2026/02/17 のログ
ご案内:「商店街」に武知 一実さんが現れました。
ご案内:「商店街」に牛丸 瑞璃さんが現れました。
ご案内:「商店街」から牛丸 瑞璃さんが去りました。
武知 一実 >  
夜。
昼に降った雨の所為か、ところどころ水溜りの出来た商店街を、オレは歩いていた。
既に立ち並ぶ店々は閉店していて、時々教職員向けの居酒屋が開いてるくらい。

「……こんな寒い中、酒なんて飲んで美味ェんかな」

赤提灯を横目で見ながら通り過ぎ、路地に入って足を止める。
聞いてた話だと、確かこの辺りのはず……
ボディバッグからスマホを取り出し、今朝方届いたバイトの詳細を確認する。

「――商店街にて怪異の発生予兆あり、調査されたし……ねェ」

簡素なのはもう慣れたが、もうちょっと詳しい情報と言うか……あ、それを調べろって話しか。
出来ればそういうのは、そういうのが得意な奴に回した方が良い気がすんだけどなァ、オレは喧嘩屋だし。

武知 一実 >  
「まあ、これもバイト代の為だ。
 やれと言われりゃ、やるしかねェわな」

怪異の調査をしろ、とは言われたが、調査の結果怪異と出くわしたら逃げろ、とは言われてねェし。
なんなら発生初期の段階で対処しちまえば、多少のボーナスが付く場合だってあるし。
手に負えねえならトンズラこいて改めて再戦すりゃ良いし。

……よく考えてみりゃ、得しかねえじゃねえか。

「おーし、ちょっとやる気出て来たわ」

まずはこの辺に不審な現象が無いか、軽く見回ってみるか。

武知 一実 >  
――ンなわけで、路地を進んで暫し。

「……なんつーか、何だ……?」

やたらと空気が重い。
気圧、とはまた違う。現に昼は雨が降ってたとはいえ、今は星も見える程に雲は晴れている。
(うえ)から来る重さとは違う、どっちかっつーと、地面(した)から引っ張られるような重さ。
肉体的には何ら問題が無くとも、心が、気持ちが無理やり沈んでくる気味悪さ――人間の負の念だ。

「……年末にも似たようなモン感じたな、アレは――」

――確か、クリスマスの直後、辺りか。
そこまで思い返して、ふと一つ思い至る。
この纏わりつく様な負の念(感情)、妬み嫉みといった人の嘆き。

「あー……そういう……」

普段から寄りがちな眉間が、一層寄るのが自覚出来た。
つまり―――最近のイベント(バレンタイン)関係の、負の感情が吹き溜まってんのか。

武知 一実 >  
なるほど、そりゃ怪異の予兆も観測される訳だ。
こういった負の感情に引き寄せられた動物霊やら地縛霊やらが集まって混ざり合って出来上がる怪異も()る。
大本が単純であればあるほど、力を付ける場合もある。
学園都市なんて感情の坩堝、そういった怪異(モノ)が湧きやすい環境だから、とバイト始めたばかりの頃に説明受けたっけな。

「――さてどーしたもんか、怪異として成ってるならともかく、ただの感情なんざ殴れねェし……」

形の無いものに拳を振り抜いても空を切るだけだ。
……形の無いもの、か。

武知 一実 >  
――考えてみりゃ、オレの能力(チカラ)だって似たようなもんじゃねえか。
怪異に成った奴らばかり相手してたから、試した事は無かったな。

「さて、やってみっか。でも拳だとちょい面倒だな……っと」

辺りを見回せば、ちょうど手頃な鉄パイプが転がっていた。
それを拾い上げ、辺りに誰も居ない事を確認する。
……巻き込んじまったらコトだからな。

「ふぅー……イメージイメージ、この重っ苦しい空気を弾き飛ばす感じで……」

パチ、と空気が爆ぜる音がした。
鉄パイプを握った手に、電気が迸る。
イメージに感情を乗せ、感情が雷に換わる。

「一番澱んでるのは、……そこか!」

強く握り締めた帯電鉄パイプを、思い切り振り抜く。
眩い閃光、数拍遅れて生木を割く様な音、と震動。
鉄パイプを介して放たれた雷が、狙った澱みへと奔り―――

―――ちょっと多過ぎた余波が周囲へと飛び散った。

ご案内:「商店街」にイヴリィさんが現れました。
武知 一実 >  
「……やっべェ」

閃光と轟音に、静かだった商店街が俄かに騒めき出す。
幸いにも直接余波を受けた人間は居ないようだけど、ブレーカーが落ちたり、寝てるところを起こされたりと迷惑を被った奴は居るっぽい。
営業中だった飲み屋の方から、人の話し声も聞こえて来た。

「……うん、よし!見つかる前にずらかるか!」

オレは手にしていた鉄パイプを放り投げ、パーカーのフードを深く被ると脇目も振らず走り出した。
喧嘩屋時代――つっても閉業した覚えはない――に培った逃走術、見せてやらァ。

イヴリィ > バヂィ、と爆ぜる音。
同時、澱みが爆ぜて、その影かぬるり、と泥濘み。

「あら、バレちゃった。ちょっとわかりやすすぎたかしら?」

ちろり、と舌を出せば、覗くのは鋭い八重歯。
それが人間ではないのは一目瞭然であった。
何故ならばその腰からは一対の緋色の皮膜の翼が生えていたからだ。
くすくす、と笑いながらスカートをそっとつまみ、優雅にお辞儀。

「そうそう逃げれると思っているのかしら、少年?」

潜んでいる怪異の調査とやらで、何やら特大級の爆弾を引き当てた。
そんな圧をかんじさせるほどの何かを持っていながら、華やかさでそれを覆い隠す。
そんな違和感があった。

武知 一実 >  
「は――――?」

取り敢えず路地の奥に向かって、雨樋と壁を伝って壁を登って、屋根の上を逃走経路に――
そこまで考えたところで、近くで声がして思考が止まった。
同時に足も止めて、声の主へと目を向ける。

確かに誰も居なかった場所に、人影がひとつ。
女子――に見えるそれの腰には、翼が生えていた。

「……何だ、アンタ。どっから湧いて来た」

勘が告げる。今相対しているのは、多分―――


―――多分、凄く面倒臭いタイプの奴だ。

イヴリィ > 「どっから? あなたが攻撃してきたんじゃない」

くすくす、と笑いながら、分かりやすく、澱みに潜んでいた。
そういえば、と少年の脳裏によぎるものがある。
怪異の調査、と言われていたがその怪異に襲われたものは首に噛み傷があり、貧血気味であった、と。
そして、眼の前にいる少女……もとい面倒くさいタイプの奴は。

「影に潜んで……狙ってたんだけど先にやられちゃったわね、あ~あ、あなたも犠牲者の一人にしようと思っていたのに」

派手に爆ぜた割にその肌に傷どころか煤一つない。
かつん、と硬質な音をあげて一歩。

「でも居場所もばれちゃったし……流石に同じところに長居しすぎちゃったかしら?
 だから、これで最後……のついでに、そうね」

緋色の眼が君を捉える。

「怪異の目撃者は最後になる前に遊びましょう?」

刹那の踏み込み。
少年が見切れる程度の速度。
試すだけの一撃。
されど、避けきれなければそれは一撃で生き物を挽き肉に出来る一撃だ。
何故かそう確信めいた直感が働いた。