2024/05/30 のログ
ご案内:「学生通り」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
世は事もなし、と言わずとも。
多くの事件も多くの騒乱も、突き詰めれば学園都市である常世学園の根幹を揺るがすには至らなかった。
それが風紀委員会の活動の賜物…とは思わない。無力では無いにせよ、一つの委員会が単独で事を為せる程、学園の暗部は浅くも無く、それでいてその闇が島を呑み込む程、島の防人達が手をこまねいていた訳でも無い。

「……などと、黄昏る様な年齢では無い筈だが…」

学年が一つ上がり、3年生となった風紀委員会の少年は学生通りに面したお気に入りのカフェで一息。
通りを行き来する生徒達を眺めながら、新聞を読んだり雑務を片付けたり。その合間に、砂糖を人より多少…少しばかり…やや……。
…まあ、どばどばと注ぎ込んだホットココアで脳に糖分を送り込む。

…そろそろ、ホットではなくアイスの季節かな、なんて。
一通り目を通した新聞を畳んで、ココアの匂いを纏った吐息を吐き出した。

神代理央 > 進級したからと言って、風紀委員としての仕事が大きく変わるかと言えば…そうであるとも言えるし、そうでは無いとも言える。
基本的な仕事は其の儘に、後進の育成……とどのつまりは、後輩を育てる、という仕事も2年生以上に腰を据えて行わなければならない。
正直に言えば、そういう仕事が向いているとは思わないし、自身の異能や魔術を鑑みれば前線に立つべきでは無いかとも思うし、立ち続けるつもりではいるのだが…。

「…かといって、そういう仕事を全くしない、という訳にもいかないしな…」

糖分の塊で喉を潤しつつ、思案顔。
実際、後輩と接する機会と言うのは多いようで…意外とそうでもない。
と言うより、自分の場合は先輩後輩ではなく、上司と部下、という関係性の付き合いの方が多い。それが健全な学生生活か?と問われれば…

「…まあ、健全な学生生活を送りたい、と思えばそもそも風紀委員会で前線希望などせぬか」

若干風紀委員会への風評被害めいた言い訳めいた独り言によって。
自らの学生生活の歪さを取り合えず棚に上げる事とした。

ご案内:「学生通り」に葉薊 証さんが現れました。
葉薊 証 > 「ハァ…ハァ…」

膝に両手をつき前かがみになって乱れた呼吸を整えようとする。
先日より体力づくりにとランニングを始めた。
ランニングなんて大したこと無いだろうなどと思っていたのだが、実際にやってみると平均以下の体躯には非常によく効く。
その結果が、激しく息切れし一歩も動くこともできない死に体である。

「思ったより…キツイ…!」

弱音を吐きつつ休める場所を探す。
酸素の足りない脳みそを絞り休めそうなところを探すと、視界にカフェの立て看板が映りこんだ。
フラフラの足でなんとかカフェの扉に手をかけ店内へと入れば、涼しい店内。
今日の気温はそれほど高くなかったはずだが、店内は天国と見紛う程涼しく感じる。

少し心配そうにこちらを見る店員の案内で導かれたのは先輩の風紀委員である理央の隣の席。
隣が先輩であることに等気づかず導かれ、席につきゆっくりと息を整える。

「生き返るー…」

そんな独り言とともに店員の持ってきた水をがぶ飲み。
死者から生者へと復活を果たせばメニューを手にしようと席の端の方へと視線を動かし…
そこで初めて隣の席に風紀の先輩が座っている事に気づいた。

「あ!せ、先輩!お疲れさまです!」

立ち上がるのはまだ辛い。座ったまま頭を下げて挨拶。
先輩への挨拶が遅くなったことを僅かに反省しつつ、そのまま理央の返事を待つだろう。

神代理央 >  
息も絶え絶えな風紀委員が一人、入店したところまでは視線に捉えていた。とはいえ、別に本庁の外で後輩に対して風紀委員に同僚意識を強く求める訳でも無い。自主鍛錬でもしていたのかな、と少々小柄な──勿論、自身の事は棚に上げて──少年に抱いた感想は、唇から零れ落ちる事は無く。
再び、登庁する前に目を通しておくべき資料の精査に掛かろうか、としていたところで。

「……ん、ああ。別に本庁の外で其処まで畏まる必要は無い。
私は別に、君の直属の役職者、と言う訳でも無いしな」

少年から投げかけられた声に、資料に落としかけていた視線を持ち上げる。新入委員の名簿には一通り目を通していたが、確かこの少年は…。

「……葉薊君、だったかな。他の人の目もある。先ずは頭を上げて……ああ、いや」

頭を下げた少年に小さく苦笑いを浮かべ、彼が腰掛ける席が自身の隣である事に視線を止めれば。

「もし君が良ければ、同席しないか?風紀委員で二席占有するより、其方の方が店の客単価も上がる、と言うものだ。
何、先輩と同席する気まずさ分くらいは、金額として支払おう。好きなものを頼んでも良いから」

と、苛烈極まりない実績と戦歴を持つ金髪の少年は、珍しく穏やかに微笑んで首を傾げてみせるのだろうか。

葉薊 証 > 「す、すみません。」

礼儀正しいから、というよりかは頭が回っていない故に衆目を引いてしまった少年。
先輩に諫められれば即座に頭を上げ、姿勢を正す。

「あ、ありがとうございます。お言葉に甘えて同席させていただきます。」

奢ってもらえるという部分については、どう応じるのが正解なのかよくわからずに一先ず同席させてもらうこととした。
そして、席を移ろうと席を立った辺りで目の前の先輩があの『鉄火の支配者』であることに気づいた。
ただの先輩ではなく、あの『鉄火の支配者』が目の前にいるという事にとても驚いた。
その驚き様は目を丸くした表情だけではなく、コップを掴もうとした手が空を切った事にも表れているだろう。
目を丸くしたまま、半ば慌ててコップを掴み直せばそそくさと理央の対面の席へと座り、少々気まずそうに正面の先輩へと視線を向けた。

「お仕事中にお邪魔してしまってすみません。えっと、その」

申し訳なさそうに頭を掻きながら視線を逸らし、再び視線を向け直して。

「『鉄火の支配者』である神代先輩と同席出来て、こ、光栄です」

光栄、というよりは色々聞けそうで嬉しいという感情が近い。
仕事の邪魔をして、と謝った割には仕事の邪魔をする気満々な少年の目には、期待の感情と照れ隠しに近い申し訳なさがちらちらと見え隠れしているだろう。
これから彼から聞けるであろう様々な事に期待しているのである。

神代理央 >  
「謝る事は無いさ。別に君が間違えていた訳でも無いし、責めている訳でも無い。強いて言うなら単なる私の思想の問題だ。君が私の部下だったのなら、もう少し違った態度だっただろうからね」

と、少年の態度と行動を肯定する意味で軽く首を振って見せる。
君は間違えていない。ただまあ、自分の気分の問題だから、と。

「ああ。遠慮する事は無い…珈琲で構わないかね?それとも、走って来た後ならもう少しさっぱりしたものが良いかな?」

コップを掴む手が空を切った少年────葉薊に小さく苦笑い。
其処まで緊張しなくても…とも思うが、良く考えれば自分は此処まで可愛げのある1年生ではなかった。喧嘩を売る、という程でも無いが、随分と尊大に振舞ったものだ…と内心苦笑い。
まあ、今でもさして変わっていないのだが。

「構わないよ。と言うより、今は公務時間外だ。私のこれは趣味…ではないな。まあ、ライフワークの様なものだから気にする事は無い」

と、肩を竦める。まだ先輩相手に委縮しているのかな、と観察する様な視線を葉薊に向けながら。
先程葉薊が浮かべた驚愕の表情が、よもや自分の正体…と言うより、その名を知っているからだ、とは露にも思わない。
まあ、次いで投げかけられた言葉に、その理由を理央も知る事となるのだが。

「……おや、私の名を知っているのか。光栄、とまで言われる様な華々しい実績を上げている訳では無いが…先ずは素直に、君の賞賛を受け取ろう」

ぱちくり、と瞳を瞬かせる。
島の違反部活性なら兎も角、新人委員にまで名前を知られているとは思ってもみなかった理央は、少しばかり困った様な笑みを浮かべた後、こほん、と咳払い。

「…では改めて、と言うのも可笑しな話だが。
風紀委員会所属の3年生、神代理央。君の知る通り『鉄火の支配者』と言う名の方が通っているかな。宜しく頼むよ」

差し出すのは右手。風紀委員会の"同僚"に対して求める握手。
それは目の前の少年を、きちんと対等な仲間だと認めている証。

葉薊 証 > 「そうですね……レモネードでお願いします」

パッと視線を向けた先のメニューにあった商品を適当に選んで答える。
適当に入ったからあまり意識していなかったが、実はカフェに来たことは殆ど無い。
何なら初めてかもしれない。何故なら、コーヒーが苦手だから。
だから、苦そうな名前のメニューが並ぶ中、甘そうなレモネードを選んだ。

「!よろしくお願い致します!」

差し出された握手に、少々冷たい手で応える。汗か、それともコップの水滴か…
素直な歓びの感じられる声色と表情で目の前の先輩を見つめる少年は、著名な学者に出会った学生のようである。

「風紀委員会所属の1年生、葉薊証と言います。今年この島に来たばかりの新参者です!」

先輩に倣い自己紹介。いつか自分もそれっぽい二つ名がついたりしたらかっこいいななんて妄想しながら、続ける。

「神代先輩が凄い方であることはよく聞きます!」

実際は2度しか聞いたことがないのだが、その派手さが少年の願望とマッチしたのか、少年にとってはとても印象深かったようだ。
凄い異能で大規模な制圧を単独で行える戦力という話に少年は憧れを抱いている。

「どうしたら先輩のような活躍が出来るのでしょうか?」

机から乗り出してしまいそうな勢いで言葉を紡ぐ。
何か秘訣があれば、全て聞きたい。そして自分も先輩のように活躍出来るヒーローに…