2024/06/12 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」にマルレーネさんが現れました。
■マルレーネ > 「………やっぱり誰かについてきてもらえばよかった気がしますね。」
うーん、と唸る女が一人。今日はヴェールとかフードとかそういうものは一切つけていないからそれなりに目立たないけれども、どこをどう見ても修道服のままにファッションフロアを歩く金髪の女。
年中修道服のこの女に、ファッションフロアなどは普段は意味がない場所だ。
下着くらいしか買わない。なんかいくつか減ったし。
「今年は久々に用事はできたんですけどねぇ……」
とほほ、と一人呟いて、備え付けのベンチに座る。
■マルレーネ > 彼女は異世界の神を信仰する修道女である。なんやかんやでこの世界にきて、なんやかんやで一人だけの信仰になってしまったのだけれど、それはそれ。すっかりこちらの世界にも馴染んで、自活できている。
さて、彼女の信仰上、修道女は奉仕の間、(教会がやっているんだぞ、ということを示すために)既定の服装で奉仕に努めること、というものがある。
いわゆる歩く広告塔、宣伝効果なのであるが。
そのせいで彼女は暑い砂浜であろうと、水没した洞窟であろうと、火山だろうと、吹雪であろうと、修道服のままでなんとかすることを命じられてこなしてきた。死ぬほど愚痴りながらだけど。
しかし、もはや異世界である。流石にもはや広告塔の意味も無い。
それでも彼女なりに頑張って教義を守ろうとしてきたのだが、こちらの神父様に「そろそろ流石にいいんじゃないですかね」と優しく声をかけられ、とりあえずこの夏は仕事着を変えることを決意して今にいたるというわけだ。
■マルレーネ > つまるとこ水着である。
砂浜キツいんだわこの服。
■マルレーネ > 「………わかるんですよ。」
思う。デザインに材質、こだわりにこだわり抜かれたその一着はきっと華やかにいろいろ彩ることになるんだろう。彼女だって健康な妙齢女子である。それくらいはわかる。
わかるが、それでもだ。
「………量と値段が合ってないんですよねー。」
田舎者出身らしい感想を持ちながら、水着を見る。
明らかに布地の量と値段が釣り合っていない。当たり前だと思っていても、実際に自分が買うとなるとやっぱりどうしても気になる。
腕を組んで、むむむ、と唸る。
「ある程度頑丈さが無いと、私の使用(土木作業とか荒事)には耐えられないかもしれませんし…」
そうするともっと値段がかさむ。
いや、いいものが高かったのはどの世界でも同じなのだろうけど。
■マルレーネ > そのとき、修道女の脳内に電流走る。
無ければ作ればいいのでは?
■マルレーネ > 布はある。
多分単なる布ではなく、伸縮性が無いとダメなんだろうけれど、多分あるはずだ。
裁縫道具もある。
なんだかんだ自分で衣服を直していたから、経験だってあるはずだ。
頑丈に作ることも得意だ。冒険者をしていただけはある。長旅に耐えうるものを作ることにかけては得意分野だ。
「………まあ、一度挑戦してみるのは悪いことではないですよね。」
よいしょ、と立ち上がる女。自分が身に纏う水着を作るということが、なんかそれなりに恥ずかしいなあと思い始めるのは、もう少し後のことである。
ご案内:「扶桑百貨店 ファッションエリア(4~6F)」からマルレーネさんが去りました。