2024/10/16 のログ
ご案内:「委員会総合庁舎 カフェ」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
「えと、ジンジャーエール、辛めで」
ここを使うときはいつも、これ。
店員さんが、対応してくれてすぐ出てくる。
受け取り、テーブルに腰掛ける。
今日も雑用紛いの書類整備などを終えて、一息。
イヤホンをして、端末を操作。
そして、動画を開く。
ーーダンス講座の、動画。
ジンジャーエールを一口飲んで、ほっとしながら、その画面に夢中になる。
いろいろ見ているけれど、参考になる。
ーー姉にも、秘密のスポーツ趣味、だ。
■伊都波 悠薇 >
「結構、いろんなのあるんだな」
とんとんとん、とリズムを取りながら動画をみる。
ブレイクダンス、は結構難しそうだけれど、その他は練習が大事な気がする、と思っている。
見てるのも、面白い。
とんとんとん、指でつい、リズムを取ってしまう。
■伊都波 悠薇 >
ゆったりした時間。
『身の上を弁えている』、と言ったら語弊が出るかもしれないが。
気張らず、頑張りすぎず。
でも、自分のできることはこつこつと。
そんな学園生活を遅れている気がする。
息抜きも、できているし、こうして新しく興味を持つものも出来てきた。
「いい曲、だな」
ダンスのよいところは動きの参考にできるのと同時に、気になる曲も増えること。
姉が好きそう。上手く歌いそうだと思ったら笑みが零れた。
端から見たら、ひとりでにやにやしている、メカクレ女子である。
ご案内:「委員会総合庁舎 カフェ」に麝香 廬山さんが現れました。
■麝香 廬山 >
「────王道だけど難しいんだよね、ウィンドミル」
不意に、耳元で男の声が聞こえた。
それが何時いたのかはわからない。
ただ、確かにいつの間にかそこにいた。
その横に、さも友人のように立ち、動画を覗く男がいた。
紅の双眸がちらりと横目で見やれば、
にこりとなんとも人の良さそうな笑みを浮かべる。
「やぁ、こんにちは。キミは……確か凛霞ちゃんの妹さん、かな。
意外とアグレッシブな趣味を持ってるんだね。結構動けるのかい?」
コンコン、と指先が液晶画面を軽く小突いた。
■伊都波 悠薇 >
「みょぺ?」
声が隣から聞こえた。
気付いたらそこにいた。全く分からなかった。
いや、『分かってはいた』のだと思う。
だって、無意識に感じていた雰囲気は、知っていたものだ。ただ。
ーー周りが呑まれていて、その雰囲気が普通だと認識していただけで。
「~~!?」
結果、椅子ごとムーンウォークなんていう、奇妙な動きが成立してしまった。
奇跡である。
声を出して叫ばなかった自分を褒めたい。
「え? えと、えぇ? えと、この前、旅館にいた人ですか?」
そう。『山のようで、海のような』、気配。大きくて、大きすぎて……分からない、雰囲気。
■麝香 廬山 >
物凄い勢いで後退した。椅子ごと。
面白い動きするなぁ、とにこにこ笑顔で見ている。
「おぉ、凄いね。流石はダンサーな妹ちゃん。
ムーンウォークもお手の物だ。因みに床には跡ついたけどね」
後退の跡がクッキリだ!
「うん、そうだよ。廬山、麝香廬山。
君と同じ風紀委員さ。宜しくね?ええっと……名前、なんだっけ?」
なんて、わざとらしく首を傾げて自身の首輪を撫でる。
異能制御装置。飼いならされた犬の首輪を、指先がなぞっている。
■伊都波 悠薇 >
「ひゃい!?」
しまった、傷がついてしまった。
あとで謝らないと……ではなく。
「あ、いや、その、ダンサーではなくて、最近こう、始めたばかりといいますか、えぇっと?」
首を、見る。えぇっと、『なんだっけ』?
一瞬の空白。そして、認識。あぁ、それはーー
「じゃ、ジャコウさん、ですね。い、いとわ、はるか、です」
妹と、認知されているのは久々。
かつ、珍しい。そも、いたんだと言われらーーあぁ、旅行で姉が紹介していた、そういえば。
「えと、休憩、ですか?」
■麝香 廬山 >
「ハハ、面白いねぇ。
みょぺって言ったりひゃいって言ったり。鳴き声が趣味?」
笑顔で揚げ足を取ってくる辺り、廬山の人間性が既に伺える。
撫でている指をゆるりと落とせばゆるり、ゆるりと歩み寄る。
「最近始めたんだ。へぇ、何かきっかけがあるのかな?
悠薇ちゃん。こういっちゃなんだけど、"どん臭そう"だしね」
人は見かけによらないとは言うが、
彼女の場合はどうだろうか。意図的な悪意がするりと口から漏れていく。
「廬山でいいよ、悠薇ちゃん。
……んー、こう見えて退屈な時間が多くてね?
君は"あの"凛霞ちゃんの妹さんって言うから、声をかけたくなった」
目前、足を止めればじ、と顔を近づける。
前髪の向こう側の瞳をまるで覗き込むように、
何処か怪しく揺らめく紅がそこにある。
「────"有名人"の妹が、どういう人か気になるのは普通じゃない?」
なんて、敢えて"ありきたり"な台詞選び。
■伊都波 悠薇 >
「あ、いえ。その、驚いてしまったので」
つい、と、前髪を整えて視線を隠す。
椅子を静かに戻して、ジンジャーエールを一口。
近寄ってきても、今度は避けない。
「あ、はい。その、運動は得意というわけじゃないんですが、スポーツに興味があって」
辛口のジンジャーエールは、すっきりしていて、生姜のピリ辛さが好きだ。
「あ、えと、恥ずかしいので、ジャコウさん、で」
頬を指でかきながら、動画を止めて端末をしまう。
「……どうでしょう。気にも止めない方も多いような気もします」
実際、妹がいると知って率先と絡んできたのは目の前の人物と。
あとは、数少ない、『悪い人』、たちだったりだ。
■麝香 廬山 >
「……驚いたら君あんな声出るの?へぇ……」
え、なんか驚かせたくなってきちゃったな。
もしかしてイタズラしがいのある子なのか。
じーっと彼女を見る姿にはある種の"いじめっ子オーラ"が垣間見える。
「スポーツね。いいんじゃない?そろそろスポーツの秋って言うしね。
ダンスなら僕も出来るし、今度教えてあげようか?バレエにブレイク、何でも出来るけど……へぇ?」
そう言われると少し恥ずかしがらせたくなる。
おもむろに前髪手を伸ばしてみよう。その幕を開けるために。
「ふふ、そうかもね。"如何にも"目立たないモン。君。
けど、だから興味があるんだよね。君のこと、お姉さんの事も、ね?」
■伊都波 悠薇 >
「え?」
指を前髪にかけられると、覗く左目。
「えぇと、なに、か?」
なにか、変わったことがあったろうかと不思議そうだ。
「あ、いえ。その、大丈夫、です。ひとりで、やれるスポーツ、なのが良かったので……」
一歩さがり、手から前髪を遠ざける。さらりと戻り、手直し。
「興味、ですか? えっと」
かつての、悪友に似ているなと思う。
しかして、興味、と言われると心当たりがないから首をかしげた。
■麝香 廬山 >
前髪の奥の瞳を覗く。
成る程、と独り言ちふ、と口元を緩めた。
「いーや?思ったよりも綺麗な目をしてるかな、て。
"あの"伊都波凛霞の妹にしては面白いほど"真逆"だな、と」
前髪をなぞっていた指先が、ゆるりとその左目を指差す。
「活発な姉と比べて、控えめな妹。目立つ姉に、目立たない妹。
人が当たりが良い姉と比べて、人見知りの妹……面白いね、君達」
「まるで、運命のイタズラだな。鏡合わせどころか、影踏み遊びみたい」
パン、と軽く手を合わせる。
するりと僅かに開いた手からは、見事にねじ巻くゼンマイが数本顔を出す。
「でも、そんな影でもお姉ちゃんは愛しいみたいだ。
仲がいいんだなって。不思議じゃない?考えてもみなよ。
僕が同じ立場なら、何時も足元を付いて離れない影なんて、気持ち悪いと思っちゃう」
ぐ、と握り込めばくしゃりとゼンマイはしおれていく。
「……君は、どう思う?」
■伊都波 悠薇 >
「すごいですね」
純粋に、目の前の人物に驚嘆する。
調べもそう、そこからの考察も。
的を得ている。
毛嫌いや、負の感情は抱いていないようだった。
「……はい。変、ですよね」
自覚はある。ある意味で歪んでいるとも思う。
そして、手品を披露されると一拍置いて。
ぱちぱちと、拍手。
「どう、思うと言われると……
ーー姉に恵まれたなって、思います」
有りがたいことであり、また。
自分の一番の、自慢だ。
■麝香 廬山 >
しなびたゼンマイが、霞がかっていく。
白いモヤに包まれて、その姿も朧気だ。
笑みを崩さないまま、それら全てを手のひらが飲み込む。
「作為的な位にはね。全てが真逆の双子……
っていうのもいなくはないだろうけど、違和感を感じるだよね」
ぐっ。ペキリと手中で嫌な音が聞こえた。
「ふふ、姉思いじゃないか。
でも、どう?邪魔だと思ったことはない?」
どろりと言葉が、耳朶に絡みつく。
「兄弟、姉妹、双子……僕は此れを、ある種の呪いだと思っている。
同じ能力値に生まれたならいいだろうけど、片方が優れて片方が影に隠れる。
……なーんか不平等だ。それも全部、"二人分"片方にあったらって思うと……」
普通の人間ならば、意識せずとも心底に宿すはずだ。
どろりと、人間誰もしも持ち得る"負の感情"を。
揺らめく紅は見る。視る。その前髪の更に奥を、見据えようとしている。
「……ね、君はどう?」
ゆるりと開いた手のひらに霞はなく、
艷やかで逞しいゼンマイが、反り立っている。
■伊都波 悠薇 >
「ないですよ?」
負の感情を、『姉』に向けたことはない。
「自分のちからなさを、嘆くときは多々ありますけれど。姉だったらな、と。
でも、姉の『せい』、とは一度も思ったことはないです」
言い切った。淀みなく。
そこには嘘はない。
「自分のちからなさをどうにかしようと、努力をしている最中ですし。姉がいなければ、なんて思ったことは、ない、ですね」
変かな? なんて、首をかしげた。
■麝香 廬山 >
ふぅ、と気の抜けたように息を吐いた。
やれやれと仰々しく両手を広げれば、もうそこには何も無い。
「変とは思わないよ。美しい姉妹愛だと思っただけさ。
そうだね。さぞかしお姉さんも、君の事を溺愛しているんだろうな、とはね」
そう、おかしいとは思わない。
但し、ある種の歪さは感じる。
「ああ、ごめんね?ヘンな事聞いちゃってさ。
君のお姉さんにボク、嫌われちゃってるみたいだから、
ちょっと妹である君に色々聞きたいなぁ、と思って、ついね」
「どう?お姉さんと仲直りする方法とか知らない?
近しい妹の君なら、"妙案"位思いつくかと思って、ね?」
■伊都波 悠薇 >
「ありがとうございます」
お礼をひとつ。
そして、ジンジャーエールを呑みきり。
ゼンマイはどこに行ったんだろうなと思いながら。
「え、姉に嫌われてるんですか」
こんなに話しやすいのに、と思いながらも仲直りと言われると。
「甘いものが好きですよ。差し入れすると喜ぶかもしれません」
あれ、この前もこんなやり取りを誰かとした気がする。
「からかわれるのは、慣れてないから過剰なのはよくないかも、ですね」
自分は平気だが、もしかしたらこんなやり取りも姉は嫌うかもなと思った。
■麝香 廬山 >
「苦手意識は少なくとも持たれてるかな。
ふふ、だって彼女。叩けばいい音なりそうだし?」
なんて悪びれることなく言ってのけた。
浮かべる笑みの裏側、隠しもしない悪意がそこにはある。
「甘いもの……ねぇ、例えば此れくらい?」
す、と人差し指で空をなぞる。
その先には彼女のジンジャーエール。
見た目こそ変わりはしないが、味の"境界線"を少しいじった。
するとあら不思議。あれだけ生姜の辛みが聞いていた極上のジンジャーが、
蜂蜜と砂糖をぶちまけたが如く噎せ返るほどのドロ甘い炭酸水に変わってしまうのだ。
■伊都波 悠薇 >
「そういうのは慣れてないと思いますから」
ジンジャーエールを飲み干そうとした途中に変えられると、突然の甘さについ、むせてしまった。
「こほ、っこほっ。えと、まぁ、はい」
なんだか、こういうイタズラをしたがる人なんだろうかと認識する。
ーー好きな人につい、やっちゃう系の人みたいだ。
「……こほん」
ご馳走さまと、呑みきり手を合わせて。
「そろそろ、戻りますね。季節限定のスイーツとかいいと思いますよ」
それだけ、告げて。
『気にせず』。
その場を後にした。
ご案内:「委員会総合庁舎 カフェ」から伊都波 悠薇さんが去りました。
■麝香 廬山 >
「ハハ、どうも。……"またね"」
去りゆく少女の背中に、ひらりと手を振った。
「まるで"気にしてなかったな"。不自然なくらいに。
……中々面白そうな子だと思うし……そっか……」
「アレが伊都波凛霞の"泣き所"、ね……。
……ダメだよお姉ちゃん。可愛い妹なら、手元に置いとかないと……」
「じゃないと──────……」
口元を手で覆い、一人囁く。
か細い声音は、誰にも聞こえない。
一人楽しげに笑うとともに、静かに廬山もその場を去っていった。
ご案内:「委員会総合庁舎 カフェ」から麝香 廬山さんが去りました。