2024/09/14 のログ
紅き機械ノ女王 > 「死を想う……。安寧を願う……。仰る通り、いずれ死が訪れるが故に、生きる事が尊いのかもしれませんね……。私は幾度も死にかけて……生きているという事を実感する時があります」

死を想い、安寧を願う事もまた埋葬の意義。
生きている尊さは、何度も死にかけたから実感できる……。

「私に生き続けてほしいと願ってくださる人達がいます。私の命を懸命に救ってくれた人達がいます。《埋葬の仮面》の継承者さんであるあなたの口からその言葉を聞けるのは、私にはとてもありがたいです」

最期は、まだ先であるべき。何度も死にかけたけど、救ってくれた人達がいる、この命。その命の肯定的な言葉に、イーリスは目を細めた。

「黒き神には、とても立派な教えと禁忌があるのでございますね。あなた達が“死”を与えるのは、祝福を与えるため……」

人の命を救いたいと願って医療を学んで、さらに誰かを殺める事を嫌うイーリスには、出来ない考えだった。
命を救う、ちゆきさんに対してはアンデッドにしてでも助ける、そんな事ばかり考えてしまっている。

しかし緋月さんが口にする、そういった“答え”もあると、イーリスは理解を示してしまう。

「……それは……そう……ですよね……。申し訳ございません……。あなたも……いえ、あなたが一番……ちゆきさんを助けたいと願っているはずですよね……」

緋月さんにはきっと、ちゆきさんとの想い出がいっぱいあって……。その過ごした時間の中で築かれた友情があって……。
だけどその上で……いや、だからこそなのだろう。
緋月さんは、自らの手でちゆきさんを祝福し、埋葬する覚悟でいる……。

(緋月さん……凄く、お辛い……ですよね……)

天を仰ぐ緋月さんに、一滴の涙……。
とても、悲痛な覚悟……。
緋月さんが覚悟を決めたのなら、イーリスはその覚悟に応じたい。

「……実のところ、当の私こそが最初は《紅き屍骸》という事だけでちゆきさんを敵視してしまっていたんです……。ちゆきさんの想い、殺害欲に抗う意志の強さがあったから、私は彼女と人として接する事ができたに過ぎません。データに凝り固まった私を、ちゆきさん自身の必死な想いが“自分は例外”であると私にお伝えしてくださいました。ちゆきさんは……とても素敵な方です。そして、そんなちゆきさんを……私とは別の方法で救える強き覚悟を持つあなたも……素敵です」

目を細めて、柔らかく微笑んでみせる。

「私はちゆきさんを救おうと、紅き屍骸を研究して得た知識や技術を医療に応用して手を尽くしてみました……。しかし、私にはちゆきさんを救う事ができませんでした……。ちゆきさんを救えるのは、きっとあなただけです」

慈悲と祝福という名の救い。
怪異として処理されない、人としてちゆきさんを祝福する……救い。

イーリスはスマホを取り出した。

「治療の際、ちゆきさんの体内に医療用ナノマシンを注入しました。そのナノマシンによりちゆきさんの居場所がわかっています。連絡先を教えていただけませんか? あなたにちゆきさんの居場所を示すアプリを送ります」

緋月 >  
「…黒き御神の教えは、輪廻や転生の存在しない教えです。
死は「終わり」であり…永遠の安らぎである。
万人に受け入れられる教えではありませんし、私もこれを積極的に
伝えて回ろうというつもりはありません。

それでも、そう言って貰えれば…理解を頂けて、有難い限りです。」

黒き御神の教えは「死神信仰」。そこに「転生」という「次」はない。
一般には受け入れ難いものかも知れないが、こうして理解を示して貰えるのは…有難い事である。

「…生きて欲しいと願って下さる方々がいるなら、その人達をどうか大事に。
私が言うのも何ですが、イーリスさんはまだお若いです。
一度しかない「生」を大事にする思いは良い事ですが…「死」を意識し過ぎるより、
「生」を大事に生きる方が、健全ですから。」

そう、自分は歪な死を見て、「死」に重さと意味を見てしまった。
それを後悔などしてはいないが…他の人にまでそれを伝える事は、あまり良いとは思わない。

「――いいえ、いいえ!
イーリスさんは、イーリスさんなりに手を尽くしてくれたのでしょう!
それが例え実を結ばなかったとしても…その時にあった思いは、決して無意味なものではないはず!

イーリスさんは、千癒姫さんをイーリスさんなりのやり方で助けようと……
死した紅き屍骸のおぞましく、哀しい在り方から千癒姫さんを救い上げようとしてくれました!
その気持ちだけで――充分過ぎます…!」

目の前の少女は、少女なりの方法で、紅き屍骸の運命からあの蒼い少女を
助け出そうとしてくれた。その思いで、充分過ぎる位だった。
――彼女の思いも、自分が連れて行こう。
重荷などではない、その気持ちを持ってくれた人がいるという事実が、力をくれる。

「千癒姫さんの居場所が分かる仕掛けを、用意してくれたのですね。
改めて、ありがとうございます…!

連絡先は――こちらに。」

取り出したのは、自分のオモイカネ8。
少し手間取りながらも、スマートフォンに向けて連絡先を送信する。
 

紅き機械ノ女王 > 「輪廻転生の存在、あるいは完全なる無であるのか、死後どうなるかについてはとても興味深い研究テーマでもあります。私、臨死状態の時に生と死の境目を見た事がありますから、さらに興味を抱いてしまいました。とは言え、信仰はとても尊重します」

異能や魔術といった超常の分野をも取り入れる科学者としての立場からは、輪廻や転生の否定はできないまでも、信仰としては尊重したく思う。

「ありがとうございます。私にとって、とても大切な人達です。これからも、大事にしていきます。ふふ、そうですね、緋月さんもまだお若いです。お互い、今生きているこの時間を尊く想い、大事にしていきましょう」

そう口にして柔らかく微笑してみせた。

「そうですね……想いは無駄になっていないとは信じています。私の想いが無駄にならないかどうかは、重荷を背負わせてしまうようで恐縮ながらあなたの刀にかかっていると思います。私ではちゆきさんを救えなくはありましたが、無意味であるとまでは思っていません。あなたが、ちゆきさんを救ってくださるならば──」

重荷になると自覚しつつも、緋月さんにちゆきさんを託したいという意志を伝える。
緋月さんしか、ちゆきさんを救う事はできない……。

「あなたがちゆきさんを救う(祝福する)事ができたなら、きっと、私の想いは無駄になりません。だからあなたは、真っ直ぐ己が成すべき事……貫いてください。機界魔人テンタクロウさんを倒したあなたです。あなたの信念を貫くならば、きっとうまくいきます。ちゆきさんは、そんなあなたに憧れたのだと思いますからね」

目を細めて微笑み、優しい風貌ながらどこか凛とした佇まいでそう告げた。
緋月さんがテンタクロウさんを倒したというのは風紀委員に入ってからあの事件を調べてみて知った。
ちゆきさんも、テンタクロウさんを倒した緋月さんにとても憧れている様子だった。

そうして連絡先を交換して、ちゆきさんの居場所がわかるアプリを緋月さんのオモイカネ8に送った。

「そのアプリのレーダーが指し示している場所。ちゆきさんが今いる場所は、禁書図書館の一画《永遠の間》と呼ばれる危険区域。時間や永遠に関する怪異禁書が主に保管されている場所で、時の怪異なるものに飲まれると永遠に停止させられるとも言われています。ちゆきさんは、この永遠の間で自身を永遠の時に停止させてしまおうと考えているのかもしれません……。誰も……殺害せずに済むように……」

ただ人知れず、ちゆきさんは全てを終わらせようとしている……そう推測できるような場所に、彼女はいる。

緋月 >  
「――――随分と、懐かしい名前を、聞きましたね。
そうか…イーリスさんは、風紀委員の所属か、あるいは関係者…という所ですか。
あの事件の結末は…表向き、風紀委員の手による解決になっている筈ですから。」

機界魔人の名を聞けば、思わぬ物事を耳にした表情。
あの事件については、吹聴する気もなければ誇る気もないし、そもそもそんな気になれなかった。
――あの事件は、思い返す度に胸に小さく痛みが来る。

「…では、申し訳ないですが我儘をひとつ。
私の詳しい事情と、埋葬の仮面の事については、イーリスさんの心に留めておくにして欲しいのです。
……先程語った禁忌の事もあって、私は風紀委員に属する訳にはいきませんし、
逆に公的な組織に属していないからこそ、出来る事もあるのだと思いますから。」

風紀委員は治安維持の警察機構。
そこには命のやり取りもあるかも知れない。
私心を以て死を与える事を禁忌と戒める己が、私心ではないにしろ「人の定義する規律」の
下に就いて死を与える事になるのは…出来れば避けて置きたい。

オモイカネ8にインストールされたレーダーアプリを少し苦戦して起動し、その示す方角を目にしながら
紅の文様の少女の言葉に耳を傾けつつ、書生服姿の少女は思案の顔。

「……千癒姫さん、そんな所に籠ってまで、紅き屍骸の業に逆らおうと…。

――情報と警告、ありがとうございます、イーリスさん。
禁書図書館か……少し厳しいかも知れませんが、何とか忍び込んでみる事にします。

私も…ただ嘆きながら今までを過ごして来た訳ではないですから。
やや突貫なのは否めませんが、修行は積みましたし――後は、
この「斬魔刀」が私を認めてくれるなら…!」

ごそり、と、外套を捲り、背中に背負っているモノの柄を掴み、少しの工夫で引き抜く。
引き抜かれたのは、全長120cmに及ぶ大剣。
分厚く、幅広の片刃の刀身には、「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」の
九字が刻まれている。
――大仰な見た目に反し、特に何も感じない、武骨な大剣といった印象だが。
 

紅き機械ノ女王 > 「最近になって風紀委員の所属となりました。風紀委員によるバックアップはある程度私に任せてください。この件でもし面倒な事が起きれば、私が風紀委員としてうまく処理しておきます」

そう口にして、非番なので今はつけていない風紀委員の腕章を見せる。
何かあった時に、非番でも緊急で対応できるよう腕章は持ち歩いていた。

もし面倒な事が起きた際の処理は、出来る範囲で風紀委員の立場から手助けしたい所存。

「分かりました。全て、私の胸の中に仕舞っておきます。必要ならば私がうまく処理しておきますので、あなたは安心してあなたの成すべき事に集中なされてください」

イーリスは、法より人情で風紀を正す風紀委員。
その信念は風紀委員としては少々問題あるあり方かもしれない。
それでも、人の温かみをなくして法で縛り付けるよりは、人の温かみをもって赦していきたい。

「忍び込む必要はありませんよ。その辺りも私がちゃんと援護してみますので」

イーリスはスマホを耳元に近づけて、誰かに連絡する。

「《フェイルド・スチューデント組》諸君、Dr.イーリスです。あなた方にお仕事でございますよ。禁書図書館に侵入者が入ったようなので、これから禁書図書館の捜索にあたってください。それと書生服を着て赤のマントを羽織った少女が訪れるかもしれませんが、丁重に《永遠の間》までご案内してください。その少女以外の人は、《永遠の間》に入れないようにしてくださいね。詳しい任務の内容は改めて通知しますので、今すぐ図書館に向かってください。図書委員会へのご連絡もお忘れずに」

通話を切る。
部下に任務を通達。
禁書図書館に侵入者が入った事自体は本当だ。ちゆきさんがその侵入者。
だがイーリスの部下達《フェイルド・スチューデント組》に当の侵入者を捕まえるのは控えるよう指示して、さらに緋月さんを《永遠の間》に誘導するよう指示。この部分は結構な職権乱用。
イーリスは人情で動く風紀委員だから、誰かを助ける事に全力でも、風紀委員としての正しさにはあまり拘らない。

さて、報告書や始末書の内容はあとで考えよう。
今は、緋月さんを安全に《永遠の間》に活かせる事が先決。

緋月さんへと向き直る。
大剣へと視線を送る。

「斬魔刀……。ちゆきさんを祝福するために、あなたはこれまでとても頑張られたのですね。ちゆきさんの事……お願いします……。どうかお気をつけて……」

緋月 >  
「目的地へ向かう道筋の手配から後処理まで……
本当に、イーリスさんには感謝ばかりです…!」

問題の場所への不法侵入も辞さない心算だったので、このお膳立ては正直有難い。
何と言うか、色々と大きな恩を貰ってしまった。

「――恩返し、というには些細ですが、もし、何かイーリスさんが困る事があった時には、
私に一報を下さい。可能な範囲で出来る限り、力を貸します!」

此処まで恩を受けては、返す準備位はしなくては様々な方面に顔向けが出来ない。
固く恩返しの誓いを立てると、斬魔刀を背負い直し、一礼。

「では、私はこれから禁書図書館へと向かう事にします。
イーリスさんはご無理をなさらず、人目を避けて住居に戻られて下さい。
此処からだと…この道をこう進めば、人目は避けられる筈です。」

オモイカネ8を操作し、最近ようやく覚えて来た地図のアプリで道順を示す。
時間がある時は割と歩きこんでいるので、この辺の人目が少ない路地の類は凡そ覚えている。

「――それでは、私はこれで!
重ね重ねですが、本当に、お世話になります…!
近い内に…また、お会いしましょう…!」

その言葉は、必ず自身が為すべきを成して戻るという、言外の約束。
今も苦痛を堪えているであろう彼女に礼を一つ告げると、暗い赤色の外套を翻し、表通りへと駆け出していく。
その背に、道のりを作ってくれた少女の思いも一緒に乗せて。
 

紅き機械ノ女王 > 「ちゆきさんを救うあなたのお役に立てるなら、何だって致します」

ちゆきさんの事は、緋月さんに託した。
だから、イーリスの出来る範囲で、全力でサポートする。

風紀委員としてのイーリスの出来る事にも限界はあるけど、逆に言えばその限界まではなんとかする。

「ありがとうございます。とても心強く思います。もし私が困った時はあなたを頼る事もあるかもしれません。しかし、恩と捉える必要はございませんよ。私も……ちゆきさんが救われる事を願って、あなたに託しているわけですからね」

緋月さんを頼る時は、頼りたいと思う。
だが、ちゆきさんの事が救われればとは、イーリスも願っている。
だから、緋月さんに全面協力する。イーリスにとっても、緋月さんは希望だ。だから、恩を感じる必要がない事を、緋月さんに伝えた。

「お心遣いありがとうございます。あなたと次にお会いできる事を楽しみにしております。どうか……緋月さんとちゆきさん……あなた達二人の行く末が出来る限り良きものであると、私は祈ってます……。いってらっしゃいませ、緋月さん」

次にまた緋月さんと会える事を約束し、そうして緋月さんに手を振り彼女の背中を見送った。

紅き機械ノ女王 > テンタクロウさんを倒した緋月さん。ちゃんとお話するのはこれが初めてだった。
どんな方なのだろう、と凄く気になっていた。
なるほど、話してみればちゆきさんが憧れるのもとても分かる。
真っ直ぐ覚悟を抱き、友であるちゆきさんを埋葬(祝福)しようと頑張っている。とても辛い事をしようとしているのに、緋月さんは信念を曲げず突き進んでいる。

「緋月さん、頑張ってください……。私は、あなたなら出来ると信じています」

ちゆきさんを救う。イーリスが出来なかった事を緋月さんならまた別の方法で成し遂げられる。

「……ぐぐっ…………ぅ……」

《紅き屍骸》化する呪いが疼き、イーリスは壁に背を持たれつつ、座り込んだ。

「……はぅ………はぁ……」

荒れた息を整える。

緋月さんが頑張っている。

(私も……もう少し……頑張ってみましょう…………)

イーリスは、ちゆきさんに注入した感染源の制御を続けた。
緋月さんがもし埋葬(祝福)が成ったなら、イーリスの想いはきっと無駄にならない……。

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