学生通りから分かれる路地に入れば、大小さまざまな部活施設、商店などが立ち並んでいる。まさに商店街である。
学生街のほとんどは商店などの施設で占められており、常世島の住民たちが生活する中心となる。
生活するに必要な食糧などは全てここで手に入る。
※商店街の路地に限らす、商店街にある施設なども含んでロールすることができます。
参加者(0):ROM(1)
Time:08:06:37 更新
ご案内:「商店街」から泳夢さんが去りました。
ご案内:「商店街」からイスラさんが去りました。
■泳夢 >
聞こえてくる言葉は、まるでこの寒空のように冷たくて、冷淡で白々しい。
けれども鼓膜を揺するその音は、何故だかとても馴染みがあって。
心の中では『あぁ、やっぱり』と思う自分と、『どうして』と思う自分が同居する。
混乱の極みの中で、何故だかとってもドキドキとする自分がいる。
赤らむ視線の先に写る少女があまりにも美しかったから、なのだろうか?
「ぅ……な、ん……っ」
だが、その言葉の続きが紡がれるよりも前に。
その結論が自分の中で生まれるよりも先に、すべての事は終わってしまう。
甘い甘い、蜂蜜よりも甘露な雫を拭われたその直後。
公園に響く車椅子が落ちた音。それは思ったよりも人々を引き寄せたらしい。
そう時間を絶たず、『本当に親切な人々』が駆け寄ってくるのが、視界の端に見えていた。
そうした時にはもう、目の前から白髪の”ナニモノカ”は消えていた。
残されたの頭から血を流し、全身を打ち付け”蓑虫”となった少女だけ。
ただ蓑虫となった少女の中に、それは強烈な波紋を残した。
「(……また、会わなきゃ)」
それは、自身のルーツを、記憶を知りたいと願う思いから出たものか。
それとも未知や怪異に対する興味が産み出したものなのか。
或いはそう、今も胸をこの上なく高鳴らせている”なにか”から来たものか。
その事実は少女にも、まだわからない。
ただ……その”ナニモノカ”、白髪の魔性にまた会うことだけは、確信していた。
───程なくして助けられたであろう少女の傷は、もうその時には塞がっていた。
■イスラ >
「──…あぁ、大丈夫? ごめんね、わざとじゃないんだ。
つい…うっかり…魔が差して?」
とん、とん…と。
軽やかなステップでも踏むかのよう、階段を一歩一歩と降りながら。
地面に打ちつけられてしまった少女の側へと、屈み込む。
白には、赤がよく似合うよね。
芋虫は、地面を這うものだよね。
だからそうした、つい、うっかり…。
言葉とは裏腹に悪びれた様子も見せず、少女の側へと屈み込む。
香る、甘露な香り──そう、この少女には…魔を魅了する力がある。
純然たる魔である少女…あるいは少年、イスラがこの存在に執心するのは余りにも自然なのだ。
それも、一度失くして、探していたからこそ、余計に。
「──…クス♡ 大丈夫? 血が出てるね…♪」
造りものの四肢を失い、倒れている少女の、頬をすくい上げるようにして両手で抱え…覗き込む。
月を映したかのような金色の瞳…視線が交われば──魅入られてしまいそうな、魔性の眼…。
「可哀想に…♡」
唇が額に触れる。
紅い舌が、触れれば甘美に痛む筈の少女の額をゆっくりと舐りあげる。
紅い血の雫を掬い上げる様に……。
「っはぁ…♡ やっぱい、いい子、だね…エイム──…でも残念。今日はここまでかな」
階段を車椅子が転げ落ちる大きな音に、商店街を行き来する生徒の数人が気づいたらしい。
数人の気配が早足に向かってきていた。
残念、と口にする少女?は立ち上がり、泳夢を見下ろしていた。
…何が残念なのか、その意図は解らずとも…その行為の続きが行われないことを残念と感じる"身体"は──おそらく。
「これでボク達はまた繋がった──。すぐに会えるよ、また、ね」
車椅子の少女、永夢が見上げる先……恍惚のえみを浮かべた白髪の魔性は確かにそこにあり──すぐさま、月に溶けるかの様に消え失せてしまう。
───その場に駆けつけた生徒達が見れば、車椅子の少女が誤って階段を転落した。…そんな事故の光景にしか見えなかっただろう
■泳夢 >
どこか少女が己へと向ける言葉は批評のよう。
作品を見定めているような、或いはそう、作り上げたものを確認でもしているかのような。
親心、ともまた違う。冷淡ながらも、その言葉にある確かな実感のような色。
「そう、だね。色々あったけど私は生きて……え?」
だから、奇妙で恐ろしくて、言葉にならない違和があっても、不快ではなかった。
その言葉も、態度も、立ち振る舞いも。
されども少女が語る言葉の羅列に、思考が止まる。
言葉の意味することを、理解することは叶わなかった。
その総てを拾い上げることもまた、出来なかった。
だが、その言葉が明確に、『己の事を知っているそれ』で在る事だけは、理解した。
記憶もなく、気が付けばこの身であった己を知る何者か。
それが彼女なのではないのか?と、そう驚愕の色を顔に浮かべて──
「あ──」
その直後だった。
車椅子が軽々と、まるで空の段ボール箱を押すような気軽さで”落とされる”。
4~5歩程度でも、1mは段差の上から、作り物の四肢しかない少女には、それはあまりにも高い。
ドサリ、と。受け身も取れず、車椅子から投げ出された身体が、冷たい地面に打ち付けられる。
当然、四肢の代わりであった義肢も、彼女の身からは容易く離れている。
幸いだったのはその身が人より軽いことと、自身の数倍は重い車椅子の下敷きにならなかったこと。
それでも普通ならば、打ち所が悪ければ、十分に命に関わる事柄であった。
「ぐっ……うぅ………っ」
全身に"心地の良い"痛みが走る。
額を地面に擦り付けたのか、その痛みは血を伴い、顔を上げた視界を赤く染めていて。
……どこか甘い甘い、甘露な香りを、鼻に感じた。
■イスラ >
程なくして、二人は公園に辿り着く。
小さな小さな公園だ。この時間ともなれば、人気も殆どない。
商店街の街並から、階段…といっても4~5段程度のそれを見下ろす形で、イスラは足を止めた。
「うん、綺麗でかっこいい。白には赤がよく映えるんだ。
聖夜は過ぎ去ってしまったけど、いい夜じゃないか。
──ふふ、エイムは受け答えもとてもしっかりしてる」
階段横にはスロープがある。しかしそれでも、車椅子の少女ひとりで此処に来ようとはそうそう思わないだろう公園。
スロープには向かわず、階段の手前でと止まった車椅子の前に、少女?はしゃがみこみ、顔を覗く。
「色々不都合も多い身体だろうに、しっかり生きてる。キミは美しいね、エイム」
まるで感慨深い、とでも言いたげに…初対面の少女?は微笑んで見せる。
「今日は逃げたりしないのに、どうしてあの時は逃げちゃったのかな…。キミじゃない誰かのせい、かな?
キミと同じように加工した他の子はみんなすぐに絶望しちゃって、芸術性の欠片もない仕上がりになっちゃったんだ。
だからキミを見つけられてとっても感謝してる。ボクのアートに足り得るのはあの場所ではキミだけだったからね。
あ、エイムはイモムシって好き?多分、そんなに好きじゃあないよね?
でも毛嫌いしちゃ勿体ない。芋虫はいずれとても綺麗な羽根を持った蝶になって皆に好かれるんだ。
そう思うと、結構好きになれたりするかもしれないよね?」
──意味のわからぬ言葉の羅列。
少女…泳夢が言葉を挟む隙間も与えずにつらつらと、意図の組めない言葉を饒舌に繰り返す。
……その様も、"今の泳夢は"見たことがない。
「キミならきっと美しい蝶になれる♪」
にっこりと微笑み、立ち上がるイスラと名乗った少女?は───とても自然な動作で背後にまわり、さも当然とばかりに、トン…と、階段へ向け車椅子を押した
白楼のような手指は…その取手を掴んではいなかった。
■泳夢 >
果たして本当に親切な人は、自分で親切な人間なのだと言うものなのだろうか?
そう疑問は持ちつつも、現状ではその行いは親切そのもの。
理性ではない、脳の何処かが警鐘を鳴らしているけれど、今のところそれはただの感覚。
車椅子を押され、商店街の街並みを進む中で、逃げ出すようなことではない。
…そして何より、どこか期待や興味、そういうモノに似た何かもまた感じていた。
「もうクリスマスは過ぎちゃいましたけど…確かにうん、奇麗でかっこいいと思います」
自らの車椅子を運ぶ彼女の言葉の節々に、今だって違和がある。
容姿を選ぶ…だなんて、普通は口にする単語ではない。
それではまるで、姿形を好きなように変えれる者が、口にする言葉なのだから。
だから、という訳ではない。
もしかすると、彼女は人…”人間”ではないのではないか?とか。
そんな理由で興味を向けているのともまた違う。
「公園…うん、時間もあるから私はいいけど」
もっと根源的な何かが、泳夢に”逃げない”事を選択させていた。
■イスラ >
「──エイムちゃんかぁ。いい名前だね♡
ふふ、どうしたのかな。緊張しちゃってる?
気にしなくていいよ♪ ワタシはただの親切な人、だからね♡」
言葉もややぎこちなく、どもり気味な少女に背後から笑いかける。
……本能的な警戒、怯え…そんなものを感じているだろう少女を見下ろしながら。
ゆっくり、ハヤすぎないように車椅子を手押しながら──。
「わぁ、ありがとう。そんな風に言われたのははじめてかな?
エイムにそう言ってもらえるなんて、この容姿を選んで正解だったね♪
白っていい色だよね♪サンタクロースなんかも、赤と白だ」
───意図のわからぬ言葉が続く。
さて、何処に向かおうか?なんて自然に言葉を繋げても、違和感はどうしても拭えない。
冬の街並、商店街の道々。
車椅子の取手を押しながら、金色の視線が見渡す景色の中…イスラはちょっとしたものを見つけ…微笑む。
「そうだ、ちょっとだけ寄り道なんかどうかな?
もう少し向こうの階段を降りた先に小さな公園があるんだ♪」
■泳夢 >
金色の瞳に写る己の姿は、きっと困惑の色を隠せていないのだろう。
何となくだがわかってしまう。
今の泳夢は、己は、きっとその心を見透かされていると。
「そ、そこまでしてもらわなくても…っ。
イスラさん…かぁ。私はその、泳夢って言います」
最も、今の少女の様子を既知の者が見ているものが、それは実にわかりやすいものであっただろうが。
いつもならば返答も、もう少し快活でハキハキとしていただろうに、どうにもおぼついていないのだから。
そして結局、断り切れずに車椅子に取っ手を取られて介助されることとなる。
背後に立つ白髪の少女に、どこか未だにゾワゾワと逆立つものを感じながら。
「あはは…それを言えばイスラさんの髪だって、とっても綺麗ですよ。
さらさらと風に乗って……けど、どこか強かな感じがして」
そんな感情をどこか感じられない言葉に対しても、少女はふむりと思案をいつもの数倍重ねて返す。
どういうつもりなのだろう? 本当にただの親切なのだろうか?それとも……と。
■イスラ >
可愛らしい大きな瞳をまたたいて、
きっと、自分自身の不可解な部分が警鐘を鳴らす…。
そんな言い様のない感覚におそらく眼前の少女は囚われている。
「いいよ♪
ワタシが押してあげよう♡
……お名前、聞いていい? ボクはイスラ。最近こっちに来たんだ♡」
きっと、名乗ったその名前にも少女は聞き覚えはないだろう。けれど…。
きゅ、と白蝋のような指先が車椅子の取手に触れる。
自然と、少女?は背後にまわることになる──不可思議な不安は、姿が見えないと余計に増悪する──。
それだけの行為が、己のコントロールを握られたかのような感覚となって襲うのだ。
「すっかり冬だね♪ 空から燃え尽きた白灰が降るかの様だ。
まるでキミの髪のように美しい、いいものだね~、冬」
謳うように紡がれる言葉もどこか空虚。
言葉の一つひとつに歌の歌詞のような抑揚が含まれるも、まるで心には刺さらない──。
■泳夢 >
その声を聴いた時、車椅子の少女はそれをどこか『懐かしい声』だと感じた。
くるりと振り向いた視線の先、制服を着た白髪の少女。
覚えはない…筈だ。見知ったことのない、初対面の人物。
されども、顔を見れば何かがざわつく。己の内の、奥にある何かが違和を訴えていた。
「え、ええっと…こんにちは?」
声を掛けるときに話す言葉も、自分は知らない言語だったはずだ。
だが、何故だかそれが意味することが分かることに、泳夢は蒼く澄んだ瞳をパチクリとさせて。
「う、うん。そんなところだけど…えと、いいの…かな?」
どうにも混乱しつつも、そう問いを返す。
シーンだけ、言葉だけを切り取ればただの親切なのだろうけれど……形容しがたい、何かがあって。
……真面なままでいたいなら、この人物に関わってはならない。
そんな予感が、泳夢の胸中を駆け巡るのだった。
■イスラ >
日が傾き堕ちた頃の商店街。
いつの間にか近くにいた"それ"はとても、とても親しげな声色で車椅子の少女へと声をかけた。
「Succes, drăguță păpușă(御機嫌よう、可愛らしいお人形さん)」
貼り付いたような笑みを浮かべた少女?。
まるで旧知の友人を見かけたような親しさで、車椅子の少女の前へとまわり、その整った顔を覗き込んでいた。
「年末のお買い物? ふふっ、一人で出来て偉いねえ。
でも、車椅子だと結構大変でしょ?良かったらお手伝いさせてくれないかな♡」
……端から見れば親切な声掛け。
けれど──、空はとても晴れている。にも関わらず悪天候を予感させるような──人が不安を感じ妙な雰囲気を漂わせていた。
ご案内:「商店街」にイスラさんが現れました。
■泳夢 >
もういくつ寝るとお正月、だなんて歌うには、指折る回数もあと二回。
そんな年の瀬、年始直前の商店街を車椅子がゆっくりと通り過ぎていく。
「やっぱり、明日から閉まっちゃうお店も多いなぁ…。
今日、買いに来て正解だったかも」
冬の夜空に靡く白髪が、漆黒のドレスで際立つ少女は一人呟く。
彼女がこんな年の瀬にここに来たのは、所謂買い出し。
年末年始、行きつけのお店が休業する前に買い溜めしておこう、という算段であった。
ご案内:「商店街」に泳夢さんが現れました。