2025/11/01 のログ
ご案内:「学生通り」にサロゥさんが現れました。
■サロゥ > 昼食時の賑わいの中、委員会街方面より不審な女が現れた。
女は生活委員会から貸し出されたセーラー服を着ており、見た目だけなら人間と変わらない。
だが注視すれば、すぐに異様さに気づくだろう。
足腰の関節は一見正しく折れ曲がっているものの、可動域が少し広い。特に爪先や足首が顕著で、外側に不自然に開いている。
瞬きと呼吸は規則的すぎ、体液の分泌もなく、目は乾いている。それでいて体臭すらない。
表情もまた変わらない。真顔のまま微動だにせず、わずかな筋肉の揺らぎすら見られない。人間であれば有り得ない静止だ。
そんな違和感をまとった女を、通行人は自然と避けていく。
「不気味だ」「近寄らないでおこう」そんな囁きも、女には届いていない。
女はただ歩いているように見えたが、突如立ち止まり、学園地区の高層建築を見上げた。
立ち止まったその周囲には、台風の目のように空白が生まれる。
女はそこで、回転するように体の向きを変え始めた。
通行人、飲食店、別の通行人、また別の通行人、そして真後ろのコンビニ――視線が絶えず移ろう。
時折、遠くを見やったかと思えば、隣を通る通話中の学生を凝視する。
声もなく、危険な行動という訳でもない。ただ無表情のまま、不可解な動作を続けている。
いずれ風紀委員が呼ばれるだろうが、それまで彼女がただ回り続けるとは限らない。
■サロゥ > 回り続けること数分、女は突然回転をやめ、ある方向を向いたまま硬直した。
数秒ののち、その方向へ歩き出す。向かった先は雑貨店だった。
通行人にぶつかっても構わず、一直線に進み、店の中へ入っていく。
店員の挨拶には口を開くだけで反応。
独特な意思疎通に困惑する店員を無視して、ためらいもなくカウンター内へと踏み込む。
慌てた店員の制止を無視して店の奥へと進み、足を止めたのは通信機器――ルーターの前だった。
「風紀呼びますよ! 呼びますからね! 本当に呼びますよ!?」
店員の声も意に介さず、女はルーターに触れたまま動かなくなる。
数分後、通報を受けた風紀委員が到着。
現場を確認した委員が女に声をかけると、女は首だけをゆっくりと振り向き、口を開いた。
その後、短い問答が数度交わされたのち、女はルーターから手を離し、風紀委員に連行されていった。
翌日、女の供述をもとに調査が行われ、雑貨店のルーターにマルウェアが侵入していたことが確認された。
被害は軽微だったが、店員の一人が解雇されたという。
ご案内:「学生通り」からサロゥさんが去りました。