2024/08/02 のログ
■エルピス・シズメ >
「……うん。『エルピス』の最期の決断を、良いんじゃないかって、行ってくれるなら、
僕は僕が信じる道を行ける。
エルピスが歩んだ新しかった道を、僕なりの形で引き継いで信じる道を行く。」
記憶を辿る。公安を離れると決めた時も、この話をした。
そして、そうすることは実際大変だった。
それこそ死ぬ程、大変だった。
「そうだね。記憶にある。だけど僕はこう考える、
選んだ道を正解にするんじゃなくて、その道が正しく在れるように努力する。」
「正解や失敗に拘らないで、僕に忠実に生きる。」
ほんのわずかに産まれた、エルピスとの差異。
あるいは、経験。
且つてのレイチェルと交わした決断を経た結果、新たな回答が示された。
「あはは、やっぱりお門違いだよね。」
「僕の恋心とか我儘と……気持ちの整理に付き合わせちゃって、ごめんね。ありがとう。」
儀式ではない、本心からの謝罪と感謝を口にする。
誤魔化してはいたが、『恋心』による先張りでコトを大きく考えていた不死は否めない。
「うん。改めて宣言する。『エルピス』じゃなくて、『僕』自身を信じる僕を信じる。」
「そう受け取ったよ。レイチェル。……ありがとう。ムシの良い話かもしれないけど、改めて宜しく。」
■レイチェル >
「お前自身に忠実に生きる。
それがお前のやり方なら、そうすれば良いさ。
オレにはオレの、エルピスにはエルピスの。
そして、お前にはお前の考えややり方があるんだろ。
少なくとも……
自分なりの答えを持っていると感じられて。
そのことを信じていけるってんなら。
きっと、つまんねぇ後悔なんざ、そうそう起きねぇだろうからさ」
無論、悩みもするし悔やみもするかもしれないが、
意味のない後悔はしてほしくないし、したくないものだ。
「オレは、そう考えてるぜ」
レイチェルは眼前の相手を改めて見つめた。
彼は、『エルピス』のようで――しかし、
『エルピス』がレイチェルに見せたことがない、
彼とは違った顔をしているように見えた。
或いは、そのように見たかっただけかもしれないが。
それでも、快い奇跡なら、たまには信じたっていい。
「そこんとこは、好きにしな。
ただ関わるからには、困った時はちゃんと頼れよ」
そう口にして、ふと時計を見やる。
そろそろ次のミーティングが始まる頃合いだ。
「そんじゃま、気をつけて帰りな」
■エルピス・シズメ >
「うん、いや、ううん──苦悩も後悔も全部だいじに糧にして、進み続ける。
つまんない後悔だってひっくるめて、僕のもの。」
「僕は、そう考えることにした。」
エルピスには無かった、ひたむきな貪欲さ。
それの根源は何であれ、かつてのエルピスが見せた事のない貌だった。
何にせよ、快い変化には違いない。
「大丈夫、ちゃんと頼るよ。
一生徒としても、友達としても、風紀委員の友達のレイチェルには頼るよ。」
"もちろんお礼もね。"軽い言葉を付け加えて席を立つ。
その際に、幾らかの書類を付け加え。
「そうだね、そろそろ行かなきゃ……その前に早速のお願いなんだけど……」
立ち上がる際に幾らかの書類を置く。
『かつてのエルピス』が正式に死亡したことにする為の書類だ。
「これの処理、お願いしたいな。直接処理してくれても、公安の顧問さんに回してくれても良いから」
「このお礼も、今度するよ。……またね、レイチェル。」
レイチェルの素振りから時間が迫っていると判断すれば、やや押し付け気味に書類を渡し、会議室を去った。
ご案内:「委員会総合庁舎 会議室」からエルピス・シズメさんが去りました。
■レイチェル >
「……ったく、調子のいい奴だぜ」
去っていく彼を見やる。
――悲しいけど、応援したくなっちまうのは、あいつが形見だからか、それとも。
机の上に残された書類は、レイチェルにとって辛い事実で。
それでも、去っていった彼自身にとっては、新たな希望で。
「乗り掛かった船だ、仕方ねぇか」
その書類を手にすると、鞄の中に大切にしまい込む。
ミーティングが終わったら、公安の顧問を通じて処理することに決めたのだ。
そうして書類に貼付された写真を見て。
■レイチェル >
端末に顔を向ける。その表情を知り得る者は、この場に居ない。
「……バカ野郎が」
ただ一言、旧知の彼の面影にそれだけを告げて、再び端末を開くのだった。
次のミーティングまであと数分、といったところだった。
止まってなどいられない。
誰か一人が居なくなっても、この世界は、常世学園は動き続けるのだから。
ご案内:「委員会総合庁舎 会議室」からレイチェルさんが去りました。