2024/06/07 のログ
橘壱 >  
「そうですね。不当な買い占めを行うあくどい連中のことです。」

正しく忌むべき存在である。
本来のあるべきの商売とはかけ離れた忌むべき形態。
手に入るべき人間に手に入らず、本来設けを受ける相手が設けを受けない。
違反部活と何も変わらない。まさに取り締まるべき存在だ。
少年自身も思うところがあるらしく、実ににくたらしそうに奥歯を噛み締めた。

「……まぁ、そこまで言うなら。」

控えるべきなのだろう。
表現の問題でもダメらしい。もう少しマイルドに言うべきか。
或いは話題に触れないようにすべきだろう。そう考えておくのだった。

「…………。」

「……そうですね。そういう考えの連中が多いです。」

彼女の思うように、少年は実に自分勝手な根底がある。
それは勿論、今回のように言われた聞くくらいは素直ではある。年相応の子ども。
……よりは、少し幼い雰囲気は漂っているだろう。
実際、身近な単語を聞けば頷いた。その話の続きを素直に聞いてくれるだろう。

桜 緋彩 >  
「現状転売は違法ではない、と言うことになっています。この街の規則でもそうですし、恐らく本土の法律でもそうでしょう。であればそれで稼ぐことは合法と言うことです。しかし、それで迷惑をこうむる人は間違いなくいる。壱どののように」

勿論毎回稼げるわけでもないだろう。
店側もかなり対策をしているらしいし、抽選販売等の場合は外れることだってある。
同じ転売で稼いでいる人同士で取り合いになることだってあるだろう。
稼げるかどうかは「自己責任」だ。

「その行いは正しくはないでしょう。ですが違反行為をしているわけでもない。現状「事実としてそう」なっています」

転売の過程で何が起きようと、稼げなくとも自己責任。結果は後から付いてくる。
転売の結果で何が起きようが、他人が傷つき、自分が嫌われようがどうでもいい。
それは結局のところ。

「好きなように生き、好きなように死ぬ。先ほど壱どのが言った事と同じですね」

自分の中だけの狭い世界で生きている。
彼の様に。

「――さて、この二者はどう違うのでしょうね?」

少し困った様な笑顔を彼に向けながら問いかける。

橘壱 >  
「──────……。」

反論はしない。言いえて妙ではあるし、事実そうだ。
現状の転売は違法ではないし、極論人の自由ではある。
実際違法ではないからこそ、のさばっているのだし、自分勝手な連中ばかりだ。
自分と同じ。言われれば正しくそのとおりである。
なんとも言えない、アンニュイな表情をしたまま暫く黙り込んでしまう。思考の反芻だ。

「……好きなように生き、好きなように死ぬ。
 僕はその考えを改める気はないです。そういう風にしか生きられない。」

「"それしか知らない"。」

17歳という余りにも短い歳月で、"そういう教育しか受けられなかった"。
他人の家庭事情をどう思うかはわからないが、ろくな家庭ではなかった。
言葉の端々からはそう見えるし、吐き捨てるように言い放つ少年も、それを受け入れている。
だからこそ、今の慇懃無礼な少年が出来上がり、AF(ツバサ)を手に入れる事が出来た。
これは、少年の生き様の根底である。そう言われても、何もかも"今更だ"。

「……けど……。」

ただ、その転売屋と違いがあるとすれば……。

「……少しは考えておく意味はあるかもしれないっす。」

まだ、そこまで人の心を失ってはいないことだ。
結果として誰かが生きるうえでしわ寄せを受けることは、生きる上では必然だ。
だが、"敢えて選ぶ必要はない"。ただ、その選択肢の正しさまではわからないが、考える余地はある。
それこそ、親に叱られた子どものように少し気まずそうに目をそらし、頬を掻いた。

「……僕が物を知らないのは認めますけど、よくもまぁそこまで言ってきますね。"初めてだ"。」

桜 緋彩 >  
「小さいとは言え、これでも剣術を生業とする家の当主でありますから。どうしてもお節介を焼きたくなってしまうのですよ」

少し恥ずかしそうに笑う。
要らぬお節介かもしれないが、彼は話せばわかる人だと知っている。
話せば考えてくれるし、考えてくれるなら、きっと変われると思っているから。

「壱どのは先ほどそれしか知らないと申しましたが、知らないならば知ればよいのです。人はそうして成長するものですから」

知らないことは過ちではない。
知らないことを知らないままにしておいたり、知ろうとしないことこそが過ちだ、と。
師――父からそう教えられてきた。

「恐らく壱どのは、まだ自分と自分の近しい人しかいない世界に生きているのでしょう。けれど知れば世界は広がります。そして壱どのならば広がった世界のことを考えられる人だと思います」

自分の言葉に耳を傾けてくれたように。
自分を彼の世界の中に入れてくれたように。

「考えることを止めてはいけません。知ることを諦めてはいけません。――なんて、私もまだまだ知らないことは多いのですが」

まだ十八の小娘が偉そうに語ってしまった。
ちょっと恥ずかしくて照れ笑い。

「けれど知りたいからと言って女性の胸をまじまじと見るのはよろしくないですね。せめて見ていないフリぐらいはしましょう」

橘壱 >  
「あの時手合わせした時、かなり楽しませてもらったけど、そういう理由ですか……。」

訓練場で一通りの演習、模擬戦を行ったあの日。
確かな手応えを彼女には感じた。お互い本気ではなかったが、その剣術、体捌きには目を見張るものがあった。
その剣術の頂点、当主としての実力ともあれば合点も行く。
そして、妙に"おばん臭い"感じも、上に立つ人間だからこそのお節介だ。

「……本当にお節介ですよ。放っておけばいいのに。」

それは、自分がどういう人間か自覚があるからこそ出た台詞だった。
そうやって他人にも何も興味もなく生きていた。
はっきりと覚えている。彼女とのファーストコンタクトは、恐らく最悪だ。
だと言うのに、今回も此処まで言われるのか。敵わないな。
苦い顔をしながら、眼鏡を軽く上げる少年。ただ、悪い気はしなかった。

「……僕がこの学園に編入したのは、AF(コイツ)の価値を示すため。
 非異能者が、異能者のはびこる最先端の土地で、どれだけ活躍できるか……。」

「企業の広告塔でも、このAF(いきがい)をくれるなら充分っす。
 今でも僕はそれに納得してるし、何よりそれは変わらない。」

何よりもこの鋼鉄を身に纏い、自由に舞い、闘争に身を投じる。
何よりも、誰よりも生きる実感が、自身の意味がそこにはある。
その天才的な技術に目をつけた企業が、その生き甲斐をくれるならそれでも良い。
子飼いでもなんでも、この常世学園(はこにわ)で自由に羽ばたける力があるなら、それで。

この考えはきっと、死ぬまで変わらない。

「…………だから、良くわからないっすね。"広がった世界"。けど、"興味はある"。」


頭上に広がる広大なこの空より広いものなのだろうか。
自らの見る世界よりも、それは魅力的なのだろうか。
他人に一切興味を持たなかった。生き甲斐以外に興味はなかった。
ただ、そこまで言われて歩き出さないほど、思考を止めたわけではない。
何もわからない。歩き方も、知り方も知らない。けど、ほんの少し清々しい。

「!?……わかるもん、っすか。いや、先輩だった自分で話題振ったのに……。」

……まぁ、要するに17歳の少年。何処までも子ども。
年相応、或いは不相応な精神性。何処まで行っても無自覚な生徒である。
故に、ある意味健全な反応。驚きに目を丸くしつつ、首を振った。
仕方ない、男の子だから興味はある。いちを。

桜 緋彩 >  
「あぁ、すごかったですね、生身では到底出来ない動きでした。見た目もアニメのロボットみたいでかっこよかったですし」

生身では出来ない動きと言いつつ、しっかり対応はしていた。
まぁ動きそのものに対応と言うよりは、彼の癖だったり狙いを読んだりして対応したと言った方が近いけれど。

「生憎と、お節介な性格なもので」

にっこりと笑う。
剣術道場で人の世話をするのがすっかり染みついてしまっている。
困っている人や悩んでいる人を放っておけない性格も相まって、随分とお節介焼きになってしまった。

「「よくわからない」を「よくわからない」で終わらせるのか、「まだ知らないことがある」と捉えるのか、ですよ」

ぴ、と指を立てる。
しかし次の彼の言葉には流石に眉間にしわを寄せて。

「――私は育った、と言っただけですよ。それを胸のことだと解釈したのは壱どのです。興味があるのはわかりますが、流石にああまであからさまに見られると少し嫌な気分になります」

両腕胸元を隠し、少し身を捩る。
当然隠しきれるわけもなく、むにんと腕の間からこぼれる。

橘壱 >  
「……"よくわからない"か、"まだ知らない"でいるか、か……。」

要するにそれは、他のことに興味をもてということだ。
今更何を、という感情が強かったしどう興味をもてと言う疑問は残る。
少年は負けん気であった。言い方の問題だが、"よくわからない"まま終わるのは癪に障る。
……思い返せば、随分と色んなことに興味を示さなかったな。

「……ルームメイトの連中の事も、クラスメイトも委員会の奴らの顔も覚える気がなかったな……。」

そういうところから知るべきなのだろうか。
面倒だな、と内心思ってはいる。ただ、彼女の言葉は確かに示した。
少なからず、少年が"他者に興味を示した"瞬間である。

「ぐっ……。」

"ぐうの音も出ない"とはまさにこの事。
腕に抱かれるようなそれも、返って漏れるほどに盛られているのが余計に目に毒だ。
改めて、視線を反らして目元を片手で覆った。そういう先輩にも問題がある気はする。
が、そうではない。そうだな、そう、悪いことをしたのであれば…────。

「……すんません、した。」

ぎこちない、余りにもぎこちないが、ちゃんと謝罪した。

桜 緋彩 >  
暫くじとっと彼の顔を見つめていたが、

「――っく、ふ」

声が漏れる。
思わず顔を反らし、プルプルと肩を震わせて。

「ふ、――っ、まぁ、く、はんせぃフッ――している、ようだファ、だから、こんかいはァッハ――ゆるッ、フ、っく――」

身体ごと後ろを向き、身体全体が震える。
言葉を発するごとに肺が勝手に空気を排出し、口から空気が漏れる。

「――ッ、ゆるし、ッブフ――ンッ、フ――ッ、――」

最終的にしゃがみこんでしまい、身体の震えを抑え込むしか出来なくなった。
顔は彼からは見えないだろうが、髪の間から見えている耳は真っ赤になっているだろう。

橘壱 >  
しかし見すぎ、見すぎか。
そこまで意識したつもりはなかったが、無意識に出ていたか。
まぁ嫌でも目に付くモン。あんなに大きいと。此れは課題が多そうだ…。

「……?」

そう自己反省している最中、彼女の様子がおかしい。
なんだ、と顔を上げ訝しげな表情をしながらおずおずと彼女の様子を伺った。
背中を向けて何だと言うんだ。やはり、失礼が度を過ぎたか。
生憎、興味がないだけでよく見る目だ。髪の隙間から見える耳は真っ赤になっている。

「……あの、先輩……?熱でも……?」

ついにはしゃがみこんでしまったぞ、何だと言うんだ。
困惑しながらも何かあったのか。詰まったのか。
純粋な心配からその背中に手を伸ばしてさすろうとしてみるが…。

桜 緋彩 >  
「ッブフォァ!!」

彼のその言葉がトドメだった。
思い切り吹き出し、

「アッハハハハ!! ハハッハハハハ!!! ッヒ、ヒィ!! ハッハハハハハハ!!!」

思いっきり笑い出す。
床に膝を付き、腹を抱えて思いっきり。

「ッッ~~~!! っく、は、アッハハ!! ご、ごめ……っくふは、ひぃ、ごめんっ、――!!」

今にも床をドンドンと拳で連打しそうな勢い。
流石に人目があるのでそこまではしないけれど、普段の凛とした姿は完全に崩れ去っている

橘壱 >  
「!?」

そりゃあもういきなり大笑いしだすんだからビックリもする。
思わずたじろいで、トランクも落としかけた。
とりあえず問題はないようだが、余程何かがクリーンヒットしたらしい。
はぁ、と深い溜め息は一応の安堵と呆れの入り混じり。

「……そんなにヘンでした?僕。」

そこまで笑われるような事をした、らしい。
片手で自身の顔を覆いながら、じと~と指の隙間から見下ろした。
自分が変なことは認めるが、そこまで笑われる謂れはない。
流石に抗議といった態度で、唇は尖らせていた。

桜 緋彩 >  
「いやっ、ごめっ、っくふ」

ひとしきり大笑いして少し納まってきた。
まだ膝は付いたまま、涙で濡れた目を拭って。

「いや、だって、君、謝り方が、こう、あまりにも、叱られた、子供みたいで……ブフッ」

思い出したら笑いがぶり返してきた。
何度か深呼吸して心を落ち着ける。

「いやぁ……こんなに笑ったのは久しぶりだ。いや、申し訳ない、ごめん」

はぁー、と大きく息を吐いて、立ち上がる。
ポケットからハンカチを取り出し、涙を拭う。

橘壱 >  
「そんな事言われてもな……。」

実際子どもだし、そういう感じな説教内容だ。
それこそ子どもっぽく顔を顰めて、頬を掻いた。
ちょっとふてくされた顔にもなる。

「……それを言ったら、先輩だってまるで"親"みたいだ。
 "おばん臭い"。もしかして、だから身長の割に大きいのか。」

それこそ親のように親身に、厳しく身に沁みた。
こういう叱り方をしてくれる親ではなかったが、それくらいはわかる。
そして、少年は良くも悪くも負けん気であった。言われっぱなしは癪に障る。
だから不敵に笑い、言い換えしてやった。余計な一言つき。言われたそばからすぐには変わらない────!

桜 緋彩 >  
ピシリ。
石が割れたような音――実際に鳴ってはいないのだが――と共に動きが固まる。
ゆらり、と身体を揺らして彼の方へ向く。

「――私の、気のせいでしょうか? いま、聞き捨てならない言葉が、聞こえた気がしましたが」

ぬるっと右手を伸ばす。
自分より頭一つ以上背の高い彼の頭に手を伸ばし、ぽんと置く。

「私の気のせいであるならば、大変申し訳ないのですが、今、壱どのの口から――」

ぎし、と力を籠める。
鍛えられているとはいえ、それでも十八の少女の腕。
しかしそこから発せられる力と圧力は、明らかにそんな出力ではない
指が頭を握る力を集中させ、さらに腕が彼の頭を押さえつける力を集中させる。
自身の流派が「神槍」と呼ぶ剣技の応用。

「おばんくさい、と言う言葉が聞こえた気がいたしましたが……?」

本来の力の数倍の出力で、彼の頭を自身より下の位置に抑えつけようと。

橘壱 >  
「……?何を……、……!?」

ぬるっと伸びてきた右手。
まぁまぁの身長差だが、ぽすんと頭に収まった。
ぼさぼさ。余りにも手入れされていないナチュラルヘア。
急に何なんだと訝しげに見下ろした瞬間、頭部に掛かる(あつりょく)────!

「ぐぉぉぉぉ……!?」

お、重い!なんという力だ!
ギリギリと頭を締め上げ、抵抗する此方を児戯のように容赦なく押さえつけてくる力!
幾ら鍛えていようが、それは"良く鍛えた一般人"と変わらない。
首に、足に力を込めて抵抗するも抗えずにねじ伏せられてDOGEZA姿勢。
苦しそうなうめき声を上げて絶賛身悶え中。

「なんて力だ……!ゴリラ女め……っ!うおおお……!い、言ったとも…っ!
 じ、事実じゃない、か……!実の親にさえ言われた、ことっ…っ、ないよ……!!」

しかしまぁ、こういうところでさえ負けん気が発動する少年。
謝るどころか寧ろ反抗しており、人前で無様な体勢でぷるぷるしていても必死に抵抗している。

桜 緋彩 >  
「壱どのは、もう少し言葉の選び方と言うものを学んだ方がよろしいですね……!」

ゴリラ女、という言葉に、更に圧力が上がる。
流石に床に頭をこすり付けさせるようなことはしないが、それでも彼が苦しい程度には押し付ける。

「いいですか。いくら親しい仲とは言え、他人に言えば失礼にあたる言葉と言うものがあります。「おばん」や「ゴリラ」と言った言葉がそれにあたりますね。こう言った言葉は言われた側は怒りを覚えるほどに不快になります」

ぎりぎりと彼の頭を締め付けながら押し付ける。
彼からは見えないだろうが、もしこちらの顔が見えたなら、前髪の陰になった瞳がギラリと怪しく光っているような気がしたかもしれない。

「知らずに使っているのであれば、自分が普段使っている言葉が失礼に当たらないかどうかを確認し、二度とそのような言葉を使うべきではありません。無知は罪ではありませんが、無知であることを盾にしてそれに甘えるのは罪です。今すぐ、即刻、この瞬間から成長してください。もう二度と、絶対に、そのような言葉を、誰かに使ってはいけません」

そこでぐい、と頭を引っ張る。
自分の顔と同じ高さまで。

桜 緋彩 >  
「よろしいですね?」

桜 緋彩 >  
静かだが、有無を言わせないような強い口調で。

橘壱 >  
「ぬおぉぉぉ……!だ、だから……どう……おおおお……!!」

負けず嫌い、反抗的。少年を作ろう性質の全てが彼女への反抗心となっている。
しかし、しかしだ。いくら気持ちが強かろうと、幾ら心が折れなかろうと。

──────圧倒的暴力(パワー)の前には無力──────!

「うっ……ぐっ……!?」

実際彼はゲーマーである。特に対戦ゲームとは、得てしなくても悪い言葉がいっぱい飛んでくる。
だから、それが悪い言葉だと知っている上で使っていたところはある。
煽る言葉だけは無駄にレパートリーは多い。口が悪いのもそれが一因である。
ギリギリと締め上げながら、目前へと持ち上げられる。
力だけではない、その圧倒的精神性の圧力────……!

「…………。」

思わず呑み込む息。
暫しの沈黙────……。

橘壱 > 「…………善処します。」
橘壱 > 小声。それこそすっごい小声で"妥協"した。負けず嫌いとの折衷案。精一杯の抵抗────!
桜 緋彩 >  
「今「善処」と仰いました!?」

桜 緋彩 >  
「私の聞き間違いでしょうか!? 今善処と聞こえましたが!?」

目が光る。
グポーンと言う効果音と共に。
実際は光っても鳴ってもいないが、迫力的には間違いなく光っていたし鳴っていた。

橘壱 >  
「うおっ!?な、何だよ!?悪いか!?前には進んだろ!前には!!
 大体そういうアンタはどうなんだよ!実際ゴリラみたいだし!」

「な、何より気になるだろうが!胸!おっぱいっ!!」

反省はするも、17年培われてきた跳ねっ返り気質はそう簡単に治らない。
抑えつけられた反動。ついカッとなって反論してしまうのだ。
しかも、だいぶ小学生みたいな言い方であった。精一杯の抵抗。

桜 緋彩 >  
「――。」

前髪の影の中で光る眼で彼をじいと見る。
感情のこもっていないような瞳。

「――はぁ、まぁ、良いでしょう」

溜息を吐いて彼から手を離す。
確かに善処する、と言うのも前身する気があるから出てきた言葉とも言える。

「とは言え「善処している」と言う現状に甘えて変わらなければ意味がないですからね」

ぱんぱん、と手を払ってじとっとした視線を向け、腕を組む。

橘壱 >  
「くっ……全く……!」

全くっていいたいのは向こうのほうだと思うよ。
まぁ少年はいざ知らず、開放されたらされたで悪態ついてキッと睨みつけた。
それこそ色々言いたいことはあったが、これ以上言うのも負け犬めいている。
それに、善処すると言った以上余計な一言だ。ちょっとは理性が働いた。
負けず嫌いだから暫く悔しそうにギギギ…、と奥歯を噛み締めていたのだけれど。

「……はぁ、クソ。酷い目にあった。……言われなくても、わかってるよ。
 僕自身が言った以上はちゃんと考えはする。ただ、わからない事は多い。」

「生憎と、此処に来るまでにそういう教育は受けてこなかった。」

言葉遣いから始まり日常的な態度。
何か一つとってもろくでもないのは違いない。
故に生まれた、奔放として生きる一人の少年。
だからこそ、変わると決めた以上真っ直ぐな視線に嘘はない。

……胸にくすぶるくすぐったい感じ。そうだ、初めての感情だ。
言葉を続けようとして躊躇い、何処か気恥ずかしげに目をそらす。
落ち着かなようにかちゃり、かちゃりと何度か眼鏡の位置を直して……。

「……だから、わからない時は、その、なんだ……。」

「……誰かに頼っても、いいもん、か……?」

なんとか絞り出した自身のない一言。
自分勝手に前に出ていた自覚があるからこその後ろめたさ。
そして、初めて口にしたからこその不安と恥ずかしさの現れだ。

桜 緋彩 >  
彼の落ち着かない動きと恥ずかしそうな言葉。
ぽかんと呆気にとられた表情でしばし固まって。

「――っはは、当たり前じゃないですか。頼って良いに決まってますよ」

ふにゃりと柔らかい笑顔で応える。
まるで初めて人から貰った餌をどうしていいかわからない野良犬を見ているような、反抗期だった弟が久しぶりに頼ってきたような、そんな感覚。

「あー、でも私はゴリラですから、助けられるかわからないですねー。おばん臭いから頼られてもお説教しちゃいそうですしー」

等と言いながら歩き出す。
少し離れたところで立ち止まり、

「――予約していたものを受け取りに行くんでしょう? 何でしたっけ、ふぉっくすしゃーど?でしたっけ? ちょっと興味が出てきたので教えてくださいよ」

なんて言いながら振り向いて。
そのまま彼が向かう先に付いて来て、彼の買った物について色々聞くのだろう――

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」から桜 緋彩さんが去りました。
橘壱 >  
「…………。」

「……そうか……。」

今までそれこそ、狭い世界で生きてきた。
視野を広げるには、余りにも頼りない足取りに不安にもなる。
誰かに頼ってもいい。そんな免罪符がもらえるだけ、少しだけ安心する。
そう簡単にまだ、何をどう頼るべきかもわからない。全て実力と結果で勝ち取ってきた。
でも、そう言ってくれる人が一人いるだけで、少しばかり安心した。
僅かに浮かべた薄笑いは、何処か清々しい。

「ぐっ……言ってくれるな。わかったよ、僕が悪かった。悪かったって……!」

が、即座に言ったことを責められると思わず苦い顔をする。
それに関しては自分が悪い。やややけっぱちに成りながらも平謝り。
自然と、彼女の足取りに合わせて歩き始めればふ、と不敵な笑みを浮かべる。

「出てきましたか?興味。話は長いですよ。」

……その後、迂闊にオタクのそれを刺激するとどうなるかは言うまでもない。
少なくとも、いつもの3倍以上は喋ることになっただろう。

ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」から橘壱さんが去りました。