2024/07/09 のログ
緋月 > 「自慢ではないですが、里での書き取りはいつもこういった筆と墨を使っていましたので。」

慣れたモノです、とちょっと偉そう。
それがデフォルトというのは、いったいどんな現代社会から隔絶された社会なのか。

「自分探し――ですか。」

蒼い少女の言葉に無言で耳を傾ける。
その表情には、笑ったりするような雰囲気はまるでない。

「――そう、考えられるのは、きっととても大事な事だと思います。」

蒼い少女の独白が終われば、ぽつりと一言。

「今の世の中、色々なモノが溢れ返っています。
便利なものも、情報も、人の数も。
そんな中で、「自分がこう在りたい」と考えて日々を暮らしている人が、どれ程いるのでしょうか。

私は、蒼雪さんの考え方、とても素敵だと思います。
些細な切っ掛けで、縁が生まれて、自分の知らなかった道が拓ける。
その先に、「こう在りたい」自分の姿を見つけられたら、それはとても、素敵な事だろう…って。」

其処まで話した所で、店員さんの「お待たせしました~」の声。
とうとうお待ちかねのスイーツがやって来た。
書生服姿の少女の前に置かれたのは、綺麗なガラスのパフェ容器に見事に盛り付けられたパフェ。

「お、おぉ…これは、なんと贅沢な――!」

思わず感嘆の呟き。
山のように盛られたソフトクリームにはふんだんにきな粉がかけられ、その麓にはやはりきな粉のかかった
白玉が多数、ぐるりと円を描いて配置されている。
チェリーだのチョコの棒菓子だの、余計なものは全く配されていない、きな粉と白玉を正面に打ち出したデザイン。
容器の中身もチョコではなく、黒蜜が詰まっている。

「これは――今までにない、贅沢――!」

思わず口から涎が垂れそうな表情。幸せそうだ。

蒼き春雪の治癒姫 > 「里…ッ?筆が普通…ッ?…えへ、それでですか。書道の字かと思うくらい…美しい。」

どうも…私の思う限り、技術とは程遠い世界から来たのだろうか。
…こっちの世界に来た時
電光掲示板とか
メールとか見て
目を回さなかっただろうか

―――理解不能なものは、別段それだけではない。
逆に…
貴女様の持つ"斬る"技巧だって
その一つだろうから

「そう、ですか。…ありがとうございます。
嬉しい…えへへっ…。」

目を、伏せる。
満足そうに。

(…あの時ね)
(テンタクロウを斬りにいった貴女が凄く羨ましくて、眩しかったんだ)
(危険も顧みず)
(立場も顧みず)
(はっきりと、命を懸けた名乗りを上げて)
(自分のしたい事をし通して、打ち勝った貴女が)
(―――便利なもの、情報、人の数。)
(沢山あるよね。)
(でも。貴女と同じ事が出来る人は、居ない。)
(だからね。)
("唯一無二"の自己を通し切った、眩しい貴女の"ファン"なんだ。)

(…何にもなれないまま、潰えた(わたし)とは、大違いだね。)

「…えぇ。いつか、なりたい自分になれたら良いなと、願うばかりですッ
貴女様とも、こうして縁があれば、いずれ――その道が開ければいいなって。
……貴女様にお話して、本当に良かった。」

さ、短冊、吊るしましょうか。
青色と赤色、夜空に願いを込めて―――。

蒼き春雪の治癒姫 > ―――そうしている間に、甘味が運ばれてきた。

深緑色の抹茶に、
幾重にもチョコレートソースがぶちまけられた、
甘味に甘味を重ねた暴力的なアイスクリームの山ッッ!!!
煌めく雪色の瞳……ッッ

「はぇ……、森か山のような甘味ですね……ッッ!!」
「それではどうぞ、緋月様。」
(わたくし)のこちらをお召し上がりくださいませ。」

そして美しき艶やかな白玉も頂こう
無論―――緋月様が頂いた後で……ッッ!!
これにより私は2回に分けて至上の甘美なる甘味を頂けるのだッッ!!!

緋月 > 「ぉぉ……蒼雪さんのご注文の品も、中々の量ですね…!」

最初にメニューのお値段を見た時は「ちょっと高いかな」と思った位だが、この分量ならばお値段も納得だ。
これをおひとり様の場合は独り占め――なんたる贅沢!

「あ、それでは失礼しまして、一口――。」

チョコレートソースのかかった抹茶アイスの載ったスプーンが伸ばされれば、はむ、と一口。
口に広がる、微かな苦みと鼻に抜ける抹茶の風味、そしてそれを潰さないアイスのまろやかさとチョコソースの甘み。

一言で言って、

「お、おいしい――!!」

抹茶のアイスは初体験だが、これは中々。
何と言うか、品のある甘みだ。多少人を選ぶかも知れないが、書生服姿の少女は気に入ったタイプである。

「こんな甘露を、これだけの量とは――贅沢ですね!」

そして、自身の前に置かれたパフェに目を向け、こちらもパフェ用のスプーンでひと掬い。
ソフトクリームと白玉をひとつ、纏めて口に運ぶ。

「~~~~っ、おいしい…!」

きな粉がかかったソフトクリームは、ミルクの味わいを濃く残しながらも和風の味わい。
そして何より白玉の感触――たまらない、至福の味わい…。

「――あ、私だけ先に食べてしまいましたね! これは失礼!」

慌ててスプーンに白玉とソフトクリームをちょっと多めに取ると、蒼い少女に向けてそっと差し出す。

「さ、蒼雪さんもどうぞご遠慮なく。」

蒼き春雪の治癒姫 > 「えぇ。やはり夏場の甘味と言いますのは、食べたいだけ山ほど口の中に叩き込みッ
暴力的なまでに冷やしたお水で更に体を冷却してッ
その繰り返しでのみ得られる極上の喜悦があるのではないかと思いますッ」

小難しい事言ってるけど、ようは。

つめた~い!!
おいし~!!!
きもちい~!!

である。

「素晴らしい……ッ」
「素晴らしい食べっぷりですよ緋月様ッ!!」

さっきまで非常に邪な事を考えていたけど
頭の中のソレがかき消されるくらい
嬉しそうな顔をされるもんだから

もう本当に…!!

「あっ……」
「きなこ、黒蜜に抹茶、チョコが塗された白玉…!!」
「圧倒的甘味ッ」
「圧倒的暴力ッ」
「圧倒的食感ッッッ」

これらすべてが口の中で融合するなれば
うん
それは
めっちゃ
おいしい

という事だけはわかる。
語彙力が決定的に欠落しているが、
それは良いッ
言葉とは意味を入れる箱に過ぎぬッ

「ああーーー…!!」
「おいしそ…!!」

見てるだけで幸せになってきたところで、
そうです私も食べないと!

「あはぁい?!頂きますぅッ?!」

ぱくんっ。
無遠慮に、食い付いたッ

「あー…!!んぁ…!!んまっ…♪」

おお
何という…甘味
口の中で蕩ける食感ッ

「はふぅ…んはぁーっ…たまりませんね……」

もう
色々とこれは……

素晴らしいッッ
白玉入ってくれてるおかげか食感の良さが7割増しくらいに感じるッ
舌の上で甘露が蕩けていく感触がたまらないッ

めちゃくちゃだらしない顔で味わい尽くしていく―――

緋月 > 「ホント、とてもおいしいです…!
ああ、この甘みが夏期限定という無念……!」

ざくざくとソフトクリームの山を順調に削り、溶け始めた根本のソフトクリームを黒蜜と絡めていただく。
黒蜜の濃い甘さが加わったソフトクリームの、暴力的とすら言える甘味!
そこに、残して置いた白玉を絡めて食べる。
食感と甘味、二重の衝撃が脳を焼いて来る。

「~~~~~~っっ!!」

最早言葉にできない。
幸せそうな笑顔が、総てを物語っている。



そうして、幾分かの後。

「はぁ……おいしかったですね…。」

あまりの甘味の嵐によって、半分虚脱状態になっただらしのない書生服姿の少女がいた。

「…今日は、とても楽しかったです。
蒼雪さんと一緒に、おいしい甘味を食べて、七夕の願い事をして――まるで、ただの学生みたい。」

ぼう、とそう口にする。
今だけは――そんな立場でも良いのかもしれない。

「――そろそろ、出ましょうか。
次は…あ、扇子、暑くなってきたから、私も扇子が欲しくなりますね。」

行きましょうか、と声を掛け、席を立つ。
会計を済ませれば、次の場所へと向かって出かける。
まだまだ、夏は始まったばかりだ。

去り際に、和風喫茶に置かれていた竹竿に、ふたつの短冊をしっかりと吊るして置くのを忘れずに。

蒼き春雪の治癒姫 > 「えぇ。本当に…あぁ、体もお口も…すっかり冷え切りました。暑さも忘れられて―――」

うっとりしながら、口元や手を拭いて、
ほんのりとろけきっちゃったお顔を晒す

「私も…。貴女様とこうして、お出かけして。
それこそ、平穏な一日を共にできて。とてもよかった。
えへへ、"ただの学生"…ですか。」

「―――もしかして。貴女様は、今まで"平穏"や"ただの学生"と言ったものと、縁遠かったのですか?
 また、平穏なる日を共に致しましょうね。」

ただのあてずっぽうだけれど。
なんだか。
そんな気がする。
だって。
…あんなに強い人が、"普通"で"平穏"な暮らしをしていたのかな。



「扇子ですか?でしたら、私が愛用しているところで、おつくりしてみてもらいましょうか?―――……」
「暑いですから、日陰に入りましょう―――……」
「帰り際に、見ていきませんか?冷却魔術付きの日傘―――……」
「緋月様、緋月様、あちらに―――……」
「―――……」

さりとて。
もう少しだけ。

平穏無事な真夏日。
青春の一日は、続く―――。

ご案内:「商店街」から蒼き春雪の治癒姫さんが去りました。
ご案内:「商店街」から緋月さんが去りました。