2026/02/06 のログ
ご案内:「委員会総合庁舎 休憩室・仮眠室・喫煙室」に青霧在さんが現れました。
若い担当医師 > 「最短三日と言ったのは私だが……本当に三日で退院するとは、普通思わないだろう……?」
青霧在 > 今朝、病室を出る間際のことを思い出す。
担当医師の呆れが透けた言動と、それを苦笑いで宥める看護師の掛け合い。
そしてこちらに何か言いたげな別の看護師。
今なら、あの態度も理解出来る。

……というよりかは、身を以て理解した。

「クソっ……」

休憩室の隅、一人で苦悶の声が漏れる。
身体の各所が軋むように痛むのだ。
全身に巻かれた包帯が、込められた魔力を強く発しているのを感じる。
身体の内が溶岩のように熱くなり、逆に末端は凍えるように冷たい。
強い空腹に似た感覚と、胃袋を殴られるような感覚が同時に襲い来る。

椅子に座っているのすら苦しい状況。
座ったまま前屈みになり、肩肘をテーブルについて体を支える。
もう片方の手は腹部に添えておく。特に意味はないだろうが、気休めだ。

青霧在 > 意識不明の一日と、入院期間の三日で計四日。
計四日、穴を開けた。
この四日が全て休暇であったなら良いのだが、全くもってそんなことはなく。
その間、当然ながら職務を放棄したも同然の状態。
医師にデスクワークまで禁じられていたということもあり、一切何も出来ない状況が四日。

多方面に迷惑をかけた事実から目を逸らすなど言語道断。
ただでさえ、あの場であの怪人(カタストロア)の無力化に失敗して迷惑をかけたのだ。
一日でも早く退院し、いち早く職務に復帰しなくてはならない。
それに、明日には外せない私用もある。
そう考えると、退院のタイミングは今日しかなかった。

―――その考えが間違いであると思わされる程の苦しみを味わうことになるとは、思っていなかった訳だ。

「自業……自得かっ……」

今日中に済ませておきたい職務は済ませた。
全てを済ませた訳ではないが、急ぎの案件は片付けた。
だから、今からどれだけ苦しもうが問題はない。
問題は、無いが。

(この痛みは……熱は……どれくらいで収まる……?)

入院も、時期尚早な退院も自業自得。
誰かに頼って更に迷惑をかける訳にもいかない。
なるべく落ち着いたタイミングで自宅か本庁の執務室(人目につきにくい場所)に移動し、休まなければ。

全身から噴き出した汗が、包帯を濡らして制服の内をぐっしょりと濡らしていく。
テーブルの上の掌は気づかぬうちに強く握られている。

ご案内:「委員会総合庁舎 休憩室・仮眠室・喫煙室」に大神 璃士さんが現れました。
大神 璃士 >  
ゆらり、と休憩室に入って来る一つの人影。
風紀委員の制服の上に黒いレザージャケットを着込んだ青年であった。
だが、その右手はレザージャケットの袖に通ってはおらず、捲り上げられた制服の袖から先は
包帯がぐるぐる巻きになっている。

(……何とか、傷も塞がって来たが。
もう数日は、カモフラージュに巻いて置いた方がいいか。)

先日の甲種不明犯との戦闘で負った――といっても、正確には相手の拳を「返す」為に
結構な無茶をした反動であったのだが、兎も角右腕には随分と大きな怪我を負った。
それを見咎められて、普段は押し付けられがちな雑用や書類仕事を他に回され、
休んでいろと仕事場所から放り出され、結果辿り着いたのが此処だったのだが。

「……誰かいるのか。」

前屈みのまま椅子に腰掛ける相手を見つけ、思わずそんな声。
角度的に顔が見えない為、つい普段のぞんざいな口調が出てしまったのであった。

青霧在 > 「……!」

集中力も注意力も散漫な状況下、かけられた声に体が跳ねる。
そんな反応にすら微かな苦痛を感じつつ、声の主の方へと顔を向ける。

「大神……か」
「特別攻撃課の…青霧在だ」
「どうか、したか……?」

その先に居たのは、風紀委員会の一員、大神璃士。
過去同じ作戦に参加したこともある委員だ。
以前知人から人間嫌いだとも聞かされた記憶がある。

そして、俺が意識を失っている間にあの怪人と対面したとも聞かされている。

「邪魔だったか…?それならすぐに…移動しよう」

彼だってあの怪人に深手を負わされたようだ。
右腕に巻かれた包帯を見れば、ただならぬ傷であることは容易に想像がつく。
自分ばかりが苦しんでいる訳ではないのだ。

立ち上がり、その場を去ろうとする。
……が、立ち上がろうとしたところでふと力が抜け、前のめりに転びそうになる。
反射的に異能を発動したことで事なきを得たが、元の座ったままの姿勢へと逆戻りする結果となった。

大神 璃士 >  
「……青霧先輩だったか、失礼した。」

顔を起こした先客を見れば、見知った顔。
過去に「雑用」で特別攻撃課に臨時参加した時に一緒だった記憶がある。
ともあれ、年齢も学年も上の先輩だ。
少々無礼な物言いをしてしまった、と、どう取り繕うか考えた所で、相手が立ち上がり、
転びそうになる姿を目にする事になった。

よく見てみれば、顔が汗だくだ。
そういえば、と、少し記憶を探り、先日自身が戦闘となったあの暴威の主…カタストロアと呼称される
怪人に、大怪我を負わされて入院中だった筈、という事に行き付く。

「――退院許可は、出たのですか。」

事務的な声で訊ねつつ、座り込む青年に向けて歩を進める。
見ぬふりも出来たが、見てしまった以上は放置も出来ない。
相手は意識不明になる程の大怪我を負っていた筈の人物なのだ。
事情を訊く必要位はあるだろうか、と判断する。

青霧在 > 「気にしなくて、いい」

先輩後輩の立場はあるが、2人きりならば関係ない。
どうせこちらも丁寧な言葉遣いは不慣れだ。

それよりも

「……ああ」
「許可は、出ている」

察しが良い。この場合、良すぎると言うのが正確か。
どちらかというと、あまりにも自分が不調を隠せていないというのが正しいだろうか。
腹部に当てていた手をふと顔に添えると、じっとりと濡れていることに気付く。
これは、気付かれて当然だろう。

「退院したからと言って、油断は…禁物だな」
「少し張り切り過ぎたらしくてな……少し休憩すれば収まる筈だ」

分かっている、強がりだ。
今すぐ横になりたい。こんな硬くて冷たいテーブルではなく、せめて横に慣れる場所で―――

「……すまないが、仮眠室まで行くのを…手伝って貰えないか……?」

限界が近い。
ここで気を失ったりでもしたら、その方が迷惑になりかねない。
それならば、今助けを求めた方がマシだろう。

目の前の後輩に、情けなく弱弱しい声で助けを求めた。

大神 璃士 >  
「………。」

無言で歩みを進め、満身創痍という言葉がこの上なく合っている青年との距離を詰める。
傍目から見ても、張り切り過ぎた、という程度で済まされるような容体でない事は良く分かる。
退院の許可は取った、と返答は貰ったが、それがどれだけ無茶や無理をして取ったものなのやら。

「…………。」

思わず、小さく歯を鳴らしてしまう。
この青年の無茶と現状は、言ってしまえば自業自得だろう。
カタストロアと名乗る、あの歩く暴威と、自身も交戦したからこそ分かる。
あの暴威と交戦して、怪我の大小は問題にならない。
命がある事が一番の幸運だと、そう結論付けて良いレベルだ。

(……単純な暴力による脅威で言えば…奴は、あの「落第街の狂獣」にさえ、引けを取らないかも知れない。)

直接の交戦や遭遇こそないが、落第街における風紀委員のタブーの一つを思わず想起してしまう。
そんな相手と交戦し、命に係わるレベルの怪我を負わされたのだ。
そんな思考の間に、既に脂汗じみた汗を流しながら椅子に腰掛ける青年を
見下ろせる程の位置に来ている。

本人も言っている。仮眠室に連れていく。それだけでいい。
……だが、今の自分は風紀委員である。

「………何処が痛む。
場所次第だが、少しばかり痛みを誤魔化す程度の技術なら、ある。」

本当であれば保健委員辺りにでも通報するのが順当な案件だ。
実際、普通に考えればその程度でいいだろう。
だが、「風紀委員」という「人」の立場が、目の前の弱った青年を捨て置くような行動を
取る事を、躊躇わせる事になった。

青霧在 > 借りを作りたくない訳ではない。
しかし、誰かの手を煩わせたい訳ではない。

「頭以外、全部…だ」
「特に酷いのは……足と、この辺り、だな」

とはいえ、そんなことを言っている状況でもないだろう。
どうせ弱みを見せ頼ってしまった以上、無駄に堪えようとするだけ無駄だろう。

移動するのなら、足は自由にしておきたい。
次に、この形容しがたい苦痛に塗れた腹部も出来ればどうにかしたい。
胃袋と胃腸の間辺りを抑えながら伝える。

「迷惑をかけて……すまない……」

情けをかけられている。
否、かけさせている。
そんな自分を恥じた言葉が漏れた。

大神 璃士 >  
「――――他言は、無用だ。」

自身の扱う技術については、敢えて伏せている点も多い。
特に、「本当の異能」については風紀委員会では…否、通常の生徒としては知る事が基本的に
不可能なレベルで隠匿されている。
其処までは及ばずとも、一端を開示するのである。
他言無用と釘を刺して置く事を忘れずに、

「苦しいかもしれないが、軽く背を丸めておけ。
少し衝撃が来るだろうが、我慢しろ。」

立ち位置を変え、椅子に腰掛ける青年の背へと手を伸ばす。
位置としては、肩と腰の中間ほど。
腰を下ろしたままの青年が背中を丸めれば、其処に無事な左手を伸ばし、
背骨を軽く避ける形で人差し指から小指までを縦に並ぶように、指先を軽く押し付ける。

その指圧を受け容れれば、次の瞬間、添えられた指先が背中に突き刺さるような衝撃が来るだろう。
だが、来るのは衝撃のみ。不思議な事に、痛みはない。

青霧在 > 「…分かった。誰にも、話さない」

誰にでも隠し事の一つや二つ、あるものだ。
他言無用と言われて、言い広めるような真似はしない。


指示の通りに姿勢を変え、衝撃に備える。
衝撃程度で済むのであれば……安いものだ、本当に。

最早縋るような思いだ。
背中と椅子の背もたれの間に空間を空けてじっと待つ。

するとすぐ指が添えられ、衝撃が走る。
が、痛みはない。
妙な感覚だ。

「……おぉ」

次いで、痛みで満たされていた神経に別の感覚が満ちてゆく。
痛みが消えたとうより、言葉通り誤魔化しなのだろう。
上書きされたかのように痛みを感じなくなってゆく。
万全とまではいかないが、先ほどまでと比べて明らかに身体が軽くなる感覚に驚きの声が漏れた。

大神 璃士 >  
「呼吸は、ゆっくり、深くだ。
急に動こうとせず、少しずつ、慣れさせるように意識しろ。」

注意を与えながら、背中――点穴に圧し当てた指先から注意を逸らさない。
こちらも深呼吸を行いながら、ゆっくりと馴染ませるように、生命波動を指先を通して
座り込んだままの青年の経絡に向かうように流し込んでいく。

一度大怪我をして、其処から然程の時間も経っていない相手である。
一気に生命波動を流し込めば、今感じている以上の痛みが来る危険性があった。
だから、効果としては大きいものではないにせよ、違和感を与えないレベルの量を馴染ませるように
ゆっくりと流し込むのが最適な判断と結論した上での処置だ。

流れ込む「何か」を受け容れれば、痛みを訴える脚と胃腸部がやがてじわりと熱を持ってくるだろう。
それと引き換えに、少しずつ痛みが和らいでいくのが実感できるだろうか。
完全に消える訳ではない。生命力を流す事で、痛み…肉体が発する危険信号を和らげるレベルに
傷を負った部分を「埋めてやる」程度である。
即席で出来る処置はこの程度が限界だ。
それでも、痛みで動けない状態よりはマシである事に違いはないだろう。
同時に、軽い麻酔に近いような処置で痛みの方も誤魔化して置く。

「……保健委員には及ばない、応急処置も良い所だ。
それでも、さっきよりは動けるようになった筈だが、どうだ。」

過剰投与になり過ぎないよう、適度な所で指を離す。
少なくとも、歩くのに支障がない位には身体も言う事を聞くようになっただろうか。