2024/09/06 のログ
ご案内:「商店街」にゼアさんが現れました。
■ゼア >
普段、恐怖という感情とは無縁なゼアという少女。
――なのだが。どうにも最近、ちょっと苦手なものが出来たらしい。
「…………」
物陰に隠れて、目元だけを出す古典的な隠れ方。
桃色の髪も相まって余計目立つような気がするのだが、それはともかく。
そんな警戒モード百パーセント・ゼアが見据えるは。
なんてことはない、体を丸くして眠る、黒い野良犬である。
何の変哲もない、我々が想像する、一般的な野良犬と一切の相違ない。
まったく正しい意味で、ただの野良犬。
そんな至って無害な存在を、しかしゼアは最大限に警戒していた。
■ゼア >
時は数日前。
「いけーすすめークーシー号ー!」
小さくなって、野良犬の背中に跨り、爆走して遊ぶゼア。
何をやっているんだと思われようが、ともかくこういう遊びを思いついちゃったんだからしょうがない。
自分で走るよりも、飛ぶよりも、遥かに早く商店街を駆け抜ける。ああ楽しい。
そんなスピード感に魅せられてしまったゼア。
まあ当然、飼い慣らされてるわけでもない野良犬である。コントロールなんて微塵もできていない。
それでもゼアは楽しかったので問題はなかったのだが……そんな疾走劇は唐突に終わりを告げた。
「んぉ?」
『わわわんわんわんわんわんッ!!』
「にゃああああああ!?」
突如、野良犬同士のエンカウント――そしてシームレスに始まる喧嘩。
振り回されて吠えかけられて、そして――どうしてそうなったのかわからないが――口に咥えられて、危うくそのまま咬まれそうになった。
どうにも最近、やたら危ない目にあっている気がするゼアであったが。
流石に今回ばかりは命の危機だったらしい。
■ゼア >
そういうわけで現在、ゼアは犬というものに対してトラウマを抱いている。
目の前のあいつが当事者かどうか、そんなのは関係ない。
わんちゃんこわい。
「うぬぬぬぬ……」
なのに、通り道に、道を塞ぐように野良犬が寝ていて。
どうしようもない。大変困っている。
ご案内:「商店街」にジャスパーさんが現れました。
■ジャスパー > 勝手知ったる島の中
今日ものんびり散歩していたところ、何やら見覚えのあるピンクの髪の毛がひょこひょこ動いているのを見つけた
大通りへの近道で何やら葛藤しているらしい背中は、暇な男子生徒の興味を引くには十分であった
(ん、ん。よし、きもくないように。爽やかに行くぞ………)
「よっ、ゼアちゃん。ちょいぶり~、どーしたんだ?」
以前に小さい姿を撫でたり、自己紹介をし合ったから多少どもりは抜けているが
少しだけ気障ったらしい口調になってしまったが声をかけてみる
いくら知り合いであろうと可愛いのは可愛いので緊張はするものである
■ゼア >
目の前に警戒網を張り巡らしていると、後ろから声。
ちょっとびっくりして振り向くと、見知った顔があって。
「あ、お兄さんー。ちょいぶりー」
恐怖心はどこかに飛び去って挨拶を返す。
ここにきて一筋の光明が見えた。
「えっとねー、あれ」
指さしたのは、未だ暢気に眠りこけている黒い野良犬。
「なんとかできない? ちょっと通れなくて困ってるのです」
起こさないように傍を通れば問題ないだろうが。
数日前の記憶が色濃く残っているから、それもできない。突然起きたら気絶する自信があります。
■ジャスパー > 「ん?あれ?」
指さされた先を見てみれば、黒い野良犬
野生味は感じるが、街に慣れた犬という感じだ
滅茶苦茶に刺激したら噛まれたりするかもしれないが、特に危機は感じない
しかし、道を塞いでいるのも事実
待っていれば、別の通行人が来て野良犬も起き上がるだろうが
そんな悠長なことは言ってられない!今、女の子が困っているのだ!
「ゼアちゃんわんこ苦手だったのか~
おっけー。なら、俺に任せな!」
通れなくて困っている、そして道行く先の犬という状況から苦手なのだろうとアタリを付ければ…爽やかに親指を立ててから犬の近くへ寄っていく
動物は好きな方だし、いいところを見せるチャンスである
要するに、路地に犬が居なくなればいいのだ
かといって単純な暴力は好むところではない。紳士ポイントがマイナスされてしまう
「む。中々起きないな…、おぉーい、お犬さん。ちょっと退いてくれないか」
近づいて声をかけたが…この路地で寝ているだけあって、中々人に慣れているのか警戒心が薄いせいで起きてくれない
しかたない。少しびっくりしてもらおう
『ごら待ておらああああああああああ…!!』
異能でちょっと大きめの音声を再生
ちなみにこの音声はドラ猫を追いかけるおばちゃんの声である
!!
犬は跳び起きたが誤算が一つ
パニックになった犬が、なんと俺に向かって来てしまった
「ぐあああああああああ!!お、おまえ、なにす、ぶえっ、ぼほっ」
それほど大きくない犬とはいえ野良
路地裏に押し倒されてわちゃわちゃしてしまっている
「ぜ、ぜあちゃ、い、いまのうちに、おれの、おれを超えて行け…!!」
■ゼア >
「おおー。がんばれお兄さん」
なんとかなりそうで一安心、といったところ。
なんてったってお兄さんだもの。
根拠のない信頼。
と、思っていたら。
「ひええ」
お兄さんの異能で起こしたところまではよかったのだが。
そのせいでパニックになった野良犬が、お兄さんに飛び込んでいく。
数日前の光景が想起される。
「むりむりむりむり」
超えていけ、とか。
だっていつこっちに牙を向けるのかわからないのに。
珍しく、顔を蒼白に染めるゼアである。
■ジャスパー > そりゃそうだ
犬が怖いのに襲われている横を通れと言うのは無茶である
「ぶえっ、涎が…!…とぉっ!」
だからここは根性の見せどころ
別に噛まれているわけではない
元は飼い犬だったのかわからないが、噛み癖はないようだった
その隙を突き、体を起こして犬を抱える
犬の体が大きくはないのが幸いし、持ち上げて立ち上がるところまでできた
「よっし、後は……よいしょっと…おどかしてごめんなー…」
もちろん犬は暴れるが…だからこそ、降ろす方向を逆に変えてやればそちらに向かって一目散に走り出す
大きな音で目覚めたかと思えば変な男と絡みあうことになったのだから当然と言えば当然か
あっという間に、路地から犬は居なくなる
後に残ったのは…顔面が犬の涎でべしょべしょの少年のみ。危機は去ったと言えるだろう
「ふぃー…
も、もう大丈夫だよ、ゼアちゃん」
振り返ってサムズアップ
何とも格好は着かないが任務達成である
■ゼア >
「あ、ありがとぉ……」
危機は去った。ひとまず安心。
「わんちゃん……食べてこようとしないならかわいいのに……」
危うく食べられそうになる経験なんて普通の人間にはそうそうないことなのだが。
「あらためて、ありがとー。たすかりました。
めっちゃ顔がべたべたしてる。ちょーっとじっとしててねぇ」
ポケットから綿のハンカチを取り出す。
白地に薄いパステルカラーのラインが入ったそれは、いつもお世話になっている服屋のおばさんが持たせてくれているもの。
そのまま少年の顔を拭こうと、そっと手を伸ばす。
何もなければ、そのままそうすることだろう。