2025/01/05 のログ
ご案内:「学生通り」に麝香 廬山さんが現れました。
ご案内:「学生通り」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■麝香 廬山 >
学生通り 某日。
季節の移り目、すっかり日は沈んでしまった。
より一層寒くなる空気感の中でも震えることなく歩く青年。
温かな缶コーヒーを軽く揺らしながら、鼻歌気分で外出中。
「こんな時間でも人を見張らなきゃいけないなんて、大変だねぇ」
視線を感じるのはいつものことだ。
首につけられた制御装置を撫でて、肩を竦める。
珍しくこの日の大通りには、人気が少なかった。
■伊都波 悠薇 >
今日も今日とて見回り。
人手が少ないから、今は引っ張りだこ。
できることをコツコツと。
人手が少ないから、目に入るであろう少女。
「……ふぅ」
周りの視線は気にせずに。
……今日も、異常なし、かな。
ちゃんと、自分なりの見回りを。
■麝香 廬山 >
人気もない、静かで、街頭の明かりばかりが眩しい夜の学生通り。
そう、決して異常はない。今日も平和な夜だった。
「……おや、こんばんは。こんな夜まで見回りかな?
伊都波 悠薇ちゃん。こんな夜遅くまで精が出るね。一人かい?」
そうしてひ偶然にも出会うことになった。
互いに向かい側から歩いてきたので、わかりやすい。
人当たりの良いにこやかな笑顔で挨拶をすれば、何気なしに歩み寄る。
ある意味、このタイミングは天啓なのかもしれない。
「こんな寒い日にキミもお疲れだね。コーヒー飲む?」
手元で揺らす、未開封の無糖缶コーヒー。
■伊都波 悠薇 >
「あ、どうも。こんばんわ」
至って普通に。
ペコリとお辞儀を返す。
「いえ、大丈夫です。今は喉乾いていないので」
遠慮しながら。
「はい。そろそろ終わりなので帰ろうと思っていたところです」
■麝香 廬山 >
「ハハ、お姉さんと違ってすんなり接するね。
初めて会った時もそうだけど、意外と図太いのかな?
それとも、ボクの事実はなんにも聞いてなかったりする?」
監視対象といえど、全てが周知の事実という訳では無い。
知らずに接する人間も少なくはない。事情を知ったら離れていくまでワンセット。
至って普通の対応に廬山は面白そうだ。
手元で転がしていた缶コーヒーは、ぱっと手を開けば消えてしまった。
「そっかそっか、お疲れ様。
どう、途中まで一緒に歩かない?帰りならちょうどいいでしょ?」
■伊都波 悠薇 >
「そうなんですか?」
詳しくない。といっても詳しい人のほうが少ない。
悲しいことにボッチとはそういうものだ。
接する人が増えてきたとはいえ……詳しい人は多分、『誰もいない』。
「はい。麝香さんも、かえりだったんですか?」
■麝香 廬山 >
「そうそう、ボクってば"悪い人"だからね。
こうして制御装置をつけられて飼いならされてる位にはね。
今では立派な風紀の道具さ。キミのお姉さんだって、そんな道具の使い手なんだけどね」
「切ちゃん……切人って知らない?
ホラ、なんか無愛想で顔の怖いバカっぽい男子」
首元に巻き付く制御装置を指でなぞり、語る姿は何処か楽しげ。
あっけからんとする態度だが、言葉の端々に嘘はない。
ゆるりと歩調を合わせながら歩く、二人ぼっちの学生通り。
「帰りといえば帰り、かな。やることは一通りやったしね。
急なお呼び出しがかからなければ帰れるんじゃないかな?」
「そういうキミだって、こんな時間まで見回りしてたの?」
■伊都波 悠薇 >
「あ」
そういえば、そんな話をされた。
姉の代わりをしたときに。
アクセサリーを指摘されると、思い出したように声を上げて。
「センパイですか。この間、ご一緒しました」
識っていると口にして。
「姉と、コンビ、の方ですよね」
そういう認識だ。
「では一緒に
はい、今は人手が足りないみたいなので」
嫌がることもなく自然と二人で歩いていく。
前髪を整えながら。
■麝香 廬山 >
わずかに目元が細くなる。
夜だというのに、やたら橙の眼差しは光って見えた。
「その口ぶりからして切ちゃんから聞いたのかな?
そうそう、キミのお姉さんと"コンビ"を組んでる人。
人間としての相性はともかく、"コンビ"としてはイマイチのようだけどね」
こともなし気に言ってのけた。
前回もそのことで一石を投じたが、この感じ妹には話していないらしい。
見てくれだけは気丈なんだな、と内心失笑ものだった。
「人手不足、ねぇ。
まぁ、誰でも出来そうな仕事を回されてるって事かな?
その口ぶり、人がいないから"仕方なく"って感じ?それとも、自分の意志で参加したのかい?」
寒い空気に、明るい声をはよく聞こえる。
流すように見る横目は、何故だか前髪の奥を見透かしているように見えた。
■伊都波 悠薇 >
「そうなんですか」
そう、近くにいる人が判断するのならそうだろう。
‐‐今は。
「じゃあこれからですね」
こともなげに。
すんなりと、すらすらと。
「そうですね。そういう感じです。大事な仕事のひとつなので、自分から。まぁ、誰でもできること、なんですけどね」
そう口にするのは、友人が。それでも偉いと言ってくれて。
とある男の子が、尊敬すると言ってくれてたのを覚えているから。
大事だと告げた。
■麝香 廬山 >
寒い風がゆるゆると吹き抜ける。
何故だが妙に、夜空が遠く見えてしまう。
制御装置を撫でながら、廬山の口元が僅かに歪む。
「──────それは本当に、自分の意思なのかな?」
寒い風よりも何処か鋭い声が、不意に問いかける。
■伊都波 悠薇 >
「どうしてですか?」
自分の意志か、と聞かれると。
そう思っているから、普通に。
「なにか、気になることあります?」
ご案内:「学生通り」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「学生通り」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■麝香 廬山 >
笑顔を絶やすことなく、言葉を続ける。
「キミのお姉さんは、凄いよね。"キミと違って"、何でも出来る。
"キミと違って"、お友達も多い。面白いね、まるで光と影みたいだ」
もちろん全てが全てとは言わない。
全てを持っているような姉と対比するかのようだ。
彼女の言葉に嘘は見えない。そう思っている。
「どちらかに傾くと、どちらかが落ちる。まるで天秤みたいね。
……いや、ごめんね?ちょっとした"クセ"でね。人のことを調べるの」
「勿論、キミの事だってね」
よりよく人のことを知るために何にでも手を回した。
幸いにもその"異能"は研究対象になっており、苦労はしなかった。
気づけば廬山の手元には、夜風に靡く紙のカルテ。
靡く紙から僅かに見える「伊都波 悠薇」の名があった。
■伊都波 悠薇 >
「そうですか」
驚きはしない。そういう人もいるだろう。
調べたことにはびっくりするけれど……
そういう物言いをしてくる、人ではあるみたいだから。
わざわざ、前置きをしてくれるだけ、親切な人だなと思った。
「そうですね。それのせいで、姉はひどく傷つきましたし。自分も、それなりに苦労はしました。でも」
‐‐でも。
「過去の話ですから」
■麝香 廬山 >
彼女の返答は概ね予想通りだった。
既に伊都波 悠薇の異能は無力化された。
彼女にはなにもない、ただの無能力者。そういうことになっている。
「なら、どうしてキミはそのままなのかな?」
腕を振り上げればカルテが宙を舞う。
寒風に煽られて紙吹雪が互いの夜景を覆い尽くした。
「まぁ、分配されたものはもう戻せないとも過程出来る。
ボクはキミ達について詳しいわけではないけどね。飽く迄、他人の所感」
「ボクには、相変わらず揺れてるように見えるな」
彼女を見下ろす視線は、彼女を見てはいなかった。
彼女の更に奥の奥。本来事象の境界線さえ覗く異次元の双眸。
今は制御装置のせいで、そこまで便利なものじゃない。
彼女が"そうである"と思い込んでいるものを否定するかのように、
揺れる天秤を見透かそうとしている。
「思い返してご覧よ。直近でも会ったんじゃない?
……まぁ、思い返せるなら、だけどね」
どちらにせよ、そう思い込んでいる/思い込まされているならわかるまい。
■伊都波 悠薇 >
「どうでしょう」
自分の天秤は、もうない。
なにせ、姉と自分限定で。かつ姉が乗り越えたのだから。
効力は発揮しない。
「そのままでしょうか?」
変わってないように見えるのだろうか。彼は。
いや、前を識っているわけでもないなら比較もできないような気もする。
なんだか。
自分が知っている、悪い人と、同じに見えた。
「かもしれないですね」
でも。
「……どっちでもいいですかね。私は」
自分に出る結果なら、正直。
「姉が悲しむのを、識っているので。もしそうだったら、姉が泣いてしまいそうなので、隠してはいますけど。
私は、天秤があろうと、なかろうと、どちらでもいいんです。正直」
見えるかもしれない天秤は揺れているがーーしかして。
その皿には。
「他責にできないですもん。この天秤って」
『何も乗っていない』
■麝香 廬山 >
ざらつく視線には映った。
確かにそこには揺れる天秤が映っていた。
やはり、未だ天秤は健在であった。予想通りと、広角が上がる。
「─────……おや?」
ただ、そこには"なにもない"。
傾けるはずのものが、何もなかった。
流石にそれは、予想外だった。何もなしに、傾いてる。
薄気味悪い笑みも消え、"珍しく真顔"だった。
「驚いたな…何にもないんだな、キミは」
もしそれが彼女自身を表すのであれば、本当に虚無だ。
人の形をした出来損ない。姉の愛玩人形。
それこそ不思議そうに、廬山は首を傾ける。
「此の世の不利益は、当人の努力不足……って、誰が言ってたっけな。
傾くのはキミ自身の責任、行いか……成る程ね。ちょっとビックリだな……」
「……キミは、お姉さんさえ良ければ自分はどうでもいいと思ってるのかな?」
こともなし気に言ってのけた。
紙吹雪は舞い続けている。より多く、二人を隠してしまうように。