2024/09/10 のログ
ご案内:「学生通り」に橘壱さんが現れました。
■橘壱 >
学生通り 某日 某時間。
すっかり日もくれかけた夕暮れ時。
苛立ちを隠せないまま、少年は浮かない表情で歩を進めていた。
よもや、仲良くなった矢先その友人の姉と喧嘩するとは思うまい。
勿論、自らの落ち度があることは理解している。
それでも、少年にだって許せない事がある。
「何が大人の都合だよ、体よく言ってるだけじゃないか……。」
深刻な問題だとはわかっている。
ただ、少年が思うよりも根深いものだった。
人には触れられたくない部分だってある。
少年はそこを理解しきれなかった部分もある。
だとしても、譲れなかった。クソ、と苛立ちに任せて思わず小石を蹴飛ばした。
カツン、と街灯にぶつかり虚しく音が響く。
ご案内:「学生通り」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 「橘くーん!!」
■伊都波 凛霞 >
学生通りに響く声。
振り返れば、そこには十数分前に言い合いになっていた少女がいる。
否、いるだけじゃない、地を蹴り長いポニーテールを棚引かせ、なかなかの速度で少年へと迫っていた。
両手にはミセスドーナツの凛霞セレクトな下げ袋がダブル。
『自分が悪いんだから、謝らないと』
そう思った少女の行動は、余りにも速かった。
■橘壱 > 「は???」
■橘壱 >
思わず素っ頓狂な声が漏れた。
なんか今聞き覚えのある声がしたぞ。
しかも今、一番出会いたくない相手だ。
思わずばっと振り返る。何か見える……。
「…………。」
もう一度見る。
おいなんかもうちけーぞ。早すぎない???
思わずぎょっと表情が引きつった。
少年が取った行動は……。
「うわっ。」
うわっ。余りにもドン引きしたような声。
からのもうダッシュだーーーーーッ!!
一般人の走力!一般的見ればまぁまぁ速い。
そう、一般的には……ネ……。
■伊都波 凛霞 >
彼が逃げようとする。
気まずい、その気持はわかる。
──でも都合で話をしたんだ、今更。
自分の都合で、ちゃんと謝罪を───。
より、姿勢を前傾に──
「待って!私、君に謝らないと───」
■伊都波 凛霞 > 「いけないんだから──!!」
■伊都波 凛霞 >
神速。
そう形容するのが余りにも正しい。
恐らく彼の知るAFのオーバーブーストよりも疾く、その少女は少年の目の前へと立ちすがった。
「はぁ、はぁ……っ……ごめん!橘くん…私、謝らないと…!!」
■橘壱 >
とにかく撒かなければ行けない。
今は合わせる顔だって無い。
というか、昨日今日じゃなくて本当についさっきの出来事だぞ。
どういう情緒してるんだよ、頭おかしいのか(戦慄)
いや、でも全力で逃げれば大丈夫なはず。
彼女の身体能力の高さのデータは知っている。
最悪、AFを使えばどうということ……チラッ……。
■橘壱 > 「うわー!?妖怪ターボババア!?」
■橘壱 >
ノンデリ発言もそりゃ飛び出る。
だってなんか速い。疾いってレベルじゃないぞ。
Fluegelの最大速度と同等…いや、それ以上出ている。
正しく暴風、疾風、舞い上がる風圧に足を取られそうに成りつつ
両腕で前面をガードしながら足を止めてしまった。
「いやもうなんでさっきまで後ろにいたのに前いるんだよ!
僕が逃げてる側だったんだけど???どういうこと???」
そりゃまあ追い抜かれたんだけど、突っ込まずにはいられなかった。
■伊都波 凛霞 >
驚かれてる、仕方ない。
妖怪とかババア呼ばわりは…今は置いとく!
「──ごめんなさい!」
少年の前に立った少女、凛霞は真っ直ぐに腰を折って、深くその頭を下げる。
「橘くんの気持ち、言いたいこと、ちゃんと理解ってたのに。
あの件に感情的に踏み入るのは私はどうしてもできなくて……」
頭を下げたまま、そう言葉を続け、そして…。
「それを理解ってもらおうと思って、余計なこと、たくさん言っちゃった…。
怒るのも無理ないよね…だから、ちゃんと謝らせて──、ごめんなさい…!!」
頭は、上げない。
彼の言葉を待つ…。
…でも彼が逃げたら、追いかける(本気)
■橘壱 >
彼女のことだ。
案の定というべきか、まさか本当に謝りに来るとは思わなかった。
確かに互いに落ち度とする部分はあり、功罪半ば。
お互い様と手打ちにするのがベストなのかもしれない。
しかし、男の子と言うのはヘンに意地っ張りだった。
しかもそれが、昨日一昨日ならまだしも今日の出来事だぞ。
「…………。」
情緒ジェットコースターがすぎる。
どんな顔で、どんな言葉掛ければいいんだよ。
何を今更……いや、今更っていうは今日なんだけど。
本当になんにも言えねぇ、何とも言えない顔してる。
え、どうしよう。行動力の化身ってレベルじゃないよ。
行動力にでっけぇおっぱい生えてるってこれ。
だが事実誠実なのはそうだ。
かといっても、彼女の言葉を忘れたわけじゃない。
あの速度、走っては逃げれない。それなら……。
「……急いでるんで!!」
突き放す言葉を放つと同時に、トランクを放り投げ、"跳ぶ"。
数秒にも満たない一瞬で、トランクがひしゃげその全身を蒼白の装甲が覆い尽くした。
鋼の機人。AFの姿。即座にバーニアが青白い炎を拭き上げ
急加速で夕暮れへと飛んだ。横がダメなら上だ。
流石のあの速力でも、上には昇ってこれまい(フラグ)
■伊都波 凛霞 >
高次予測。
トランクを手にした瞬間には。
あ…逃げられる。
神速の脳神経伝達がそう教えていた。
さすがに空を飛ばれては追いかけられない。
──そう思ったに違いない!
「なん、って、逃げるのー!!」
「ちゃんと謝って、仲直りしよう!!」
その声は、少年橘壱のすぐ下から聞こえてくる。
──パワードスーツに瞬間、制服の袖から射出したモノフィラメントワイヤーが絡み、飛行するAFにしがみついていた。
落ちたら死ぬかな。
死んだら謝れない…だから落ちない。
行動力の化身。即断即決。
伊都波凛霞の良いところであり、ヤバいところでもある。
■橘壱 >
軍用のAssaultFrameは通常空戦兵器以上のスピードを持つ。
加速も、最高速も、火力も、並の兵器では太刀打ち出来ない。
正しく次世代に向けた最新鋭の兵器だ。
伊都波凛霞の能力はプロファイルデータ上知っている。
所謂超人に該当するような異能者だ。だが、空は飛べない。
此れが、兵器としての利点。そう考えていた時期が私にもありました。
「えっ!?ちょっ!?」
ガコン、脚部に掛かる重量。
バカな、あの一瞬で反応して引っ掛けたのか。
謝る謝らない以前に怖くないのかよ…もう困惑せざるを得ないし
何よりも此処までされたら折れざるを得なかった。
「わ、わかった!!わかりましたから!!
幾らなんでも無茶はやめましょうよソレ!!」
全身のバーニアを駆動しながら滞空。
ワイヤーを手繰り寄せて抱きかかえればゆったりと下降。
幾ら超人とは言え生身の人間。丁重に扱う。
とりあえず、人のいない高層ビルの上に着地すれば彼女を下ろした。
そして、程なくしてひもどけるように中から少年の姿も出てきた。
げっそり。凄い疲れた顔。
そういうふうにもなるよ。
「……それで、なんですって?」
とりあえず一旦ね、一旦リセットで。
■伊都波 凛霞 >
真っ直ぐすぎる少女、凛霞にとっては。
このまま彼と亀裂ができたままでいることのほうが…落下するよりも遥かに怖い。
身体全体にかかるG、押し潰されそうになって顔を顰めて、それでも耐える。
こんな気持ちで数日?数週間?過ごすことなんて出来ない。
結果、根負けしたのは…少年のほうだった。
AFに抱きかかえられ、ビルの屋上へと着地。
…さしもの完璧超人と揶揄される彼女も、高速起動のGはさすがに応えたのか、ややふらつきながら片膝をつく。
「──君に、謝らなきゃって思って…気づいたら、身体が動いてて」
これだ。
一度感情的に動こうとすると無茶を平気でする。
それが理解っているからの鉄壁の理性…少年の言葉を突っぱね続けた理由の一つでもある。
その両手に下げられた手提げ袋は彼も見覚えのあるミセドのもの。しかも二つ。
少し息を上がった呼吸を落ち着けるようにして、立ち上がり。
「…本当にごめんなさい」
あらためて、深く深く、頭を下げる。
■橘壱 >
機械を通してでもGに耐えられないというのに
幾ら超人とは言え生身の人間。流石に応えるものがあったらしい。
こうなるなんて、火を見るより明らかだったろうに。
気まずさと何とも言えなさと、そして呆れ。
あらゆる感情が綯い交ぜとなった何とも言えなさ。
「いや、それでも限度ってものが……まぁ、そう、そうか。
そういうことでもあったんですね……まぁ、はい……。」
嘘だろ、と思わずにはいられない。
本当に行動力の化身だった。
思い立ったら吉日なんて言葉もあるけど、早すぎる。
これじゃあ福の神は過労で死んでしまうよ。
まぁでも、敢えてそう振る舞った理由はわかった。
こうなるんだろう。多分、あそこで頷いたら
弟切 夏輝をそりゃもう虱潰しどころか穴つぶしレベルで探すんだろう。
だから抑え込んでいた。大変なことになるのは、目に見えていたから。
ともかく、理由はわかった。そこは納得しよう。
「……頭を上げてくださいよ。謝る理由もないんじゃないですか?
確かに不用意に踏み込んだ僕が悪いんです。
僕の言葉は必要でもないし、対等でも無いんでしょう?」
確かに不用意なのは自分だった。
だが、それが必要ないならそこまでの話だ。
だから、話を打ち切った。謝る必要だってなにもない。
顔をしかめたまま、じとりとその頭を見やる。
■伊都波 凛霞 >
──頭をあげる。
少し眼が潤んでいるが、涙は見せるわけにいけない。
こんなところで、女の武器とも揶揄されるものを見せるのは唯の卑怯な行為。
自分への情けなさ、彼を傷つけたことへの悔い。
色々な感情が織り交ぜになって、それを発露させようとするけれど。
誰に何を言われようと、此処は我慢をする。
「──説明するのが難しくて、君が優しいから。
心配したら、絶対に私の力になろうとする…っていうことが伝わってきて。
でもそれは出来ないことで──、私は大丈夫だって思ってもらうしかないと思っちゃったから」
ごめん。と言葉を続ける。
「だから、君の言葉を封じるために対等という言葉を使ったわけじゃないの。
少し君の言葉が強引にも思えて、私以外の人にも同じように…って思ったら、不安だった。
だから、ごめんなさい」
今更言い訳にしかならないけれど、弁明としてはそんな程度のもの。
これで彼が聞き入れてくれなければ、聞き入れてくれるまで頭を下げる。
そう、今もまた立場は対等じゃない。
聞き入れて欲しいのが私で、それを許す立場が、彼だ。
断られれば、受け入れ大人しく身を引くべき。
それが大人の対応だと理解しているから。
彼にもそれを伝えたかっただけだったが、彼はそう取ってはくれなかった。
今度は、伝わるだろうか。
「…許してもらえるなら、何でもする」
比喩じゃない、彼の言葉に従う意思がある。
そうして、目尻を拭い、真っ直ぐに鈍色の視線が交差する。
■橘壱 >
無遠慮に言葉をぶつけた自覚はある。
感情的になって、一切の遠慮はしなかった。
今思えば売り言葉に買い言葉ではあっただろう。
だからって、そこまで傷ついていたのか。
「(今にも泣きそうじゃないか。それに……。)」
潤んでいても、視線は真っ直ぐ。
おまけに言葉には強い意志がある。ハッタリじゃない。
なんでも、と来たか。昨今のエロゲですら聞かないぞ。
余りの勢い、実直さ、優しさにはたじろがざるを得なかった。
いや、実際に困った。困り果てていた。
何とも言えない不貞腐れた表情。
いやだって、初めてだよ。
喧嘩したその日どころか数分後位に仲直りしに来る人。
気持ちの整理がつかないどころの話じゃない。
しかし、身を挺してまで謝りに来たのなら受け止めざるを得ない。
少年はそこまで冷酷にはなれなかった。
何せ、喧嘩の発端は結局のところ善意が始まりなのだから。
「……まず、その"何でもする"っていうのは、幾らなんでも言わないほうがいい。
僕ならともかく、ちょっとでも魔が差したら、何されるかわからない。」
「いかなる場合でもあっても、安売りするような真似はよしてください。」
漸くと合わせた碧の視線。
まずはそこを訂正しよう。
彼女ほどの女性、下手をすると何されるかわかったものではない。
気まずそうな表情のまま、とりあえず冷静に
なんとか言葉を一つ一つ、紡ごうとした。
「仮に僕が変なこと要求したらどうするんですか、全く。
……落ち着いてください。さっきほど怒ってないです。」
「でも、まだ腑に落ちたわけじゃない。
確かに僕が不必要だったんでしょう。
それは別にいい。そんなにいけないことでしょうか?」
「人を助けようと、力になろうとするのは。」
その通り、誰にだって言う。
少年の根っこは善性だ。
取り繕うものがない今、本来の行動規範が表に出ているだけ。
余計なお世話。それならもうそこまででいいじゃないか。
なのに、わざわざ謝りに来て。こう問いただされることだってわかっていただろうに。
■伊都波 凛霞 >
「あ…ご、ごめん…。
……でも橘くんはそういうこと、言わないでしょ?」
何でもする。
その言葉を誰にも使うわけでなく。
或る意味目の前の相手を信用した上で使ったのだと、伝える。
信頼、しているのだと。
安売りしてはいけない…というのはその通りかもしれない…肝に銘じよう。
「違うよ。不必要だった、なんてことない。
私はまだ、…彼女の起こした事件を受け止めきれていないから。
……どういう感情で処理していいのか、わからなくて…」
「…自分の中でまだ答えが出ていない。
そんなことに、君みたいに優しい後輩を絡ませるわけにはいかないと思った」
言葉のトーンは落ち、視線もまた、下へと下がる。
彼女が殺人鬼として追われている現実が受け止めきれていない。
「まだ、誰かの力を借りる段階じゃない…そう思ったから…」
感情のブレがあったのは確か、我慢しているのも確か
でもそれくらいなら、"私は大丈夫だから"そう伝えた。
余計なお世話なんて言葉は…棘が過ぎる。
遠回しに伝えたことが、きれいな言葉を並べ立てはぐらかすように聞こえたのは明らかだ。
彼は、余りにも真っ直ぐすぎる。
■橘壱 >
それには確かな信頼があった。
彼女とは何度か邂逅したうえで思うところがある。
距離感の近さ、他人を不用意過ぎるくらいに信頼する節。
そして、感情と計算の二律背反。行動力。
不本意ではあるが、伊都波凛霞という少女がどんな人物かより知れてしまった。
「…………。」
掌で額を抑えて、深い溜め息が漏れた。
かなりデカい。我ながら相当呆れているようだ。
「結局そういうことじゃないですか。
だから言ったんですよ、僕は……、……いや、そうだな……。」
そうだな、対等じゃない。
さっきと立場が逆になっただけだ。
それこそ今更彼女を責め立てて何になる。
そんなものはただ憂さ晴らし。それこそ自己満足だ。
それこそ言いたいことは数あれど、それこそ口に出すだけ野暮だ。
何より、自分が不用意であったことには違いない。
それもそうだ。友人が殺人鬼かもしれない。
そのショックは計り知れないだろう。
だから、取り繕っていたんだ。
それを感情的になった上でさんざん傷つけたのは、自分だ。
気まずさに唇を噛んだが、それでも目を逸らすわけにはいかない。
「……いえ、先輩の気持ちを無視していいたい放題言ったのは僕だ。
それに、初めに無遠慮に踏み込んだのも僕だし、謝る事じゃないです。」
「謝るなら、僕から先なのに、謝らせに来てしまった。
本当に申し訳ないとは思っています。まぁ、頼りないのは事実でしたので……。」
この謝罪は絶対だ。
だからまずは、頭を下げた。
そのうえで、聞かねばならない事もある。
じっと、碧の双眸が鈍色を見据える。
「……僕が頼りないのはさておき、先輩ってこういう時どうしてるんです?
それこそ、相談する相手とかいないんですか?もしかして全部、一人で抱え込んでるんですか?」
■伊都波 凛霞 >
頭を下げる、彼。
慌てて静止しようとしたけれど、彼が謝りたいという気持ちを無碍にするのも、違う。
彼は私の謝罪を受け入れてくれた。
私も、受け入れなければ"対等"じゃない。
「…難しいね。言葉って」
こんなにも意思疎通に便利なツールは他の動物にはない筈なのに。
でもこうやって、衝突して、互いのことをより知れるのは…結果論であるが良いことだった。
怒りもまた感情の発露。
それを知ることは、相手の理解に繋がってゆく。
「頭、あげて」
声色は優しげ、いつもの彼女だ。
そして顔をあげると、目の前に差し出されているドーナツの手提げ袋×2
「甘いもの、好きなんだよね?
あのチョイス、すごく良かったから。
今度のは私のセレクトで、お家に帰ったらみんなで食べて」
確か寮住みだったはず。にこりと笑って手渡そう。
しっかしコーヒーに入れたクリープの量なんかも見ているのだ。
彼が甘党というなら、より理解し合える筈の仲間である。
「───…以前はそういうこともあったかな。
最近は一人で無理そうな時はちゃんと周りを頼ってる。
一人でできることは、一人でするけど、無茶はしない。そんな感じにしてるよ」
「でも、自分自身で悩んで答えを出すことを忘れちゃダメだとも思う。
周りに頼り切りっていうのも、少し格好悪いしね」
苦笑を浮かべ、頬をかく。
極論で片付けることは出来ない。ケースバイケース…。
一概には言えない、難しい問題なのだ。
■橘壱 >
静かに頭を上げた。
言いたいことは色々ある。
けど、それを直接言ってはいけない。
それこそ彼女を傷つけてしまった後出し
同じ轍を踏んでしまっては意味がない。
「……思ったことが口に出てしまう僕にも問題があります。
別方向とは言え、悠薇先輩にも言われたばかりなんですけどね。」
良くも悪くも性根は素直で実直であり、嘘は吐けない。
それが結果として悪い方向に、ノンデリ気質も相まって運ばれる事もある。
今回もそういうことになる。ともかく、先ずは好意であるなら受け取ろう。
なんか自分の時よりもやたら多い気もする。倍返し理論か?
まぁ、此れこそ無碍に拒否はできない。ぺこりとお辞儀し、両手に受け取る。
「どうも……えっと、まぁ、はい。頭使うんで。
寮のルームメイトも喜ぶと思います。」
特にイヴ辺りは喜びそうな気もする。
一人で食べきるのも勿体ないし、皆にもシェアしよう。
もう一つの懸念点は解消された。
そこまで頭でっかちでもないらしい。
だからこそ、悔しさを覚えた。
出会って日も浅いのは当然だが、頼りにされるような人間ではない。
そう言われたんだ。色々言ってはいるが、結局はそこ。
でも、今更感情的になることはない。
もっと雄弁にそれを訴える方法を知っている。
「……それなら別にいいですけど、何とか言って僕はそう思われているわけだ。
先輩には悪いですけど、余り気分がいいものじゃない。何より、"気に入らない"。」
そう、負けん気の強さは変わっていない。
今も昔も、かつて玉座にいたもの。努力で勝ち得し者。
碧の双眸に、初めてあった時のギラついた色が混じった。
「僕はアナタからすれば"何も出来ない非異能者"だ。
周りと比べても劣る自覚はある。……ですので、最初に言ったことは有効ですよね?」
何でもする。ほかでもない彼女がそういった。
なら、頼むべきことは一つだ。
■橘壱 >
「……全部が落ち着いてからいいです。
事が落ち着いたら、僕と戦ってください。
但し、実戦形式。殺すつもりで来ていただきます。」
その実力はわずかでも身を以て体験した。
だからこそ、受けてもらわなければ無い。
自らの有用性。同時に、今の自分が"どの位置"にいるか、見定める必要がある。
レンズ越しのギラついた目線のままだが、笑み自体は今のように柔らかい。
それは同時に、有無を言わせないような"圧"を生み出した。
「……何でもしてくれるんでしたよね?
自分で言ってくれたことなら、守っていただかないと。」
■伊都波 凛霞 >
眼を丸くする。
思わぬ提案だったからだ。
恐らく、本気だろう。
少し、驚いた顔をしていたが、きゅ…と唇を結び、表情が真面目なものへと変わる。
「…引き受けるよ。ただ……」
一拍を置いて、改めて向き直る。
あくまで真剣に、少年と向き合う。
「橘くんと戦う上での、本気。
それ以上は出さない…それでいい?」
言葉の意味は、伝わるだろうか。
…伝わらないかもしれない、だから、補足をしよう。
「私と本気で、実戦形式で、"殺すつもり"で。
…禁じ手なしだと、君はAFを使うこともできずに死ぬ」
はっきりと、明確にそれを口にする。
恐らくそれは、彼が望むところではないだろう。
「飽くまで実戦を想定した模擬戦まで。
ただ、その上で私は容赦をしないし使えるものを全部使う。
…君のAFの戦力を分析すれば、当然だとも思う」
「……それでいい?」
改めて、問おう。
後輩からの挑戦状へ、真っ直ぐに向き合う。
■橘壱 >
「……要するに本当の実戦形式だと、ってことでしょう?
流石にそこまでしてくれとは言ってないし、どうしようもうないですしね。」
非異能者であり、超人でもない。
この強さは全て機械ありきのものだ。
暗殺までありにしたんじゃ模擬戦の意味がない。
成る程、彼女の武術のルーツはそこまで行くらしい。
ぞっとしないな。そこまで考えてはいない。
現代的思考で言えばちょっと極端な思考に苦い笑みを浮かべた。
「本当に操縦士業をやるなら、それも想定すべきなんですけど
まだちょっと鍛えている最中なんで、勘弁してください。」
知っている。
自らが所属する企業、そのトップたる操縦士。
生身で狙われようと、殺されないあの強さを。
ある意味目指すべき到達点だがまだそこは頂だ。
道半ばの少年には荷が重い。
採算確認するような彼女に、強く頷いた。
「構いませんよ。元々そのつもりで挑んだんだ。
僕だって、加減する気はない。」
「……まぁ、それはそれとしてもう帰りましょう。
その様子だと、もう仕事は終わったんでしょう?
家まで送っていきますよ。一応、男なんで。」
いるかどうかはさておき、と冗談めかしに一つ。
■伊都波 凛霞 >
「ちなみに…」
「そっちの才能は私より悠薇のほうが上だよ」
天秤の話を知っているなら、理解が出来るに違いない。
盤外戦術、暗殺を含めた人を確実に始末する技。
この伊都波凛霞という少女が、そんな技に"適する筈"がない
天秤は揺れ動き、その才能を──妹に与えたのだ。
天秤が止まった今も、姉の才能がそのまま根付いているということは──そういうことなのだ。
「おっけー。私もそのつもりでいるよ。 …え、送ってくれるの?」
悠薇に、妹にそれを見られてもいいんだろうか…と内心思うも、
真っ直ぐな彼のこと、きっと本当にまだ、妹に対する感情はピュアなものなんだろう。
そう結論づければ、之まで通りの、柔和な笑みを浮かべて。
「じゃ、お言葉に甘えて。 襲われたら、守ってね♪」
そんなことを告げつつ、彼の隣に並び立つだろう──。
■橘壱 >
「…………天秤、か。」
その話は聞いている。
確かに相反するものに傾くなら納得がいく。
そう聞くと本当に細かい所まで行き届いてるらしい。
中和とは聞いたが、機能を停止したとは聞いていない。
何かの拍子に起こり得るなら、今回のももしかして──────……。
「……ん?」
でも、そう考えるならどちらかは貧相な体つきになるのではないか?
だかどちらもデカいしいい身体している。
もしかしてそこだけ気を使ってくれたのか。
そこに作用しなかった天秤、ちょっと感謝だ。
……とまぁ、横切った邪念は軽く首を振って追い払った。
何時もと変わらない人懐っこい彼女の笑み。
但し、言葉にはちょっと苦笑い。
「……はい。」
寧ろこれ守られる側じゃないか。
そんな事を思いながら、帰路へ
正確にはまずビルを降りるところから始めるのだった。
ご案内:「学生通り」から橘壱さんが去りました。
ご案内:「学生通り」から伊都波 凛霞さんが去りました。