2025/04/22 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁 青霧在の執務室」に青霧在さんが現れました。
新宮翔太 > 「在~聞いてくれよぉ」

扉に項垂れかかる様に入ってきたのは半泣きの青年。
PCに向かう青霧にゆらゆらと接近し、机に両手を押しあてた。

「今、凄い、面倒な事が、起きた」

如何にも大事かのように、大げさに抑揚をつけて話す。
とはいえ、全てが冗談や嘘という訳ではないようで、その眉間には僅かに皺が寄っていた。

青霧在 > 「……俺に関係するなら聞くが」

来月のスケジュール確認をしながら、チャットで同僚の愚痴を聞いていた最中だった。
友人が横開きの扉を押し倒す勢いで入って来た。
頻繁にあることではないが、こうしたことは一度や二度ではない。
もうこれから何を口にし、最終的にどうなるかまで読めている。
一度スケジュール確認を諦め、別の同僚に一報入れておく。

新宮翔太 > 「結構関係あるとも」
「何しろ問題の発生源は在の所属と同じとこの子だからね」

こちらに視線を向けない青霧の様子には慣れっこらしい。
訪問者用のソファに身を投げ出すように腰掛け、続ける。

「流石に誰かは言わないけど―――」
「《戦火のン”ン”ン”》は分かるだろ?」

伏字のつもりか、喉が詰まったような呻きのような音を出して誤魔化す。
ふざけている訳ではないようで、表情はいたって真面目だ。

「やってくれたよ」

小さく溜息を零した。

青霧在 > 「丁度別口からも聞いてたところだ」

特に驚くでもなく、こちらも小さく息を吐く。
同僚の愚痴というのが、正に同じ出来事に言及していた。
後輩の特攻課が、端的に言えば『やってくれた』と。
決して悪事を働いた訳ではないにしろ、同じ所属の委員として、決して快くは思えない出来事が引き起こされたと。
何かが変わる訳ではないかもしれないが気が悪いと、そんな愚痴を聞いているところだった。

「刑事課、いや、お前も大変だな」

随分と厭そうな新宮の様子に同情の視線を向ける。
同じ出来事に言及していても、その愚痴の内容は全く別だろう。
何せ、新宮にとって彼の委員の暴走ともとれる行動は、一端とはいえ責任を持たされる事態であるからだ。
要するに、後始末に巻き込まれたのだろう。
ここまでは完全に予測通り。

新宮翔太 > 「知ってるなら話が早い」
「確かに落第街もスラムも存在しない街っていうのが俺たちの見解ではある」
「あるけども…あるけどもなぁ…」

右手を額に押し当て、ぐっと後方へ押す。
ソファの背もたれより後に倒れ込みながら、かすれた声で続ける。

「だからって、アレは駄目だって…」
「ほらさ…人権にうるさい人とかいるでしょ」
「そうじゃなくても…歓楽街の一部ってなってる以上、そっちからの図々しい主張もある訳だよ…」

かすれた声は止まらない。

「それに…ほら、あの子アレ付けてるのにそれも…ね?」

右手の人差し指を首元を指さして続ける。

「別にいいけど…いいけどさ」
「あの子は良くてもこっちが困るからさ…」

右手をだらんと垂らして呻き声を漏らした。

青霧在 > 「……」

黙って話を聞く。
実態を正しく把握していない身(噂話を聞いただけの部外者)が好き勝手言うのは避けたいという理由で感想すら口にしない。
とはいえ、新宮が苦しんでいるのはよく理解出来た。
新宮は、多方面との取引故に、何かと責任の一端を負わされる。
そんな彼にとって、先ほど起きた事態は非常に厄介事なのだろう。
一つ一つは大したことではないように感じるが、重なり合う事で重大な責任問題となったのだろ。
聞く限りでは、恐らくそうだ。

新宮翔太 > 「何のために着けてるのアレ」
「こういうことをふせぐためじゃないの」
「誰だよあの子にあんな指示と許可だしたの……あの子もあの子で変とか思わないのかなぁ……」

彼の委員は一騎当千万夫不当とも呼べる力を持つ。
その代償とでも言うのか、その周囲には誰も寄せ付けない。いや、物理的に近寄れない。
とはいえ、遠方から監視する役割を付ける事は可能だろうし、あの力に対して相対可能な異能や魔術持ちだっている。

「なんで一人で行かせるんだろうね」
「足手まといにならないようにする方法なんて幾らでもあるのにさ」
「あれじゃもうそうさせたいとしか思えないよ」
「ああいう派手なパフォーマンスはもっと…なんていうんだろうね」

「大儀とか、そういうのが無いと…」

音声記録に残された数多の悲鳴。
後から確認された現地の惨状。それらの報告を見聞きした新宮にとって、彼の委員の行動は主義と反するものだったらしい。

「お前はいつも最低限で助かるよ…」

項垂れていた頭部を前に戻し、青霧に疲れ気味に視線を向けた。

青霧在 > 「それは俺がそうしたいってだけだ」
「逆に俺のやり方が気に入らないのだっていると思うが」

新宮にとって自分のやり方が都合のいいというだけだ。
彼の委員のやり方に都合が良いとする者もいるのだろう。
だからこういった事態が起こる。
それ自体は組織として自然な出来事ではあるだろう。
だがしかし、青霧にとって今回の事態は到底快く思えなかった。

「……」

彼の委員のやり方と相反するやり方を好むのには当然理由がある。
故に、彼の委員がある一画を焼き払った事と、それらを”人”としなかったという噂には心の底で怒りにも似た熱が滾っていた。

「……そろそろ来る頃だろう」

しかし、それを発散する権利も、理由も、大儀もない。
そんな事よりも、そろそろお迎えが来る頃だろう。

新宮翔太 > 「……まあ呼んでるよな」

嫌々と言った様子でソファから立ち上がる。
すると、すぐに開けっ放しの扉から別の委員が入って来た。

『翔太さん、戻りますよ』

丸縁メガネ、長身の青年が淡々と言葉を紡ぐ。
隙を与えぬ間に新宮の腕を掴み、ぐいと引っ張る。

「自分で歩くから引っ張るなって!逃げたのは悪かったから!」

ここに来た時点で一時の逃避しか求めていないのだろう。
腕を引かれるままに、部屋の外へと連れられていく。

「邪魔してすまなかったー在ー」
「今度なんか奢るわー」

そんな言葉を残して部屋から出て行った。

青霧在 > 「頑張れよ」

最初から最後まで予測通りに事が進んだ。
別の新宮に連れられて新宮は部屋を出て行った。
律儀に閉められた扉を見つめて、小さく息を吐く。

「存在しない街か」

解釈は人それぞれ。
機関がどう取り繕おうと、実態が覆る訳が無い。
それを覆ったとして扱うか、そう見せかけるか、それとも実態のままに扱うか。
そういった判断は各々に委ねられ、統一されることは無い。

しかし……

「人を人とすら認められないか」

大きな溜息が零れた。

「獣を狩りたいなら風紀委員会である必要などない」
「人を人とすら思えないのであれば、鉄火の支配者とは似ても似つかない虐殺者……」
「特別攻撃課以前に、風紀委員にすら向いていないな」

甚だ呆れた様子で言い放ち、少し間を置く。
数秒の後、再び同僚の愚痴を聞きながらPCと向かい直した。
先ほどまでの様子はどこへやら、訪問者など無かったかのように落ち着きを取り戻していた。

ご案内:「風紀委員会本庁 青霧在の執務室」から青霧在さんが去りました。