2024/08/13 のログ
ご案内:「学生通り」に緋月さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■緋月 > 夏も盛りのとある日の昼間。
学生通りの入り口で人を待つ書生服姿の少女がひとり。
この暑い日に、相も変わらず暗い赤色の外套姿である。
「ふむ…ちょっと早く来過ぎたでしょうか。」
ちょい、と最近ようやく詳しい操作の仕方を覚えてきたオモイカネ8で時刻を確認しつつ、待ち人の姿を探してみたり。
何があるのかと言うと、以前に交わした約束の履行である。
随分と延び延びになってしまったが、自分も病院に入院していたり、待ち人のお仕事が忙しかったりと
時期を逃していたのだったが、ようやっと予定が合ったのが今日という訳である。
■伊都波 凛霞 >
「あ、もう来てた? お待たせー!」
太陽照りつける夏真っ盛りの島。
クールトップにショートパンツといった涼しげな装いでやってきたのは、
最近夏季休暇をエンジョイしまくっている伊都波凛霞お姉ちゃんです。
「やー、なんとか夏休みの間に一緒できたね。
風紀委員やってるとちょこちょ名前は聞いてたけど」
お互いになかなか忙しい夏を送っていたみたいだ。
待ち合わせの場所で横並びになれば、あついねー、と手うちわでぱたぱた。
そして待っていた彼女の服装にぎょっとする。
「暑くないの…?緋月さん」
■緋月 > 「あ、どうも、凛霞さん。おひさしぶりです!」
発見が遅れた。以前に顔を合わせた時は制服だったし、時折姿を見る時も制服だったので、
私服姿が初めてという事もあり、気が付かなかった。
うむん、不覚。
「風紀委員のお仕事はお忙しそうですからね…。
何とか予定が合ってよかったです。
……どういう経緯で私の名前を耳にされるのか、個人的には訊くのがすこし怖いですが。」
主に、かつての大立ち回りの事を思い出す。
あの戦いの件は表向き、風紀委員の方で処理して貰った…という記憶があったので、表沙汰には
なっていないが、その風紀委員の内部では噂になっていそうな気はする。
「暑い、ですか? ああ、確かにこの服装でこの夏は少々暑いですかね。
帰った時や、喉が渇いた時は水分は欠かさず摂るように心がけていますが。」
そういう問題ではない気がする。
罰ゲームでなければ着用者の正気が疑われそうな暑苦しさだ。
「あ、流石に店内では脱ぎますよ!」
そういう問題でもない気がする。
■伊都波 凛霞 >
涼しげで、制服に比べれば露出も多い。
身体のラインもよく出て、多少なり雰囲気は違うだろう。
オフの日、をしっかり弁えているからこそなのもしれない。
「夏季休暇は羽目外しがちな子も多いからどうしてもね。
ふふ、刑事課だからね。否応なく色々な事件やいざこざのお話は聞こえてくるよ」
そんなやりとりをしつつ、それはそれとして今日はオフ。
それほど掘り下げるつもりもないのか、ぱっと空気を切り替えて。
「少々で済むのが凄いくらいだけど…」
心頭滅却すればなんとやら、というやつだろうか。
「そういう問題でもないような……ま、まぁとりあえず。いこうか♪」
斜め上の発言苦笑しつつ、目的地に向けて移動を開始。
並び歩く二人の格好があまりにも違いすぎて、逆に人目を引いている気がする……。
■緋月 > 「成程、少し羽目を外し過ぎて、お説教の対象になると。」
ちょっと穏当な表現でお茶を濁す。
確かに、夏は開放的になるもの。ちょっとそれが度を過ぎてしまう方が少し多くなってもおかしくはない。
「…という事は、やはり「あの件」のお話も届いているのでしょうね……。
――と、いかんいかん、折角のお休みです。
憂鬱になりそうなお話はなしにしましょう!」
折角の食事である。気持ちよく行きたいものだ。
既にあの機界魔人を名乗った青年の一件は、自分の手からは離れてしまった事。
気にかけこそすれど、首を突っ込むには既に己は部外者だ。
「意外と慣れるものですよ。
――凛霞さんの服装も、涼しそうで気にはなりますが、私が着ても似合うかどうか。」
主に胸部の差で。
劣等感を持っている訳ではないが、もうちょっとだけ立派になってもいいのでは、という気持ちが
以前に同居人とプールで会った時からどうにも拭えない。
「――と、ありましたありました! ここですね!」
お目当てのお店を見つけて、軽く指を指す書生服姿の少女。
その先にあったのは――
――そう、その個性的トッピング量によって本土にて人気を博し、
様々なインスパイア店舗を生み出した、ある意味人気ラーメン店。
はるばる常世島にまで支店を出した、本家本元――――
■緋月 > ――――《ラーメン二世・常世島店》
■伊都波 凛霞 >
「ありがと。そのあたりの話はまた追々、ね」
終わった騒動の話、ではある。
当事者としては気になること、知りたいことも当然あるだろう。
なので、それはまた折を見て──。
横並びに歩いて会話を交わしていると、ちょっとだけ気になる発言。
今日みたいな日にも同じ格好、ということは普段からあまり余所行きなんかも着ていないのかな…と。
「ん。サイズの差異くらいで全っ然似合うと思うけど…」
むしろ薄着になるこの季節、色々隠せなくて気にするのは持たざる者ではなく持つ者…。
上着で隠したりというのも暑苦しいし、身体のラインが出ない服装というのも夏場は意外に難しい…。
「むしろ緋月さんくらいのスレンダーなスタイルのほうが似合うと思うけど…あ、このお店?」
なんて喋っているうちに到着した、堂々たる店構えと、その店舗名……。
「こ、これが噂の…ラーメン二世……」
ごくり。
知識としては知っていたけど、色々な問題で敬遠していた伝説の店だ。
■緋月 > 「はい!」
どこか緊張気味の同行者に対し、満面の笑みで答える書生服姿の少女。
何の邪気もない笑顔が、かえって怖い。
「以前に広告でちらりと見て、一度来てみたかったのですよね!
何でも山のような野菜と肉の載った、食べ応えの満点のラーメンだと!
なので、朝ごはんはちょっと少なめにしてきました。
確か、外の自動販売機でお茶を買ってから入ると良いとか…?」
既に臨戦態勢。喰ってかかる気満々である。こわい。
「あ、そういえばここに行くと緋彩さんにお話した時、「お守り」と言われてこれを貰ったのですよね。
食べ終わったら、これを飲むようにと。」
と、取り出したるは、口臭対策のお供。
飲み込む事で息をリフレッシュする手助けをする、女子のお供のアレだ。
ちなみに黄色いレモン味。
これを渡した人の、その時の表情と心境や如何に。
■伊都波 凛霞 >
お守り。
そう言って取り出したものは…うん、よく見るやつ。
なるほどね……何よりも雄弁にこれから食すものを表現している。
「───よし、行こう!
スタミナ満点、夏にはちょうどいいかもね!」
臨戦態勢の少女の隣で、覚悟を決める。
そして、迷いなく自販機でお茶を購入。
なぁにちょっと日々の運動を増やせば良いだけ。
凛霞としてもまったく興味がなかったわけではない。
いざ、はじめての二世系ラーメン!!
■緋月 > 「はい、行きましょうか!
しっかり食べて、体力をつけましょう!」
こちらは笑顔でうっきうき。
だが忘れてはならない。笑うという行為は本来、獣が牙を剥く行為が原点。
同じく自販機でお茶を買って、いざ入店の儀。
「お、おぉ――。」
まず出迎えたのは、濃厚な香り。
何と言うか、人を選びそうではあるが、書生服姿の少女には食欲を刺激される香りであった。
「あ、ここは食券を買うお店だったのですね。
何やら呪文らしいものがあるというので、席についてから注文するのだと思ってましたが…。」
色々なラーメンの名前がついたボタンの並ぶ食券販売機がまず目につく。
「ふむ――――確か、オススメは…これでしたね!」
お金を投入し、少女が迷うことなく押したボタンは、
[焼き豚ラーメン・大]
――更に味玉子までつけている。
初見にてこの有様、蛮勇と言うべきか、命知らずというべきか。
■伊都波 凛霞 >
店に入るなり香ってくる香り。
───これ、口臭ケアだけで足りる?
体というか服全体に染み付いてしまいそうな…薄着で良かった。
ともあれ、挑むと決めたからには挑む。
凛霞は思い切りの良さも完璧であった。
「そうだね、食券を買って、渡す時にオプションを──」
おお…迷いなく焼き豚ラーメン、しかも大をいった…!
ここの大って、普通の店の大じゃないよね…?多分……。
「………」
ラーメン小、に指が伸びそうになる。
いや、しかし、戦うと決めたなら逃げてはいけない…のではないだろうか。
はじめて二世系ラーメンにいったよ、と誰かに話した時に何食べたの?と聞かれ、
ラーメン小さ、なんて答えた時の相手の反応を考えてみよう。
『それなら二世でなくていいじゃん』 もう100%これである。間違いない。
カタン。券売機から食券が落ちる
『焼き豚ラーメン・大』
「(…後悔しませんように)」
■緋月 > 一方こちら、服に匂いが確実についてしまいそうな少女。
だがまるで頓着がない。これが若さか、あるいは無謀か。
「おお、凛霞さんも大で行きますか。
では思い切り食べましょう、お互い!」
その食欲は女子としてどうなのか。
ともあれ、続いては座席である。
「ふむ…少し混んでる、という所でしょうか。」
昼食時、ということもあるのか、割と人はいる。
――が、この店の「重さ」を弁えているが為か、通常のランチタイムの店に比べると人の入りは少ない。
さもありなん、ニンニクを初めとした匂いがしみついた状態で委員会活動は流石に辛かろう。
それ以前に食べ過ぎで動けなくなるのを避ける為、小を選ぶ客も多いだろうし。
「テーブル席もカウンターも空いてますね…。
どっちにしましょうか?」
腰に差した刀袋を手に持ち直し、軽く首を傾げる少女。
どちらに座るにしろ、刀袋が腰にあっては邪魔になってしまう。
■伊都波 凛霞 >
「空いてるし、テーブルにさせてもらおっか」
壁際にちょうど空いているテーブルを見つける。
刀袋をを置くにも、きっと丁度よい。
「にしても結構お客さん……。
人気のお店とは聞いてたけど、これほどとは」
着席して、店内の様子を伺う。
聞こえてくる謎の呪文達…なるほど、これが噂の…。
「ええと…私もはじめてだから…。
あ、このへんのオプションというかトッピングが全部無料なんだね、すごい」
ヤサイ…はそのまんま、野菜が増す
アブラ…は背脂、こってり派にはかかせない、らしい
カラメ…は醤油、要するにスープをより濃厚に…
ニンニク…説明不要
「………」
手元のオモイカネ8で検索した情報で出てきたのは、それらを繋げて言うのが呪文、らしい。
「(…トッピングなし、は邪道なのかな……)」
なんか店内のお客さんはみんな口々に呪文を詠唱している気がする……。
■緋月 > 「ふむ、あそこのテーブルですね。」
刀袋を置くのに中々具合がいい。
気を回して貰ったのだろうか。有難い事である。
「トッピング…というと、追加の食材ですか。
それが無料と…随分と豪放なお店ですね…!」
ちょっとお店の損得勘定が気になってしまった。
だが、こうしてお客が入っているという事はそれでもしっかり儲けが出ているという事なのだろう。
凄い事である。
「しかし、何やらお客の皆さん、店員さんが注文を取りに来られる何事か唱えてますね。
――はっ、さてはこれが以前に聞いた覚えのある「呪文」とやらですか。
何やら注文の際に呪文を唱えるとよいと聞いた事がありますが。」
人が多いので、あまり迷惑にならない位の声量でおはなし。
こちら、呪文の意味がさっぱりだが、唱える文言については何か知ってるらしい少女。
「私も直接の来店は初めてですからね…。
今更ですが、ちょっとドキドキしてきました。どんな大きさのが出て来るんだろう…。」
と言いつつ、どこか楽しみそうに見える。
■伊都波 凛霞 >
「そうそう。この無料のトッピングの注文を、食券を渡す時に言うみたいなんだけど。
うん…多分それが、"呪文"…」
ゴクリ…。
「大、って結構な大なんじゃないかな…。
うっ……」
会話の途中に、凛霞は見てしまった。
なんか、ラーメン鉢の上にその3倍か4倍ぐらいの容積で盛り上がった何かを。
「(何、なにあれ!?どういう呪文を唱えればああなるの…?!)」
呪文、迂闊に唱えてはいけないのでは……。
そうこうしているうちに、店員がやってくる。
お水とおしぼりとテーブルに置くと、食券を預かろうとにこやかに対応してくれる。
「お、お先にどうぞ」
つい、先手を譲ってしまった。
■緋月 > 「成程、そういうからくりだったのですか。
――おぉ…。」
納得しつつ、書生服姿の少女も、何かすごい山を目撃してしまった。
ラーメンのどんぶりの上に山を成すアレは――――
「…うーん、野菜ですかね、アレ。
多分、もやしとか、そんなものだと思います。成程、あんな感じに増えるのか~。」
脅威度をまるで感じない暢気さ。あまつさえ、
「――とことんお腹が減ってる時に食べたら、すごく満たされそうですね。」
こんな事を宣う始末。なんてことだ。
と、そんな間に、店員さんの来訪。
「あ、これはどうも。」
自分の分の食券を手渡そうとして、ちょっとしり込みするような同席の彼女の言葉を耳にすれば、一つ頷く。
「わかりました、では私がお先に失礼して――」
ひょい、と店員さんに食券を渡せば、その時が訪れる。
『ニンニクは入れますか?』
そう、この言葉こそ呪文を唱えるタイミング。
それに対し、思いだすかのような仕草を経て、書生服姿の少女が発した言葉は、
■緋月 > 「ニンニクマシ野菜アブラカラメオオメ――でお願いします!」
――――蛮勇、ふたたび。
野菜マシマシでない分、まだまともだが、初見には辛いとしか思えぬ内容――!!
■伊都波 凛霞 >
「──!!」
いった~~~~~~~!!!
「え、あっ…だ、大丈夫…?
多分、さっき見たあんなの来るよ…!?」
えええええ、見た目によらず大食漢なのかな…。
さしもの凛霞もやや慌てる。
が、店員さんはにこやかに復唱。
……あ、意外に女の子でもいける内容なのかな。
「あ…えっと、私は…ヤサイマシ、で…」
さすがに長文詠唱は避けてしまった。
現物を見た後だと、戦意喪失も已む無し。
むしろアレを見てがっつり呪文を唱えるこの緋月という少女…只者ではない…。
■緋月 > 「うーん…多分、ですけど、あれ位なら充分いけるかと。
朝も少なめにしてきましたし、割と食べる方ですから、私。」
そういう問題なのだろうか。
同席する方が心配の声を掛けるのも仕方ない気がする。
色々と、危ない。色々と。
そうして、二人分の注文を取って、店員さんはカウンターの奥へ引っ込んでいった。
後は、注文の品が現れるのを待つばかり。
「――待ち時間、ちょっと暇ですね。」
そんな事を口走りながら、お冷に軽く口をつける。
一気に飲み干す訳ではなく、軽く喉を湿らせる位の量だった。
「…あれ。凛霞さん、アレ、見て下さい…!」
と、何かが目に留まったのか、少し声を抑えながら視線で他のテーブル席のお客さんを示す。
見れば、レンゲと箸を使って器用に野菜と麺を入れ替えている。
「ああ…野菜に気を取られると、麺が汁を吸って伸びてしまうんですね。
だから、ああして入れ替えて伸びるのを避けているんだ…器用ですね~…。」
感心したような声。
■伊都波 凛霞 >
「見た目によらずいっぱい食べるんだね…」
どちらかといえば小柄にも見える彼女。
物理的にあの容量が内臓に収まるのか…世の中は不思議で溢れてる。
「ふふ、結構混んでるもんね。
いっぱい作らなきゃ店員さんも大変かも。……ん?」
促されて、視線を移動させると…。
…なるほど。
慣れている人の動き。
確かに麺が延びると容積は増える一方……。
「さ、参考にさせてもらおう」
ごくり。
■緋月 > 「あはは…ここに来る前は、三食安定している訳ではなかったので。
食べられる時に沢山食べる癖がついてしまって。」
ちょっとだけ苦笑い。
「あまり食べない時間が長いと、筋力が衰えますし、稽古も長続きさせられませんし…。
その分、沢山食べた後はしっかり稽古と鍛錬に時間を割いてます!」
どうやら、此処を生きて帰った後は彼女も稽古に打ち込む模様。
どれだけ激しい稽古と鍛錬になるのやら。
「折角の麺が伸びてしまったら台無しですからね…。
あの野菜の量では、一気に食べ切るという訳にもいきませんし。」
ちょっと真剣な顔で他のお客さんの動作を観察する。
同じく参考にさせてもらうつもりのようだ。
――そんな時間を過ごす間に、遂に"それ"がやってくる。
『お待たせしました~。』
店員さんの声と共に、書生服姿の少女の前にどんぶりが置かれる。
どん、と音がしたような気もした。多分気のせい、だと思いたい。
■緋月 > 「お、おぉ……!」
思わず歓声。
載せられた野菜の量そのものは、常連らしい皆さんに比べると明らかに少ない。
が、他がすごい。
どれだけ入ってるの、と思いたくなる生ニンニク。
明らかに多い量が浮かび上がる背脂。
スープからは濃厚な香り。
――――量だけで判断するなかれ。
この丼の中身――――質量以上の意味で「重い」!!
■伊都波 凛霞 >
たくさん食べてたくさん動く、たくさん稽古をする。
うーん、わかる、わかりすぎる。
「私も、甘いものが大好きだからよく鍛錬で消化しようとはするな~。
何食べてもどれだけ食べても太らない、って子が羨ましいよ」
そんな人がいるのだろうか。
いるのである、現実に。
食べても食べても、顎やお腹にだけ一切肉のつかない不思議女子がこの世界には。
力強くそう語ったところで、注文の品がやってきた。
「(うっ…)」
初心者が挑むには、ラスボスにも近い威容…。
凄く美味しそうな匂いはしてるけど、これ…いける…!?
おそらく緋彩さんが渡しただろう、お守り…多分、足りない!
「す、すごいね~…写真撮りたくなるくらい……」
そして、そうこうしているとこちらの注文の品もやってきて…
「───!」
なんか何も呪文を言わないのもアレかなと思って。
一番ヘルシーな感じのヤサイマシを唱えた凛霞お姉ちゃんでしたが。
それがまさか一番量感の増える呪文とは想像していなかった。
「(や、山がある……)」
このモヤシの山の下に、麺が眠っている。
──急がねば大変なことになるやつ。
■緋月 > 「と、撮りましょうか、写真。
折角の記念に…あ、急がないと、麺が伸びちゃう!」
ちょっと声が震えている――が、動揺によるものではない。
この山を前にしても、この少女――山となった野菜とその下の麺への歓喜に震えている!
大急ぎでオモイカネ8を動かし、写真を取ると、思い出したように外套を脱いで脇に置く。
「――いざ、いただきます!」
ぱん、と両手を合わせる音が響く。何時いかなる時も、食への感謝を忘れずに。
箸とレンゲを手に取るや、書生服姿の少女は先程垣間見た常連さんの動きを見様見真似でトレース開始。
「さ、流石に初見ではそう簡単には…!」
と言いつつも、その速度は決して遅いものではない。
順調に野菜と麺の位置は入れ替わり、野菜の山はスープに沈んで麺の山が姿を現す。
天の野菜と地の麺が逆転したら、待望の食事開始。
つるりと麺を口に運べば、
「~~~~、おいしい…!」
繊細さからは遠い、豪快な食感と味わい。
だが、ゆえにこそ感じられる独特のうまみ。
脳が揺さぶられそうな快感――!
■伊都波 凛霞 >
自分も目の前の怪物を写真に収めつつ、深呼吸。
深呼吸したら、なんとも濃厚で香ばしい香りが無理矢理に満たしてくる……。
けれど挑むと決めたのだ。
「いただきます」
両手をあわせ、いざ…!
普段ラーメン屋さんにいく時は、まずスープからいただくものだけど…。
とりあえず野菜の山をかきわけないとそこに到達できない。スープis何処。
そうか、ここで緋月さんも見様見真似でやっているけれど、あの技を使うのだ。
───いや、ここは。
そう、小鉢に移植だけでなく、小鉢にスープ、麺、野菜。
ミニラーメンを作って食べていくのがいいのではないか。
思い立ったらすぐに敢行──するる、と。ラーメンを食べるには少し上品にも思える啜り方でいただく──。
「──! すごい、麺にしっかりスープが絡んで…。
野菜の味もしっかり溶け込んでて、お、美味しい…!」
正直言って見た目はあまり美味しそうには見えない豪快なものだっただけに、驚いてしまった。
これがラーメン二世…。愛される店の力。
■緋月 > 「はい、これは…何と言うか、癖になる人には癖になる味です…!」
旨味の快感に脳を揺さぶられつつも、箸を止めない書生服姿の少女。
つるつると麺を運ぶ手が止まらない。ああ、止めたくない…。
「…よし、次はこちら、行ってみましょう!」
一度お冷を口にしてさっぱりしてから、次に箸を向けるのは――分厚く切られたチャーシュー!
山の如き野菜のインパクトに最初に目を奪われたが、こちらも中々の代物。
何しろ分厚さの上に脂身がすごい。部位次第では肉本体と1:1くらいの割合なんじゃないかと思いたくなる。
「――いざ。」
一枚を箸で挟み、口に運ぶ。
途端に広がるのは脂身独特の触感と広がる脂の味わい…だけではない。
「……お、お肉も、スープが染みてて、おいしい…!」
ただ脂ぎってるだけでは確実に胸やけを起こしかねない代物。
しかし、それを起こさせないような旨味がある。
肉にしっかりしみ込んだ味。ああ――たまらない。
「……来てよかった…!」
歓喜の一言。
■伊都波 凛霞 >
なんて美味しそうにラーメンを啜るんだろう。
あまりにも幸せそうな顔なので、オモイカネ8を向けてぱしゃりと一枚。
心底幸せそうな顔でラーメンを啜る愛らしい少女がそこには収められた。
怒られたら、消そう。
「どれ、私も…」
魔力漲る極厚チャーシュー。
いい感じに炙られて、堪らない食欲を唆る香りがする。
「うわ…お箸で切れるよ…このチャーシュー…ぷるぷるしてる…」
あーん、と少し大きくお口を開けて、ぱくり。
「んん~~♡
とろとろ~♪ 噛まなくても解れちゃう」
一体このチャーシューに何時間…いや何日かけているのか…。
口の中にその旨味が残っているうちに、麺を啜ればそれがまた堪らない味のハーモニー。
「本当。噂に違わぬ味って感じ…」
来て良かった、なんて染み渡るように口にする彼女を見て、こちらもなんだか幸せ気分。
「よーし、スパート!」
味は十二分。であれば後はもう、ひたすらに食するのみ!