2024/12/06 のログ
ご案内:「委員会総合庁舎 カフェ」に橘壱さんが現れました。
ご案内:「委員会総合庁舎 カフェ」に鶴博 波都さんが現れました。
■橘壱 >
常世学園 委員会総合本庁 カフェ。
昼下がりのある日、一番奥の席で額を抑える少年が一人。
こっち側には、久しく帰ってなかったがやむなく帰る形になってしまった。
「まさか、限界稼働突破なんてなぁ……」
とても心地の良い場所だった。
自由に Fluegelを動かし続けれる場所だ。
無我夢中だったが、休んでいないわけではなかったが、
まさか先に音を上げるのが機体の方だとは自分でも予想外だ。
別に量産機で出ても構わないのだが、此れを機に人員交代。
要するに、"休め"と言われてしまった。
「まぁ、仕方ない。メンテが終わるまで我慢我慢っと」
やることは学生本分、まだまだいっぱいだ。
タブレット端末を広げつつ、手元のチョコレートモカを一口含んだ。
濃厚な甘さが癖になる。ホロ光を乱反射する碧は、自然と険しくなった。
「ついに、か……」
とあるニュースサイトの一文を見て、呟いた。
■鶴博 波都 >
汚染区域での過密な勤務が一息付けど、鶴博波都の多忙は終わらなかった。
年末年始の通常業務をこなして一息ついた、先日のこと。
鶴博波都は、とある不法入島者を鉄道委員として逮捕する事となった。
厳密に言えば逮捕権の無い場所での出頭に応じ、最寄りの風紀委員署まで護送した形だ。
「──あ、壱さん。奇遇ですね。」
諸々の引継ぎ作業や事情聴取等々のために総合庁舎と出向き、丁度一息ついた頃合い。
引継ぎと聴取でカフェに立ち寄ってみれば、見知った顔が居る。
「元気そうで何よりです。相席、大丈夫ですか?」
■橘壱 >
いよいよとは思った。
大事を起こしたが凶悪さはなくも、
何時までも野放しにされるはずもない。
「むしろ自分から、か……なんだから、"らしい"な」
最後まで自分で決めていたのか、潮時を感じていたのか。
何にせよ、関わった自分としては少し複雑な気分だ。
ふぅ、と溜息を吐いてはチョコレートモカを一口、甘さで気を紛らわす。
「ん、波都先輩。どうも。もう前線はいいんですか?」
ふと声をかけられて振り返れば、見知った先輩。
静かにはにかみ笑顔を浮かべれば、軽く会釈。
「どうぞ、僕で良ければ座ってください。
……にしてもこういうの、お手柄、っていうのも何かヘンか……」
■鶴博 波都 >
「後方は安定してきましたから。」
封鎖は恙なく維持されており、目立った動きもない。
補給線も安定し、道中の安全も確保されている。
安全性が高まれば対応可能な人員も増える。
ゆえに、ある程度のローテーションを以って活動出来る様になる。
属人的な連続勤務の必要もなくなった頃合いだ。
「ありがとうございます。
わたしはあの人を、行き先まで運んだだけかもしれません。
もちろん、私の責任で決断はしましたけど……。」
エスプレッソの小さなカップを片手に着席。
どう表現すべき分からないような、困り具合が伺える苦笑を浮かべる。
■橘壱 >
「それは良かった。先輩働き過ぎだし、そうやって休んで貰わないと。
別に鉄道だからって、そっちまで徹底的しなくてもいいんですからね」
機械だってメンテが必要なのに、人間なら尚の事。
そうは言っているが、誰かがやった感はある。
全く、と呆れ気味に成りながらも肩を竦める。
「……いいんじゃないですか?
多分、"アイツ"が自分から選んだでしょ、先輩を」
実際に現場を見たわけじゃない。
ただ、アイツならそうするという判断だ。
ニュース記事から目を逸らし、碧の双眸が彼女を見やる。
「めぐり合わせってのもあるだろうけれど、
欲を言えば、僕がやりたかったのはあるよ。
個人的に、色々と出会った事があったからね」
「こういうのは良くないけど、恩義を感じてた。
ある種の尊敬と、友情に近いものも感じていた。
自惚れかも知れないけど、だからこそ僕がやりたかった気持ちはある」
風紀委員の身で言うことはないが、
あのおちゃらけた隣人から学ぶことも多かった。
一時期は情けない状態になったが、学ぶべきモノ、目指すべき道も定まった。
テーブルに膝を置き、手を組むのは複雑な心境の現れだ。
「アイツ、最後に何か言ってました?」
■鶴博 波都 >
「ちょっと懲りましたから、大丈夫です。無理をする理由もなくなったのもありますけれど──。
壱さんは……今ここにちゃんと帰ってきているから、大丈夫ですね。」
実際には機体が先に音を上げた事を知らない彼女は、
自己管理の下で帰投・休憩している──そう判断したらしい。
「そうです。なんだかんだで──私を選んで貰ったんだと思います。」
視線が向けば、内心を誤魔化すように。
愛想笑いをひとつ浮かべる。
「やりたかった──壱さん。あの人と、お知り合いだったんですか?
何があったのかは分かりませんけれど……尊敬や友情となると、結構深い仲ですよね。」
推察が及ばず、理解できないような困惑の声。
風紀委員と不法入島者。恩義や友情・尊敬の感情。
その上での、逮捕をしたかった欲求。
「……やっぱり、逮捕しようとしてもできない『実力者』だったんですか?」
会話はすれど、するりと逃げ延びられるような間柄だったのだろうか。
一番無難な線を思い浮かべ、尋ねる。
……最近は、困り顔ばかり浮かべている気がする。
「『考えててくれ。自分のことも、ボクのことも』とは言ってましたけれど──
壱さんには、特に。お知り合いさんなことを、はじめて知ったぐらいです。」
■橘壱 >
す、と差し出したのは盛り付けられたクッキー。
茶菓子として一緒に頼んだチョコレートクッキー。
飲み物といい、甘い物づくしの甘党だ。
「どうぞ、一緒に食べましょう。……まさか、僕は機体がダメになったから此処にいるんですよ。
まぁ、先輩ほどじゃないですけど、そういう引き際は弁えているつもりです。
もし、あれ以上続けるなら僕が無理矢理こっち側に連行してますけどね」
なんて、冗談か本気かわからない言い方だった。
勿論どちらかと言えば本気。流石に徹夜し続けるのは擁護出来ない。
「"選んでもらった"……本当にそうかな?
アイツのことだ。キミを選んだのも何か、見出したんじゃないかな」
鶴博波都という鉄道委員会に惹かれるものがあった。
多分、誰でも良かったなんていうタマじゃないはずだ。
ぐ、とチョコレートモカを飲み干せばタブレット端末に指を滑らす。
ニュースサイトの記事から、愛機の整備状況、作戦準備画面。
「それが何か、はわかんないけど……そういう言い方、思い当たる節でもあるんじゃない?」
山勘だ。ふ、と微笑むと首を振った。
「深い仲、だったらいいけどどうかな?
僕もアイツの事は知らないことのが多いよ。
そう勝手に感じているのは僕だけだからさ」
「"実力者"ではある。けど、アイツにだって負ける気はない。
それに僕はどっちかって言うと……そうだな。結果的に見逃してしまった。
思えば、それっきりだったな。もしかしたら、すれ違う事も会ったかも知れないけれど……」
風紀委員としては失格だ。
人としてある種の温情として義理を感じてしまった。
だからこそ、二度目はないつもりだが、巡ってはこなかった。それだけ。
「……成る程、ね。うん、僕も思うよ。
特に波都先輩は、もっと自分のことを考えるべきだと思う」
■鶴博 波都 >
「まるで、機体がダメになっただけじゃ引き際じゃない、みたいな──。
あの子達、耐久麺では人間よりより先に音を上げる設計じゃなかったと思うんですけれど──
──壱さんの伴侶になる人は、大変そうですね。」
貸与する時に調べた限り、相当丈夫に作られていた記憶がある。
〝あらゆる環境下において生命が生存できるように。〟
その思想のもと、耐久性全般は重視されて作られている。
そう設計されたものの『限界』が先に来ると言うことは、相当なはず。
AFの性能と橘壱の実力を知っているが故に、冗談のような事実にはどうしても苦笑してしまう。
「貰った理由がない、とまでは思わないです。
でも──何を、見出したんでしょう。たしかにきぬさら線の怪異で出会って、
色々話して──そのあとで車掌としての務めを果たして──一度、現実に送り届けましたけれど……。」
夢と怪異が混じったような、噂話を起こりとする奇妙な一件。
出会ったのは『そこ』での一度きり。
「二度目も見逃されたら、なにも返せないとも言ってました。」
だから、見出してくれたとすれば『ここ』での振舞いと結果。
『二度目』はひとつの理由だと思うけれど、それだけじゃないとは思う。
「……その『一度』で、色々と有ったんですね。
あの音楽家さんは──確かに、印象深い方でしたけど───」
自分の知らない生き方をするもの。
自我と欲求、飢え。欲と音楽に生きるもの。
自身のことを、そう語っていたことを思い返す。
そうして、考えてみると──。
「わたしのこととしては、そうではありませんけれど──
──壱さんも、自我と欲求――餓えが源泉だったり、しますか──?」
どことなく、似ている所がある気がする。
その感想を、質問として口に出してしまう。
■橘壱 >
軽くチョコレートクッキーを齧り、舌で味を堪能する。
「……前提として僕は、アイツの事をよく知らない。
お騒がせもの、悪童、ろくでなしの音楽家……。
アイツを例える言葉は色々あるけど、顔も知らない隣人全部そうでそうじゃないかも知れない」
ただ、それを得たいの知れないとは言わない。
多分あの掴みどころの無さはきっとアイツの性分だと思ってる。
未だ困惑しているような彼女を見て、ずいっとクッキーを差し出す。
口元に見事にクッキーダイブ!
「だからじゃない?
貸し借りはしないって感じだろうし、
アイツ自身もそういうケジメ?みたいなのはあったと思う」
「自分の立場を理解しているから、
委員会に見逃されたっていうのは、
アイツにとっては生かされてるみたいな感じだったのかもしれない」
飽く迄憶測、だけどね。
と、付け足せばおかわり分のモカが運ばれる。
この甘党、まだ糖分摂取する気だ。
「……それを踏まえた上で、
波都先輩に見出すものがあったんじゃないかな?
どういう関係かは知らないけど、多分アイツはそういう奴だからさ」
そのお眼鏡に叶う"何か"があったのかも知れない。
少なくとも橘壱の中の隣人はそうだった。
二杯目も口に含めば、カップを置いて彼女を見やる。
何時ものような笑みのまま、口を開いた。
「答えるのは簡単だけど、先に知りたいな。
僕はアイツみたく、言葉遊びが得意じゃない。
だから、単刀直入に聞きたいんだ。波都先輩は、こう……」
「どうして自分のことをそこまで考えない、とかさ」
幸福になってはいけない脅迫概念。
ストレートな言葉と視線が、彼女に向けられる。