2024/06/16 のログ
■強面風紀委員『強羅面地』 > 「すいません、ちょっとよろしいですか?」
ガッシリと。青年の空いた側の肩を大柄な手が掴む。
振り返ればナイスガイなスマイルと共に風紀の男が居た。
■狭間在処 > 「……。」
無言で足を止める。がっしり肩を掴む手はかなり強い。
”お前絶対逃がさないよ?”的な無言の圧力を感じる。
(…やっぱりこうなるか…この馬鹿鴉――!!)
青年もそれなりに落ち度があったかもしれないが、今更。
今、ここで逃亡したとして土地勘はこの辺りはあまり無い。
つまり確保される可能性も相応にあり、何より不審者確定で色々悪化する。
『……何でしょうか?』
取り敢えず逃げませんよ、とばかりに両手を緩く上げる。
肩の鴉の口から落ち着いた青年の声が漏れる。
流石に強面な風紀の彼も少し不思議そうにしたが。
そこはそれなりに場数を踏んでいるらしい風紀委員。
全く動じていない。淡々と青年に幾つか質問をしてくる。
■狭間在処 > 質問にははぐらかすようにのらりくらり、けど相手は風紀だ。
相手によっては切り抜けるのも無理ではない…が。
(…あぁ、この風紀はちょっと下手な嘘や誤魔化しは無理か)
強面でガッシリとした体格だが、先ほどから青年の些細な動きや気配にもさりげなく反応している。
(――仕方ない、敢えて捕まっておいた方がいいか。)
ここで風紀と揉めるのは…まぁ、手遅れだがこれ以上は勘弁願いたい。
自身(と相棒)の落ち度もあるので、小さく息を零してからこう口にする。
『…別に逃げたりしない。大人しく同行しよう。それでいいか?』
風紀委員会がどういう感じなのか、直接目で見るいい機会だ…虎穴に飛び込む行為だが。
■強面風紀委員『強羅面地』 > 「…素直だな。却って怪しいが。」
訝し気に口にするナイスガイ。だが青年が大人しく連行を承諾すれば。
数人の応援の風紀を呼んで青年を確保して連れて行こうとするだろう。
■狭間在処 > こうして、何とも情けない話だが風紀委員会に捕まったのである。
その後は、事情聴取をされてから牢屋なり何なり一時的に放り込まれる事に。
『……せめて怪異もどきだとバレない事を祈ろう。』
周囲の風紀の連中に聞こえないように呟きながら青年は大人しく連行されていった。
ご案内:「学生通り」から狭間在処さんが去りました。
ご案内:「学生通り」に宇賀野 実さんが現れました。
■宇賀野 実 > 人でごった返す学生通りを、宇賀野はとぼとぼと歩いていた。
背の低い宇賀野は、行き交う人々にちょっと弾かれたりするたびに
情けない声を上げる。
「あっ、すみませ…!」
自分の背丈は、今や小さな女の子と同じぐらいなのだ。
そうやって歩いているうちに、たどり着いたのは小さな公園。
丁度空いていたベンチに腰掛けて、カバンから書類を取り出す。
「うーん……」
結果を見て唸る。 身体検査の結果だった。
■宇賀野 実 > 『身長は135.0です。 去年より4センチ減ってます。』
「あっ、やっぱり…道理で靴がぶかぶかになったわけですね」
『身体的特徴も、男性らしさは……ほとんどないと言って良いでしょう。
第二次性徴期を迎える前の肉体と言って良いレベルになっています。』
「あの、それって……」
『はい。 調査の結果、宇賀野さんの家系にはなんらかの神…おそらく女神の血が入っていると思われます。
その姿は、平たく言えば先祖返り…すなわち、女神として宇賀野さんが目覚める前段階かと。』
「ってことは、そのうち女の子になっちゃうんでしょうか?」
『現段階ではわかりません。 異能の方も、身体の変化に伴って強くなっているようですから、
オリジナルの女神に近づきつつあるのであれば、更に影響が出てもおかしくないかと。 それと…』
「それと…?」
『異能の強力化に伴い、宇賀野さんには常世学園に入学して貰う必要があるかと思います。
体得的なコントロールではなく、論理に基づいて異能の”制御”をする必要があるかと。
その異能は、下手をすれば自身を相手に捧げてしまうものです。
お互いにとって望まない結果が発生する可能性がある。 制御の必要があります。』
「うむむ…」
―――――――――――――
検査のときの担当者とのやり取りを思い出し、再度書類に目をやる。
10年前ぐらいからどんどんと肉体の変化が進んでいったこと、
そしてそれに反比例するように異能が強くなっていったこと…。
それらから、あの担当者は結論を導き出したのだろう。
「学校ね、嫌いじゃないけど…。」
異能の制御という意味では、常世学園は通常の学校というより、
専門学校や技能習熟の場という方が正しいのかもしれない。
うんうんと書類に唸っていたところで、端末が振動した。
書類をしまい、端末を取り出す。
■宇賀野 実 > 端末に残された連絡は、本土の家族からのものだった。
《服を送っておきました。 着てね》
極めてシンプルな文言である。
最初のうちはショックだったが、流石にある程度慣れてきた。
《ありがとう。中性的なものも送ってもらえると嬉しいです》
返事を返す。めちゃくちゃでかい「NO」の絵文字が飛んできて、ため息をついた。
「わかるけどさあ…」
自分で服を買えないような年齢ではもちろんない。
しかし、今の自分に似合っているのは愛らしい衣装であり、
なによりこれらを着ていて…羞恥はあるものの、違和感はあまりない。
これこそが”変化”なのかもしれない。
そう考えると、このあとどうなってしまうのか…それをある程度でも、
コントロールする必要があるのではないか。 自分が自分でなく…
”おじさん”が完全に”女の子”になってしまう前に。
…ベンチに腰掛けたまま足をぶらぶらさせ、端末を眺める様は
傍から見ればすっかり女児なのだが。
ご案内:「学生通り」にクロメさんが現れました。
ご案内:「学生通り」に蒼月 まつりさんが現れました。
■クロメ >
「……匂う」
久方ぶりに降り立った人の街は変わり果て、もはや自分の知る世界ではなくなっていた。
そんな折、漂ってきたのは懐かしくも、甘美な匂い
おそらく、自分のような存在であれば瞬の間をおかずに飛びつきたくなるような……
そんな、獲物の香り。
「珍しいな」
凍てついた自分ですら、少々惹かれるモノのあるソレに興味を抱く
――あっちか
ふわり、と体が宙に浮く。
滑るように飛び出した先には、小さな公園
「……ふむ」
音もなく着地した眼前には、ベンチに座ってため息を付く少女姿のそれ。
しかし――
「……妙だ。何者だ、汝は」
相手の事情など構うことなく、声をかけた
■宇賀野 実 > 足をぶらぶらさせ、今後について考え込んでいたところで…。
ふとかけられた声に、はっと我に返った。
「え、ええと…?」
顔を上げる。 ゴシックスタイルの女の子が、眼前に立っていた。
滑らかな氷のようなその容姿と声に驚きながらも、頭を下げてご挨拶。
「えっと、宇賀野 実といいます…。 常世島で駄菓子屋をやってまして…。」
名前を名乗るぐらいなら問題はないだろう。 改めて彼女を見る。
胸に杭が突き刺さっているのは、装飾…ではないのだろう。
おそらく彼女の…人ならざるものの特徴なのだ。
「あっ、ええとですね。 あの、別に迷子とかお母さんを待ってるとかではなく、
おじさんは…そう、いうなれば健康診断の結果にため息をついていたわけでして…!
あの、もしよろしければお名前をお伺いしても…?」
よもや、自分を心配して声をかけてくれたのかもしれない。言葉を続ける。
体の奥でわずかに脈動するなんらかの衝動を押し殺すように、ちょっとだけ早口だった。
■クロメ >
「……宇賀野 実」
ぼそり、と復唱する。それがこれの名前か。
そして、このいかにも美味そうな匂い。
なるほど
「名を聞いた覚えはないが。
いや、いい。得心はいった。」
この匂いの元はそういうことだろう
懐かしい気配なのも納得する
そして、名を問われる。
どうも名を気にする連中が多い。そのくせに、自らも名乗る。
忌み名でも軽々と名乗るものではなかろうに……とは思うが
「……む。
クロメ、だ。ウカノの末なるモノよ」
しかし、どうにも気になる
「しかし、匂うな」
撒き散らされた匂いに、思わず苦言をはいてしまう
■宇賀野 実 > 「はい…。 あっ、はい。ご納得いただけてなによりです…?」
謎めいた少女の問いかけと納得。 おそらく彼女のみが持つなにかに触れたのだろう。
「クロメさんですね。 よろしくお願いします。
公園でお話するなんて珍しいことですから、ぜひ仲良くしてください!
あ、もしかして…先祖なんかとお知り合いだったりしますか?
もしよろしければ、隣が空いてますからおすわりになって…。」
人間とは異なるものたちは様々な寿命があるというし、彼女もそれに類するなら
長い命を持っている可能性がある。 ウカノという名前を聞いたことがあるのだろう。
ちょっと話を聞いてみたくなって、自分の隣のスペースを軽く叩く。
「に、匂いますか…? 具体的にはどういった…?」
おじさんに匂いの話はショックだった。
駄菓子の匂いや可愛らしい服、洗剤の匂いとかならいいが、
よもや”中年男性の臭いがする”と言われたのではあるまいか。
半ば呆然とした表情を浮かべ、オウム返しするのが精一杯だった。
■クロメ > 「……やれやれ」
どうにも警戒心というものが薄いように感じる
そもそも、この杭を見て察している様子だというのに……
これは、ひょっとして自らの状況に気づいていないのだろうか?
かといって、別に教えてやる義理もないのだが……
しかし……
「知り合い、ほどではない」
神と異形
それは近しいようで程遠い存在
それであるがゆえ、知り合いかと言われればなんともいえない
曖昧な答えを返しつつ……
隣のスペースを勧められてしばし考える
このまま捨て置くのも……か
仕方無しに隣に座る
「自分の状況に、気づいていないのか?
……いや、少しは分かっているだろう?
今のお前は、よく匂っている。
私のようなものを惹きつけるくらいには、な」
つまりは、ヒトならざるものをも寄せ付ける、ということだ
■宇賀野 実 > 「あっ、そうなんですね…。 ウカノという名字は珍しいですから、
てっきりご存知なのかと思って…。」
相手の不思議そうな顔と応えからして、なんだか自分の勘違いがあったようだ。
隣に座ってくれたその人ににっこりと笑いかけるも、問いかけに一瞬体を固くした。
「…その、クロメさんのような方ということは…。」
伝承に出てくる人ならざるものが求めるものといえば、乙女であったり、
無垢な少女であったり、そういうものだ。
まさか自分がそれなのだろうか?
その考えに至った瞬間、どくんと自分の中のなにかが…『異能』が脈動する。
「あの、まさか…クロメさんは、その…乙女の血とか、そういったものに興味が…?」
かっと頬が熱くなり、ごくりと息を飲んだ。
かすかにかすれた声で、相手に…確認するように問いかける。
自分の体から、そういった存在を誘引する”匂い”が出ていること。
そして、自分の家系に伝えられて来たこと。
それらが真実であることを示すかのように、自分の中で《神饌》が
ゆっくりと首をもたげていく。
■クロメ > 「ああ、そうだ。
それは神に連なる名だ。そうそうあるものか。」
どうやらよくわかっていないらしい。一つ、教育を施してやるとしよう。
懐かしいモノを見た礼のようなものだ
「ああ、そうだ。
まさか、気づいていない、などとは言うまい?」
指し示したのは、深々と刺さったままの杭。
トリックでもなければ、こんな状態であれば真っ当な人類は生きているはずもない。
「……やれ、さらに匂ったな。
いいか。神すら飢えた時に現れた、神にすら捧げられる食を齎す神の末裔よ。
汝のそれは、知らずば危険だぞ?」
冷たい表情のまま、横を向き中腰で上から相手を覗き込むように。
口が開かれる
真っ赤な口腔には、白く、白く、そして鈍く光る牙が覗く
「乙女?違うだろう?
だが、その血は美味い、とわかる。
今なら、尚更だ。この牙を、汝のその首にぞぶり、と突き立てれば甘露を味わえるだろう、と。
汝自身が匂わせている。喰ってくれ、と。」
その顔が、その牙が、近づいていく
■宇賀野 実 > 「そうだったんですね…。
日本の名字って神様から名前を借りるケースはありますけど、
まさか本当に連なっているとは思わなくて…ん、っ…!」
彼女の問いかけにぶるりと体が大きく震えた。
「神にすら捧げられる食……。」
ゆっくりと相手の口が開かれる。真っ赤な口内、そして白い牙。
それらを見た瞬間、体の奥に灯った熱が全身に広がった。
「っ…あ、あっ……」
声が漏れ、体から力が抜けていく。
とろんと目尻が下がり、潤んだ瞳で相手を見やった。
脈動が示す答えは一つ。
彼女は『自分が欲しい』のだ。
それを理解した瞬間、そっと両手を広げて、彼女の牙を受け入れようと、
ゆっくりと目を閉じた。
■蒼月 まつり >
「ふんふふんふ~ん♪」
白昼の学生通りを鼻唄混じりに歩く少女……のような外見をした少年が一人。
近くのドーナツショップで購入したドーナツの袋を抱え、どこかで座って食べようと良さげな場所を探していた。
やがて行く手に小さな公園を発見。嬉々としてそちらへ駆けていく。
「ドーナツ、どーなっつ、らんらら~…………んにゅ?」
ご機嫌なステップで公園に足を踏み入れ、ベンチのある方へ視線を向けると―――
夜を切り取ったような漆黒のゴシック・ドレスを纏った人物が、隣に座る苺のショートケーキのように甘く可憐なロリータ・ファッションに身を包んだ人物へと顔を近付けて、何かしようとしている光景を目の当たりにした。
のっぴきならない雰囲気を醸し出す二人を前に、少年はというと。
「こんにちは~! ねぇねぇ何してるのっ?」
―――臆することなくベンチに向けて歩み寄っていった!
■クロメ > 「……チ」
とろり、と潤んだ瞳。受け入れようとする手つき。閉じられた目
定められた役目を果たそうとする、その一連の動き
全てが気に障った
舌打ちを一つして……
そこに少年の声がした
外的要因ではあるが、頃合いではあるのだろう
「……戻れ」
ぺしん、と容赦なく実の頬を張る
「……なに、大したことはない」
涼しい顔で少年……少年?に応えた
■宇賀野 実 > 至福の……そのときを待ち望んでいたところに、衝撃が走る。
自分の中にある熱がさっと引込み、ちょっと痛む頬が自分に意識を取り戻させた。
「あれ…? おじさん、ボーッとしちゃってたのか…。
折角お話してたのにすみません。 検査で疲れてるのかな…。」
一瞬だけ、ものすごく気持ちよく幸せな瞬間があった気がするけれど、
その正体を探り当てることはできなかった。 自分の頬に触れながら
眼の前の相手に頭を下げた。
「あ、ああ、こんにちは。 ここでお知り合いになった方とお話をしていたんです。」
気がつけば近くにあらわれていた少女に、努めて明るく声を掛ける。
ぶるぶると頭を振ると、長い髪が揺れる。一度大きく息を吸い込むと、
より意識がはっきりしてきた。 研究者のいうように、自分の異能を
管理することが必要なのだろう。
■蒼月 まつり >
「……? そう?
なんだかとっても仲良さそうに見えたから、お友達だと思ったんだけど」
二人の反応に首を傾げつつ、初対面らしいと聞けばひとつ頷いて。
「じゃあさ、僕も混ぜてもらっていい?
僕の名前は蒼月 まつり。
ドーナツいっぱい買ってきたから、一緒に食べようよ!」
ここで知り合ったばかり、という点なら自分も同じ。
じゃーん! と抱えていた紙袋を掲げ、笑顔でそう提案した。
袋の中身は様々な種類のドーナツ。
小麦の香りと甘い匂いがふわりと漂うことだろう。
■クロメ > 「……実。汝は、己の力を識れ。
私でなければ、死んでいたやも識れない」
ぼそり、とため息とともに伝える
本人の意志すらも塗りつぶし、捧げ物とする。
ヒト相手ならまだしも、この島では万一も……
……教える義理もないのに、とんだおせっかいだ。
「初対面だ。
意識を失ったので、少し気付けはしたが」
嘘はいっていない。
真実の全てでもないが、語ることでもないだろう。
しかし、また妙なやつだ
それにすぐ名を名乗る。どうも文化が違うな
それにしても
「どー、なつ?」
また知らない名前が出てくる
本当にこの世は変わってしまったようだ
■宇賀野 実 > 「は、はい…」
ため息とともに与えられたアドバイスに、
困惑半分、申し訳無さ半分の表情で頷いた。
自分で考えている以上に、状況は深刻なのもしれない。
それこそ、彼女のような存在が自分のもとを「訪れてしまう」程度には。
「ドーナツっていうのは、揚げ菓子のひとつで…美味しいんですよ。
なんだか馬があったんですよ。 ね、クロメさん!」
不思議そうにするクロメさんに答えながら、
現れた人の言葉に明るく答える。名前を聞いてから頷くと、
向き直って頭を下げた。
「蒼月さんですね。 よろしくお願いします、宇賀野です。
えっ、いいんですか!?」
挨拶もそこそこに、開かれた袋から漂う香りにぱあっと表情が明るくなった。
「いやあ、すみませんね…今度ぜひ駄菓子屋『おおげつ』に来てください。
ドーナツのお礼をさせていただきますから! お近づきの印とはいえ、
良いものを分けていただけるとは…!」
■蒼月 まつり >
「ってか二人とも、服すっごく可愛いね!
この辺りじゃ売ってないヤツかな……お人形さんみたい!」
なにやら物々しい会話も、二人の服装に夢中で聞こえていない。
これといって特別な気配を持たない、何の変哲もない一般人のようだ。
……よく観察すれば、女物の服を着ているだけの男だと判ること以外は。
「そうそう、とっても美味しいんだよ!
本当は一人で何回かに分けて食べるつもりだったけど、お近付きの印ってことで!
味もいっぱいあるよ。あっ、ゴールデンは僕のだからね!」
説明は代わりにやってくれたので、早速ガサガサと紙袋を開いて。
色も形も多種多様な中で、チョコ生地に粒状のトッピングをまぶされたドーナツだけ真っ先に自分で確保。
それから、紙袋の口を二人に向けて差し出した。
この中からどれでもお好きなものをどうぞ、ということなのだろう。
「そっちのコはクロメ、でいいのかな?
ウカノは駄菓子屋さんの子なんだ、今度お邪魔しよっと!」
二人が(任意のドーナツ)を手に取れば、ベンチの空いたスペースにちょこんと腰掛けようと。
■クロメ >
「まあ、そうだな。」
気があった……といえば、そうなのだろうか。
曖昧に実の言葉に頷く
それにしても、あとからやってきて、まつり、と名乗った者は非常に騒がしい。
こういう手合は……苦手、というほどではないが、面倒だ
なお、着ている服は少々古い……かつてのドレスである
眼の前の実もそうだが、このまつりも男のようだ
……どうも服装の概念も変わったのだろうか、今の世は
「菓子……ウカノが菓子屋とは、また皮肉なものだな。」
そういいながら、差し出されたドーナツに……
少し考えて手を出す
下賜品を拒否するほどのこともないか、と思う
「……これも、菓子、か……むぅ
……ああ、クロメ、だ」
何も考えず手を出したので、手元に現れたのは極彩色のドーナツ
非常に、うさんくさい
■宇賀野 実 > 「ありがとうございます。 そう言ってもらえると嬉しい…嬉しいです!
店番してうたた寝してるときとか、よく人形みたいって言われますよ。」
色々あって自分の服はこうなのだけれど、彼女の…彼の言葉に素直にお礼を述べた。
呑気な調子で相手の言葉に答えながら、差し出された袋に手を入れてドーナツを一つ
拾い上げる。 いちごジャムとクリームをたっぷり挟んだそれを眺めて、
満足げに頷いた。
「ちょうど今日は疲れていて、甘いものが食べたかったんですよ。
本当にたすかります!どうもどうも!
そ、そうですね? 駄菓子屋の…駄菓子屋を経営しているので、
よろしければぜひ…。」
すっかり駄菓子屋さんの”娘”だと思われている。
そっと修正を試みつつも、クロメさんの言葉に笑い返した。
「人様に食べもので喜んでもらいたい…みたいな気持ちが
代々あるみたいで、家族でも料理や食料品店が多いんです。
魔女をやりつつそういう商売してるのもいますよ。
自分は魔女じゃないですが、やっぱりそういう気持ちで駄菓子屋をやってるんです。」
述べつつ、両手でドーナツを持つ。
赤と白のコントラスト、そしてドーナツの色が美しい。
「いただきます! うん…んん―――っ♡」
きちんと頭を下げてからドーナツにかぶりつく。
魂が喜ぶ味がする。表情がほころび、幸福感に声にならない声を上げた。
■蒼月 まつり >
「わぁ、想像しただけで可愛いな……
僕が客だったら持って帰りたくなっちゃうかも」
などと冗談なのか分からない感想を述べつつ。
クロメとは反対側にあたる実の隣へ腰を下ろして、自身もゴールデンなドーナツを一口。
ほろ苦いチョコレート生地にサクサク甘いトッピングが舌にも楽しく、お気に入りのフレーバーだ。
「ん~っ、おいひぃ♡
やっぱりドーナツはあのお店のに限るなぁ……
あっクロメ、それ見た目はアレだけど結構うまいんだぜ?」
実ほどではないが、至福のひとときに頬を綻ばせる姿は美少女のそれと相違ない。
指に付いたトッピングをぺろりと舐め取りながら、極彩色のドーナツを手に怪訝そうな顔をするクロメに声をかけて。
今時ドーナツを知らないなんて、ひょっとして箱入り娘なのかな? なんて勝手な事を考えている。
■クロメ > 「……」
男二人の会話を聞いて、首を傾げる
かわいい、というのは今の世の男では当たり前の概念なのだろうか
昔は、格好いい、とか、強い、とか……ああ、雅さ、というのもあるにはあったか……
どちらにしても、どうやら価値観が異なるようだ。
「……ふむ、一国一城の主、か。男の夢、といったものだったか。
それにしても先祖代々、とは……だいぶ毒され……いや、そういうものか」
駄菓子屋を経営、と聞いてそういうものか、と思う。
それにしても食に関わりたがるのはもはや、彼らには性になっているのだろうな
「……ぁ、ああ、うん」
手にした極彩色のドーナツ
緑だったり青だったり赤だったり。そんな何かがマーブルに染め上げている
食べ物、らしい……実とまつりが頬張るのを見て、これも付き合いか、と齧る
「ん……」
甘い
なんだ、これは
甘い……甘い……
固まった
■宇賀野 実 > 「えっ、そうですか? どうしようかな~…。」
もちろん何気ない冗談なのだろう。
けれど、体内の《神饌》がぴくりと反応したのを自分は見逃さなかった。
こほんと咳払いをしてから、食欲の方で欲望を満たそうとドーナツにかじりつく。
甘さといちごの香り、酸味にドーナツのコクと厚さが渾然一体となり、
ガツンと脳を刺激する。 おじさんなら胃もたれの一つもするが、
今はドーナツを貪っても問題ないのは利点の一つだった。
「おいしい! 今度お店を教えてくださいね。
お店に置くわけにはいかないけど、時々食べに行こうっと…」
味を確かめながら蒼月さんに声を掛けた。
「そうですね、だいぶ前かららしくて詳しいことはわからないんですが…。
クロメさん?」
クロメさんの言葉に振り返ってみると、極彩色のドーナツをかじったまま
クロメさんが静止していた。
「だっ、大丈夫ですか? お飲み物かなにか用意しますか?」
流石に驚きだった。 もしかしたら人ならざるものには甘さが過ぎたのかもしれない。
蒼月さんに目をやり、飲み物がないかを確認する。
■蒼月 まつり >
「あははっ、冗談じょーだん!
大事な看板娘を持ってっちゃうワケにはいかないし」
口元に手を当てて愉快そうに笑う。
経営者と訂正したのも果たして伝わっているのかどうか。
端の方にはドーナツの食べかすが付いたままで、なんとも無邪気な子供のようだ。
「うんうん、あとで紹介するね!
クロメもドーナツが気に入ったらぜひ……ありゃ?」
実の視線に釣られるようにクロメの方を見て。
ちょっと初体験とするには刺激的が過ぎるフレーバーだったかもしれない。
「クロメ大丈夫?
ううん、飲みかけのお茶ならあるけど……」
元々ひとりで食べるつもりだったので、飲み物はそれ一本のみ。
ストレートの紅茶なので食べ合わせとしては悪くないが、既に自分が口をつけたものだ。
気にするようなら近くの自販機で買ってこようか? と腰を浮かせて。
■クロメ >
「……いや、実は娘では……」
そこまで言いかけて、自分が否定する話でもないか、と思い直す
いや、なんだろうこの空間。
男なのか女なのかわからないのが多い
「……あ、まい……」
甘露、という言葉がある。
天上より与えられし甘い蜜。
しかし、そんな生易しいものではない
砂糖など高価で広く行き渡らない時代のものには、甘かった
「い、いや……大丈夫、だ」
気を使う、実とまつりに断りをいれる
あまりにも驚きすぎて固まってしまっただけだ
うん、それだけだ
「……」
ちま、とかじり直す
あまい
■宇賀野 実 > 「そ、そうなんです。娘ではなくて…。
その、成人男性でして…。」
クロメさんが言おうとした言葉を引き継いで蒼月さんに返す。
彼女が信じてくれるかは別として、誤解をそのままにすべきではない…ハズなのだ。
「あっ、よかった…! なんだか、あまり慣れてないみたいですね。」
蒼月さんとふたりでクロメさんの様子を伺っていたが、可愛らしい食べ方で
ドーナツにかじりついたのを見て安心する。
とはいえ、だ。彼女の振る舞いからみて、あまり現代に慣れていないようにも見える。
もしかしたら復活したてとか、転移荒野などからやってきたとかあるのかもしれない。
「あの、クロメさん。 なにか困ったこととか見知らぬことがあったら、
なんでも気軽に相談してくださいね。 お店に来てくださればお話しますから。」
彼女の色々なものを傷つけるつもりはない。 念の為、といったていで、
彼女に優しく声をかけた。 困っている人に声をかけることについては、
やぶさかではないのである。
■蒼月 まつり >
「またまたぁ~。
僕だって男だけどさぁ、流石にその見た目で成人は無理があるって~」
どちらかというと信じていないのは年齢の方だった。
ついでに自分の性別もしれっと告げ、この空間の真の男女比が明らかになる。
「なぁんだ、甘すぎてビックリしちゃっただけか!
でもドーナツってわりと喉渇くし、必要なら買ってくるからね」
平気そうな様子を見て笑いながら腰を落ち着けた。
そのまま紙袋から次のドーナツを取り出して頬張り始める。
揚げパンのような見た目で、中にホイップとカスタードのWクリームがたっぷり詰まった甘い甘いドーナツだ。
表面にまぶされた粉砂糖で口の周りが真っ白に染まる。
■クロメ >
「……やはり、男か。」
ヒトならざるものの嗅覚や気配察知で察してはいたが……実際に聞くと、少しくらくらする。
これが、じぇねれーしょんぎゃっぷ、というやつだろうか。
なんとも言えない気分になる
「……そんなことは……」
まつりが指摘をしてくる。実もまた。
慣れていない、はまあたしかにそうだ。
しかし、甘すぎて驚いた、などという不名誉は断じて認められない
なんなら、悪くない味だ
そうだ。悪くない
ちまり、とまた齧る。
こいつら、よくもあんなに勢いよくかじれるものだな。
「ん……そうか。おおげつ、といったか……
う、む……必要があれば」
どうも実には怪異であり、世情になれていないことに気づかれているフシはある。
まあそもそも、堂々とこんな杭を刺したままにしているのだから、おかしな存在なのは気づかないほうがおかしいのだが
……うん、おかしいよな?
■宇賀野 実 > 「ほ、本当なんですって―! あっ、性別も!性別も同じですよ!」
必死に訴えるけれど、相手からすれば『子供が大人びようとしている』程度にしか
見えないのかもしれない。 思った以上に社会的なダメージは深刻だった。
ちょっと拗ねるような口調がいけないのだろうか。
大きくドーナツにかじりつき、指についたクリームを舌で拭う。
あえての男性らしさを意識したワイルド(?)な食べ口だった。
クロメさんの方を見てみると、なんだか複雑そうな顔をしている。
聞いていいのか悪いのかはともかく、そろそろと声を掛けた。
「ところで、クロメさんはその…お胸の杭とかは大丈夫なんですか?
その、異邦人の方なんかはいらっしゃるのですが、もし杭を外したほうが良ければ
どこかそういうのを調べられそうなところを探したりはできると思うのですが…。」
少なくてもファッションであったり、放っておいたりして良いものなら
それはそれで答えてくれるだろう。 ちょっとだけ心配になってきて、
そろそろと問いかける。
■蒼月 まつり >
「まぁ……あながち、ありえない話でもないか。
僕の知り合いにも身体の成長が止まっちゃった子とかいるしなぁ」
どこか必死な様子はウソを吐いているようにも思えない。
何より、疑ってかかるのは好きじゃないので彼の言葉を信じることにした。
小さな口をいっぱいに開けてドーナツを頬張る横で、クリームが溢れ出さないよう慎重に食べ進めていく。
「誰にでも初めてはあるものだし、恥ずかしがることないって。
なんなら他のドーナツも試してみる? まだまだたくさん……」
クロメにそう勧めようとして、実の言葉に手を止めた。
それから、彼女の胸元に深々と突き刺さった杭のようなものに目を向ける。
「……え、それ単なるファッションじゃないの?」
そこからだった。
■クロメ >
「……」
実の実年齢問題。まあ、何となく察しているところではあったが、まつりはようやっと飲み込んだようだ。
知り合い、がどの程度の止まり具合か走らないが、自分に至っては10歳ほどの容姿ですでに……
いや。それをここで言ってもややこしくなるだけだな
「恥ずかしがってなど……」
これは矜持とかそういう感じの問題であって、断じて恥などと思っているわけでは
いや、そもそも……いやいや
「ほかの、だと……?」
まだたくさんある
恐ろしい世の中だ。このようなものが、気軽に手に入るというのか
認識を改める必要がある。ヒトとはやはり度し難い
「ん……?
ああ……気にするな。まつりの言うように、ふぁっしょん、のようなものだ。
……外すことも、できるし、な」
杭について問われれば、そう答える。
これはある種の戒めであり、ある種の警告であり、ある種の示威である
これを見ても何も思わなければ、それでもいい。
その程度でしかない
「……実も。他者のことばかり気にしていて、良いのか?」
■宇賀野 実 > 「心配してくれてありがとうございます。
でも、おじさんのは急いでどうこうという話ではないですからね。
クロメさんのお体の方が大事です。ファッション的なものなら
問題ないですね、よかった…!」
自分に、正確に言えば自分に秘めたなにかに思うところがあるのだろう。
クロメさんの言に明るく返す。 一朝一夕でこの体がどうこうなるわけでもあるまい。
それなら、腰を据えてしっかりと対応するほうが良いのだろう。
彼女のかrだに問題がないことを聞いて、胸をなでおろした。
ファッションなら大丈夫だろう。
仲良くやり取りをするクロメさんと蒼月さんを見て、にこにこと相好を崩す。
二人の間に挟まってドーナツをかじるその様子は、とても幸せそうなのでした。
ご案内:「学生通り」から宇賀野 実さんが去りました。
■蒼月 まつり >
「だよね~! 良かった良かった。
そういうの、なんて言うんだっけ……地雷系ファッション?
僕みたいなキャラだと合わないから、似合ってて羨ましいな~!」
ゴシック調の衣装とホラー風な演出は相性が良いので、初めからそういうコーディネートだと思っていたようだ。
しかし地雷系とは違うと思う。世の地雷系女子に謝った方がいい。
「……よく分かんないけど、相談なら僕も乗るぜ?
なんたって、今日から僕らはお友達なんだからさ!」
自分が現れる以前、もしくはもっと前から―――
二人の間には何か自分の与り知らないものがあるように思えた。
しかし、今ここで問題とならない事なら深入りはしない。
必要ならいつでも頼ってくれればいいから、と真っ平な胸をトンと叩いて。
「さってと、クロメも興味津々みたいだし……
折角なら皆でドーナツ屋に行かない?
僕が買ってきた以外にも色々あるからさ、きっと楽しいよ!」
クロメの反応を揶揄うように笑いながら立ち上がる。
実とはお店の場所を教える約束もしていたし、良い機会だ。
後は彼女さえ乗り気なら、そのまま先陣に立って案内をすることだろう。
そうでなければ、ここらで解散の機運だろうか。
■クロメ >
「……地雷系?」
そんな兵器があることも知らないし、そのファッションの内情も知らない。
服自体は……色々あって、黒っぽいものに収まっただけで他意はなかったりもする。
杭の親和性も、よくわからない
「友達、か……」
言ったところでこの相手にはあまり通じないだろう、という想像がつく
そもそも、真に正体を知ったところで変わらないのかもしれない。
まったく、人類とは度し難い
「……特に興味はない、が。
約定であれば、行くというものだろう。
実が行くなら、付き合うとしよう」
興味はない そう興味はない
だが、この度し難い物体がある場所は知っておいても損はないだろう
避けるにしても、なんにしても
そういうわけで、結局三人まとめてドーナツ屋にいくことになるだろう
■蒼月 まつり >
「あれ、違ったかな? ま、いっか。
とにかく似合ってて可愛いよってことで!
もちろん、ウカノ……実でいいのかな? その服もすっごく可愛い!」
クロメがそう呼んでいたので、こちらも合わせることにした。
相手が成人男性と知ってなお態度を変える様子はない。
もしかしたら、人ならざるものに対しても同様に接するかもしれないし―――
それがきっと蒼月まつりという少年の性質なのだ。
「よ~し決まりっ! それじゃ出発だ~!」
同意が得られれば、元気な掛け声と共に歩き出す。
そうして三人は近くのドーナツ屋へと赴き、様々なドーナツと出会うのだった。
ちなみに、まつりは中身の残った紙袋を抱えながら追加で10個ほど購入したらしい。
ご案内:「学生通り」から蒼月 まつりさんが去りました。
ご案内:「学生通り」からクロメさんが去りました。