2025/03/07 のログ
ご案内:「委員会街 風紀委員会本庁」に青霧在さんが現れました。
■青霧在 > 脳裏に呪いが反響する。
過剰な教えが正常であろうとする思考を妨げる。
その価値観は未だ過去に縛られ、人並みであることを許さない。
そうして歪みを正せずにいる事すら気づかせない。
法に沿った生き方は覚えられても、人並みな強迫観念と無縁な生き方を知れずにいる。
熱い内は簡単に歪められても、冷めてしまった後にそれを正す事は困難なのだ。
……
「そろそろ時間か」
青霧の執務室。
黄昏をカーテンで塞ぎ、符が数枚貼られた箱を見ながらつぶやく。
デスク前に座ったまま、誰かを待つ。
その誰かは、時間通りに来る。
昔からそうだ。
オモイカネの画面に表示された時計の長針が15分を指そうとした時―――
コンコンコン、と執務室の扉が叩かれた。
「大丈夫だ」
このタイミングで来るならあいつしかない。
約束の時刻の15分前。扉が開かれ、見覚えのある姿が露になっていく。
■霞堂由紀 > 「お待たせ、在」
扉から入ってきたのは糸目の少女。
青霧より頭一つ小さい背丈、傷のない白い肌、光すら反射しそうな碧い長髪。
それでも、その立ち振る舞いには隙など無く、触れる事すら叶わない…そんな錯覚すら覚えるだろう。
そんな少女が親し気に青霧へと声をかける。
青霧に対して警戒などないままにデスクへと歩み寄る。
ただ、卓上の箱には警戒を向けて。
「はいこれ、言われてた資料」
「ま、連絡先以外は知ってると思うけど」
持ってきたファイルをデスクへと置き、傍に寄せてあった一人掛けソファに腰を降ろす。
背筋の伸びた整った姿勢で青霧の方を向き、尋ねる。
「んで?それと関係あるのかな?」
卓上の符が張られた箱を視線で示しながら
「《炉神》の情報が欲しいなんてさ」
口角を僅かに上げた。
■青霧在 > 「わざわざ来てもらってすまない、霞堂」
椅子から立ち上がった状態で少女を迎える。
霞堂由紀、同学年で風紀委員会の先輩。
付き合いは4年にもなるが、未だにその内が知れない。
嫌いではないが、ある時から妙に親し気で距離感が近い奇妙な女。
必ず約束の時間の15分前に来るのも、よく分からない。
「ありがとう、感謝する」
箱を妙に警戒している事に妙な納得を感じながら差し出されたファイルを受け取り、
霞堂が座るのを待ってから椅子に座り直す。
そして、霞堂の問いに頷く。
「分かるか。あと警戒はしなくていい」
「触るぐらいまでなら問題ないと。これも念の為でしかないからな」
相変わらず勘がいい。よすぎる
修復不能とされた《聖蛇》の入った箱に触れながら霞堂の問いに答える。
実際触れる程度なら大丈夫だ。
使用には適さないそうだが、この呪いも清めるだけなら可能ではあるそうだ。
それでも霞堂の警戒はあまり解れない。元の呪物の事を考えれば、妥当な警戒だろうか。
「ここには修復不能と判断された武器が入っている」
「だが……当世金屋子媛……《炉神》なら直せるかもしれないと聞いたんだ」
「一度はあきらめようと思ったが、諦めきれなくてな」
箱を擦りながら話す。
貰い物の武器を、特注で打ってもらった一品物を……壊したままにするのは、余りにも心苦しかった。
耐えかねた。
故に、直せるかもしれないという《炉神》を頼ろうとしている。
■霞堂由紀 > 「……ちょっと無理だね」
敵意、殺意、嫉妬、劣情、憤怒。
質の高い呪詛。薄まりつつあり、残り香とはいえその香りは到底無視できない。
これを見逃すようでは、少女の職務は務まらない。
箱に触れる青霧に変化がない様からも現状無害化されてる事は明らかだが、触れてみろと言われれば丁重にお断りするだろう。
「他の鍛冶師には無理でも、《炉神》なら可能だろうね」
「在担当は…暁ちゃんだっけ。ってことは聖蛇か」
「あの子が無理って言うなんて、どんな使い方したの」
暁ちゃんは多くの刀剣を鍛えた優秀な刀匠。
風紀の中にはあの子の鍛えた武器を持ってる人も少なくないって聞いた。
「そういえば最近あの子が忙しそうにしてたのってそういうこと?」
元々多忙な子だけど、もっと忙しそうにしてるらしい。
聖蛇が壊れたって事は、そういう事だろうか?
■青霧在 > 「……そういう情報はどこで仕入れて来るんだ?」
隠している訳ではないが、霞堂は武器を持つ訳でも無ければ暁と直接的な接点があるような部署ではない筈だ。
《聖蛇》も、データベースにも登録されている武器ではあるが…。
霞堂は俺が入学した時からこうだ。
何故か俺の事は何でも知っている。
知っているだけだ。広める訳でも、利用する訳でもない。
所謂気がある素振りを見せる訳でもない、必要以上のコミュニケーションやボディタッチを行う訳でもない。
何を考えているのか、分からない。
聞いてもはぐらかされるばかりだ。
しかし、現場で起きた事までは流石に知らなかったようだ。
「まあ…こうした」
「あいつが忙しそうなのは思ってる通りだろう。新しいのを用意しようとしてたんだ」
右肘に掌底のジェスチャー。
何度か知人から話を聞いているが、新武器作りは難航していたという。
そして、既にその事情は解消された。
「…これさえ修復出来れば新しい武器も必要なくなる」
「だから《炉神》を頼りたい」
霞堂の持ってきたファイルの中身を取り出す。
差し出された時点で分かっていたが、情報量は少ない。
名前、コードネーム、通称
「第一級監視対象」
あとは連絡先と、依頼を受注している事が記されている程度。
「まあ…だよな」
第一級監視対象《炉神》。
何をしでかしたかは知らない、知りようが無い。
それでも、その肩書には前々から苦々しい思いを抱いている。
それに頼るというのは少しばかり後ろめたい思いだ。