2024/09/25 のログ
ご案内:「学生通り」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
学校の帰り道。
気になった本が発売したので、購入。

寄り道、は風紀委員としてどうなんだろうと思いながら、欲に負けて今にいたる。

いつも買う行きつけのお店なため、ちょっとだけ仲良くなった女性店員とほんのちょっとだけお話しをしたー挨拶した程度ーので、明るい気持ちで歩く。

ーーどん

「気を付けろ」

男が目の前の『誰か』にぶつかり、危ないなと思いながら、自分は避けて。

「……大丈夫ですか?」

話しかけるのは苦手、とかいってられない。
声をかける。

伊都波 悠薇 >  
ぶつかったのはどうやら、小学低学年くらいの女の子。
涙目になっているのが分かる。

「怪我はない? 怖かったね」

微笑みながら、なんとか安心させようとしてみるが、表情は変わらず。

ーーどうしようどうしよう……

子供のあやしかたは、知らない。
姉がこういうのは得意なのに。

少女「ふぇ」

ああああーー

わたわた、慌てる。
どどどど、どうしよう!?

ご案内:「学生通り」に武知 一実さんが現れました。
伊都波 悠薇 > 「お、おかし! そうだ、お菓子好き? 」

駄菓子を出してみる。
今日は棒つき飴。駄菓子の分類かは微妙だが、自分は駄菓子の分類としている。

少女「しらないひとからもらったらだめっておかーさんが」

えらいなーっ、お母さん! 褒めてあげて!

内心で思いながらも万策尽きた。

「えーと、えーと」

どうしよう……

武知 一実 >  
……一部始終を見てしまった。
バイト上がりで飯何にすっかな、なんて考えてた帰り道。
男が少女にぶつかり、近くに居た女生徒が声を掛けるも、
今にも泣き出しそうな少女と、その状況に右往左往する女生徒。
……見てみぬフリ、出来ねえわな。


ウサパペ『もーっ、何アレ!いきなりぶつかって、ごめんなさいも言えないなんてサイッテーな男!ムカつく―っ!』(裏声)

くまパぺ『ほら、お姉ちゃんが心配してくれてるよ?
 痛いところなかった? 怖くなかった?って、どう?痛いところ、ある?』(だいぶ裏声)

バイト先で使ったパペットのウサちゃん(♂)とクマくん(♀)を両手に嵌め、少女の脇からひょいと顔を出させる。
何のバイトしてたかって? 今日は児童館での絵本読み聞かせのアシスタント、だ。
だいぶ無理のある裏声の自覚はあるが、幸い腹話術の心得はある。

……状況からしてオレが声出してんのは周囲からは丸わかりだけど、それはそれ。意識したら羞恥やべえから敢えてスルー。

伊都波 悠薇 >  
少女「あ! うさちゃんと、くまくんだ!」

少女は、声に気付いてにこにこで、声の方を見る。
笑顔で涙は止まっていた。

対して、自分はといえば。
よかったと思いつつ、心では涙を流し。

前髪を整えて、視線を隠すように少女と。
手助けしてくれた人の様子を見守ることに。

武知 一実 >  
ウサパペ『いーい? アンタ、あんな男にぶつかられて泣いたりしちゃダメよ?
追っかけてって後ろから飛び蹴り食らわせるくらいじゃないと!』

くまパぺ『いやそれは余計に危ないから……
でもどうやら怪我も無いみたいて良かったあ。 キミは強い子だねえ、すごいすごい♪』

パペットの闖入が善い方へと転がってくれたらしい。
本当に良かった、今日のバイトが児童相手で。
普通にオレが介入してたら、少女も名も知らぬ女生徒もまとめて泣きっ面にしていたかもしれない。
……そんな事で風紀のお世話になりたかない。

ウサパペ『ああやってこっち見ないで歩いてくるヤツいーっぱい居るんだから、アンタもぶつかんないように気を付けなさいよ!』

くまパぺ『そうだねえ、気を付けようねえ。
 その前に、心配してくれたお姉ちゃんにも一緒にありがとうって言おっか。 おねえちゃん、ありがとぉ!』

ウサちゃんは男が去って行った方を向かせキーキー震わせておきつつ、
クマくんは少女の肩を軽く叩いて、女生徒へと向き直させる。
それらを操るオレは無である。
ただただこの場に居ないモノとして全神経を集中させる。
オレは無、この場に居るのは少女と女生徒とウサちゃんクマくんだけ。オレは無。無―――

伊都波 悠薇 >  
少女「ホント? やったぁ!」

少女は喜び、両手をあげた後。

少女「うん。おねーちゃん、ありがとう! うさちゃん、くまくん、バイバイ!!」

明るく周りに気を付けながら、手を振って、歩きだしていく。

「気をつけてー」

手をふりかえし、見送った後、残ったのは……

「あの、ありがとうございました。上手、なんですね」

少女を上手く宥められなかった女と
腹話術を駆使して、なんとかしてくれた男である。

武知 一実 >  
ウサ『家に着くまで気ぃ抜くんじゃないわよー』
くま『ばいばーい、転ばない様にねえ♪』

少女が見えなくなるまでパペットたちの手を振り続け、ようやくオレ自身を無から有へと切り替える。
ボディバッグにパペットを仕舞いながら立ち上がると、裏声を使い過ぎた喉に手を当てつつ

「――あ? ああ、さっきまでバイトで同じような事してたかんな、延長みてえなもんだ。
 それに礼を言われる筋合いもねぇよ、割とギリギリまでアンタに加勢するかあの野郎蹴り飛ばしに行くか悩んでたとこだし」

見て見ぬフリが出来なかったってだけだし、ウサクマで上手く行くかどうかもかなりの賭けだった。
たまたま上手く行ったから良かったものの、あの少女がパペットより先にオレの顔見てたらまず間違いなく泣いてたろう。

「オレに礼を言ってる余裕があるなら、真っ先にあの子に声を掛けた自分を労ってやんな」

伊都波 悠薇 >  
「バイト……でも、咄嗟にそれをできるのはアナタの機転ですし。最終的には、暴力ではなく、宥めてくれたのですから」

お礼は言うべき、と自分は思う。
少女だけではなく、自分も助けてもらったから。

喉に手をあてたのをみて。

「あの、飴、いりますか? のどあめでは、ないですが」

棒つき飴を、差し出す。メロンシロップの味。

結果が、全て。アナタのおかげで少女が笑顔を取り戻したから労いたい。

自分よりも。

武知 一実 >  
「……ん。じゃあ、まあ、その飴でチャラって事で」

さっきまでしてたことをしただけだから、本当に礼を言われる様なもんじゃないんだが。
けど、この女生徒の言う事も筋は通ってる。
だからまあ、妥協点という事で差し出された飴を頂戴する事にした。

「……パペットで気を引けたのも、先にアンタがあの子のそばに居たからだ。
 泣きそうな子供慮れるなんて、優しいんだなアンタ」

飴の包装を解き、口へと突っ込みながら改めて女生徒を見る。
特別子供が好きって訳でも無さそうだけど、なんか委員会とか部活動で子供と接する機会でもあるんだろうか。
それとも単にオレと同じで見て見ぬフリ出来なかったってクチか、だ。

伊都波 悠薇 >  
「風紀委員なので」

姉なら、黒條さんなら、橘くんなら。
きっとしただろうから。

そう、思った。だから、声をかけた。それだけ。

「やさしい、かは分かりませんが、役目を果たす気持ちは大きいですよ」

あなたと、同じ、かどうかは分からない。
子供と接することが多いわけでもない。
でも、と。風紀委員であるならと、動いてしまっただけ。

武知 一実 >  
「風紀委員……なるほどな」

あの野郎に蹴り喰らわせなくて良かったァ……!
まあ、風紀委員だってんなら納得だ。 それもやたら仕事に対する責任感が強いらしい。
……急にこっちの面が割れてないか心配になってくる。 いや、別に何もしてないし最近は。喧嘩もしてないし。

「そりゃ御大層なこった。
 まあ、風紀としてやったって割にはだいぶお手上げに近かったみてえだったけどな」

動機は良いけれど結果としてアレは先が思いやられそうだ。
犬のおまわりさんじゃあるまいし、子供と一緒に立ち往生するのが仕事って訳でもなさそうだし。

「腹話術とまではいかなくとも、さっきみたいな時用に人形の扱い方は知っといても良いんじゃねえか?
 なーんかアンタならオレより上手くやれそうだし」

コツはひたすら己を無にすること。 あ、それはオレの場合か。
この女生徒の場合、自身じゃ言いにくいような事を代弁させたりといった使い方も出来そうな気がする。

伊都波 悠薇 >  
首を傾げながら、そちらを見る。
なんか、安心してる?

少女のことで、ほっとしたのだろうか。やさしい人なんだなと思う。

「……あまり、子供と接する機会が少なくて」

姉は多いが、『その分』どうしても。

「それが有効だって、アイデアが浮かばず。覚えておきます。ありがとうございます」

助言に頷き、そうか、松風すればよかったのか……と納得。

「どうでしょう。また、そのときは試してみますね」

武知 一実 >  
「接する機会が少ないってんなら、その少ない機会に失敗しないようにしねえとな。
 子供に限らず、ビビってる時とか泣いてる時に突然場違いな人形とか出て来ると一瞬思考が止まんだろ?
 ……変に言葉で宥めたりってするよりは、だいぶ効果的だぜ」

と言うのもバイト先での受け売りみたいなもんだが。
オレの場合人相が悪いのもあって、普通に宥めようとしても逆効果だったりしたからな。

「やれる事があるって分かってりゃ、次は声を掛け易いだろ?
 ま、頑張ってくれよ風紀委員サン」

何か嫌味な言い方になったか、と思いつつ。
こうして血気盛んでない風紀委員を見るのはほぼ初めてに近い気もしたから、オレとしては割と本心からの応援だ。
……やっぱり喧嘩の怒られが染みついてて、自然と警戒というか威嚇してしまうのかもしれねえ。
いい機会だし風紀に対する印象を更新掛けとこ。

「オレは1年の武知一実……良けりゃかずみんって呼んでくれ アンタは?」

伊都波 悠薇 >  
「経験豊富なんですね。とても、参考になります」

言う通り、出きるか、出来ないかはさておき、知識としてあるのは大きい。
まるで熟練の物言いに、目を丸くして感嘆した。

「はい。頑張ります。次がないほうが良いですが、あったときには」

こくりと、頷く。
なんとも気前の良い感じ。きっと…… 

ーー 一年?

「伊都波悠薇です。二年になります。武知、さん」

かずみんは、ちょっと呼ぶには勇気がいるのでと断りをいれた。
……後輩、だったのか。

武知 一実 >  
「まあ、色々バイトはしごしてっからな」

掛け持ち、じゃなくて、はしごってところがポイント。
一所に居るよりは色んな知識や経験が入って来るから、そりゃ豊富にもなろうってもんだ。
お陰でこのナリに輪をかけて老けて見られがちなのかもしれねえが。

「そりゃぶつかられた子供なんて居ない方が良いが、風紀やってりゃ迷子とかにも対応する事もあんだろ?」

まあ風紀委員も配属される課によっちゃ仕事も違うとは聞くが。
一般生徒からすりゃ諸々ひっくるめて風紀委員だ、課が違うから出来ませんと言われてすんなり納得はし辛ぇもんがある。

「2年……てことは先輩なんだな、アンタ……ええと、伊都波サン、か。
 まあ、そうだよな。 いきなりあだ名で呼べって言われても難しいわな」

けれどまあ、オレとしちゃあだ名の方が気楽なんだが。
そこはそれ、人の性格によるところもあるだろうから、無理強いはしねえけども。

伊都波 悠薇 >  
「ハシゴということは、なにか目的があるので?」

バイトをたくさんしているということは、お金が入り用なのだろうか。
それをする必要があるというのは、いるのかもしれないが、自分の周りには少ない。
少なくとも知っている限りでは。

「はい。そのときは、今日のことを思い出しますね」

頷く。ひとつひとつ、出来るようになっていきたいものだ。

「伊都波は、上に姉がいますから。名前でいいですよ」

あだ名にはこくりとうなずき。

「ではこれから、またバイトですか?」

武知 一実 >  
「まあ、身寄りが無えから単純に貯蓄をしておきたいってのと、直近だと冬休み辺りに旅行でもしてえなって。
 ついでに異能の事もあってあんまり一つの所で長くバイトしたくねえんだ」

金銭的援助をしてくれる家も家族も親族も居ねえから、どうしても自力で稼ぐ必要はある。
幸い働きづめにならなくても生徒でいれば生活出来る基盤があるのは、ありがてえところだ。

「ハッ、まあわざわざ思い出さんでも自然と出来るようになんだろうよ」

出来れば無理した裏声のウサクマは思い出さないで貰えると助かる。
やってる最中は無に徹してたが、こうして素面で思い出すと恥ずかしいことこの上ねえ。

「ああ、そうなのか。じゃあ、……悠薇、サン」

ほぼ初対面の異性を下の名で呼ぶ方が勇気要る気もするんだが。
……まあ、そのうち慣れるか。

「いや? 今日は帰って飯にすっかと思ってたとこ。
 金は要るけど大金がすぐに必要ってわけじゃねえからさ」

伊都波 悠薇 >  
「そうでしたか」

行動力のある人なんだなと、思う。
楽しい旅行になるといいなとも。

身寄りがいない、ということに引っ掛かりを覚えながらも、初対面で踏み込む勇気があるはずもない。もともと、ぼっちの自分にはハードルが高いのだ。

今日はたまたま、うまくいっているだけで。

「うさちゃんと、くまくん。ちゃんと取得しませんと」

思い出しますよと、念を押した。
真面目に。

「そうでしたか。それでは、お気をつけて」

バイトであったなら、小話をしてしまったことに申し訳なく感じてしまうから。
ほっとして。

「ありがとうございました、武知さん」

改めてお礼を告げて。
帰ることにする。

ーー良い、出会だったな

そう。思いながら。

ご案内:「学生通り」から伊都波 悠薇さんが去りました。