2024/05/26 のログ
ご案内:「学生通り」に桜 緋彩さんが現れました。
桜 緋彩 >  
放課後の学生通り。
いつも賑わっている通りだが、今日の騒がしさはいつもとちょっと違う。
人が多いことに変わりはないが、通りの中心がぽっかりと空いている。
その空いたスペースの真ん中で、二人の学生が喧嘩をしているのだ。
――喧嘩と言うには少し過剰ではあるが。
なんせこの街の住人同士の喧嘩だ、地面はへこんでいるし、設置してあったベンチはバキバキにブッ壊れている。
片方は両手に風が渦巻いていて、もう片方は両の拳が光っている。
異能を使った喧嘩の派手さは、台風の後のような周囲の様子を見れば想像がつくだろう。

「お二人とも!! 人に異能を使うのは規則で禁止されておりますよ!!!」

そこへ割って入る一人の女子生徒。
赤い制服は風紀の証。
腰に二振りの刀、手に木刀を持った風紀委員は完全に温まっている二人の間にずかずかと入り込む。

「そもそもこんな街中で異能を使うものではございません!! 辺りがボロボロではないですか!!」

ずたぼろの周囲を手で示す。
しかし人目を気にせず異能を使ってまで喧嘩をしていた二人だ。
たった一人の風紀委員ごときに怯むこともない。
むしろ彼女を無視してお互いを攻撃する。
片方は風紀委員ごと巻き込む様に突風を起こし、もう片方は風紀委員ごと殴り飛ばそうと光る拳を振り上げて突撃する。

桜 緋彩 >  
どちらも巻き込まれればただでは済まない。
それを一瞥し、

「――ふん!」

手に持った木刀を、光る拳の男の横っ面へ叩き込む。
同時に反対側から迫る嵐を、十本ほどの不可視の剣閃がかき消した。
光る拳の男は反応しきれずに横合いに弾き飛ばされ、風を発射した男は何が起きたのかわからず立ち尽くす。

「人に異能を使うのは規則で禁止されていると、警告いたしましたが!?」

デカい声で叫び、つかつかと風の男へ歩いて近付く。
その声で我に返った男はもう一度風を発射するが、やはり木刀を横薙ぎに振ればさっきと同じように風が解かれる。
剣の間合いの一歩外で立ち止まり、木刀を突き付けて。

「これで三度目!! 次はございませんよ!!」

そこで最初に吹き飛ばされた男が瓦礫を吹き飛ばして立ち上がる。
光る拳を地面に叩き付ければ、小さなクレーターが出来た。
そのまま何事か叫びながら突撃し、

「いい加減になさい!!」

カウンターで木刀を喰らってまた吹き飛ばされた。

桜 緋彩 >  
吹き飛ばされた男は完全に伸びてしまっている。
彼女に追い付いた他の風紀委員が、その男を確保する。

「まだ暴れるのならば、本当に痛い目に遭うことになりますよ!?」

木刀を残った彼に突き付けて、強い口調で告げる。
男はしばらく葛藤していたが、やがて腕の風を解き、その場にへたり込んでしまった。
他の風紀委員がそれを確保し、連れて行く。

「――皆さま、大変遅くなり申し訳ありません! トラブル自体は何とか解消いたしましたが、一帯は荒れておりますので、どうかお気をつけてご通行くださいませ!!」

そして周囲の野次馬だった者たちに頭を下げ、交通整理を始める。

ご案内:「学生通り」にクロメさんが現れました。
クロメ > それは騒動が始まった頃から佇んでいた。
それは周りの混乱にも眉一つ動かさず、そこに居た。

そう、それはずっとそこにいた……はずである。
ただし、多くの人間には意識されていなかったやもしれない。

それは金色と蒼色の瞳で、二人の異能者の喧嘩を眺め……
また、風紀連行のきっかけとなった女生徒との騒動もただ眺めていた。

たとえ、その一人が吹き飛んだ先がそれのすぐ横であっても

「……派手なことだ」

もう既に事態は収束し、野次馬たちも交通整理され散り散りになる中。
ぼつり、と言葉をこぼし

やはりそれはそこに立っていた。

「……剣、か。
 解せぬ」

表情を変えることなく、ただ女生徒を眺めていた

桜 緋彩 >  
瓦礫撤去のための業者が来るまでの間、他の風紀委員が瓦礫をある程度片付けている。
その間自身は交通整理を行って。
業者が来たら、その同僚と交代。
交通整理はその同僚に任せて、

「――何か御用でしょうか?」

その少女の元へ歩み寄り、笑顔で声をかけた。
胸元に突き刺さる杭に一瞬視線をやるが、すぐに視線を彼女の顔に戻して。

クロメ > 「……気づいたか」

近づいてくる女生徒に冷たい瞳を向ける。
表情に揺らぎはなく、ただただ氷のように固まっている。

「用、か……
 そうだな。それなら、尋ねたい」

一回言葉を区切って、目線を辺りに巡らせる。

「さきほど人に異能を使うのは禁止、と言ったな?
 では、剣ならばよいのか?」

淡々と、言葉を紡ぐ。
そこには感情は何も含まれず、ただ事実を確認するかのような様子で。

「それと、だ。
 あれを吹き飛ばし、辺りを破壊したのもよいのか?」

じっと、眼を見ながら少女のようなそれは問いかけた。

桜 緋彩 >  
異能を使うなと言いつつ剣を使った事。
そしてあたりに被害を与えた事。

「なるほど、それは確かにもっともな疑問でございます」

確かに、さっきのやりとりだけを見れば、そう思われても仕方ないだろう。
なので深くうなずき、右手の人差し指を一本立てる。

「まず剣を使えばいいのか、という疑問に関してですが、正確にはいけません。剣だろうが異能だろうが、それ以外でも銃や拳など、人に危害を加えること全般が禁止でございます」

その上で、と前置き。

「我々は風紀委員は、有事の際、例えば今回のような争いの仲裁や規則違反者を捉える際など、そう言う手段を行使する権利を認められております。勿論止むを得ない場合のみ、且つその権利をむやみやたらと行使しないと言う前提ではありますが、そう言うことにしておかないと生徒の皆さまが平穏に生活する権利を守ることが出来ませんので、もし不公平だと感じておられるのであれば、どうかご容赦くださいとしかお答えできません、どうかご容赦くださいませ」

ここで一度ぺこりと頭を下げて。
頭を上げ、また右手を掲げて、今度は人差し指と中指を立てて。

「二つめの疑問に関してですが、これもまた先ほどと同じ理由で風紀委員に認められた権利でございます。勿論こう言った被害を出さないことが最善ではありますが、我々風紀委員がやむなしと判断した際には、こういった判断をする場合もございます。勿論出した被害に対しての救済制度もございますので、もし何かあなた様の財産が被害を受けた場合には、お近くの詰め所や風紀委員会本部までご相談くださいませ」

ここで少し顔を寄せ、内緒話をするようなポーズ。

「個人的な考えではありますが、ある程度派手にやって見せた方が相手の戦意を削ぐ場合が多く、結果的に被害が少なくなることが多いとは思っています。内緒ですよ?」

口の前で人差し指を立てて、ナイショダヨと。

クロメ > 「……ふむ」

思った以上に回答が返ってきた。
それらを噛み砕き、考える。

「危害自体が禁則……
 それを行使する特権……」

ぼそぼそと独り言のようにつぶやく

「……風紀委員。
 自警団の類か。」

なんとはなしに理解した範囲を口にする。
すっかり変わってしまったこの世であるが、一応そういうところは変わってはいない……のだろうか。

「不公平……いや。
 公平など考えれば、あれらは腕の一つも折るべきだろう。」

頭を下げる相手に返すのは否定。
そして、独特の価値観だった。
それらは無感情に、機械のように口にされる。

「保障か。私は不要だ。
 ……しかし、理解はした。」

それが知りたかったのは現世での理。
どこまでが許容され、どこまでが許されないのか。
今の応えは満足すべき内容であろう。

「戦意? であれば、初手で手の一つも取ったほうが早かったろう。
 首ではまずいか? いずれもその剣技ならば可能だろう?」

一度打ち据えられ、それでも向かっていった生徒の姿を思い出す。
初撃で砕けなければ意味もなかろう、と。

「……甘いことだ。」

一つ、口にし

「……いや、気にするな。
 話は参考になった。」

桜 緋彩 >  
「一つ訂正させていただくなら、自警団ではなく公的な警察組織でございますよ。ご理解いただけまして幸いです」

理解した、との言葉ににっこり笑顔。
結構いるのだ、風紀委員の行為に文句をつけてくる厄介な生徒たちは。
確かに一部の風紀委員がやり過ぎていることもあるのだが、ほとんどの風紀委員は出来るだけ色んな被害を出さずに事件を解決したいと思っている。
と思いたい。

「そう言う訳にもいきません。規則を破ったとは言え、彼らも我らが守るべき生徒です。見せしめではなく更生を望んでおりますので、余計な被害は抑えたいのです」

確かに違反者を片っ端から徹底的に潰していけば効率は良いだろう。
罪を犯すとそうなると言う見せしめにもなるかもしれない。
しかし恐怖で抑えつける方法はいつか大きな反発を呼ぶ。
被害は最小限、それが鉄則だ。

「ところで。あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか? それと学生証はお持ちです?」

右手を差し出し、身分証の提示を求める。

クロメ >  
「公的……そうか。」

特権というのであればそういうこともあるだろう。
納得である。

「更生……更生、か。
 できるなら、な」

可能であればそれは望ましいのだろう。
確かにそれは合理である。うまくいけばよい、のだが。
人は変われるともいえるし、変わってしまうとも言える。
……ただ、そこを考えるのはここにいる怪異ではないだろう。

「……私か?」

名前を問われ、一瞬考える。
名前……どう名乗ったものか。
無数にありすぎるそれ、を……しかし

「……クロメ。
 ガクセイショウとやらは、わからない」

なにしろ、気づけば此処に居た、のだ。
しばらくあちこちしているうちに、ヒトのたくさんいるところまでたどり着いたわけで……
どうやら昔と勝手が違うらしい、ということしかわかっていない。

桜 緋彩 >  
「なるほど、クロメどの――ふむ、学生証はお持ちでない、と」

顎に手を当て、しばし思案。
見た感じ人ではない。
それにここまでの一連の応答。

「クロメどの。もしかして最近になってこの街にいらしたのではございませんか?」

考えが至るのはやはりそこ。

「どこか別の世界からいらしたとか、最近になって人の形を取るようになったとか、はたまた昔封印されていて最近お目覚めになられたとか」

指を一本ずつ立てながら可能性を上げていく。
この街はそう言うのに事欠かない。

「もしそうであれば、まず生徒登録をしていただく必要があるのですが……」

クロメ >  
「セイトトウロク……へのふみた、か」

古来の習わしが未だに残っているということだろうか。
便利といえば便利なので当然なのかもしれないが。
それにしても

「……その問いに答える前に。
 名を聞こうか」

こちらは名乗った。
ならば、そちらも名を名乗るべきであろう、と。
眼の前の人外は言う。

桜 緋彩 >  
「への……?」

きょとん、とした顔。
とは言え多分戸籍とかそう言う内容の言葉なんだろうな、とぼんやりした理解。
多分。

「これは私としたことが、名前も名乗らずに大変失礼いたしました!! 桜 緋彩と申します! ここ常世学園に通う三年生で、風紀委員会に所属しております!! 以後よろしくお見知りおきを!!!」

直角に腰を曲げて謝罪の意を示す。
その後びし、と背を伸ばして自己紹介。
どちらもバチクソデカい声。
その後、右手を差し出して握手を求めて。

クロメ >  
「桜 緋彩、か」

名を知れば……いや、いい
一瞬湧いた考えを打ち消し。

差し出された手を一瞥した

「問に応えよう。
 私は確かに……先だって、この辺りに”現れた”。
 目覚めた、というのも近い。」

色々なことがあって、眠りについてから……気づいたら此処である。
眠りにつく前は、このあたりではなかったはず、なのだが。

ちなみに、手はスルーしている。

「応えはこれでいいか?
 セイトトウロク、も必要か?」

事務的、というような口ぶりで問を続けた。