2024/10/06 のログ
■武知 一実 >
「さーて……せっかく出て来たんだ、ボディバッグ新しいの出てねえか見に行ってみるとすっか」
バッグとパーカーとスニーカーは幾つあっても良い。
前に誰かから聞いた気がする格言を思い浮かべながら、オレは商店街の方へと歩を進めていくのだった。
ご案内:「学生通り」から武知 一実さんが去りました。
ご案内:「学生通り」にノーフェイスさんが現れました。
■ノーフェイス >
すっかり秋めいてきた昼下がり。
人の多い通りに面したカフェテラスで、文庫本を手繰る影がひとつ。
甘めに淹れられたモカで体を温めながら、だいぶ慣れた縦書きの文体を目で追い――
「…………ん?」
すこしだけ、通りがざわついた。
視線を向ける。さて、なにが起こったというのだろう。
愉しげ、好奇のざわめきは、決して悪いものが通ったわけではないはずだ。
一体、なにが現れたのか――レンズの裏から、炎色の視線がそちらを伺った。
ご案内:「学生通り」にフォルティさんが現れました。
■フォルティ >
ぽてぽて、とことこ
(きょうもきょうとてぱとろーるです!)
ふんす、と胸にかかった『フォルティ』と書かれたネームプレートを誇らしげに揺らす
学生通りを他の生徒たちの視線を気にすることなく歩くのは……
体高85㎝、大型犬サイズのコーギーである、その体毛は白と緑
背中にはリュックを背負っていて、ストローのついたペットボトルが見え隠れ
かけられる挨拶に「わんっ!」「わふ!」と元気よく挨拶?を返していて
(いまのところ、ふしんなやからはいませんね!よいことです)
なんて、お日様を燦燦と浴びながらカフェテラスのある方面に丁度向かってきているようだ
ちぱっ、とした尻尾は元気に左右に揺れていて、元気いっぱいなのが見て取れる
■ノーフェイス >
(ウェルシュ・コーギー……
ビビッドグリーンの毛なんて珍しいな。最近の品種か……?)
人気の犬種である。
過日の英国王室にも迎えられ、王家の血筋も魅了している。
道行く生徒たちと挨拶を交わす姿。どうやらこのあたりでも顔なじみであるらしい。
短い手足を忙しなく動かして歩く姿は、なんとも愛らしくある。
(平和な午後ってカンジ……)
珍しくもノーリードで飼い主の随伴なし。不思議な、しかしどこか牧歌的な光景だ。
この島だから不思議なこともあるもんだな、と再び視線を戻して、ひとくちモカの甘みを味わい――
「いやいくらなんでもでかすぎる!なんか縮尺がおかしいと思ったケド……!」
紅の頭髪をぶんと振り乱して二度見。ずれた眼鏡を直した。
バーニーズよりもでかい図体のコーギーなんていくらなんでも見たことがない。
足が短いから更に全体的にでかく見える。足が短いから……!
「…………」
先払い方式の店である。文庫を仕舞い込むと立ち上がり、すらりと長い脚を動かして。
その勇ましい行軍の前に立ちはだかる、見目ばかりは良い不審者がひとり。
眼前にしゃがみこみ、炎の色の視線を合わせた。
膝の上に頬杖ついて、まじまじと見つめてみる。
■フォルティ >
「わふ?」
ぴん、と耳を立てて近づいてくる気配にいち早く反応する
尻尾を太陽に、目線をあなたに
「わぅ……」
首を不思議そうに一度曲げ、目の前に現れた『おんなのこ』を見返して
すとん
お座りの姿勢になり、背中からしゅるり、と植物の蔓が生える
生えた蔓は自身の首からかけられたネームプレートを持ち上げてあなたに見せるだろう
「わふ、わぅう… わぅ?わんわんっ!」
(はじめまして!いいごごですね、ぽかぽかようきはねむくなるからちゅういです)
またこてん、と逆方向に首が曲がり、つぶら?な瞳で見つめ返す
警戒の様子こそないが、お互いに相手を図っているような、そんな雰囲気もあるような、無いような
■ノーフェイス >
深みのあるバニラのパルファムが香り、
静けき海の潮騒のような、大きくゆっくりな心拍もとんがり耳にはとらえられるか。
地面の振動で遠くの主の帰宅を聞き分ける個体もいるという。
往来の中央で(※迷惑なのでやめましょう)座ってみつめ合う、ひとりと一匹。
「ン……?」
動く蔦。グリーンの体毛はそういうわけか。植物系の要素を宿した――怪異か。
動物に異能が宿ることも珍しくないから、そういうものなのかも。
「フォルティ」
一言では性別を判じかねる甘い声が、名前を呼ばわった。
音楽を嗜んでいれば、だいぶ親しみやすい呼称であるが、由来をたどればおそらく――
「勇気?」
へえ、と眉があがって、興味深そうな顔をした。
確かに、コーギーという犬種からして、自分より大型の獣を相手取る役目を負った血筋。
短い手足をブイブイいわせていた、勇ましいものたちの裔である。その獣を――
じー。
見つめる。
なんだかおしゃべりしてくれている。
つやつやおめめ。もふもふの体毛。首を傾ける仕草。とってもラブリーだ。
モフっとしてやりたくなる。大きい犬。庭もお金もなかった時代の小さい憧れ。
「……………」
……しかし、なにを言っているかはわからない。
友好的ではあるはずだ。だって笑ってるし……いやそう見えるだけかも。
さすがにワンワン言い返すわけにもいかない。
「……………」
じー。
見つめ合う。ひとりでおしゃべりさせるのも悪いが、ただ餌付けするのも――そうだ。
「―――――」
不意に。
「お手ッ!」
よく通る声が、響き渡る。
両の掌を、ひょいっ、と見せた。
演奏者の白く大きな掌が、細い五指を開いて、フォルティの前に差し出される。
■フォルティ >
太陽を纏うぽかぽかふぁさふぁさの毛の香り
そして何処からともなく漂う、ほんの少しの甘酸っぱい香り
ノーフェイスさんが感じるのはその辺りだろうか
「わん!」
フォルティ、の名を呼ばれれば、再度勇ましく一つ吠える、その名が意味するもののように
(どうしましたか?こまりごとですか?)
さて、どうするべきかと犬は思う、メモを取り出して『筆談』をしてもいいのだが、生憎字は得意ではない
『蛇』を出してもいいのだけれど、丁度さっき千切ったばかりで少し時間がかかりそうだ
とはいえ、自分をかまってくれる相手を無下にするのはそれこそ信念に反するもの
「……」
「…………」
じぃー、と暫し見つめ合っていたところ、耳にぴぃー、!と響く大きな声
「わふっ!」
ぽん
果たして、大きな肉球のついた手がノーフェイスさんの手に乗せられる
ぷにっ、としたやや強めの弾力と、周りの体毛のふぁさふぁさ感
そのまま口が笑みの形に裂けて、はっはっはっは、と舌を出す
「ばぅっ♪」
そしてそのまま頭を上げて、何かを強請るようにじぃー、と『見上げる』仕草と、耳をぺたんとする動き
(ふふ、わかっていますよ、こういうとき、ひとはおおむね…なでたいときなのでしょう!)
わかっていますよ、と言わんばかりに頭を差し出しているのだ
■ノーフェイス >
五感は鋭敏だ。異常発達している聴覚だけでなし、嗅覚も人並み以上にある。
天日干しにした毛布のような香りのなかに、ふと混ざる――
(なんだこれ……ベリーの……?)
朝食によく添えるみずみずしい甘酸っぱさが、なんとなく近い気がした。
保存の便を考えて冷凍品を使っているが、フルーツ類はそもそも好き。
グラスとベリーの香り。ちょっとした香水のようだ。
顔埋めて寝たら気持ちいいんだろうなー、と思った。
「いいコ」
両手に乗せられたぷにぷにの肉球。
表情のなかった顔に、うっすらと微笑が宿る。
ちょっと握ってぷにぷにしちゃうのは約得だ。
天然物の弾力ある靴底は、硬い地面でも疲れなさそう。
「…………」
まるで翼のように畳まれた耳。その間の頭部を差し出されると。
微笑みが、にまー、とした獰猛なものに変わる。
そっと両手をおろしてやると、大きい掌が、もふもふの頭に翳され――
遠ざかった。
「お鼻~!」
跳ねるように立ち上がり、紅色の髪が揺れた。
撫でようとした掌は、直立から更に高くに翳される。
恵まれた腕長。人間の前肢は長いのだ。
ぽかぽかの太陽を隠し、掌を下に向けて白鳥の手つき。
「跳んで!」
さて、短足の勇者。
キミのつやつやのお鼻は、2メートルを悠に超える高所まで届くかな。
■フォルティ >
深みのあるバニラの香りと、穏やかな心音、ぷにぷにと肉球を握ってくる手
上から振ってくる『いい子』の声は、何度聞いても懐かしさを想起させてくるもので
(そう、そうそのまま…… !)
はたして、撫でられると思っていた手が遠ざかり、高所へと向けられる
釣られて鼻がくん、と揺れてすんすん、と何かを嗅ぐように
「わぅっ、わふ……」
なるほど、とその悪戯な動きに、犬も又、うずうずと足を縮めて飛び上がる姿勢
(いいでしょう、ならばみせましょう!)
コーギーはかつて、『妖精を乗せていた』と伝えられている
首回りの模様の形が鞍のように見えたからと言われているが……
その伝説によれば、コーギーは妖精たちを乗せ、馬のように山々を走り回っていたとか
その名を冠する『異能』を持つフォルティは乗せる相手を『妖精』から『人』へと転じさせる
人を乗せ、道々を駆け回る運動能力は、『犬』というジャンルに置いてすべてに置いて最高峰のパフォーマンスを実現している!
とまぁ、長々に語ったが、ようは
「わぅっ!!」
ぴょーーん!
蔓を地面に向けて弾みをつけ、たかく、たかく
見事にフォルティは鼻を空へと向けて飛び上がり、手にたっち
そのままぐるん、と体を回転させてムーンサルト、見事に背中を向けて着地してみせる
「へっへっへっへ……」
そして、くるっ、と首だけを振り向かせると、どやぁ、と言いたげに誇ったような表情でにやりとしていることだろう
■ノーフェイス >
「わお!」
まるで飛び上がる――かつ、伸び上がるように跳躍する姿。
ちょん、と掌とマズルの先がキスをして、その腕の真下でくるりと旋転する姿。
予想を超えたアクロバットに、悪童の双眸が見開かれて爛々と輝く。
「おりコーギー!」
つやつやのお鼻の感触がのこる掌で、ぱちぱちと拍手。
食パンというにはちょっと緑な色彩だが、愛らしいお尻と振り向くドヤ顔に。
こちらも、にやりと唇の端をつりあげる。
白い歯を覗かせる凶暴さは、どこかイヌ科の獣のようでも。
「フォ~ルティ……
さっき、なでなでしてほしそうにしてたよな」
愛らしい、それこそ妖精をのせる妖精の動きと。相立ち向かう華やかな怪人の有り様に。
往来の人々はなんだなんだと興味を示し、遠巻きの観衆の輪が出来上がる。
そんな怪人はといえば、手をそっと差し出して。
指し示す指を振って、クリックのようにリズムを取り、
「いっぱい撫でてほしかったら」
1、2、3、
「ボクの動きについてきて!Bow-wow!」
4とともにフィンガースナップが、鋭い破裂音を立てた。
すると同時に、右足軸に大きく回転。
カーディガンの裾と、紅の髪をはためかせ。
流れるように軸足を変えて逆回転。
伸びやかな四肢が華麗に舞い、視線がキミを視る。同じようにしてみてごらん?
■フォルティ >
「くぅん?」
誇らしげにしていれば、周囲の視線、それらに少し不思議そうに首をかしげるが
(なるほど……)
続くあなたの言葉と、挑発するような視線に対して、うん、と一つ頷くように
(あそんでほしいのですね!)
ならば、それに答えるのもまた務め、勿論『たのしい』のもありますが
「わふっ、ぐるるる……」
お尻を大きく上げて、あなたの次の動きを見定めるようにちょっとだけ唸る、うずうず、うずうず
回り始める『おんなのこ』なるほど、と蔓をぎゅるりと回し、すふぁりとリュックを降ろせば……小さく飛んで
ぎゅるん、くるるるるっっ
地面を背中に滑らせてくるんと回転、身を屈めて回る姿はブレイクダンスのよう
逆回転になれば、今度は勢いよく腹筋の動きで体を跳ねさせ
ぐるん、っと空中で半回転、四肢を地面にしっかと立たせ
あなたの周りを飛び跳ねるように回りながら、あなたの動きについていくが――
「わーふっ!」
あなたの背後に回った際に、不意にずずいっ、と体を足の間に滑らせてくるだろう
勿論倒したりするためではない、あなたを背中に『乗せようと』している!
■ノーフェイス >
落第街に咲く薔薇、真紅の極星。
謎多き妖艶なる怪人。いまは雌伏の闇の中。
その真意が何処にあるかといえば――
――あそんでほしいのですね!
その通り!
「Hoo~! 元気イイじゃないワンコ!」
地面の摩擦がないかのように滑って廻る姿に、ステップの熱も弥増した。
可愛らしい仕草で、変幻自在、犬の領域を超えた動きで魅せるビビッドグリーン。
その動きを先導して、または煽るようにして、左右が双方利いている踵軸のステップ。
学生通りに、いつしかざわざわと人だかり。学生手帳を構えてるものも、きっと多く――
「――おっ?」
まるで背後を奪い合うよう、広くスペースを使った演舞の合間、
ふいに長い脚を割ろうとする不届きもの。股抜きダンスの催しに、
くるり、くるり。左右の脚を軸に彷徨わせ、バスケットボールのドリブルトリックよろしくの動き。
(載れってコト?)
そうしてる間に、彼の意図に気づいて――
捏ねるような密着のダンスから、不意に、ぽすんっ――とその背に横座り。
胴長短足。その姿勢、確かに座るには適した座面だと言えるが――
■フォルティ >
ダンスは勿論初めての犬、即興のステップは短い脚には中々慣れないが
それでも元気さは人一倍、空に向かって鼻も蔓も伸ばしながら戯れる
何度かの『トライ』の果てに、意図に気づいたあなたが座るのならば――
「わふっ♪」
ぴょいんっ ぎゅるるるっ、しゅぱぱぱっ
あなたを乗せて、更にコーギーは加速する、重さが増したはずなのにそんなものを気にするそぶりは無い
そして、あなたが受けるのも心地よい風を切る感覚だけで、回る視界に気持ち悪くなることも無く
恐らくは異能の力か、どれだけフォルティがそのばで1m近く飛び跳ねたり、激しくぐるんと回って周囲の観客にあなたと一緒に『アピール』しても
あなたに一切負担はかからず、景色や速度を楽しむことができるだろう
(まるでさーかすでしょう!こういうのはどうですか?)
ちらっ、とそのまま横乗りしているあなたを見て、にぃ、と楽し気に口元が笑ったように見える
「わふ… わぅっ!」
その吠え声は、もっと楽しもう、と言わんばかり
■ノーフェイス >
「―――ゎは!」
人間で出来た輪、円状の舞台。
目まぐるしく流れていく光景は、自分の公演ではなかなか見られない光景。
「んははははっ!こりゃイイや!
遊園地の回転木馬も、ここまで速くは回らないもんなーっ!」
たなびく真紅の頭髪。
跨るよりも遥かに保持が難しい横座りの姿勢であるのに、まるで振り落とされる気配はない。
歓声があがる。果たしてこの能力、もしかしたら多くのものがフォルティのものとして知っているのか。
あるいは知らずとも、F1のマシンよろしく低重心高馬力のフリーランは、
見応えたっぷりである――が。
「ンじゃあ――――」
横座りの姿勢から、そのしっかりした背中に沿えていた、
両手だけで体を支える。腰を浮かせた。
秀でるのは腕だけではなく、すらりと伸びた脚長も。
「お客様方、どうかお手を触れぬように――危ないからね!」
左右の脚が、剣のように空を斬る。
手だけで地面に立ち、蹴撃を放つようにして肢体を振り回す回転演舞の花形。
――連続開脚旋転。轟と炎が渦を巻くようにして、疾走する獣の上で舞う。
無茶な状態で豪快な演技をしても振り落とされぬのは、無論フォルティの異能もある。
しかし完璧な足場の上でもってなお、本人の超人的な体幹に平衡感覚、運動神経が前提となる。
「――ここから、」
優美な舞いから、獰猛な攻めへと転じた星はといえば、
フォルティの上で体の上下を入れ替え、その鞍に、今度は背と肩で載る。
太陽とベリーの絨毯のうえ、うねる背と肩の筋肉が織りなす、暴風のごとき風車。
魅せねばなるまい、ここが舞台ならなおのこと。挑んでくるなら受けねば。
伸びやかな四肢と、艶やかな様。汗を滲ませて踊る阿呆は、そこから――
とん、と妖精の座所をタップし、その背から跳んだ。
回転の勢いのまま、太陽に照らされながらに、天地逆さの姿勢で錐揉み回転。
数メートルの距離を開け、華麗に着地。
「跳べ!」
振り仰いでは腕をおおきくひろげて、鼓舞するように叫ぶ。
最後の演技だ。主役は勇気で以て舞ったキミなのだから。
■フォルティ >
「わふっ!」
知らない言葉が巡るけれど、楽しそうなのは伝わってくる
犬にとってはそれで十分で、共に野山ではないが、アスファルトの上をかけまわる
その上で手足と言う名の武器を振り回すのも――慣れたものだ
なんせ、こう見えて夜の顔は『戦士』なのだから
揺れ動く『おんなのこ』が楽し気にしている事が伝わってきて、自然と動きにも熱が入る
蔓も使って地面を掴み、動きにジグザグとした機敏さを付け加えて、周囲の観客が一人も退屈しないよう、目まぐるしく場所を変えていく
背で踊り狂う姿を楽し気に見やりながらも、舞台は終幕に近づく
背中から飛び降り、ポーズを決めた相手が示すもの
(もちろんです!)
手を大きく広げ、迎え入れる仕草、それは決して忘れることなど出来ない合図
「わふっ―― !!」
しゅばぁっ
飛び上がる犬、湧き上がるオーディエンス、飛び込む腕の中
空中で蔓を使って僅かに減速し、体当たりの速度を殺すのも忘れずに
果たして、見事あなたの胸の内に大きなわんこが飛び込んできて
「わうっ♪」
その勢いのまま、ぺろぺろと顔を舐めようとしてくるでしょうか
尻尾もきっと、ぶんぶんぶん!と面白いくらいに大きく振られている事でしょう
■ノーフェイス >
「うおっ―――とぉ……!」
流石にこれだけの体重とパワーがぶつかってくると、多少体も傾ぐもの。
それでも、見た目に似合わぬ強靭な体幹が、しっかり倒れず受け止める。
抱き支えることができるのは、それこそ同胞の大型の獣のような、力強さがある。
野を馳せる狼のような、奥底に秘める鋭さと餓えも、その腕と鼓動から。
「わぷっ、…んははっ。 いいコ!」
いっぱい遊んでくれたので、お望み通りわしゃわしゃと撫で回してやる。背中も頭も。
顔をべろべろやられながらも、楽しそうに笑ってしまうのだ。
相当にもふもふだ。首のあたりに顔を埋めて、匂いも吸い込んじゃう。
なにせこういう機会は好き。いっぱいに楽しむのも、パフォーマンスで人の目をかっさらうのも。
「…………ンでも、これだけじゃないぜ、フォルティ」
――だが。
その場に膝をついて、くるり、とフォルティの体を裏返す。
両の前足をそっと掴んで、ばんざいの姿勢。
おなかを大きくさらけ出すポーズを向けるのは――観衆のみなさまに。
「さあさあ、皆様がた。なでなでのご褒美をどうぞ!
今日の主役はそいつをお望みなもので――な?」
と、フォルティの顔を覗き込み、にひ、と笑った。
わっと殺到するのは犬好きやら動物好き。
そのもふもふの体は、たくさんの愛情と好奇でもみくちゃに。
■フォルティ >
「わふぅ♪」
思う存分なで回す、お日様と淡い果実の匂い、何のフレグランスかは知らないが
それでも人を落ち着かせる穏やかな匂いには変わりないだろう
犬もまた、お疲れさまと言わんばかりに存分にあなたにかいぐられて……
「わふっ?」
そうしていたらひっくり返され、観客たちへの『サービス』を強請られる
(しかたないですねえ、きょうはとくべつです、ぱとろーるはいったんきゅうけいで!)
「わん!」
と一声吠えて観客たちからの『おひねり』を受け取っていき
今日はそうして、日が暮れるまであなたと遊ぶでしょうか
そうして笑顔で別れたのち……
偶々、占星術部の部室で、あの時の『おんなのこ』の声を聞く事になる
何でも、『普通の』部員がちょっと危ないライブで撮った音源らしく……
そうして初めて、自分と『遊んだ』相手の名前を知る事となる
「わふ?」
『ノーフェイス』という名は、どうあれ、犬の中に刻まれたようだ
(つぎにあったときは、こっちからもあそぶことにしましょう!)
何て、考えていたとか、何とか
■ノーフェイス >
あんまり長くヤンチャしてると、風紀委員におこられちゃうし――
そんなこんなで、やがては人混みに紛れ、人知れず去っていった紅の影。
……こっちも大概もみくちゃにされていたので、
ずれた眼鏡を直しつつ、乱れた髪を整えながら、だけども。
もふもふの匂いは、名残惜しくもシャワーとともに流れ落ちて。
ベッドのなかで寝しなにふと気になって調べると。
「へえー、やっぱり知られてるんだなあ、あのコ」
ちょいと調べてみると、そのあたりを『パトロール』しているコーギーの情報に出くわす。
とても気さくで愛想がよく、勇敢に街を歩んでいるとか。
それならまた、どこかで出会えるだろう。
そのときは『パトロール』に付き合ってもいいかもしれない――
「――――あっ」
――して、情報と娯楽に飢える若者多き島、常世島。
天下の往来でやらかしたお騒がせ。賑やかに舞い踊る赤と緑。
撮影された動画が、SNSでちょいバズしてしまったのでした。
「……どっちの人気だコレ?」
ご案内:「学生通り」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「学生通り」からフォルティさんが去りました。