2024/07/11 のログ
イヴ >  
「ふふー、悪くない?♪」

そう言ってもらえると嬉しそうにはにかむ。
家族が愛を籠めて育ててくれた自分を褒められるのは、家族が大好きな子狐にとっても本当に嬉しいこと。

「そうそう、たまに遊びに来てくれるママのお知り合いなんだ~。
 ゲームが上手くて、来てくれた時は一杯遊んでくれたな~」

そんなことを語る子狐は実に少年らしい。
何についても素直な姿勢は、愛を注がれて育ったことがよく理解る。

「誤解?誤解って?」

きょとん。
実際子狐は年齢的にどう見ても10歳程度。
大丈夫、心配ない。
そんな風には見られていないよ、きっと。
そう思おう。

───そうして、その場で見せてもらうことになった、それは。

「おぉ…」

お年頃の子狐の心を掴んだ、一撃で。

「おおおおおおお~~っ!!」

「ロボットだーーー!!!」

大興奮である。
パワードスーツ、と説明しても。
まぁロボットだーーー、となる。
この年頃のお子様にはそう刺さる。

「これが壱くんのつばさ?カッコイイ!!」

橘壱 >  
「まあ……。」

オタク目線から見れば実際興奮する。
但し口に出せば人生終わるので適当に返事しておいた。
誤解についても敢えてスルー。10歳に説明してもきっとわからない。
いや、寧ろ説明するのはまずい。此処は一応公然の場である。
平常心だ、壱。スン、と何処か表情が落ち着くのは理性が硬いおかげ。

「ロボットでも間違いはないな。ああ、僕のAF(ツバサ)
 より高みを目指すためのものだ。イヴが着るには、少し早いものだな。」

此の変容した世界の大空を羽ばたくための鋼の翼。
戦いのための兵器であり、自らを高みへ連れて行く翼だ。
相手が子どもであることを除いても、こう興奮されると嬉しいものがある。
そうだろうそうだろう、と腕を組んで頷くのは男の子だからわかるもの。
実際この鋼のロマンは刺さる人には刺さるようで、道行く人の注目をある程度浴びたようだ。

とは言え、ずっと見せびらかすものではない。
壱がパチン、と指を鳴らせば溶けるように変形していき、元のトランクへと戻った。
因みに指を鳴らす必要は一切ない。つまりはカッコつけである。

「僕はコイツで風紀の仕事をしているわけだ。
 まぁ、イヴにはコイツがわかるようでよかったよ。」

ロマンがわかる男は悪いやつじゃない。
よしよし、と歩調を彼に合わせつつトランクを拾い上げれば横目で見下ろす。

「にしてもまぁ、仲がよかったんだな、ほんとに。
 いいじゃないか。今は3人もお兄ちゃんみたいなのがいるんだし。」

代わりではないが、その穴を埋めるような存在にはなれるだろう。
壱にとっては、その愛情はほんの少し羨ましい。
表にこそ出さないが、ほんの少し胸はざわついた。

イヴ >  
諸々スルーされる様子には「?」と首を傾げるばかり。
これが、ししゅんき、というやつなのかもしれない。

「壱くんはこれに乗って悪者をばったばったやっつけてるんだね!?すごい!カッコイイー!!」

こんなもの魅せられてはキラキラした眼で見る他ない。だって男の子だもの。
フィンガースナップによってトランクケースに戻る過程ですら、おお~っ、と興奮気味に見つめてしまう。
子どもの心を掴むには十分すぎる破壊力だった。

「いいな~かっこいいな~。
 壱くん、部屋に模型なんかも飾ってるもんね。
 こういうのが好きなんだ~」

好きじゃない男の子なんていなさそう。と子狐も思います。
そして。

「うん!たくさんお兄ちゃんが出来た感じで毎日楽しいよ♡
 最初は、ママと離れて過ごすのがちょっと不安だったけど…。
 壱くんも含めてみーんな優しいお兄さんばっかりだったから♪」

目を細めて笑う子狐は無邪気で、曇りも打算も何も感じさせない。
純粋培養。余程の環境じゃなければこんなにいい子は育たないかもしれないとすら思わせる。
だからこそ、目の前の彼の育った環境は…今の子狐には、想像もつかないものかもしれなかった。

橘壱 >  
「まあね。アニメのようにはいかないが、大体は想像通りじゃないかな?」

主に使われ宇野は鎮圧用の兵器ばかりだが、ご想像どおりだ。
青白いバーニアを羽ばたかせ、地面を焦がして滑走する。
あの感覚はずっと忘れられないほどの史上の悦びだ。
確かにアニメのようにバッタバッタとはいかないが、子どもの夢はそのままのがいい。

「…………。」

純粋無垢という言葉がよく似合う。
きらびやかな世界に夢を見ているとでも言うんだろうか。
現実を知った17歳の橘壱には、余りにも眩しい。羨ましい
子どもにも嫉妬するなんて、大概だな。良くないことだ。
胸の空虚さを振り払うように首を振り、力なく笑った。

「そうか。まぁ、僕はともかく風花も先生も面倒見はいいしな。
 僕に出来ることは大してない。まぁ、でもそうだな……。」

カチャリと眼鏡を上げれば軽く空を見上げる。
今日はくもり空もなく、星々がよく見える。

「ゲーム教えてもらってたんだっけな。ゲームなら僕も教えれるぞ。
 こうみえて、あるゲームでは世界一強いんだよ。僕はね。」

イヴ >  
ご想像通りだ、とする言葉に。
子狐はほぁぁ~~、と思いを巡らせているようだった。
子狐にとってはそれこそアニメや映画の中の存在。
悪いやつをやっつける、風紀委員という少年の立場も含めて、
子狐の中では橘壱は完全に正義のヒーロー化しつつあった。
つまりは無敵の存在。
子供だったら誰でも憧れる。

「ふふー♪ママとかにも自慢しちゃお。
 すごいお兄さん達一緒に住んでるんだよーって。
 ──わ、ほんと?
 じゃあじゃあ、学校とか委員会のお仕事がない日に遊んで~♡」

おまけにゲームまで教えてくれる。
優しいお兄さんじゃないですか。もう。

ロボットを使って悪いやつをやっつける正義の味方。
その上ゲームも上手なんて、小さな男の子から憧れられないわけがないのである。

「ほええ…世界一…!」

完全に尊敬の眼差しである。

「約束!ボクもゲーム大好きだから、頑張って上手くなりたいな♪
 あ、でもそのためにちゃんと宿題はやっておかないとかな……」

夏季休暇も迫る七夕の季節。
夏休みといえば、子供には宿題もつきものではなかろうか。

橘壱 >  
「…………。」

よくもまぁ、なつくものだな。
別に先生程大人じゃないし、風花程俯瞰的にもなれない。
二人よりももっと利己的だし、正義のヒーローとはかけ離れている。
力による頂点。闘争による成長。それこそ、そこには彼だって必要ない。
汚い人間だ。何とも言えない(アンニュイ)な表情もつい滲み出た。

必要ない、はずなのにな。

「凄いお兄さん、ね。」

改めてルームメイトと対話して、交流して、思ったよりも温かいことを知ってしまった。
いや、多分彼等だけじゃないんだろう。伊都波 悠薇の言っていた誰かがしてくれる心配。
存外、彼等がそうなのかもしれない。それは自惚れ過ぎか。
そう考えると、どうしても疑念が過ってしまう。


今目指す、全てをねじ伏せて立つ頂点は本当に夢見た場所なのか、と。


「────……いや……。」

頂点を目指すことには変わりない。
だが、少し一考する必要があるのかも知れない。
それに今、考えることじゃないな。それこそ邪念だ。

「そうだな、"僕は凄い"よ。なんたって、勉強もゲームも出来るからな。」

だから、今彼に向ける壱の笑顔は、ほんのり照れ臭くも嬉しげなはにかみ顔。
凝り固まった思考も、多くの積み重なった縁がゆるりとほぐれた結果とも言える。

「まぁ、暇な時にゲームも宿題も教えてやるさ。
 ほら、そろそろコンビニ付くぞ。……言っておくけど、余計なものは買わないからな?」

イヴ >  
無邪気、純心、他意なく悪意なく素直で汚れのない。
異種であるからこそありえたかもしれない、真っ白なキャンバス。
もしかしたら、それは心に僅かでも陰りをもった人間には直視しがたい存在かもしれない。

「どうしたの?疲れちゃった?」

最近長く部屋にいなかった。理由は訊かなかったけど、多分委員会のお仕事関係。
もしかしたらすごく忙しくしていたのかもしれない、と気遣うような言葉をかけた。
でもそのその表情はほんの少しの間のこと。
自分を凄いのだと肯定した彼は、変わらず子狐が憧れる様なお兄さんだった。
そして笑ってくれた。あんまりお部屋でも見なかった表情で、子狐もつられて笑顔になる。

「うん!遅いと心配させちゃうかもだしね♪
 えー…肉まんくらいなら、お、お小遣いで買える…」

きゅう、と小さく鳴るお腹。
こんな時間だし小腹が空くのも仕方がない。
余計なものを買うなよと釘をさされつつも、買い食いの誘惑と戦う子狐だった。

──夜空にまたたく星の河は、間もなく夏が訪れることを予感させる。
                        きっと暑い、夏になるだろう。

ご案内:「学生通り」から橘壱さんが去りました。
ご案内:「学生通り」からイヴさんが去りました。