2025/08/22 のログ
ご案内:「委員会街 公安委員会庁舎」に『昼行燈』さんが現れました。
■『昼行燈』 >
一見すると視聴覚室。つまりは多目的を用途としているクセに個性がない部屋。プレゼン用のスクリーンが、学園教室の黒板代わりに陣取っていて、ソレを眺めるように段々畑のように椅子と机が並んでいる。
――公安委員会庁舎の一室。言ってしまえばそうなのだが、少し小洒落た言い方をするならば……暗室となったそこは、客入りの乏しい映画館の小スケールと言ったところ。
その特等席に、青年の姿があった。
■『昼行燈』 >
背後のプロジェクターから投影されるのは映画の代わりに、退屈きわまるデータの数々だ。いや、詳細を見れば刺激的なのだが、如何せん娯楽とは縁遠い。
青年のほかに気配がいくつか、疎らに同じような熱意の無さを持って、上映会を眺めている――そんな彼らのことを、彼らと同じ程度にしか、彼も知らない。
……『紅い』と形容される女性が映ったのを見て、青年は手を挙げた。
「あー。マル対のその子、マークのみで良いってお達しが。一応ですけど『解決』扱いでいいと思います」
シンと静まり返る中、肯定とも否定とも取れない間があって、次の情報が映し出された。
■『昼行燈』 >
……実のところ、夏休みに入ってからというもの、公安の表立った出番は少ない。たいていのいざこざは、風紀委員がやってくれるからだ。夏だというのもあるが、はっちゃけたタイプの島民さんを取り締まるのは彼らのお仕事。バッティングもなくはないが、基本的に素性を隠しているのがこちら側なので、何かあっても正義感に駆られて現行犯逮捕、というノリでやってるメンバーは少ないのではないか、というのがコードネーム『昼行燈の所感である。
代わりと言っては何だが、もっと地味で、そのくせ忍耐が必要で、得られる成果が少ない事案を取り扱ってると言ってもいい。
「落第街で流行りつつある『飴玉』はもう少し調査が必要っすねェ。売り手と買い手がバラバラすぎて」
このような。
それと――最も忙しいのは表向きの仕事だ。各種免許・資格・パーソナルデータの更新業務……学生の長期休暇は事務仕事の増大を示している。
かく言う彼はその仕事を――担当人物を除いてのらりくらりとかわし続けているので、データと睨めっこする同僚にはお疲れ様の気持ちで一杯である。
■『昼行燈』 >
プロジェクターが『無』を映し出す。委員会からの議題は以上、あとは委員会員による報告タイムである。
そこには確証の報告、人手の追加希望、はたまた愚痴から請願まで……言ってしまえばフリートークの時間となった。
『昼行燈』――先生手紙はふと考える。落第街で偶発的に起きている家屋の爆破事案。今のところ魔術の残滓もなければ被害者も出ていないそれを言うかどうか。……いや、いいか。
肩の荷は随分と落ちた……と、この一年で思う。血の気の多さと治安の悪さは、この島の特色だ。本土では大事でも、この島では日常の彩に過ぎない――人命が懸かっているのならば、その限りではないが。
■『昼行燈』 >
そんな彼――もとい彼らに、プリント用紙が配られた。上映会中で見るには明るさに欠けるので終わってから、ということらしい。
それがこの場の全員か、別個かは読んでみないとわからないが――貼られた付箋はどう考えても自分宛て。
「…………うへぇ」
■『昼行燈』 >
『平均点をもう少し上げなさい』
と、とても学生らしい悩みの種が短く書かれているのであった。
ご案内:「委員会街 公安委員会庁舎」から『昼行燈』さんが去りました。