笑みだ。

「波都先輩がいい人だと言うのはわかったけど、体には気をつけてね。
 お手伝い出来る事があれば、手が空いてる時とはお手伝いするからさ」

何となくだが、Noと断れないタイプの匂いがする。
こういう人間に甘えるタイプは少なくはない。
彼女が満足しているならいいけど、負担にならないか心配だ。

「……帳簿を、ね。まさに補給、運搬係にピッタリって事か」

物資というのは、人が思う以上に偉大だ。
なければ始まらないと言っても過言ではない。
かつて、大昔には兵糧攻めなんて言葉もあるし、
資源を絶たれるのはそれだけで効果がある。
それを確実に確保できるというだけで、壱からみれば強力なものだ。
ある意味、鉄道委員会だから恵まれたのかな。

「将来は郵便屋にでもなれば、困らなそうだね。
 ……悪夢?……あんまり穏やかじゃないな……
 ……無理に、とは言わないけど、どんな夢か覚えてる?」

異能の発現は十人十色。
仄暗い理由だってのも珍しくはない。
余り聞くような事ではないかもしれないが、
少し神妙な顔つきで訪ねた。少し、心配になったからだ。

「まぁ、引けを取らないかどうかは"これから"わかるかもね。
 けど、僕は誰にも負けるつもりはない。Fluegel(コイツ)と一緒なら、誰にもね」

それだけの自信はある。ふふん、と得意気だ。

「そうだね。力ってのは、心強いと同時に怖いモノだからね。
 使い方を間違えたただの暴力は、恐ろしいものだよ。特に、今の時代はより気をつけるべきだろうね」

ペンと何とかは使いようだが、
この時代に力というのはある意味より普遍的になった。
誰もが見えないナイフを持ち歩いている可能性だってある。
そう、それは心強いが一歩間違えれば暴力。人に恐怖を与えるものだ。
それは、外付けとは言え力を扱うものだからこそ忘れない"戒め"だ。

鶴博 波都 > 「そう言えばあの時のMVにも出てました!」

 納得した素振りで声を弾ませる。
 彼の根っことは裏腹に、はとちゃんの中では陽キャ寄りの印象になりつつあった。

「ありがとうございます!でも今の所は大丈夫です。
 大変でもちゃんとやるのが、鉄道委員の使命ですから。それがみんなのためです。」

 びしっと敬礼。
 仕事に対してはそれなりにストイック。
 少しばかり、責任感が強そうだ。

「です。今の所求められるのは『確実に届ける』ことで、物資が増えるのは不確定要素だから、おまけだそうです。
 ……場合によっては、作戦中の前線部隊や駐屯地にも届けるそうです。」

 業務の内容にさわるためか、敬礼を解いても真面目な雰囲気。
 任せられた仕事の重大さや危険さを理解しているのか、少しだけ真剣。
 前線やそれに近い場所に赴くことに、恐怖以上に使命を感じている。

「内容ですか? あんまり覚えていないけれど……
 とても重たいものを背負って、何かをしなきゃ、と感じ続けて……
 血まみれの線路を歩き続けて、時々何かを置いて、そうすると石が飛んでくる。
 そんな夢だったような……苦しいけどそうしなきゃ、って思う悪夢でした。」

 悪夢の内容を、覚えている限りで語る。
 具体的ではなく、抽象的な夢だったらしい。

「とにかく、そうしなきゃって思い続けるような変な夢でした。
 異能が開花する時って、みんなこんな感じなのでしょうか?」
 
 そう締めくくる。
 悪夢を思い返したからか、懐っこく元気そうな表情は消えて暗い顔。

「頼りになります!前線への補給の随伴と言う形で、
 壱さんに身を守って貰うこともあるかもしれませんね。その時は助けてくださいね?」

 他意はないのだろう。
 橘壱に頼もしい印象を覚えたのか、雑談としてもしもの話を口にした。

「良く分からないけど……怖いもの、なんですね。
 ……ううん、やっぱり良く分かりません。たまに列車で暴れたり跳び込もうとする人が居ても、
 すぐに鉄道公安局の人が抑えてくれますし……護身用のゴム弾入りの銃も、抜いた事ほとんどないです。」
 
 ほんの少しの感覚の麻痺はあれど、未だに暴力と恐怖が紐づいていない日常の申し子。
 力の性質を理解するのは、きっとこれからなのだろう。
 
 その位、常世学園の陽のあたる部分で過ごし続ける事が出来ていた。
 表立って、あるいは陰ながら戦うものに陰を委ねる事が出来ていた。
 ある種の平和を象徴する一般的な鉄道委員。

 それが今までの鶴博 波都であった。
 

橘壱 >  
「覚えてたんだ。ちょっと恥ずかしいけどなぁ……。
 ……波都先輩はだいぶマジメなんだね。敬礼姿、似合ってるし可愛いよ」

軽く頬を掻きながら言う。
こういうことはしれっと言うタイプ。

「…………」

場合によっては、前線部隊にも物資を届けることにもなる。
確かに彼女の異能は、そういった長期戦闘を行うにあたっては、
此れ以上無いほど頼もしいものなのは間違いない。
ただ、それだけに心配だ。あそこはある意味、
自分のように行きたくて行くような一部の変わり者か、
必要だからこそ行っている覚悟が決まったものしかいない。
そう、戦地だ。戦場に一般人が立ち入るのは、
その光景だけでも、ショッキングだと思う。
壱は自身を"異常者"と改めて自覚した上、
そういった人々の事を日常的に触れ合うことが出来た。
だからこそ、彼女の言葉には表情を顰めたのだ。

「……波都先輩がどうしてもと言うなら、僕は止めはしない。
 ただ、別に波都先輩が行く必要があるわけじゃない事は覚えておいた方が良い。
 極端な話、戦うのだって僕以外の誰かがいるし、物資を運ぶのも先輩以外の誰かがいる。
 僕は、誰かに任せる時間が惜しいし、自分の為と企業の為に戦う理由がある」

「そこにキチンとした理由がなくて、やれって言われたらやれとか、
 頼まれたからとかなら、やめたほうが良いとは言っておくよ。
 ……別に、波都先輩が無理に触れるような世界でもないからね」

その血生臭さと、おぞましさを知ってるからこそだ。
だから、日常を支えて笑う彼女には知ってほしくはない。
止める権利はないけれど、苦い笑みを浮かべて首を振った。

「世の中、知らなくていい事もあるっていうけど、
 その一つでもあるかもね。……ソッチの仕事は、よく考えた方が良いよ」

「にしても……」

悪夢なんだから穏やかじゃないのは当然だが、
確かに妙な夢とタイミングだ。小さく唸れば、
口元を片手で覆って思案顔。壱は非異能者だ。
だが、異能学も専攻しているので、知識はある。

「所謂過去の思い出、トラウマと言った印象的なものに起因したり、
 そういうので発現したりする事はあるけど……何?
 波都先輩もしかして、なんかピラミッドの石血まみれで運んだことが……?」

どこぞの盲目の拳闘士じゃないんだから。

鶴博 波都 >  
「そうした方が、みんなのためですから!
 ……えへへ、褒めてくださってありがとうございます。」
 
 素直に受け取って小動物のような笑顔。
 さらりと受け取っちゃうタイプらしい。

「とは言え、一度は引き受けたお仕事ですから。
 もう2年生ですし、後輩の安全のためにもがんばります。
 私がやらなかったら、別の誰かがやるのでしょうから。」

 自分がやらないことも出来る。けど、そうしたら別の人がやる。
 列車の運行スケジュールと同様、今ある常世学園の形を維持するには、誰かがやらないといけないお仕事。

 前線を知る
 そのことを、甘く見ている側面もあれば、重く考えている側面もある。
 鶴博 波都のストイックさを、良くも悪くも体現する意思表示。

「それだけでも、私が頑張る理由は十二分です。
 輸送や操縦の技術なら、自信がありますから!
 私だって、物資は確保できても実質は壱さんと同じ非能力者です。」

 戦場に身を置いた事のない鶴博 波都の認識では、そうなっている。
 ただ、できることをする。警告では止まらないだろう強情さ。
 そんな雰囲気。

「ううん。そう言うアニメ?を知り合いから推されてみた記憶はありますけど、体験したことはないですね。
 案外、前世の私だったりするのかもしれません。なんて。」

 そのようなトラウマはないと宣言し、冗談めかして締めくくる。
 本当に心当たりがないらしい。
 
「今日の晩御飯はナムルと豆腐とげんこつおにぎりにしようかな……
 ……アニメの話を思い出したら、なんか食べたくなってきました。」 
 
 何のアニメを見たのだろうか。

橘壱 >  
良くも悪くも、体験したこと無いんだ。
そりゃそうだ。あんなひりついた場所、
普通の人間なら先ず縁がない場所だ。
ある意味、此処が島である以上、近しいのかもしれない。
ふぅ、と吐いた溜息は諦めに近い。

「……その通りではあるけどさ。
 まぁ、生きてれば何時でもやめれるから、
 向いてないならすぐに辞める決断はしておきなよ」

痛み無くしては覚えないこともある。
何よりも彼女の意思を無碍には出来ない。
言葉だけでは、全てを感じることは出来ないものだ。
彼女自身の目で、確認すると良い。そのうえで決断するのも遅くはない。
それに……。

「この島は広い。何時だってすぐ隣で、助けれるワケじゃない。
 けど、そう言われなくても助けるよ。僕は、それ"も"理由に戦ってるんだ」

言われるまでもない。
唯の破壊のための機械ではなく、
誰かを守る鋼鉄の機兵である意味も証明しよう。
薄くはにかむ表情こそ、その自信の現れだ。

「……連想ゲームじゃないんだからさ。
 いやなんかヘルシーな献立だな。足りる?」

年頃の男子、食べ盛り。もっと油がほしい。

「まぁ、アニメはともかくなんだろうな……。
 少なくとも、異能に関わることなのは間違いない。
 ……的中してほしくはないけど、案外予知夢だったりしてね」

今後の彼女の動向を考えれば、ありえなくもない話だ。
偶然で済むならそれでいい。杞憂で済めば、笑い話だ。
だが、往々にして異能が関係してくるものは、
何故だがそういう風になりえはする。
……仄暗い体験は、必要以上にしてほしくないのだが、難しそうだな。

「……もしかして、夢の方からそういう覚悟しておけよって警告なのかもね」

鶴博 波都 >   
「うん。わかりました。
 出来る限りそうならないようにしたいですけれど……壱さんの警告ですから。」

 こくんと頷く。
 強い意志で忠告していることこそは理解すれど、歩みを止めることはできなかった。
 取返しがつかないもの、とも思っていないらしい。

「向き不向きで言ったら、向いています。
 しっかり届けられて、物資を尽かすことなく届けられる異能。
 活かせる所で活かしていきたいです!」 
 
 異能そのものは適している。
 ただ、彼女の精神が適しているかどうかは、これから分かる。

「色んな『戦う理由』が、前線の人にはあるんですね。
 私は戦いはしないけど、『能力を活かしたい』『人の役に立ちたい』とは思います。
 逆に言うと、それだけですけれど……。」

 視線が泳ぐ。
 目の前の彼ほど理由があるかどうかと言えば、きっと否だ。

「たぶんたります!足りなかったら、あんぱんと牛乳を追加します。」

 食べ盛りの男の子からすると多分足りない。
 思い付きで決めるあたり、はとちゃんの食事事情は大分適当なのかもしれない。

「予知夢……。
 過去じゃなくてみらいのこと。
 そうすると異能がもう一個……? うーん……」

 再び唸る。
 予知夢を神秘的な警告ではなく、異能と考えたらしい。
 続く橘壱の言葉で、はた、と、別の視点に気付かされた。

「そう言う神様からのお告げ、だとしたらちょっと怖いです。
 何というか……悪夢みたいに、わるい子にはなりたくないですから。
 でも、なんか前線が大変そうなのは、壱さんを見てて思いました。
 やれるだけ、やってみますね。」

 迷いは産まれつつあるものの、やっぱり投げ出せない。
 投げ出さないこと。それが大事と思うのは、はとちゃんの使命感。

「……あっ、大分話し込んじゃいました。そろそろ行かなきゃです。
 今度AFで動いてる所、見せてくださいね!」

 荷物の仕分けや物資を欲する各々の委員がやってくれていても、良い時間。
 そろそろ、次の運び先へと荷物を届けないとならない。
 
「それじゃあまた会いましょう。壱さん!」

 充電式の運搬車を再び押して、この場を立ち去った。
 

ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」から鶴博 波都さんが去りました。
橘壱 >  
「理由なんて人それぞれさ。大事なのは、
 それに対しての強い意志、だと思うけどね」

どんな理由であれ、そこに立ち続ける理由に強い意志があれば、
苦しい状況でも踏ん張れるし、そこに踏みとどまる事が出来る。
その彼女の理由が、実際の現場でどれだけ強く出るかは、
これからわかることだ。自分から言えるのはそれくらい。

「(それを言ったら、僕の戦う理由とかもっと利己的だし……)」

よっぽど、その理由が前面に出るなら彼女が立派だ。
ふぅ、と背もたれに寄りかかれば後頭部を掻いた。

「それもうデザート何だよね……食事は適当にすると後が辛いよ?」

生きるために必須とは言え一種の娯楽だ。
ある程度は美味しいものを食べたほうが良い。
もしかしてこの先輩、自分が思うより大雑把なのか……?
壱は訝しんだ。

「出来る限りのフォローはするよ、先輩。
 おっと、もうそんなにか……こっちこそごめん。
 引き止めるような真似してごめんね?うん、また」

慌ただしく去っていく彼女を見送れば、自身のAFと再び対峙する。

「……予知夢、か。例え石を投げられても、罵倒されても、
 もう迷う気も辞める気もない。なぁ、お前は何処まで付いてきてくれる?」

この広大な世界(ソラ)を羽ばたくための鋼の翼。
返ってくるはずのない問いかけにふ、と笑みを浮かべ、
再びキーボードに指を添えるのだった。

ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」から橘壱さんが去りました。