2024/06/09 のログ
■ゼア >
「楽しみにしてまーす」
何をするんだろう、と今からワクワクを溜めておきます。
ハードルが上がってく? 気のせいだよ多分。
「んー? あー、はーい。ベンチもあるからゆっくりしてってねえ」
先ほどまで自分が座ってメロンパンを堪能していたベンチを示す。
そしてそのままお仕事の続き。流石に雑談ばっかりだとマスターに怒られてしまうのだ。
「メロンパンどうですかー。とってもおいしいよー。そこのお二人も、どうですかー。おやつにぴったり、マスターのメロンパンー。常世の宝ー」
道行く人々に声をかける、のだが。どうにも間延びした声が、なんというか。締まりがないというか。
「……ふー。というか、ゼアも早くメロンパン食べちゃわないと」
呼び込みは数分もしないうちに終わった。
メロンパンをまた一口。冷めかけだけれどまだ美味しい。
■ジャスパー > 「お、おう!」
にっこりと笑ったが、さてどうしようか
とりあえず残ったメロンパンをこちらも食べよう
一応、端末を使って美味しいメロンパンのキッチンカーが出ているぞ、と宣伝しておいた
これで少しは邪魔をした分の補填にもなるかな、と
間延びした声でも、それが彼女の魅力である
ほわほわした雰囲気が親しみやすさを呼び、お客さんを呼ぶのだ
その合間に…休憩なのだろうか
少女がメロンパンを食べる時にはがんばれ、と応援を入れる
雑談は振らずにおしごとをする様を見守る
心の中では大声援で応援しているが、邪魔になるので口には出さない
「さて、今のうちに…」
少女が仕事をしている内に、ちょっとした仕込みをする
異能を使い、自分の音声をこっそり録音
ベンチに入れてしまうと再生されてしまうので少しタイミングを待つ必要がある
仕事がひと段落するタイミングで、こっちこっち、と少女を手招きしよう
そして、少女がベンチに座ってくれれば
『うおおお』
『ゼアちゃん』
『かわいいよっ』『はいはいはいはいっ』
『君が常世のた・か・ら!』
コールアンドレスポンスのような音声が一気に流れる
少女にはまだ見せたことのないジャスパーの異能である
男子相手なら屁の音でも鳴らすところだったが、女子相手には…いきなりお祭り騒ぎにして褒め称える…!
悪戯と言えるかどうかは微妙かもしれないが、驚かせることくらいはできるはず…、という目論見である
■ゼア >
「おやつにぴったり、メロンパンー……ふう。マスター、冷めちゃうからもう食べきっちゃうねー」
ようやく最後の数口といったところで、マスターに声をかける。というかメロンパンを食べながら接客と呼び込みをしているのが不思議なのだろうが。
ともかくそれがマスターのやり方なので文句は言わない。そもそも貰い物だし文句なんてないし。
「隣いーい? ありがと」
先ほどまで座っていたベンチに座ろうとすると、少年が手招きをしているのを見る。
隣に来ていいよと判断して、じゃあ遠慮なくと座れば。
「ひゃあっ!?」
突如どこからともなく自分を呼ぶ――というよりは、アイドルの親衛隊がそうするような声。
驚きのまま辺りを見回すが、声の主と思しき人は見当たらず。
「誰? ゼアのこと呼んだ?」
隣の少年の異能、という発想には至ることなく、疑問に満ちた驚き顔で、立ち上がってきょろきょろとその声の元を探していた。
■ジャスパー > 休憩を兼ねた客引きとまでは思考が及んでいない、が
なんにしても合間合間に準備を整えて、悪戯開始
それなりの音量で少女を褒め称える音声が流れた…
「ふっふっふ……。これが俺の悪戯さ
どこからともなく謎の声が聞こえちゃう悪戯…!」
正確には、埋め込んだベンチから音声は再生されている
勿論すべて自分の声である
触ったりするのはやはりちょっとハードルが高かったため異能を利用した
「驚いてくれたかい?
これからも不意に君の耳元にお届けしちゃうぜ
これで、前回のお返しくらいはできたかな☆」
敢えてネタバラシはしない
それほど知恵が回る方ではないからこそ、この異能を擦れるだけ擦ってみようという狙いだ
ここぞとばかりに一緒に立ち上がり…顎に手を当てて決めポーズをした
■ゼア >
「お兄さんの仕業なの?」
不敵な声に、ようやく隣の少年に意識が向けられる。
なるほどつまりは。
「これがお兄さんの悪戯……! なにこれ楽しい……!
すっごい驚いちゃったー。異能? 腹話術? 魔法?
もっかいやってほしいなー。ふふ、お返しされちゃったー」
何が起こったかはわからないが、とにかく意外なタイミングで引き起こされた悪戯。
次を促すように、きらきらとした瞳を少年に向けた。
■ジャスパー > (ふっふっふ。驚てくれたぜ…。まあ録音しないといけないからこれ以上は…)
「なんだろーねー……あ、…も、もっかい!?
……ゼアちゃん、残念ながら…これで最後だっ
この悪戯には準備が必要でねっ、またやってあげるよ
今後の楽しみにしてて~」
これ以上居ては化けの皮が剝がれかねない
学園生活でストックしておいた…こわーい先生が怒鳴る声を再生だ
『こぉら!待てええええ…!』
などと、急に怒鳴る声がまた響く
こっそり後ろ手にベンチに音声を埋め込んだため気づかれていない…はず
「今日のところはこれでっ、また面白い音をゼアちゃんに不意に聞かせてあげるぜ」
■ゼア >
「きゃあっ!」
突然怒鳴り声が聞こえて、やはり聞こえた方に振り向く。
「マスター?」
『違う』
見当違い。
「ってことは、やっぱりお兄さんの……って、もう最後なんだ。ざんねーん。
ふふ、でもすっごい楽しかったー」
溜め息を一つ。それから残ったメロンパンを口の中に放り込む。
しばらく咀嚼して、飲み込み。ほわっとまた空気に花を咲かせた後、表情を元に戻した。
「もうそろそろ帰る? ふふ、いっぱいお話しちゃったー。お仕事中だけど……よかったよね?」
マスターに目を向けると、無言で頷かれた。
よし。
■ジャスパー > 「へへ、びっくりしてもらえてよかったぜ
どういうタネかは、また今度な♪」
マスターにもぺこりとお辞儀をする
バイト中のかわいこちゃんと話してしまったのに寛大だ
これは新しい面白音声を仕入れておかねばなるまい
もちろん、自分の音声を主に。
人の音声を使うと思わぬところで何かトラブルがあるかもしれないからね
「ん、ゼアちゃんの可愛いエプロン姿をたっぷり見れて満足したしなっ
そろそろ寮に帰るわ~」
なんだかんだと色々遊んでしまった
こうして人を楽しませることができるとわかったから、少年にとっても…少女と話すこと以外にも収穫があった
きちんとマスターにも最後に一言詫びを入れてから、その場を立ち去ろう
■ゼア >
「うん。また今度ー。ばいばーい」
『じゃあの』
「メロンパン、お買い上げありがとーございまーす。またきてねー」
手を振りながら、立ち去る少年に笑顔を向ける。
その背中が見えなくなって、一息。それからマスターから声。
『客がまだ来とるけぇ』
「知ってるよー。ふふ、いっぱいお話して元気充電かんりょー。もっともっと頑張るよー」
一人、また一人と、キッチンカーには生徒たちがちらほらと集まっている。
さて、少年が来る前よりも明らかに客の入りがよいのは、果たしてなぜだろう。
「いらっしゃーい。メロンパン、どうぞー。さくさくふかふか、おいしいよー」
間延びした客寄せの声に、メロンパンの香り。
少年が去った後も、しばらくの間、そんな不思議な空間がそこにあったのだった。
ご案内:「学生通り」からジャスパーさんが去りました。
ご案内:「学生通り」からゼアさんが去りました。