2024/12/08 のログ
ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」に『    』さんが現れました。
『    』 >  
――自首。

書類上はそう扱われる。
常世公園は平時、鉄道委員会の保安管轄外だった。
そのため、当該鉄道委員が行ったことは「案内」である。

一部の報道系部活によって随分な騒ぎにはなったものの、
委員の「勇気ある行動」は事実としても、
華やかな逮捕劇と謳われた白昼の一幕は、被疑者に抵抗の意思もなかったことから、
まるでそこだけが鮮やかに飾られたドラマの1カットのように際立たされていた。

"被疑者"はカメラに対して、楽しそうに満面の笑顔を向け、
悠々と署内へと足を踏み入れた。

『    』 >  
異能制御措置、及び魔術封印措置は、
緊急時ということもあり、装置の着用が強制された。

前者においては首輪型の最新式で問題は起こらなかったものの、
後者は被疑者が体調の異変を訴えたため、大型にはなるが、
複数の旧型装置を四肢に装着することで対魔術防護の基準を満たした。
被疑者の魔力量が装置の圧力と干渉を起こしていたと思われる。

重量と容量において行動を大きく制限される旧型装置の着用について、

「なんか囚人って感じでむしろイイ」

と、被疑者は容認した。構造的欠陥(セキュリティホール)突破の危険性は極めて低いが、
内部構造への干渉が確認された場合は、緊急のショック措置が執行されることを通達。
人工臓器および疾病はないという申告のもと、被疑者はこれも受諾した。

――――。

……魔力同士の圧力干渉が起こるのは極めて稀。

『    』 >  
――異能診断。

留置場へ移送後、庁内の専門機関に罹り、順次「検査」が執り行われる。
当日中にはまず肉体へのメディカルチェックのあと、
ボディチェックの延長として、被疑者に備わった異能の診断が行われる。

未解析の概念(ブラックボックス)である異能の診断は、
前例として蓄積された膨大なデータ群に基づいた、統計的かつ類型的な診断に留まる。

検査の結果、被疑者は異能保有者であると断定された。

当人はそれを通達された段階では、ごく当たり前にその事実を受け入れたものの、
検査の結果として通達された「自分の異能」を伝えられた時、
首を傾げて、深く訝るような反応を示した。

「……そうなんだ」

それきり次の検査までの時間は一切の発言をしなかった。

――――。
 
診断において許される様々な反応実験においても、
その効力が増減することはなかった。

極めて微弱かつ、当人の意思での制御が行われない、恒常発動型の異能。
被疑者の細胞を培養した結果、そこからは反応が検出されなかったため、
肉体ではなく精神に依拠した異能である、と現段階では推測される。

――ただ。
当該異能は、「■■■」と極めて似た波形によって他者に干渉していた。
親族が同様の異能を保有していたかヒアリングしてみたものの、
「そういうのはなかったと思う」という漠然とした証言に留まった。

この異能は何なのだろう。

『    』 >  
―――。

多くの検査のうち最も奇異であったのは。
その■■を暴くものが、「空欄」だったことだ。
最新鋭の装置、および魔術をもってしても、同様の結果が現れた。
まるで大勢の意思によってそう望まれたような――封印や呪詛を思わせる結果だった。

被疑者は、診断を受けることについては積極性を見せていた。
もしかしたら、被疑者は常世学園に用意された最新鋭の設備によって、
自分を明かすことを求めていたのかもしれない。

しかし、その結果を聞いた時に被疑者は、
ひどく落胆した様子で、「そう」とだけ、返した。

―――。

担当委員の判断により、当日中の検査はそこで中断となった。
被疑者は留置場へ戻るとすぐに就寝し、起床時間まで意識を覚醒させることはなかった。

『    』 >  
より確かにすることで実像をとらえやすくする試み。
秩序を預かる我々にとって、島民の安寧と秩序の維持のためには必要不可欠だった。

しかし今はまだ、こう言わざるを得ない。
調べれば調べるほどにわからなくなる。

これは何なのだ。

――録音停止。

ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」から『    』さんが去りました。