2024/07/07 のログ
ご案内:「学生通り」に武知 一実さんが現れました。
武知 一実 >  
「らっしゃっせー」

日曜の学生通り。天気は昨日に引き続きファッキンホット(クソ暑い)
外出してる生徒の姿もそんなに無い中、オレはクーラーボックスを積んだ三輪自転車型リヤカーを通りの片隅に停めていた。
日差し対策に頭上にはパラソルを広げ、側に立てた幟に書かれてるは「あいすきゃんでぃ」の文字(手書き)。
――まあ、要するにバイト中である。

「まあアイス食いたくなる暑さではあるけどよ。
 さすがにこうも暑くちゃ外に出て来る物好きなんざそう居ねェと思うが……」

自分の事は棚に上げながら愚痴るほどには通りには人の気配がほとんど無い。
そりゃそうだ、オレだってこんな暑いなか外に出たくねえし、出たとしても徒歩は避けたいと思う。

――でも、今日のオレはここでアイス売らなきゃならねえ。
場所を変えると出店許可がどうのこうのと怒られるんだと。

武知 一実 >  
「夏休みもこんな感じで過ごすんだろーか……」

基本はアルバイトして、ぶらっと一人で買い物に出て、たまに喧嘩して過ごす日々。
見様によっちゃ充実してると言えなくもねえが、これで良いのかという疑念は拭えない。
こんな事ならオレも寮生になっときゃ良かっただろうか……と、そんな事を考えていたらスマホのアラームが鳴る。
別所で店を出してる今回の雇い主への定時報告の時間だ。
スマホを取り出し、通話アプリを起動させ1コール、2コール……出ねえな。

「あっ、こちら武知。学生通りは人ほとんど居ねえんで今ンとこ売り上げゼロ。
 夕方まで一人か二人買ってきゃ御の字ってとこじゃねえか?
 ……へい、へーい。じゃこのまま誰か通るまでやってやんよ」

どうやら向こうはそれなりに繁盛しているらしい。
そりゃあな、リヤカー式移動出店じゃなくて常世渋谷に近いコンテナショップだ。そもそも通り掛かる人の差が歴然だろう。

明かなハズレくじ掴ませやがって――ったく。
通話を切られて舌打ちしつつ、オレは通りに目を光らせた。
こうなりゃ誰か通り掛かれば無理やりにでもアイス売り付けてやる。

武知 一実 >  
結局、予定の営業時間を過ぎて暑さが落ち着くまで学生通りを訪れる人影は無く。
オレの財布からアイス3本分の小銭が消えて行っただけだった――

ご案内:「学生通り」から武知 一実さんが去りました。