2024/08/06 のログ
ご案内:「学生通り」に雪城 氷架さんが現れました。
雪城 氷架 >  
学生通りをふらふらと歩いている少女が一人。
彼女は一般生徒、委員会にも参加していない。
だと言うのに、この夏季休暇の時期に制服姿で歩いているのは。
そう、補修である。

「(……あづ…)」

カッ…と太陽の照りつける下、か細い顎先に伝うのは珠のような汗。

普段は自身の異能の力で周囲を快適な環境に保っているのだが…。
今日の少女は、その首に異能抑制用の黒いチョーカーを装着していた。
月に何日かある不調な日。丁度それが補修の日と重なったのである。
体調不良で異能が暴走…なんてこと、起こすわけにはいかない。
なのでそういう時は自発的にチョーカーを装着するようにしているのだが……。

暑い……。

ご案内:「学生通り」に桜 緋彩さんが現れました。
桜 緋彩 >  
夏休みでも実家に帰らず風紀委員としての仕事をこなしている。
今日も今日とて街中の見回り。
夏休みだからこそ羽目を外している生徒も多いので、夏休みこそ見回りは強化していかなければならないのだ。
そんなこんなで学生通りを歩いていれば、前方をふらふら歩いている女子生徒を見付ける。

「すみません、体調が悪そうに見えますが、大丈夫でしょうか?」

彼女に駆け寄り声を掛ける。
明らかにふらついているし、滝のような汗も流している。
折り畳みの日傘を取り出し、彼女に差してやる。

雪城 氷架 >  
「……?」

ふ、と陽光が遮られ、不思議そうにそちらを見る。
…ああ、この制服───。

「大丈夫。…学園に着けば空調効いてるし」

心配そうな顔をする彼女にはそう言葉を返す。どことなく素っ気ない。
そしてまた、ふらふらと歩きはじめた。

まったく、こんなに暑いのが全部悪い。
普段が普段だけに、便利な魔術具なんかの類も携帯していないのが悔やまれる…。

桜 緋彩 >  
「それは、そうですが……」

確かに学園まで行けば涼しいだろう。
けれど今、まさに今はガンガンに暑いし殺人的な日差しもガンガン降り注いでいる。
一瞬言葉に詰まっていれば、歩き始める彼女。
慌ててこちらも彼女に合わせて歩く。

「えと、お急ぎですか?
 そうでないのなら一休みした方が……。
 あぁ、お水、水分も取った方が、ちょっと、待っていてください!」

ちょうど自販機の横を通りがかった。
彼女に日傘とついでにタオルを押し付け、その自販機で水と、一応スポーツドリンクも買っておく。
そうして戻ってきて、

「お水とスポーツドリンク、どちらが良いですか?」

それを両方差し出そう。

雪城 氷架 >  
「別に急いではないけど…何? 大丈夫だって───」

僅かに瞼を細め、もう一度大丈夫と断りを入れようとすると、
日傘とタオルをぎゅっと押しつけられる。

「…ちょっと」

と声をかけるより早く、彼女は自販機に向かっていた。
…小さく溜息が漏れる。

「別にいいって、言おうとしたんだけど……」

ただでさえ暑いのに、なんだか暑苦しいのに絡まれたな…。という気分。
とはいえ人の親切を無碍にするような教育も受けてはいない。

「……じゃあ、こっちもらう」

そう言って差し出されたスポドリのペットボトルを受け取って、代わりに日傘を返そう。

桜 緋彩 >  
「はい、どうぞ」

スポーツドリンクのペットボトルを渡し、代わりに日傘を受け取る。
水の方は自分の水分補給として後から飲むこととしよう。

「この暑さですから、熱中症の危険もございます。
 それだけ汗をかいていては気持ちのいいものでもないでしょう、お渡ししたタオルは返していただかなくても大丈夫ですので」

毎年何人か熱中症で病院に運ばれているものもいる。
対策はし過ぎるなんてことはないのだ。

「学園まで、と仰っていましたね。
 まだそこそこ距離はありますし、のんびり参りましょう」

そして横に並ぶ。
同じ向きで。
どうやら教室棟まで付いていくつもりらしい。

雪城 氷架 >  
「……ありがとう」

そしてお礼もちゃんと言う。
どういう形であれ善意は善意だ。

タオルで顔の汗を拭き取りつつ、やれやれと三度、歩きはじめる…が。

「…何、なんでついてくんの…?」

さすがに怪訝な顔。
もうしてもらうことはないだろう、と言ったところ。
なんか横並びで『参りましょう』とか言ってる……。

「暇なのか?」

思わずそう問いかけた。

桜 緋彩 >  
「お送りいたします」

にっこりと笑う。
大丈夫、と言いつつも明らかに調子は悪そうだ。
ここで分かれて何かあったら、自分を責めてしまいそうだ、と言うこともある。

「まぁ暇と言えばそうですね。
 見回りの最中ではありますが、今日は暑いからか遊んでいる生徒も多くはありませんし」

だいたいみんな喫茶店とかカラオケとか、屋内に引っ込んでしまっている。
外を歩き回っても悪さをしている生徒にもそう合わないだろう。
なんなら熱中症の危険のある生徒に付き添うのも仕事の内だ。
自分より少し背の低い彼女に歩調を合わせて歩く。

雪城 氷架 >  
「いいって……鬱陶しい」

つい、歯に絹着せぬ物言い。
色々な経験から風紀委員や公安委員に対しての印象は良くはない。
こうやって親切にしてもらうことも、正直疎ましく思ってしまう。

「…暇潰しなら他にもあるだろ。ついてこなくていいから」

ふい、と視線を前に向けて、少し早足に歩きはじめる。
調子は良くはないけど、倒れてしまうってほどでもない。

桜 緋彩 >  
「そう言わずに。
 便利な日傘ドローンとでも思って頂いて結構ですので」

冷たくされても笑顔のまま着いて行く。
彼女から見て太陽の側。
身長は自分の方が高いから、それほど高く掲げなくても彼女はすっぽり日傘の影に隠れるだろう。
冷却機能付きのちょっといい日傘なので少しひんやりするだろう。
流石にこの暑さでは快適とまでは言い辛いが。

「暑いですねぇ。
 私達が生まれるもっと前はこんなに暑くなかったそうですよ」

返ってこないかもしれない世間話の話題も投げながら。

雪城 氷架 >  
はぁ…と大きく溜息を吐く。
どうしてこう、風紀委員はお節介焼きが多いのか。

「悪いけど、嫌いなんだ。風紀委員とか公安委員とか…。
 親切にしてくれたり心配してくれたことは、ありがたいけど…」

一呼吸置く。
こんなことわざわざ言わないといけないのも気持ちが重いっていうのに。
余計なお世話を焼かれるのは嫌だから、やめて欲しい。
…そこまで言うのは、言い過ぎか。少し口を噤む。

…とっとと教室棟に行こう。
そう思えば、早足に。

「…無駄な脂肪多いと余計暑そうだな」

じっとりとした視線を横に向けながら、世間話への返しは辛辣だった。

桜 緋彩 >  
「ふむ、風紀委員はお嫌いですか?」

そう言う生徒は多い。
なるほど、と頷いて、風紀の制服を脱いでしまう。
くるくると丸めて鞄に突っ込む。
少し鞄は小さいが、無理矢理詰め込んでしまった。

「であればいち生徒としての親切ならば受けて頂けるでしょうか?」

これでもう風紀委員ではない。
単純に彼女を心配した通りすがりの生徒、と言う形。
屁理屈ではあるが。

「あー、ええ、まぁ。
 なかなか合う服もなく……お恥ずかしい限りです」

少し照れ臭そうに苦笑。
そう言うことを言われるのも、まぁ慣れてはいる。

雪城 氷架 >  
「嫌い。 ……あのな、制服脱いだからって変わらないだろ……」

何だその安直な行動…。
怪訝に細められた眼が余計に細まってしまう。

「ついてこないでいい。ってはっきり言ってもついてくるんだもんな…」

はぁ、と溜息再び。
どうしてこう、こういった手合いは食い下がるんだろう。
自分に何の得もないはずなのに。
やっぱりああいう委員会は変な人間が多いのか。

「だったら炎天下で人の心配してるより、暇なら暇でどこかで涼をとってればいいじゃん…」

何がそこまで彼女をそうさせるのか…。

桜 緋彩 >  
「少なくとも、風紀委員としての活動ではない、とは示せるかな、と」

風紀委員に親切にされるとか借りを作るとか、そう言うのが嫌なのかな、と思ったから。
まぁ確かに既に風紀委員と言うことを知られているから、屁理屈にすぎないのだけれど。

「ええ、着いて行きます。
 申し訳ありませんが、私の自己満足にお付き合い頂けるとありがたいです」

彼女を放って別れてしまえば、ずっとそれが気になって仕方ないだろう。
風紀委員に借りを作ると思って、と笑いながら。

「そもそもそう言うことが出来るのであれば最初から風紀委員には入っておりませんよ。
 個人的には、自分より他人を優先するのが風紀の人間だと思っておりますので」

雪城 氷架 >  
「…親切にしてもらって悪いなとは思うんだけどさ」

立ち止まる。
深く深く、息を吐きながら。

「風紀委員なんてやってる連中(お前ら)の、
 そういう独善的なところが嫌いなんだ。
 やめて欲しい、ってことに、自己満足に付き合え、って…本気で言ってるのか…?」

暑い。
くらくらする…。

「………」

自分より他人。
そんなことを平然と口にするから、信用ならない。
そこまでは、流石に口には出さなかった。

桜 緋彩 >  
「ふむ」

こちらも立ち止まる。
彼女の言葉に少し考えて。

「独善的なことが嫌い、と。
 であればどういう対応がお好きですか?
 先ほどのスポーツドリンクを高値で売り付けられる方がお好みで?」

少し意地悪なことを言っている自覚はある。
とは言え彼女が言いたいのはそう言うことではないだろう。

「恐らくは放っておいて欲しい、と言うことなのでしょうが、生憎体調の悪い人を放っておくことは私には出来ません。
 恥ずかしいからやめてほしい、とか、そう見えるだけで本当に元気だからやめてほしい、と言うことであればやめますが、そう言うわけでもないように見えます」

日傘を少し彼女の方に傾ける。
気休め程度の冷却効果が少しでも彼女の方に行くように。

「それでもどうしても、と言うのであれば、それはあなたが体調が悪いのが悪い、と言わざるを得ませんね。
 あなたが私達のそう言うところが嫌い、と感じるように。
 私もその言葉だけでそうですか、と放置してしまう自分は嫌いです。
 結局はエゴの押し付け合いなので「体調が悪い中炎天下を歩いていた」と言う落ち度のあるそちらが折れるのが理屈ではないでしょうか?」

勿論こちらに落ち度があれば言って頂ければ、と続けてから笑う。

雪城 氷架 >  
ダメそうだ。
こういう手合いは、はっきり言葉にしないとわかってくれないのかもしれない。
……面倒くさい。ただでさえ、体調も良くないのに。

「…返すよ。キャップもまだ開けてないし。
 タオルも、洗って風紀委員の本庁に届けさせてもらう」

スポドリのペットボトルを差し向ける。
…彼女は受け取らないかもしれないが、それでも構わない、手を離す。地面に落ちたって、知らない。

照り返す日差しに熱を持つ身体とは裏腹に、頭の中は冷えていく。
…あの時もこんな気持ちになったっけ。少しだけ懐かしむ。

「初対面の相手に1から10まで話すヤツなんていないよ」

「"やめて欲しい"それだけで汲んでもらえると思ったんだけどな…」

彼女の質問には答えられない。
小難しいことを言われても、意味も理解らない。
だからそれだけを告げて……少女は、己の首に手をかけて。
異能抑制用の、チョーカーを外した。

瞬間、少女の周囲…日傘を傾けた彼女の範囲も含めて、真夏とは思えぬ──凍える様な気温へと変化する。

「…調子悪いから加減効かないや。
 ……さっきも言ったけど、アンタの親切に感謝はしてたよ。
 そのやり方…というか在り方…っていうのか、よくわかんないけど、それも尊重する」

「──でも私には合わない。それで納得してくれないかな」

桜 緋彩 >  
「――なるほど、わかりました」

返されたペットボトルは受け取る。

「今更ではありますが、差し出がましい真似を致しましたね。
 大変申し訳ない」

頭を下げて。
姿勢を戻してから日傘を畳み、一応差し出しておこう。

「せめて日傘はお持ちください。
 邪魔だと言うのなら捨てても構いませんし、使って返す、と言うことでしたらタオルと同じように本庁に届けて頂ければ、それで」

鞄に押し込んだ風紀の制服を取り出し、会った時と同じように制服の上に着る。
改めて姿勢を正して彼女に向き合い、

「それでは、私はこれで失礼致します。
 まだ教室棟まで距離はありますし、この暑さです。
 道中お気をつけて。
 では」

もう一度びしりと一礼してから、来た道を歩いていく――

ご案内:「学生通り」から桜 緋彩さんが去りました。
雪城 氷架 >  
「……はぁ、…っ、()………」

彼女の背中を見送ってから、胸元を抑え小さなうめき声をあげる。
凍えるような寒さ。真夏の照りつける太陽の光とのアンバランスさに気分が悪い。

「……まったく」

残された日傘を手に、もう一度深い溜息。

「捨ててったらゴミになるじゃん…。
 ああもう、なんでこんな面倒なことになったんだ…?」

風紀委員、というだけで構えてしまう自分のせい、だろうか。
タオルと、日傘と、返すために委員会街まで行かなきゃいけなくなった。

「………」

異能抑制用のチョーカーをつけなおし、日傘を差す。
辺りは再び真夏の熱気、でも日傘のお陰で、大分マシに感じる。

「はぁ…まぁ、言いそびれたしその時についでにお礼も伝えてもらうか……」

名前ぐらい聞いとけばよかったな、と思いつつ。
あの身体的特徴を伝えれば大体わかるだろ…という安直な答えにすぐに辿り着き、その後も何度かフラつきながら教室棟へと辿り着いて。
ようやく補修の席につけば、今度は難解な補修内容に頭を抱えることになるのだった。

ご案内:「学生通り」から雪城 氷架さんが去りました。