2025/01/29 のログ
ご案内:「委員会総合庁舎 バー「御諸山」」に麝香 廬山さんが現れました。
ご案内:「委員会総合庁舎 バー「御諸山」」に伊都波 凛霞さんが現れました。
麝香 廬山 >  
バー「御諸山(みもろやま)
委員会本庁に設備されたバー。委員会にもそういった嗜みを持つものもいる。
娯楽は如何なるヒトにも必要なものだ。心の洗浄、淀みの開放。
仄暗くシックなBGMが良い雰囲気を醸し出している。
そんなバーの一角、奥の個室に廬山はグラスを揺らしていた。

「常渋のもっと派手なバーでも良かったけどねぇ……」

流石にそれは"お利口さん"には敷居が高いかもしれない。
赤黒い液体は柑橘系のカクテルだ。ほんのり香る、アルコールの香り。
程よい柑橘の匂いを楽しみながら、待ち人を待っていた。

伊都波 凛霞 >  
そして待ち人は現れる。
バーには少し相応しくない制服姿に腕章は、この場に遊びに来たわけではないという主張にも見える。

「今晩は」

挨拶は簡潔に。
個室のドアを叩き、現れた少女の表情は僅かに固い。
それもそのはず。仲の良い知人から誘われた、というわけでもないのだから。

あまり馴染みのない空間と、漂うアルコールの香り。
そして自分を待つ青年に、居心地の悪さを感じながら踏み入った。

麝香 廬山 >  
そんな居心地の悪さ、堅苦しさとは真反対に廬山は微笑む。

「やぁ、こんばんは。もしかして仕事帰り?
 それとも、ボクと飲む気はないって奴かな?」

ある程度予想通りの風体に雰囲気。
一応呼出す時は『個人的な』と付け加えたはずだが、仕方ない。
自分との関係性を鑑みれば、そうもなろう。
薄暗い室内には、向き合う形の机とテーブル。実に簡素な作りだった。

「そう畏まらなくてもいいよ……って、ボクに言われてもかい?
 キミ、ボクの事嫌いだもんね。それでも呼び出されたら律儀というか……」

「ま、座りなよ。ボクの奢りだし、何でも頼んで良いよ?
 甘いおつまみもあるし、ノンアルコールもあるしね」

カラン、グラスを鳴らし小首を傾げた。

伊都波 凛霞 >  
「どちらにしても未成年ですから」

淡々とした返し。
服装含め、個人的に誘われる謂れもない相手、当然の対応だ。

「別に、貴方の何もかもを知っているわけじゃないですから、嫌い、とかは」

苦手なタイプではあるし、言動に許せない部分も、ある。
それでも『誰かを嫌う』というのは、少女自身が好まない感情でもあった。
だから、促されれば席にも座る。

「…夕飯は家でとりますから。 何か、話があって呼んだんじゃないんですか?」

フランクに注文を勧めてくる青年に怪訝な顔。
こういうお店にはあまり馴染みがない。ノンアルコールもある、と言われてもよくわからなかった。

こんなところに呼び出して、一体どういうつもりなのか……、

麝香 廬山 >  
「そう言うのを"嫌い"って言うんじゃない?
 ヒトを嫌うのに全てを知る必要は無いしね。
 『その耳が弟に似ている』『アイツは不潔だからイヤだ』」

「……そんなモンだよ。キミだってボクにそう思うだろう?
 皆みたいに、キミの事を持て囃したりするワケもなく、淡々と突きつけるボクがね」

それも無遠慮に、悪意を以て、だ。
善意に満ちた少女にはあまりにも鋭い言葉の刃。
無論廬山は"わざと"そういったモノを選んでいる。その方が楽しいからだ。

「ま、何でもいいさ。
 呼び出したのは簡単な事。この前は意地悪してごめんね?」

形なりにも謝罪を一つ。
軽く揺らすグラスを口に含む、刺すような柑橘類の刺激。

「だからお詫び、ってワケじゃないけどさ。その後切ちゃんとはどう?
 切ちゃん考えるの苦手って言うかさ、あんな性格なのに立場に甘んじちゃったりするからね~」

「色々とケツは叩いておいたけど、少しは進展があったんじゃないかい?
 キミの監視員としてのメンツも多少なりとも保てるモノ……とは思うけどさ」

どうだった?と楽しげに尋ねる。

伊都波 凛霞 >  
ひしひしと感じる、悪意のある言葉。
それは少女が何よりも苦手とするものだ。
風紀委員として退治する様々な事件。それらには、悪意が介在しないものも存在する。
そういった、悲劇とも言える事件には当然のようにして、少女は手を差し伸べてきた。
それを揶揄されることにも慣れていたし、偽善と呼ばれても構わない心積りでもいる。
けれどこの青年は───。

…僅か、双眸を細める。

「………」

とどいたのは、謝罪の言葉だった。
それは当然、意外であったけれど──でも、それより。
その後に楽しげに彼が綴った言葉なんか、どうでもいい言葉にしか聞こえなかった。

「どうして、謝るんです?」

まずはそれを、問い返した。

麝香 廬山 >  
素直に受け取ってはくれないか。
此れが自分でなければ受け取っていただろう、と考えると笑えてくる。
微笑みを絶やすことはなく心外だな、と肩を竦める。

「やりすぎたと思ったら謝るモノじゃないのかい?
 まぁ、ボク自身嘘を吐いた覚えもない。キミは風紀委員としての不足が多すぎる」

「……と、言ってもまだまだ未成年(子ども)だもんね。
 幾ら武術の達人と言っても、子どもに問いかけるには重荷ではあったかな?とね」

目前の悪意を、脅威を摘み取る"覚悟"。
時としてそれは生命を奪う行為になり得るものだ。
それは現実にも往々にして起こり得るものであるが、此処は学園都市。
別に未成年が公僕になっていることなど珍しくもない。
それを思い返せば、必然だ。廬山の言葉に嘘はない。

「それにキミ……正確には"キミ達"姉妹に興味が出てきた、からかな。
 仲良くしたいとは言わないけどね。言ったろ?お詫びってほどじゃないけど、橋渡しはしたって」

「そんなに不服かい?ボクから謝るのは。
 勿論気を使わなくて良い。本音で言ってごらん」

なんて、わざと物憂げに言うのはおどけてもいるのかもしれない。

伊都波 凛霞 >  
「………」

「指摘は、正しい指摘として受け取ってます。…やり方に問題がなかったとは思いませんが。
 私が風紀委員、刑事課の人間として未熟だっていうことも、ちゃんと理解していますけど」

やりすぎた?

「……あれをやりすぎた、と思えるのなら、
 次からは行動に映す前に考えてからを、お勧めします」

後で謝罪なんかをするくらいなら。
……それも、本当にやりすぎたと思って謝罪しているのならの話だけれど。

姉妹に興味。
その言葉が紡がれれば、露骨に少女は雰囲気を強張らせた。

「ケツを叩いた? 監視員としてのメンツ…?
 頼んでもいないことを、恩着せがましく言わないでください。
 貴方からのお詫びなんて、必要ありません」

それは、きっぱりと。
毅然とした態度で言い放った。
視線は真っ直ぐ、楽しげな思念へ向けて。

「それから───」

「悠薇には、近づかないで」

より強く、その言葉は向けられる。

麝香 廬山 >  
劈くような物言いだった。
それは正しく──────……。

「取り繕ったねぇ、やっぱり嫌いな人間に対する物言いじゃないかな?それ。
 でも、そうか。成る程。"アレ"がキミにも効力を齎すなら、ある意味納得だな」

悠薇ちゃんが、ボクを面白いと評する理由としてはね

そう、正しく嫌いな相手への態度。
苦手なんてやんわりと言わずに素直に言ってしまえばいいのに。
或いはそういう感情もわからないほどなのか。だとしたら滑稽だ。
くつくつと喉を鳴らして笑い、言い放つその言葉は既にお近づきになっている証だった。

「"恩着せがましく"……ねぇ。
 此れがもしキミが好むご友人から根回しなら、そんな言葉は出てこないな。
 キミこそ、あんまり思い上がらない方が良い。恩を着せるなんて、とんでもない」

「そっちのが楽しいと思ったからしただけさ」

どう感じるかは彼女次第だ。
その上でただ、廬山自身が面白いと思った道を選んだだけ。
その結果どうだ。あの天真爛漫な少女から見れない嫌悪に満ちた表情。
ある意味独占席だな。それを肴に、アルコールを軽く流し込んだ。

「それとも、持て囃される事しか知らない"超人お姉ちゃん"には、
 ボクみたいにハッキリと物申すヒトもいなかったから慣れてないのかな?」

伊都波 凛霞 >  
「……?」

これまでヘンに言葉も濁さず、はっきりと物事を口にしていた青年が
『アレ』などと浮いた言葉を口にする違和感。
──彼が何を見て、アレなどと口にしているのか…。

「面白い……、ヘン、なら納得ですけど。
 後、返事になってませんよ。悠薇には近づかないで下さい。二度と」

改めて、そう提言する。

「そうですね。私の交友関係にある人達は『楽しいと思ったから』なんて軽薄な理由だけで
 他人のことに踏み込むようなガサツなことはしませんから」

まっすぐに見る、強い視線。
沸々と湧いてきていた、嫌な感情。
これが嫌悪感だと理解すれば、それは──鳴りを潜めてゆく。
それを、彼が愉しんでいることが明白だったから。

「いいえ」

「厳しい言葉も、ハッキリと私の悪いところを言ってくれる人もいます」

「貴方のように、楽しんでそれを言う人がいないだけです。
 私の周りの素晴らしい人達を、見損なわないで下さい」

麝香 廬山 >  
苦笑。やれやれと言わんばかりに肩を竦める。

「まさか。見損なうとしたらキミ自身だよ。
 キミの交友関係に興味はないよ、"お姉ちゃん"」

太鼓持ちは処世術だ。それをどうこう言う気はない。
批判すべきは、裸の王様だ。激情で視野が狭くなったのか。
アレで他人を批判するように聞こえたら、いよいよ以て責任転嫁だな。

「それは趣味の違いさ。"悪趣味"なのは理解してるよ。
 理解を得ようとも思っていないさ。……それを理解した上で自制するヒト」

「そして、そうでない人種。ボクは後者なだけさ」

故に、首輪を付けられた。
得てして犯罪者となる人間には悦楽を自制しないものも珍しくはない。
何故監視対象になったのか、その片鱗がひしひしと伝わってくる。
強い視線さえも涼しく受け止めて、決して笑みは絶やさない。

「ハハ、面白いね。妹思いのキミが、
 妹自身の感情を無視してそんな事を言うなんてさ」

「……いや、自分の信奉者(いもうと)の扱いとしては妥当かもね」

手に持ったグラスの液体は既に半分。
それを溢れないギリギリの形で、軽く傾けた。

伊都波 凛霞 >  
──小さく溜息を吐く。

自分勝手な捻くれた理解と言及。
真っ直ぐな光もレンズを通せば屈折する。ニュアンスを無視すれば、事実は受け取る側にだけ在る。
あとはそれを好きに解釈するだけの、簡単なこと。
……わかってはいても、辟易する。

「だとしたら、どうしてわざわざ私を此処へ?
 …わざわざ人を呼びつけてまでする話とは思えないんですけど…」

自分の行動原理を悪趣味だと自称する青年。
理解を求めず、自制を嗤う。
開き直り、じゃなく、自然体。
治るものか、治らないものか──それは制約を与えなければわからないこともある。
彼は──どちらなのか。

「何も面白いことなんかないです。笑えるようなことも。
 例え狂言回しだったとしても、自分の妹を危険な目に遭わせようなんて人を、
 大事な家族に近寄らせられるわけがない…」

──こんなことを言ったって、彼は自分が解釈したいようにするだけなのは明白。
ますます、なぜ自分がわざわざ呼ばれたのかがわからない。

「──もう、いいですか?帰らせてもらっても」

そう言付け、席を立とうと───。