2024/08/01 のログ
ご案内:「扶桑百貨店」に焔城鳴火さんが現れました。
ご案内:「扶桑百貨店」に黒羽 瑠音さんが現れました。
焔城鳴火 >  
 夏季休暇――その響きのなんと甘美な事か。

 などと言っても、学生ほど恩恵を享受できないのが教員である。
 夏期講習もあれば、学生希望による臨時講義もある。
 その上、教員によっては部活動もあり、委員会活動もあるときた。
 その点、鳴火の場合は部活動にも委員会にも所属していないため、比較的マシではあるのだが。
 それはそれとして、医師会への論文提出であったり、症例報告会などへの参加などで、それなりに慌ただしいのである。

 そのため、完全なオフの日が訪れるとどうなるか。

「あぁ~――チーズ蒸しパンになりたい」

 ベッドの上で半裸でぶっ倒れていたりするのであった。
 なお、これはまだいい場合であり。
 もっとひどい時は、夜まで寝倒している事も少なくなく――

『先生、今どこに居ます?』

 虚ろな意識で電話に出た時。
 鳴火は普段の血圧の高さが嘘のように血の気が引いたそうな。
 本日、待ち合わせ時刻は午前十時。
 鳴火、起床時刻――午前十一時。

「――ほんっっとうに申し訳ありませんでしたッ!」

 昼過ぎにようやく待ち合わせ場所に到着した鳴火は、衆人環視の中、本気の土下座をしたそうな。
 なお、メイクも出来ておらず、髪も寝ぐせが着いたまま、服も投げ散らかしていたモノからひっつかんできたのでシワが出来ている。
 みんなも気を付けましょう、これがダメな大人です。

「あぁぁ~――割けるチーズの割けない部分になりたい」

 わけのわからない事を言いながら、せめてものお詫びにお昼ご飯をご馳走しつつ。
 死んだ魚のような目をしながら、買い物計画を立ててくれる少女に言われるまま返事をするBOTになっていた。

「もうだめだ私。
 瑠音――私なんか見捨てて先に行きなさい」

 そんなわけの変わらない事を、会計を終えてレストランから出ると言い始める、本当にどうしようもない大人だった。
 比喩するならもう、原型がないくらいにでろんでろんに溶けてしまっている。
 恐らく、自尊心とか自信とか自己肯定感とか、そういうものが液体になって流れ出してしまっていそうだった――
 

黒羽 瑠音 >   
こんにちは瑠音です、今日は先生とデパートに来てます
今日は一緒にお買い物、こっちに来るときに用意してなかった水着とか浴衣とか……後欲しいものを細々と
先生に付き合ってもらう形になるから、30分くらい早めにきてたんだけど……

「あはは……」

流石に苦笑いが出てしまう、今までの先生の……あれ、あの、ちょっとこう、残念な部分はどっちもお家でのことだったけど、今日はお外で干物状態だ

「そんな事できませんよ、此処まで来たんです、一緒に最後までついてきてください」

ぎゅっ、と少し強引に片腕に抱き着いて引っ張る、今の先生は多分こうしないとどんどん溶けてっちゃう気がするし……

「ほら、最初は浴衣から行きましょうよ!祭りもどんどん始まってますし、楽しみですよね、ねっ!!」

できる限りの笑顔を見せて、引きずるくらいの勢いで浴衣のお店に一直線、とりあえず今の雰囲気を打破しないとっ!

焔城鳴火 >  
「瑠音――」

 とんでもなくやらかしたというのに優しい言葉。
 さらには、腕を抱いてリードしてくれるという頼もしさ。
 残念を絵に描いたような干物は、泣きそうだった。

「――惚れてもいい?」

 いや、惚れっぽい訳ではないのだが。
 この14歳、あまりにも優しく頼れる、素朴で素直で良い子すぎた。
 ヘンな男に掴まるくらいなら、自分の手元に囲いたくなってしまう。

「ああ、うん、そうね。
 浴衣かあ、あんた、好きな色とか柄ってあるの?」

 そんな事を言いながらファッションエリアまで行くと、どこのブランドもシーズンだからとばかりに浴衣や水着を展示している。

「う、っわ。
 あんまり服飾興味なかったけど、シーズンになるとこうなんのね」

 右を見ても左を見ても、当然、前も後ろもシーズン商品ばっかりだ。
 好みのブランドなどは特にないが――これはどこに向かえばいいか悩ましい。

「ねえ瑠音、あんた好きなブランドとかある?」

 と、興味を持つ年頃だろう少女にたずねてみるが。
 

黒羽 瑠音 >   
「それ、似たようなの前にも聞いた気がするんですけど!?」

泣きそうな目で見上げられると困ってしまう、私が男の子だったら……いやうーん、どうだろう、先生は先生だからなぁ……

口に出したら失礼極まりない事をうっかり考えてしまいつつ、少し調子を取り戻してきた先生にほっとする

「好きな色は、そうですねえ、ベージュはお気に入りです、よく来てますし、でも浴衣なら… 鮮やかな色の方が折角ならいいかなって思ってます、赤とか青とか……あ、花柄もほしいかもです、定番ですよね!」

何てざっくりとした自分の考えを伝えつつも、ブランド……ブランドかぁ

「うーん、しま〇らとかユニ〇ロとかばっかりだったので、之といったのは……」

お母さんのおさがりのお洒落なやつとかにはちゃんとしたブランドはあったけど、メインで着てるのは大抵大衆向けのお店で買ったものである、十分それでお洒落は出来るし……

「だから先生の好みとかちょっときになってます!おすすめってありますか?」

という訳で、此処は同じく大人の意見を聞いてみるのである

焔城鳴火 >  
「それはまぁ――今のところ、私の中での嫁にしたいランキング暫定一位だし」

 そんなこと言いながらちょっとだけ顔を赤らめるあたり、教師と生徒以上に、人と人として好意がしっかりとあるのがまるわかりだ。
 なお、小柄なくせに一部分の発育は比較的良かったりするのだ、が。
 引っ張ってくれる少女の腕に触れる柔らかいものは、『こいつブラ忘れてやがる――!』と思わせるのには十分だったかもしれない。

「へえ、ベージュが好きなんだ。
 浴衣なら赤とか青ねえ。
 私は赤が好きなんだけど、おそろいにでもする?」

 なんて言いつつ、周囲の高級志向のブランド店を一通り眺め。

「――んあ、私の好み?
 んー――フルオーダーメイド」

 何の参考意見にもならない返答だった――

「まあ、それはそれとして。
 こだわりがないならそうね、しっかりした呉服屋で選べば間違いないわ。
 生地から選べるし、試着用の展示品もいいものがあるだろうし。
 あ~――あそことか、本土でも世話になったところね」

 といって示したのは、『呉服店やまと 常世島支店』だった。
 なかなかに厳かな書体で書かれた看板、落ち着いて静かな店構え。
 見るからに超が付く高級店なのがまるわかりだ。

「ま、あそこで一通り生地でも見てみましょ。
 採寸も必要だし、あそこなら何から何まで丁寧に面倒みてくれるわ」

 そう言って、迷うことなく進んでいく。
 呉服店の店員さんは、深い緑を基調とした落ち着いた着物をきっちりと着こなしていて、二人を見ると丁寧に頭をさげた。

『いらっしゃいませ。
 どんなお品をお探しでしょうか?』

 なんて、とても品のある声で訪ねられるだろう。
 

黒羽 瑠音 >   
「はいはい、ありがとうございます先生、私も先生の事好きですよ」

いやだからその反応は何なんですか先生、こう見ると本当に私より小さいんだなぁ、とか、おこん先生といい私、ちっちゃい先生に出会う確率高めかも、とか思いつつ、何だか柔らかいものが腕に当たっていて

「あ、いいですねお揃い……って、それは流石に学生の懐には無理がありますって!でも、何時かはそーいうのもちょっと憧れるかも……」

フルオーダーの服なんて、何だかやっぱり大人って感じだ、最初に会った時の恰好なんて『クール』の一点突破だったもんね……

「お、おぉ……フルオーダー程じゃないけどお値段しそうな……お小遣い足りるかな」

一応こういった日のためにお小遣いは多めに貯めて置いたし、いざとなったら貯金もあるけれど、出来れば無理のない金額に収めたいのが正直な所なんだよねぇ

「……あ、はいっ、えっと……浴衣を見に来たんですけど、花柄で、赤色の……」

店員さんもきっちり決まっている、デパートのお店としてはかなりしっかりした方の店だよね、なんて思いつつも、何とかびくびくせずに希望を伝えられた、と思う

焔城鳴火 >  
「ん、別に浴衣と水着くらい買ってあげるわよ。
 それくらいの手伝いとか、その――プライベートでも助けてもらってるし」

 なんて、恥ずかしそうに視線を泳がせる。
 本当にそれだけ助けられているので、鳴火からすれば当然のお礼である。
 別に特別に裕福ではないが、おおよその物事には困らない程度の収入も貯えもあるのだ。

 そして店員に対しての対応は、

「生地はなるべく軽くて涼しいやつで。
 私と揃いの色で、私の柄は、そうね。
 この子と歩いてたら、引き立てて上げられそうな落ち着いたヤツ」

 そう二人からの注文を聞くと、店員は、はい、はい、と丁寧に聞いてから生地を何巻か持ってきた。
 少女向けに持ってきたのは鮮やかな明るい赤ベースで、様々な花の柄の記事をいくつか。
 鳴火に向けて持ってこられたのは、やや濃い赤で、柄はシンプルな物が幾つか。

「――へえ、いい色じゃない。
 んー、そうね、このストライプが入ったのにしようかしら。
 瑠音、あんたの方は何か気に入った柄はあった?」

 と、隣で生地を見ているだろう少女の様子を伺う。
 

黒羽 瑠音 >   
「……」

あ、これ絶対私の思う『そのくらい』の値段で終わらない奴だ、断った方が……いやでも、うーん

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

此処は、先生に先生をやってもらう事にした、何だかんだ、最近母さんに甘えたりも出来ていないから、いいよね?そして店員さんにてきぱきと話しかける先生は、やっぱり先生だなぁ、なんて思ったりして、少し口元が緩んでしまう

「わ、わ、すっごい鮮やか……えーと……」

きょろきょろ、と貰った生地を見つめていると、一つの柄が目に留まった、白いアジサイ……赤に映えてとっても綺麗かも

「これ、好きかもしれません」

にこっ、と笑いながらそう先生に伝えてみる、先生が選んだのはストライプ……なんだろ、"らしい"って思っちゃうのは気のせいだろうか?

焔城鳴火 >  
「へえ、紫陽花?
 いいじゃない、可愛らしくて。
 それに少し大人に見えるかもね?」

 なんて言いながら少し、くすくすと笑い。

「それじゃあ、この二つの生地をそれぞれ用意してもらえる?」

『かしこまりました。
 こちらでお仕立てしますか?』

「いいわ、自分で作れるから。
 その代わり生地は多めにお願い。
 あと、この子の採寸も」

 そう言って、少女を店員に差し出す。
 すると、店員は少女を見せの奥へと案内するだろう。

「ほら、しっかり採寸してもらってきなさい。
 成長期だし、意外とそだってるかもね?」

 なんてにやにや笑うあたり、ちょっと親父臭かったかもしれない。
 

黒羽 瑠音 >   
「はい、それに…… 紫陽花って好きなんですよね、梅雨上がりに元気に咲いてるのを見ると、夏が来たなぁって感じがして」

えへへ、と笑いながら先生が買うのを眺めて……あ、本当にオーダーメイドってするんだ、ちょっと緊張……

「っと、とと、……そ、それもそうですね……じゃあ、オネガイシマス」

微妙にかちかちになりながら店員さんに案内してもらう、思えば必要な事だし、しょうがないよね……何て振り返ったら、先生がにやにやしてた、もう!!

――なお、何がとは言わないけど別に目新しい事実は無かったと言っておきます、はふ

「戻りました、せんせ~~、採寸って結構大変なんですね、でも、店員さんの手際がすっごく良くて助かりました」

焔城鳴火 >  
 店員に連れていかれる少女を見送ってから、紫陽花の生地を眺めて。

「紫陽花、ねえ。
 案外、移り気なのか、一途なのか――まあ、寛容なのは間違いないか」

 紫陽花の花言葉を思い出して、一人笑う。
 自分のようなダメな大人を大事にしてくれるのだ。
 寛容さは間違いなく少女にぴったりだろう。

「ん、おかえり。
 どう、ちょっとは育ってた?」

 なんて揶揄い混じりに言うあたり、セクハラ教師である。
 とはいえ、少女の成長が気になるのは本心でもあったりするから複雑だ。

「採寸は大変よ、ちょっとでもズレてるとぴしっとキマらないからね。
 だから、こういうのは信頼できるお店じゃないとダメなのよ」

『ふふ、おほめ下さりありがとうございます。
 こちらがお客様の採寸結果ですので、お仕立ての際は参考にしてください』

 そう言いながら、店員は少女に採寸結果の詳細な数値を渡すだろう。
 そこには少女の赤裸々な数字が羅列されているはずだ。

「それじゃあ会計をお願い。
 支払いはこれでまとめちゃって」

 そう言いながら、電子決済のアドレスを店員に渡すと、店員は会計のために生地を持って一度下がっていく。

「――じゃ、瑠音。
 その採寸データ頂戴。
 知り合いに送って、浴衣仕立てて貰っちゃうから」

 そう言いながら、すでに手帳で連絡を入れているようだった。
 なお、鳴火は浴衣があまりに合わないスタイルだったりする。
 オーダーで用意するようになったのは、それが原因でもあったりするのだった。
 

黒羽 瑠音 >   
「ノーコメントでお願いします」

ぷぅ、とわざとらしく頬を膨らませてみる
そりゃまぁ、大きければいいってものじゃないけれど、先生のそれと比べると……
いやうん、発展途上だし、未来があるし

「そこは分かりました、あ、はい、ありがとうございま…  すぅ」

消え入りそうな声と共に採寸結果をしまい込み、こほんと一つ咳払い

「えーと、じゃあ買い終わったら次行きましょう先生、水着も買うんですよねぇ”っ」

気を取り直そうとしたときに、データを渡せと言ってきました
いや、言ってることは正しいんだけど、私にも乙女心ってものが……

「……ハイ」

あるけれど、此処であたふたしたらある意味思うつぼである、そう思う事にして大人しく採寸結果を渡す

「せんせーは見ないでくださいね!?」

一応念押ししつつ、はふー、と息を吐く、この後水着以外にも買いたいものはあるんだけど
取りあえず今のほてりを覚まそうと、持ってきた水をぐびぐびと流しいれた

焔城鳴火 >  
「んっ、ふふ。
 可愛い顔するじゃない?」

 年相応に可愛らしい表情を見れば、自然と鳴火の表情もほころぶ。
 こんな表情を素直に出すのは、今となっては少女の前でだけかもしれない。

「はーいはーい、みないみない。
 生地は直接送ってもらうから、そうね、数日もすれば仕上がると思うわ」

 なお、普通はそんな早く出来たりはしない。
 鳴火の知人が、色んな意味で規格外なだけであった。

「――それにしても水着ねえ。
 私も新しいの買おうかしら。
 この前あんたたちに送ったの、去年のだし」

 そう言いながら呉服屋を後にしつつ、水着が並んでる専門店の方へ向かう。

「瑠音はどういう水着にするの?
 マイクロビキニとかスリングショットでヤンチャする?」

 だから言っている事が、完全にセクハラ親父なのだが。
 まあ案外、女同士となるとこんなものと言えなくもないとはいえ、冗談がキワドイのだった。
 

黒羽 瑠音 >   
「嬉しくないです、もう……ってはや!?そんな早く出来るもんなんですね」

その手の知識は無いけれど、きっとすっごい腕のいい職人さんなんだろうなぁ
何となく、先生って伝手は凄い感じだし、此処までやってもらったんだ、わくわくするしかないかも

「いいんじゃないですか?私は……うーん、ふつーのでいいかなぁ
あ、でも浴衣は赤でしたし、折角なら別の色で……」

「… すりんぐしょっと?」

マイクロビキニはビキニってついてるから分かるけれど、スリングショットはよくわからなかった

「……えっちなやつですよね絶対、かーいーまーせーん!」

まぁ先生の反応を見れば流石に方向性は分かるというもの
っていうか先生、事あるごとにそういう方向にしようとするんだから、もう!

「……まぁでも、あんまり子供っぽくないので探します」

そのくらいの見栄は友達にも見せたいし、ね

焔城鳴火 >  
「頭はおかしいけど、腕は良いし、仕事も早いのよ。
 まあ、仕上がりは期待していいわ」

 職人と言えば職人だが、どちらかと極まった趣味人だ。
 付き合いはとても長い(短い)が、未だにそこが知れない相手ではある。

「あっはは、エッチなヤツってわかるようにはなったのね。
 悪いわね、瑠音の反応が面白いからつい、ふりたくなっちゃうのよ」

 楽しそうに笑いながら店に入れば、色とりどりの水着の山。

「なるほど、子供っぽくないヤツねえ。
 私よりタッパはあるし、それなりにセクシー系のも着れるんじゃない?」

 なんて言いながら、自分は適当に目に着いた水着を手に取って――サイズを見て舌打ちをした。
 身長が小さく、胸がふくよかとなると、悲しいかな。
 既製品ではなかなか丁度いい物がないのであった。
 

黒羽 瑠音 >   
「頭はおかしいって……あはは」

ともかく、期待はして良さそうなので内心わくわくする、のど元過ぎればなんとやらだ

「だいたい先生のせいですからね、まぁ、全部が全部とはいいませんけど……
お~……やっぱこうしてみると賑やかですね水着も、うーんそうかな、気にならなくもないんですけど」

そういって見回して目についたのは、中の水着と上着がセットになっているタイプのスイムウェア
お洒落なタイプのラッシュガードっていえばいいんだろうか、落ち着いたベージュ色のやつを手に取る

「例えばこういう……ほら、ちょっと大人っぽくないですか?」

焔城鳴火 >  
「まあ、素材が良いから何を選んだってそれなりにはなるわよ。
 私なんかは――あんまりいいのがないのよねえ」

 そうして、目についたものを手に取り、確認してはため息か舌打ち。
 店員は気が弱い方なのか、そんな鳴火の様子を見て遠巻きに様子を眺めてるだけだった。

「ん?
 ――へえ、センスいいんじゃない?」

 それは確かに、落ち着きがあり、大人っぽく見えるだろう。
 普段の年齢相応に可愛らしい様子からすると、いい具合にギャップが付けられて印象に残りそうだ。

「うん、いいじゃない。
 どうせなら試着してみたら?」

 そう言って試着を進めつつ。
 少女がこれで海やプールに出たら、悪い虫が近づいてきそうだ、なんて少しだけ苦笑し。
 

黒羽 瑠音 >   
「先生……」

先生は先生で悩みがあるんだなぁ、なんて思いつつ、声をかけて何か出来るわけでも無し

「そうですかね?ふふ、じゃあやってみます!見ててくださいね先生?」

にこっ、と笑って試着室に向かう、センスを褒めてもらえるのは素直に嬉しいな
ともあれ水着に手を通す、おぉ、中はおへそ見えるやつなんだ……ちょっとだけ大胆
でも、なんだかワクワクする、どうだろう、変じゃないかな?

「じゃーん、どうですか!中々似合ってるんじゃないでしょうか!」

ともあれ、元気に上着まで着てから先生の前に顔を出す、くるんと一回転してみてもらいつつ

「今年の夏は、私もちょっとだけ大胆になっちゃいますよ♪」

何てピースサインとかまでしちゃったり

焔城鳴火 >  
「はいはい、行っておいで」

 そう試着室に見送りつつ。
 自分はその間に気弱そうな店員を捕まえて、悲しいかな、飾り気のないシンプルな白いビキニを選んだ。
 普段、こういった清楚系の色は選ばないのだが、少女と遊びに行く機会を考えると派手な色は避けたかったのだ。

「ははっ、じゃーん、って、まったくそういうとこはしっかり子供ねえ。
 ああ――うん、でもいいわね。
 それでちょっとおしとやかに振舞ったら、簡単に男子なんて落ちちゃうんじゃない?」

 笑いながら、遠回しに似合っていると褒めた。
 実際、想像通りに無邪気さと大人っぽさのアンバランスなところが、むしろ魅力を引き出しているように見える。
 十年前だったら捕まえていたなあ、なんて思ったりした。

「私の方も決まったし、意外とあっさり良いのが見つかったわね。
 ほらほら、いつまでも調子に乗ってないで脱いだ脱いだ。
 ――ああ、支払いは一緒でお願いね」

 会計を頼まれた店員は、おずおずとした様子でカウンターの向こうへと引っ込んでしまった。

「それで、どうする?
 もうちょっと水着を見てもいいし――ああ、他にも買いに行きたい物があるんだったっけ。
 ほどほどにして、そっちに行く?」

 そう、試着室の扉越しにこの後の予定を相談するように。
 

黒羽 瑠音 >   
「えっへへ、そうですか?」

てれてれ、くるん、ともう一回転、何だかやる気がわいてきた気がする

「あっ、はーい、先生も決めたんですね、よかった……じゃ、購入しちゃいましょう」

すすっ、と戻る、よかった、先生も無事決まったみたい、少しだけ胸をなでおろす

「よし、っと、じゃあお願いします!
あー、でもそっちは私だけでもかえま……いや先生も一緒の方がいいか」

「掃除用具、買おうと思いまして、後ブラシとか……折角だから色々買っちゃおうかなって、日用品」

今後の展望を語りつつ、水着の支払いが終わるのを待つ、首をぐるんと回すと、ちょっと汗ばんだ首筋にひんやりしたデパートの冷房が染み込んできた

焔城鳴火 >  
「うんうん、可愛い可愛い」

 くっくっ、と声を押し殺すように笑いつつ。
 少女の様子は本当に微笑ましく、日頃のストレスが癒されるようだ。

「まあね、私の方はあんまり選ぶ余地がなかったし。
 ――せめてあんたより、背丈があればよかったんだけど」

 そうなれば、多少なりバランスが取れて選べる範囲も増えたんだろうが。
 さっさと会計を済ませてしまうと、さて、合流してから、少女の言葉に一度首を傾げた。

「――ああ、掃除用具。
 なんか、ほんと、悪いわね」

 その単語が出た瞬間、ようやく液体じゃなくなった干物が、ぐんにょりとまた溶け始めてしまった。
 もちろん比喩だが。
 比喩でなかったら怪異である。
 

黒羽 瑠音 >   
「あはは、之ばっかりはどうも……大きくても小さくても、私にとって先生は先生ですからね」

何てフォロー……になるか怪しい事を言いながら
あっ先生がまたぐんにょりしてきてる、えーと、えーと

「ほら、いきましょう、あんまりそのままだと、晩御飯まで私に奢る事になっちゃいますよ~~?
なんちゃって、それは冗談ですけど、ちょーっとだけ心配ですもん、それに……
お世話になってるのはお互い様、って事で、その分之からもごしどーごべんたつお願いしますね?
…… あ、一応いっておきますけどえっちなのは程ほどでお願いします」

笑いながらまた手を引いて、先生と一緒にデパートを歩いていく
実際私がやりたいからやってる、といっても気にしちゃうんだろうなとは思うけれど
それならそれで、適度に頼らせてもらう事にしよう、それがきっと、お互いにとっていいと思うから
ふふ、こーいう考えが出来るの、ちょっと大人になった気がする!

~~なーんて、鼻歌交じりに考えるのだった

焔城鳴火 >  
「瑠音ぇ」

 ぐんにょりしつつ、優しい言葉にでろでろの干物は情けない声で抱き着いた。
 ああ、なんて落ち着くのだろう。
 十年若かったか、男だったら、迷わず口説いていたところだったと思った。

「あのねえ、瑠音。
 そうやってあんまり私に優しくしてると、ほんとに口説き始めるからね。
 ――今度、料理を教えてあげる。
 私が得意なのッてソレくらいだし、まあ、覚えておいて困るもんじゃないでしょ?」

 鳴火からしてみれば、自分は仕事をしているだけなのに、少女からはプライベートから仕事まで面倒を見てもらっているのだ。
 少女の未来に役立ちそうな事を、一つでも教えられるとしたら鳴火には料理スキルくらいしかなかった。
 いや、護身術的に格闘技を教えてもいいのだが――今の世の中ではあまり役に立たないだろう。

「――なんていうか」

 こうして、手を引かれて買い物をしたり出かけていると、昔を思い出す。

「懐かしい気持ちになるわね」

 かけがえのない幼馴染たちが、まだ何も知らずに遊んでいられた頃。

「昔は、私ってこうやっていつも、手を引かれる側だったのよ、信じられる?」

 当時の何も知らなかった、何の能力もない事がコンプレックスでいつも、一歩も二歩も引っ込んでいた自分。
 そんなふうに居られなくなってからは、本当に死に物狂いだった。

「――瑠音、私、あんたに会えてよかったわ」

 鼻歌混じりの少女に、静かに、だけど心底嬉しそうに小さく呟いた。
 

黒羽 瑠音 >   
「わわ、もう、皆見てますよ先生?後、口説いてるのはもー今更な気もしてますけど……
料理ですか?それはふっつーに嬉しいです、友達にも披露できそうだし、楽しみかも
ふふ、お願いしますね?」

くすくすと笑いながら申し出をありがたく受け取る、こんな風にころころ変わる姿が
なんだか、ちょっとだけ可愛らしく思えてしまって、でも、口に出したら流石に怒られるかな?

「じゃあ、まずは肉じゃがから教えてくださいね?」

「…… 私はこういうのも、結構好きですよ、先生の世話を焼くの、嫌いじゃないです
あ、でもあんまりぎゅーってしたら暑いからほどほどに、ですよ?それに皆見てますし」

先生に笑いかけつつ、人差し指を自分の唇に当てて悪戯っぽく目を細めて

「私も、ずっとそう先生に思ってもらえるような立派な生徒であれるよう、頑張りますね?」

うん、先生が嬉しそうでよかったなぁ何て思いながら、次のお店へ向かうのでした

焔城鳴火 >  
「いいわよ、見られたって。
 ――私にあんたを好きにさせたのが悪いんだからね。
 ふん、私の料理の腕はちょっとしたものだからね。
 肉じゃがだろうが、ポトフだろうがカレーだろうが、任せなさいよ」

 そう言って、ようやく普段の自信ありげな様子に戻って鼻息一つ。

「――ありがと、瑠音。
 これからもその、時々、手を引いてくれたら嬉しい」

 なんて、頬を染めながら、視線を逸らしつつ。

「そう、ね。
 私も、あんたに恥じないような教師でいられるように頑張るとするわ」

 そう笑って。
 思春期のように頬を染めたまま、少女の手をしっかりと握った。

 ――ああまったく、私はいつも、こういう相手に弱いんだから。

 なんて、昔から変わらないところを見つけて、少しだけ小さな幸福を噛みしめるのだった。
 

ご案内:「扶桑百貨店」から焔城鳴火さんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店」から黒羽 瑠音さんが去りました。