2024/08/02 のログ
エルピス・シズメ >  
「……うん。『エルピス』の最期の決断を、良いんじゃないかって、行ってくれるなら、

 僕は僕が信じる道を行ける。

 エルピスが歩んだ新しかった道を、僕なりの形で引き継いで信じる道を行く。」

 記憶を辿る。公安を離れると決めた時も、この話をした。

 そして、そうすることは実際大変だった。
 それこそ死ぬ程、大変だった。

「そうだね。記憶にある。だけど僕はこう考える、
 選んだ道を正解にするんじゃなくて、その道が正しく在れるように努力する。」

「正解や失敗に拘らないで、僕に忠実に生きる。」

 ほんのわずかに産まれた、エルピスとの差異。
 あるいは、経験。

 且つてのレイチェルと交わした決断を経た結果、新たな回答が示された。

「あはは、やっぱりお門違いだよね。」
「僕の恋心とか我儘と……気持ちの整理に付き合わせちゃって、ごめんね。ありがとう。」

 儀式ではない、本心からの謝罪と感謝を口にする。
 誤魔化してはいたが、『恋心』による先張りでコトを大きく考えていた不死は否めない。

「うん。改めて宣言する。『エルピス』じゃなくて、『僕』自身を信じる僕を信じる。」


「そう受け取ったよ。レイチェル。……ありがとう。ムシの良い話かもしれないけど、改めて宜しく。」 

レイチェル >  
「お前自身に忠実に生きる。

 それがお前のやり方なら、そうすれば良いさ。
 オレにはオレの、エルピスにはエルピスの。
 そして、お前にはお前の考えややり方があるんだろ。
 
 少なくとも……

 自分なりの答えを持っていると感じられて。
 そのことを信じていけるってんなら。
 
 きっと、つまんねぇ後悔なんざ、そうそう起きねぇだろうからさ」

無論、悩みもするし悔やみもするかもしれないが、
意味のない後悔はしてほしくないし、したくないものだ。

「オレは、そう考えてるぜ」

レイチェルは眼前の相手を改めて見つめた。
彼は、『エルピス』のようで――しかし、
『エルピス』がレイチェルに見せたことがない、
彼とは違った顔をしているように見えた。
或いは、そのように見たかった(バイアスがかかっている)だけかもしれないが。
それでも、快い奇跡(へんか)なら、たまには信じたっていい。

「そこんとこは、好きにしな。
 ただ関わるからには、困った時はちゃんと頼れよ

そう口にして、ふと時計を見やる。
そろそろ次のミーティングが始まる頃合いだ。

「そんじゃま、気をつけて帰りな」

エルピス・シズメ >   
「うん、いや、ううん──苦悩も後悔も全部だいじに糧にして、進み続ける。
 つまんない後悔だってひっくるめて、僕のもの。


「僕は、そう考えることにした。」

 エルピスには無かった、ひたむきな貪欲さ。
 それの根源は何であれ、かつてのエルピスが見せた事のない貌だった。

 何にせよ、快い変化(奇跡)には違いない。

「大丈夫、ちゃんと頼るよ。
 一生徒としても、友達としても、風紀委員の友達のレイチェルには頼るよ。」
 
 "もちろんお礼もね。"軽い言葉を付け加えて席を立つ。
 その際に、幾らかの書類を付け加え。

「そうだね、そろそろ行かなきゃ……その前に早速のお願いなんだけど……」

 立ち上がる際に幾らかの書類を置く。
 『かつてのエルピス』が正式に死亡したことにする為の書類だ。

「これの処理、お願いしたいな。直接処理してくれても、公安の顧問さんに回してくれても良いから」

「このお礼も、今度するよ。……またね、レイチェル。」

 レイチェルの素振りから時間が迫っていると判断すれば、やや押し付け気味に書類を渡し、会議室を去った。

ご案内:「委員会総合庁舎 会議室」からエルピス・シズメさんが去りました。
レイチェル >  
「……ったく、調子のいい奴だぜ」

去っていく彼を見やる。

――悲しいけど、応援したくなっちまうのは、あいつが形見だからか、それとも。

机の上に残された書類は、レイチェルにとって辛い事実で。
それでも、去っていった彼自身にとっては、新たな希望で。

「乗り掛かった船だ、仕方ねぇか」

その書類を手にすると、鞄の中に大切にしまい込む。
ミーティングが終わったら、公安の顧問を通じて処理することに決めたのだ。


そうして書類に貼付された写真を見て。

レイチェル >  
端末に顔を向ける。その表情を知り得る者は、この場に居ない。

「……バカ野郎が」 
 
ただ一言、旧知の彼の面影にそれだけを告げて、再び端末を開くのだった。
次のミーティングまであと数分、といったところだった。

止まってなどいられない。
誰か一人が居なくなっても、この世界は、常世学園は動き続けるのだから。

ご案内:「委員会総合庁舎 会議室」からレイチェルさんが去りました。