2024/08/17 のログ
ご案内:「委員会総合庁舎 ロビー・総合案内」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >  
 時刻は昼過ぎ。
 入口付近で大量の資料を抱えている、2本ある右腕が特徴的な義手義足少年がひとり。
 両手でしっかりと持って、第三の腕は遊ばせている。

「知識の更新に来たけど、思ったよりも多いね……。」

 今現在の常世学園の入学、編入、教師、祭祀局、異邦人保護、身元不明人緊急保護──
  
 等々諸々の『常世島』のシステムの仕組みを再確認するため、
 細心の資料を資料を貰ってきた帰りのエルピス。
 
 とりあえず、適当なテーブル席を探す事にする。
 

エルピス・シズメ >   
「この辺なら……邪魔にならないかな。」

 入口付近のテーブル付きの席を借りることにする。
 どさどさどさ、と、一般的に頒布されているパンプレット等の資料と、
 各種申請に必要な用紙や、デジタルで読み込むためのコードを分類しておく。

「さすがに、帰りは紙袋を貰おうかな……。」

 そんなことを呟きながら、外来者向けのパンプレットを手に取る。

(……細かい所はやっぱり変わっているけど、大体は変わってないかな。)
(ナナとイーリスと3人でおでかけもしたいし、イーリスのお友達で困っている人がいるみたいだし……)

 真っ当な手続きで済む部分は抑えておきたい。
 そんな気持ちで、もくもくとパンプレットや資料を読み込んでいる。

(基本は、生活委員会……怪異や申請だと祭祀局のケースもあるんだっけ。)
(この辺はしっかり読み込んでおいたほうが良さそう。違反部活の被害者や、
 門からの転移者かはっきりしないケースは……身元不明の場合……奨学金や当座の給付金……)
 
 ううん、と、唸りながら読み込んでいる。
 束ねられた資料もゆらゆらと揺れる。 
 
 

ご案内:「委員会総合庁舎 ロビー・総合案内」にシアさんが現れました。
シア > そういえば、委員会街は見ていなかった、と少女は気づいた。
そこでやってきたのは委員会総合庁舎。

「……一杯ある、委員会……
 風紀委員、公安委員、生活委員、図書委員、鉄道委員、式典委員……
 祭祀……局……?」

思ったよりも色々あった。
何をどう扱っているのか、詳細がわからない。

「……む」

きょろきょろとあたりを見回してみる。
総合案内、という文字が見えた。しかし、何がどうなっている、と聞いていいものか。

「……!」

その視界の中に、見たことのある顔が映る。
しかし、なにかの資料とニラメッコをしている様子だ。

「……ん」

とはいえ、頼れるものがない。ひとまずそろそろと近づいていく

エルピス・シズメ >  
「これは常世島の歴史や学園史の類だから、こっちにまとめて……
 こっちは申請用紙と、デジタルで申請する時のコード類。紙にすると結構あるね……」

 3本目の腕も分類に駆り出す。
 片っ端から貰えるものを貰ってきたので、相当な量。
 眼を通しながら、分類を進める。

「事務所に持って帰るとしても、整理が要りそう。
 とりあえず書類整理は後で考えるとして……」

 一息付いたところで顔を上げた。
 見知った少女がとことこと近づいてきている。

「あっ、シア。こんにち──」

 気が緩んでいたのだろう。
 挨拶しようと腕を動かした所でうっかりと機械肘をぶつけ、
 資料の一角がテーブルから零れ落ち始めた。
 

シア > 「あ」

挨拶をしようとしたエルピスの肘が、書類の山にぶつかる。
物理法則の必然として、資料の束が押され、机の端に押し出される。
さらなる当然として、下に支えがなくなった資料は、こぼれ落ちる。
バラバラと

「……」

自分のせいと判断し、こぼれ落ちる書類束に向けて足を踏み込む。
素早く手を伸ばすが、流石に全てを拾えない

「……むぅ」

ばさり、と虚しく資料が床に散らばる。

「……え、と……ごめん……?」

まずはどういったものか、と思案して少女の口から漏れたのは謝罪の言葉だった。

エルピス・シズメ >     
「ううん、大丈夫。ちょっと気を抜いちゃってたみたい。
 ここ最近忙しくて、それがようやく落ち着いた所でね……」

 ふわりと緩んだ笑顔を向けて、散らばった資料を拾うために屈む。
 普段よりも大分気が緩んでいる様にも見える。
 大きな獲物を狩って持ち帰って馳走にした後のような、気の緩み。

(落ちたのは申請書のまわりかな。種類ごとに分けては置いたから……)


「そう言えば、シアは元気だった?」
 
 そんなことを考えながら、挨拶しに来てくれた友人に何気なく、世間話の類を振った。
 

シア > 「そうなんだ。大変だったみたいだね、知らないけれど。
 よかった……のかな。」

何があったのかはよくはわからない。なんだかすごそうな闘いの中に紛れていたようにも見えた。
それが本当にエルピスだったのかまではわからないし、詮索する話でもなさそうだ。
ただ、緩んだような表情、悪緊張感がなくなった雰囲気。
それらが、何かの仕事か何かが終了した、ということなのだろう。

「ん……」

結局流れで書類を拾い続ける。
始めてしまったことをハンパに終わらせることもないので。
その途中で投げかけられた質問。

「元気だったよ、ボクは。見てた、色々と。
 それと会ったかな、いろいろな人と。」

氷割り以来、といえば大したことはさほどしていない、と思う。
そういえば、トコケット、とかいうのにも顔をだしてみたけれどいろいろな本があった、か。

「……エルピスは?
 仕事……違うよね、バイトとは。違う気がする、力のかけ方が。」

前の訓練施設のときとも、ナース服を着ていたときの雰囲気とも違う。
達成して、なにかを成し遂げた空気感の強さが、大きい……感じがする。
気のせいかも知れないが

エルピス・シズメ >   
「うん。良かったこと。」

 迷う事なく答える。
 喜色の混じった返事の後、再び資料回収へ。

 話の片手間に、のんびりと資料を回収している。
 
「ん、それは好かった。交通機関も使ってみた?
 シアも色んな人と会ったんだね。僕も色々な人と会ったよ。」 
 
 思い返せば、短いような長いような。
 とにかく、日常も非日常も濃厚だったと記憶を思い返す。

「ん、これは『お勉強』かな。
 ……まだ学生じゃない同居人と、好きな人のお友達がいてね。」

「その人たちが少しでも望む方向で、この島で生活できるための手続きのための資料を揃えているんだ。」

 落ちた資料を軽く叩いて整え終えて、テーブルの上に戻す。

「迷い込んだり逃げ延びた人の全部が、人の好い生活委員会さんや先生に保護される訳じゃないから。
 保護されても、運が悪いと十分な福祉を受けられない可能性もあるから……」

「……言い辛いけど、この前会った落第街とか、スラムとか。
 望まずにそっちに行かないためにお手伝いの、お勉強。」
 

シア > 「そうなんだ。いいかな、それなら」

わからないが、この緩さを考えるとそれだけ気が抜けるような状態なのだろう。
それはきっと、いいこと……なのだろう。

「ん。えっと……使ったよ、バス。
 そうなんだ、エルピスも」

エルピスとあったのはそこまで昔ではなかったはずだ。
それでも、その間に自分でさえ何人かの人間と会うことがあった。
エルピスなら、なおさら、だろうか。

「『お勉強』……この島で生活できるため……」

話された内容を解釈する。
そういえば、自分は一応合法な方法でやってきたが、それ以外の方法もあるのか。
落第街も、そういう仕組なのか。

「あるんだ、そういうことも。いるの、手続きとか?
 ヘンだ、なんだか」

わざわざ自分で手続をしないといけないのであれば、そもそもそんなことにはならないのではないか。
一々かまっていられない、ということだろうか。
この島の設計思想はどこにあるのだろう……


「……好きな……氷のときに、居た人?」

そこで、ふと思い出す。
そういえば、あの時、エルピスが仲良さそうに話あっていた人が居た気がした。

エルピス・シズメ >  
「自分の足で動かなくてもあんなに早く動けるのは、すごいよね。
 馬や牛みたいに、意志があるわけでもなくて……」

 人間の技術にほんのりと想いを馳せる。
 "よく考えたらすごいこと"、と思いつつ。

「この島には……ううん、社会にはルールがあるからね。
 『学生』や『教師』も、そのルールのひとつ。」

「問題はそのルールに辿り着くための手続きが、一つじゃないってことだけど……
 『おなじこと』の申請でも、窓口や申請順によって結果が変わったりもするし。」
 
 困りぎみに印刷された書類を見遣る。
 すごく難しそうな顔で唸り、再び彼の顔に緊張感が浮かぶ。

「仕組みも完璧じゃないし、人間は間違える生きものだからね。
 偶然や不運が重なって、そうなる事はある……って思ってる。」

 書き間違えたり、読み間違えたり。取り違えたり。
 そもそも読み書きや社会を理解できなかったり。

 そういうものの積み重ねで社会の手から零れ落ちたものが、
 落第街やスラム──あるいは未開拓地域に辿り着く。

 そこに自ら学園から手を放して、不良集団として紛れるものも居る。

 お人よしの彼は、人やこの島をそう見ているらしい。

「うん。あの子。イーリス。イーリスは学生さんだけどね。彼女から困っている人が居るって聞いたから。
 それと、僕とイーリスと、もう一人の大事な同居人のナナって子も、色々あって手続きができなくてね。」

 表の知識で済む範囲ならそれで済ましたい。 
 裏の知識に手を出すのは、それからにしたい。

 あるいは、清濁を混ぜてどうにか折り合いを付けたい。
 そのための知識を読み込んでいる最中だ。
 
「変な話になっちゃったかも……。
 ……こんな話を聞かせちゃって、ごめんね。」
 

シア > 「いい勝負できる、猪と。突進が早い、あれは。
 乗れないけど、背中に」

お山の中で最速と言えば、それだ。
残念ながら、馬のように背中に乗ることはまずできない。
それを考えると、バス、とか、デンシャ、の方が便利そうだ。

「社会の、ルール……」

全く知らないわけではないが、詳しい、と胸を張って言えるものでもない。
どうやら少女の知らないルールはまだありそうだ。

「窓口……申請順……」

拾った書類をなんとはなしに見てみる。どうやら、申請書のようだ。
瞬間的に読み取った部分には――
「◯◯のときには、書類Aを提出。✕✕のときには、書類Bを提出……」

なるほど、色々手間がかかりそうだ

「間違える……? ん。そうかも。
 星がなくなることだってあるかも、今」

人は間違える。失敗をする。偶然や不幸に翻弄される。
それは間違いない。自分もそういうことに巻き込まれた、といっていいのだろう。
そして、理不尽か何かわからないなにかは、今また襲ってくるかも知れない

「優しいんだ、エルピスは」

愛する人、というところまではわかる。その彼女から聞いた人、などはある意味無関係。
そこまで助ける。それは優しさだろう。
なおもうひとりの大事な人……は関係性が見えないから判断は保留。

「? いいよ、学びになったし。ないよ、謝ること。

首を傾げる。そもそもにして、謝るような内容だっただろうか。

「手伝う、なにか?」

拾い終えた書類を手渡しながら聞いてみる

エルピス・シズメ >  
「背中に乗るタイプは、バイクとか自転車とか、また別のカタチの乗り物かも……。
 自分で動かさないといけないから、交通機関とはちょっと違うけれど。」

 背中に乗ると聞いて、心あたりをぼんやりを思い浮かべる。
 公共の交通機関かと言えば、少し違うものの。

「うん。社会のルール。
 全部はきっと、おぼえきれないかも。」

 ちょっとだけ誤魔化して笑う。
 僕でも無理かも、と、雰囲気を和らげようと冗談めかして。

 そんな中で、シアの言葉から不思議な言い回しを耳にした。
 含みのある、不思議な言い回しに興味を惹かれる。

「『星がなくなる』……?」

 気になったので、そのまま訊ねる。

「優しいのかな。……でもそう言ってくれて嬉しいかも。
 僕の中で甘いだけかなとも思ってたから……ありがとね、シア。」

 前よりもちょっと自信が付いた。
 そのことに、礼を告げる。

「そうだね。あっちの方で書類を入れる紙袋を2つ貰ってきて……
 ……近くのバス停まで一緒に運んでくれると、嬉しいな。シア。」

シア > 「バイク……自転車……動かす、自分で……?」

背中に乗るのに、自分で動かさないといけない。
一体、どういうことなのだろうか。少女にはいまいち想像がつかなかった。

「ヘンなの。覚えきれない量なんて、ルールが。」

ルール。要するに掟だ。掟が覚えきれない量なのでは、誰も守れないだろう。
もう少しシンプルにならないものなのだろうか。少女は首を傾げた。

「ん……うん。言い過ぎたかな、大きく。
 島でもいいよ、星じゃなくて。自分の生きている場所が滅んじゃうってこと、簡単に言えば。
 そういうのだってあるかなって、不運なら。選ぶなら、人が。」

その気になれば、この島の一つくらい消えてしまってもおかしくないとも思う。
そういう不運、偶然、必然があってもおかしくはない。

「だから。行動するほうが大事だね、起きたことにがっくりするより。」

どこか独特な感覚であった。
起きたことは起きたこととして受け止めるが、それそのものに拘泥しても仕方ない、と告げていた。

「……そう?」

お礼を言われて首を傾げた。
甘い、も、優しい、も同じようなものではないのだろうか。
それで満足したのならいいか。

「ん。いいよ、それくらいなら。
 ちょっと待って」

さっと指ししめされた方に走り、紙袋を持ってくる。

エルピス・シズメ >  
「そういうものもあるんだ。
 小さくて2つの輪の鉄の塊に鞍が付いたような……。」

 思い付きで例を挙げてみる。
 かえって、曖昧な説明になったかもしれない。

「ヘンだけど、そうなんだ。覚えきれない量のルールがあって、間違えると罪にもなる。
 知らずに、あるいはやむを得ずに間違いを起こして、風紀委員に捕まって罪を裁かれる事もあれば……」

「間違いを起こす前に、先生や委員に保護されて罪を犯さずに済む事もある。」 

「あるいは、保護されれば……罪を犯していても、酌量の余地ありと一部が赦されることもある。」

 思うところがあるのだろう。
 語っている彼の顔は、少しだけ哀しそうに見えた。

 ほどなくすれば、気を取り直し。 

「そっか。それで『星がなくなる』なんだ。
 不思議な言い回しだけれど、なんとなくしっくりくるかも。シアの故郷での、言い回し?」

 気に入ったらしい。
 自分の胸に左手を当て 反芻するように頷いた。

「そう。……うん、お願い。」

 シアが紙袋を持ってきてくれれば、器用に中に詰める。
 慣れた手付きでさっくり詰め込む。

「ありがとう。シア。……それじゃ、いこっか。」

 紙袋の一つを取り、出口へ向かう。
 何事もなければシアにもう一つの紙袋をバス停まで託し、
 バス停までたどり着けば改めて謝意を込めてお礼を言う。

シア > 「ん、んん……?」

エルピスの頑張った説明を聞きながら首を傾げた。
わかったような、わからないような……

「面倒だね、割と。
 いいんだけどね、拾う部分がしっかりしてるなら。
 ……してないのかな、意外と。置いていかれる、弱ければ……」

ルールというものは、必要に応じて増えていく。
そのため、どんどんと複雑怪奇になっていく。誰も彼もが完璧には中々覚えられない。
そうした中で、こぼれ落ちたものは? その弱さを理由に放られてしまうことも、あるのかもしれない。

「……あるか、そういうことも」

独り、何かを納得する。

「ぁ……ぅ……それは……ボク……」

誰しもが、理不尽に世界の滅びに出会うことがあるかも知れない。
そういうことを言おうと思って、大きな話にしてみた。
そうしたら、想像以上に気に入られてしまった。

故郷の言葉に、こんな自分の思いつきの表現はない。
どうにも戸惑ってしまった。

「ん。気にしない、べつに。
 ああ――そうだ。連絡先」

ふと、最近知ったばかりの学生手帳の機能。
連絡先の交換、なるものをしてなかったな、と声をかけ……
そんな話をしながら、バス停までついて行った