2024/06/14 のログ
■橘壱 >
豪雨とともに力なく機体が落下する。
推進用のエネルギーも何もかも使い果たした。
モニターが切れる直前で見えてしまった、まだアイツは飛んでいる。
『──────!』
まだだ、まだ終わっていない。
空中で無理矢理思い体ごと身を捩り、建物の上に落下した。
轟音と共に瓦礫を撒き散らし、鋼人の体を無理矢理引き落とし立ち上がる。
大型パルスライフルのエネルギー、残り滓みたいなものだが全てAFに回す。
再び青白いモノアイが輝き、モニター回復。破損状況も多いが、まだ動ける。
内蔵も、体も、機体もダメージを受けている。だからどうした。
『まだだ、テンタクロウ……!』
瓦礫を踏みしめ、空を見上げる。
バーニアに火が灯り、一歩踏みしめる。
『まだ、終わってない。』
一歩。瓦礫を砕いて更に一歩。
『決着を付けよう────!』
まだ、お互い戦える。狂気めいた執念だが、非異能者の自分には、執念しかない。
再び空へ舞い上がろうとした瞬間、機体が膝をついた。
モニターに映るバーニアのエラー表示。爆心地であった機体自体も、使えば無事なはずもない。
それでも、と立ち上がる頃には──────。
奴はもう、逃げていた。
『……逃げるなら、仕方ない、か……チッ……。』
激しい音を立てて、再び膝をついた。
装着者も、機体も限界だ。白黒付かなかったことが何よりも悔しい。
そう思った瞬間、視界が赤く染まる。
高付加のGの押収。舌打ち直後に、迫り上がる血液を思い切り吐き出した。
『ゲホッ!ゲホッ!……かっ、クソ……此の程度のGに、体がついてこない、か……。』
高揚感が切れる頃には現実が戻ってきた。
余裕も何もかもが全身を這い回り、剥ぎ取っていく。
何が、何も失っていない、だ。何も持っていない事が、問題なんだ。
それこそ、異能者にわかるものかよ。
息が荒くなってきた。意識も、呼吸も……。
『クソ……まずったな……。』
モニターが切れる。意識も切れる。
『さく、ら……せんぱ……こんしんか…ゲホッ…いけそうに、ない…な……──────。』
遠くから聞こえるヘリの音。それを最後に少年の意識が途切れた。
事後の賞賛やら批判の声などは少年にはどうでもよかった。
決着もつかなかったこともそうだが、約束した懇親会には出られない入院コース。
本人たっての希望もあり、この入院が知らされたのは懇親会が終わった後だったとか…。
ご案内:「学生通り」から橘壱さんが去りました。
ご案内:「学生通り」からテンタクロウさんが去りました。
ご案内:「学生通り」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 >
帰り道。
今日は非番だ。特別何も用事もなく、帰路につく。
(最近、人と、話すこと、多くなったなぁ)
前までなら、どもることが多かった。
でも今では最初の緊張はあるにせよ、会話しているうちに楽に話ができるようになっていた。
(やっぱ、アレが、なくなったからなのかな)
振り返り、回想。
いろいろ、いろいろ。姉があったことと、逆の出来事。
でも、今ではもうそんな縛りはない。
(変化)
間違いなく、起きている変化であった。
変わって、突きつけられた現実は、あるけれど。
会話した、一つ一つを思い返す。
今までになかった、出会いに、感謝した。
それと、同時。
■伊都波 悠薇 >
「どうして、がいっぱいだ」
ポツリつぶやいて蒲焼バー、という駄菓子を、ぱくりと食べて、噛みちぎった。
どうして、ポーラ・スー先生は自分のことをあーちゃん先生と言うんだろう。
どうして、橘さんはあんなに、退屈を嫌うんだろう。
どうして、ホロウさんは、監視対象としてなってしまったんだろう。
どうして、風花さんは計算が得意なんだろう。
どうして、名前の知らない彼は片腕がないんだろう。
どうして、緋月さんは怪我をしてまで人を、助けたんだろう。
■伊都波 悠薇 >
今まで、姉以外を、見てこなかった。
姉が自分を置いていこうとしていたから。
いや、していないのに。していると勘違いしていたから。
天秤。
自分の中にあった、等価交換の法則。
その影響出会ったとしても、友達を作りたいと意気込んでも。
それは、もしかしたら関心がなく、天秤がそう、仕向けただけのこと、だったのかもしれないと振り返る。
(でも、今はそんなものは、ない)
ないはずだ。
だからこうして成長することもできているし、自分の望まない方向だとしても、結果はちゃんと出ている。
(なら)
自分はもっと、外を知るべきなのかもしれない。
姉、ではない。フィルターが掛かっていない、世界を、ちゃんと。
イトワ ハルカ、として個人としての世界を。
知りたい。どうして、どうして。きっと、何故が、そこにあるはずだから。
そしてそれは。
「うん」
姉にはできない、妹だけができる、“見方”だから。
そうなれば、話が早い。
「テンタクロウ、はどうして」
どうして、テンタクロウになったんだろう。
妹は、"青い薔薇"を咲かせるために。肥料を求めて、踵を返した。
水を、陽の光を。
どうしてを、埋める、ために
ご案内:「学生通り」から伊都波 悠薇さんが去りました。