2024/11/08 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 展望レストラン「エンピレオ」」に鶴博 波都さんが現れました。
ご案内:「扶桑百貨店 展望レストラン「エンピレオ」」に橘壱さんが現れました。
■鶴博 波都 >
展望レストラン「エンピレオ」。
扶桑百貨店レストラン街11階の一角に店を構える高級レストランの一つで。
内装は白を基調としており、可能な限りの高級感が演出されている。
基本的に静謐な場であり、あまり騒がしく喋り立てるのは好まれないドレスコードのある店舗。
鶴博 波都は、未開拓地区の前線拠点へ輸送を行った際に生じた『ある事件』で命を救われた。
少なくとも本人はそう認識しており、その『お礼』の意味で、橘壱をこのレストランへと招待した。
学生の身分にしては少々高すぎる店ではあるが、
鶴博 波都は鉄道委員の業務に従事しており深い趣味も持たないため資金に余裕がある。
同時に、礼節は気にするが加減が分からないため、このようなお高めのレストランをチョイスした。
装いも事前に購入にした青を基調としたカクテルドレス。
ちょっとしたお姫様に見える程度には髪やコーデも整えてドレスコードも準礼装も恙なくクリア。
「そろそろ……でしょうか。こういうお礼は初めてなので、ちょっと緊張しますね。」
そんなこんな、約束の時間より前に店の前に立ち、そわそわしながら待機中。
■橘壱 >
人から何かを誘われる経験は少ない方だ。
そりゃ、友だちも少ないのだからそもそも経験がない。
最近何かあれば自分からってパターンもあるし、
そういう意味では素直に嬉しかったのだが……。
「(うわ、本当にいる……ドッキリじゃなかったのか……)」
今、橘壱は扶桑百貨店レストラン街の隅で、ある見せ前を覗いていた。
展望レストラン「エンピレオ」。高層位置するレストランは、
その風格通りドレスコード着用もあるお高めの、"そういう店"だ。
高級店に入ったことがないわけじゃない。現役時代、一応食べたこともあった。
それに今でもいけるくらいの貯蓄はあるが、橘壱は庶民だ。
舌も当然、それなりのものだし、お互いそういうのだと思ってた。
だから精々、それなりのお店かと思えば此処。実はドッキリかと疑う位。
だがどうだ。実際彼女は、お店の前で待っている。しかもきっちり整えて。
「(念の為僕も急いで仕立てたけど……こういう時お金あって良かったって思うよ)」
サンキュー過去の自分、サンキュー大企業。
金は凡そのことを解決してくれる。
全く着慣れていない自身の燕尾服を今一度一瞥し、苦笑い。
こういうの、本当に似合っていないな。
とは言え、ドッキリでない以上行くしか無い。
せっかく選んでくれたのは彼女だし、此処は颯爽と行こう。
んん、と軽く咳払いをし、待ち人の前に歩み出た。
「お、おまたせしまし、た!波都先輩!」
はい上ずった。緊張で上ずった。
世界大会でトロフィー持つよりも緊張するんだが。
いやだって高級レストランで女性に誘われるんだぞ。
少しは緊張するよ、耐性そこまであるわけじゃないんだもん。
■鶴博 波都 >
「あ、壱さん!」
待ち人の姿に気付けば声を弾ませて駆け寄る。
装いはどうあれ、このものは鶴博 波都なのは確からしい。
上ずった声や緊張の色を気にすることもなく、楽し気に声を掛ける。
「えっと、この前はありがとうございました。
お礼のつもりでお誘いしたんですけれど……ドレスコードって思ったより大変なんですね。」
青を基調としたカクテルドレスのコーデ。服に頓着しない彼女が初めて買った高級な衣装。
一応、自分だと分かる様に腕章だけ腕に付けてきている。
「もしご負担を掛けちゃったらごめんなさい。でも、壱さんも普段と違う感じで新鮮ですね。」
初めてみる橘壱の装いを、好いものを見る目で微笑みながら認めて褒める。
「それはそれとして、今回は簡単なコース料理でお願いするようにしてあります。」
「足りなかったりしたら、ある程度はアラカルト方式で追加でチョイスできるようにしておきました。」
お礼であることと、高級レストランに明るくない事と委員同士であることは事前に通達済み。
分かり易く食べやすい料理を中心にお願いして、多少の粗相があるかもしれないことは伝えている。
「改めて、この前は命を救って頂きありがとうございました。
それじゃあ、中に入りましょう!」
■橘壱 >
彼女の弾んだ声にびくっと肩を揺らした。
間違いなく波都先輩本人だが、間近で見ると思わずどきまぎ。
女性は着飾るとどうたらとは聞いたが、此処まで変わるか。
「……綺麗ですね」
なんて、思わず口にしてしまった。
レンズの奥でじ、と碧の双眸が彼女を見やる。
緊張こそしていたが、すっかりその明るさにほぐれてしまった。
ふふ、とはにかみ笑顔を浮かべるとカチャリと眼鏡を上げる。
「此方こそお誘いありがとうございます。
結構お礼の規模が大きいっていうか……こういう店、結構来るんですか?」
実は高級志向だったりするんだろうか。
各種委員会とは、委員会と言う聞こえだが事実上常世島公務員である。
時には命をかけるような現場もあり、そういう事もあって払いは良い。
おまけに単位まできっちりと取れる上、学生としてのフォローに余念がない。
敢えて"留年"を選択肢、事実上の永久就職する人間もいる位だ。
そういう意味では彼女も意外とそういう趣味なのはおかしくない。
何なら女性は結構お金がかかると聞いた。
「(環菜ちゃんも結構オシャレさんみたいだしなぁ……凛霞先輩も)」
ドレスも食事も自分磨きも、なんだかんだ費用が嵩む。
そういう意味でもおかしい話ではない。
「負担なんてそんなの思ってないですよ。
ちょっと驚いたけど、お誘いして頂けただけで嬉しいと言うか……」
「まぁ、ハハ……あんまり着慣れないですけどね?」
燕尾服、後にも先にも今日だけかもしれない。
ちょっと苦笑いを浮かべては軽く自身の首を撫でる。
「ありがとうございます。せっかくなので、堪能させてもらいます。
ええ、行きましょう先輩。さ、今日は素敵な思い出にしましょう」
そう言ってさり気なく手を取り、軽くウインク。
こういう事はしれっとするタイプの男だ。
しっかりエスコートして、歩調を合わせて店へと入っていく。
■鶴博 波都 >
「えへ。ありがとうございます。
なんとなく良い感じのものがあったので、それに合わせてコーディネートとして貰いました。」
素直に言葉を受け取り、嬉しそうな声を響かせる。
着飾ることに興味は持っていなかったけど、褒められるとそれはそれで嬉しくなるもの。
「いえ、はじめてです。
お店にもそう伝えてあります。……『命いっこぶん』の対価なら、高いに越した事はないと思いました。」
苦笑気味にそう伝える。
日常を生きていた彼女にとって、命を救われることは自分の命一個、生涯ひとつ分に相当すると思っている。
だから、想像しうる限りのお礼として高いお店を選ぶことにした。
……命のやり取りとは無縁であった故の、彼女の選択。
「嬉しく思ってくれたなら幸いです。
私もこういうものを着るのは始めて着るので、ちょっと慣れませんね。
でもちょっとだけお洒落が好きな同僚さんの気持ちが分かった気がします。」
自分が変わるような感覚と、お洒落な雰囲気。
鉄道委員の制服とはまた違う、独特な空気感。
「あっ……、よろしくおねがいします。」
さりげなく出された手を受け取る。
迷いなく差し出された手を、当たり前の様に取ってエスコートして貰う。
ヒールでもこけることなく、歩きやすい。
店内に入れば名前と予約の不調を伝え、席へ案内される。
席へ着けば、ノンアルコールの飲料が記されたボードを差し出されただろうか。
「飲み物、どうします? 私は白ブドウのジュースを貰うつもりですが……。」
■橘壱 >
『命いっこぶんの対価』
そのための礼なら安いものだと彼女は言う。
「寧ろ間に合ってよかったと思ってますよ。
不手際で言えば僕の方だし、お礼を言われるほどじゃないですよ。
それに、気にしてたら多分、お礼だらけになっちゃいますよ?」
不意の事態なんて言い訳する気はない。
あの時は突発的事象だらけだったが、
護衛対象を護るのは仕事として当然であり、それをこなしてこそ意味がある。
そうでなければ、わざわざ請け負った意味もない。
彼女の言う"1"を軽視したのではない。
その"1"が簡単に消えかねない場所だと言うことを、
改めて認識すべきだと言っている。
此れに凝りて身を引いてくれたらとは思うが、
ロベンツさん曰く、『かなりキマってた』らしい。
「(と言っても、人の事言えないよな……)」
勿論請け負う仕事はキッチリこなすが、望むべき心を満たすのが本心だ。
これ以上何か言う事はない。せめてもの、今一度の"警告"だ。
そうこう言ってる内にキッチリエスコートし、席についた。
向かい合わせ。何処となく明るさ控えめのおしゃれな雰囲気。
名前通り、ガラス張りの外壁からは、常世島の夜景がよく見える。
ネオンライトと月明かりが宵闇に瞬く光景は、壮観だ。
「オシャレに目覚めましたか?
……って、僕もあんまりオシャレ得意じゃないんですけどね」
未だ基本白衣姿。そういうのとは程遠い。
外壁を一瞥し、彼女の瞳を碧が見る。
「けど、波都先輩は可愛いからきっとモテますよ。
僕も少しはそう言うの勉強しようかなぁ……。
ん、せっかくだし僕も同じモノにしようかな。お願いします」
そんな会話の間にウェイターに注文。
何処となく"こなれ"感がある。緊張がほぐれればこんなもんよ。
■鶴博 波都 >
「そうかもしれません……でも、命を救われたのは事実ですから。
お洒落はお店の人に任せちゃいました。可愛く見えるのはお店の人が上手だからですから、ほめ過ぎですよ、壱さん。」
橘壱の指摘に尤もだと感じ、言い淀みかける。
ただ、それでも割り切れない感情を素直に口にした。
二人がオーダーした白ブドウのジュースと、前々菜としてのサーモンのマリネが届いた所で一度会話が途切れる。
配膳が終わった頃に、思考を纏めて口を開く。
「……それだけ、命のやり取りをしているんですね、前線の皆さんは。
私はこれからも続けようと思ってますから。慣れないといけないのかもしれませんね。
後輩さんに大変な思いをさせたくないですから。」
"1"が当然の様に消える。
ロベンツの観察眼通り、鶴博 波都は降りる気がないらしい。
自分がやらなければ、別の誰かや後輩がやることになる。
もう守られているだけの一年生ではないのだから、二年生として、"危険な道を拓くのも務め"と認識した。
身を以て危険を感じたからこそ、やらないといけない。
務めへの使命感が、彼女の強く働いている。
「でも、中々大変な道のりになりそうですね。
ゲーム動画でしか見たこともないモンスターに、いきなり飛んでくる光線。
おまけに音もなく転移してくる大きな怪物……転移荒野を走るだけで、あんなに危険があるんですね。」
続いて、前菜としてパテ・ド・カンパーニュ類。
捏ねた肉に香草等を混ぜて容器に詰めて成型してじっくり焼いたものが届く。
パテに使われている肉や香草は、異世界の畜産物を品種改良した高級品らしい。
「あっ、料理も届き始めました。
話題はともかくとして……お礼ですから、遠慮なく美味しく食べちゃってください。」
■橘壱 >
「別に綺麗なものをそうだと言ってるだけですよ。
波都先輩こそ、そういうその、話題とか無いんですか?」
色恋沙汰的な。
何を言おうと花の学園生活。
そういう話題の一つや二つ在ったって良い。
何処かリラックスした風体で、軽く白ぶどうのジュースを口に含む。
す、とした爽やかな感じ。お酒は飲めないけど、食前酒ってこういうのかな。
「……そうですか。先輩自身が決めたなら止めませんよ。
僕も同じ場所で仕事する時は、先輩も皆さんの事も前みたいに助けますから」
本人至っての意思なら止めるつもりはない。
こうして誰かがやると言ってああ言う場所に染まっていく。
出来れば日常にいてほしいなんね願いは飲み込んだ。
決めた以上はそれを出来る限り助けるだけ。
先輩を支えるのもまた、後輩の努めだ。
何とも言えないけど、せめて微笑んでは見せた。
「あの時は色々ありましたけど、転移荒野なら"よくあります"よ。
……転移荒野じゃなくったって、この島で言う違反性とっていうのは、
多くの場合が異能者とか、超常的なモノを持ち歩いてるんです」
「こっちが望んでなくても、使えるもの使うんですよ皆。
ホラ、足が速いから走ることにしたとか、そういう感じです」
今や幻想や神秘は当たり前となり、一種の才覚、技術に当てはまった。
つまり、そういう日常的なものに挟まったからこそ、
そんな画面の中みたいな事が簡単に起こりえる。
ただ使える才能を、能力を違反行為に使っているだけ。
大変容前と比べたら、常識のレベルがおおらかになってしまったのかもしれない。
「ありがとうございます。そうですね、頂きましょう」
確かテーブルマナーは……外側からだっけ。
並ぶ料理はどれも妙にきらびやかで一種の芸術性を感じる。
今から此れを食べると考えると、ちょっと躊躇してしまいそうだ。
「(無駄には出来ないよな、どれ……)」
音は立てず、力は抜いて、前菜を軽く切り取って口の中へ。
口に広がる表現するのも難しい複雑な旨味に目を見開いた。
「(……!なんかこう、凄いな……"品位"って感じだ)」
「何年ぶりだっけ、こういうの。
上品というか、こういう感じだった、かな……」
己の語彙力不足が悩ましい。
美味いを美味い以上に表現する言葉が見当たらない。
■鶴博 波都 >
「はい。宜しくお願いします。
確かに何度お礼しても足りなくなっちゃいますから、
今日のお礼はこれからの分も含めてってことで、お願いしちゃいますね。」
会話を中断して、食事に勤しむ。
大まかなマナーは読み込んで来たけど、実際にやると少し戸惑う。
けれど食べてみると、爽やかな白ブドウのジュースがマリネやパテによく合う。
「すごく……美味しいですね。慣れていないので、上品とかは分からないですけど……。
何年ぶりってことは、壱さんは食べたことあるんですか?」
彼女にとっては初めてのこと。
食にこだわるようで拘らない彼女も、味を表現する語彙力がない。
橘壱が呟いた言葉を拾って、何気なく尋ねてみた。
「えっと、それで……よくあることなんですね。乗り越えないといけないけど、怖いです。
私にできることは物資確保の異能と操縦全般の才能ぐらいですから。」
何でもありで見えない凶器が飛び交う無法地帯。
そのことに恐怖する彼女は、自分の持ち物にはもっぱら無自覚だ。
「橘壱さんみたいに、戦えませんから。
自分の仕事を果すためには、どうしたらいいか悩んじゃいます。」
■橘壱 >
正直に言うと、一般的な料理のが食べ慣れている。
油!カロリー!そんなのが好きなの若者舌。
だが、これはこれでそれとは違う旨味がある。
なんというか、さっぱりした上品さと言うべきか。
美味いものとりあえずぶちこみました、という足し算より掛け算。
何をかけ合わせれば上手くなるか。科学的とも言える。
んー、思わず舌鼓。ちょっとほっこり満足げ。
「此方こそお願いしますね、先輩。
……食べたことあるって言っても、現役時代の付き合いですよ。
本当に昔過ぎて、ちょっと曖昧なんですけどね。お店も違いますし」
それこそ味は店の持ち味だ。
おいそれとどう、と言えるはずもない。
ちょっと気恥ずかしげに頬をかき、するすると食べ終わる。
結構食べるのは早い方だ。フォークの背を下に置き、
静かに彼女の言葉に耳を傾けて、ふ、と口元が緩んだ。
「……今、先輩の目の前には非異能者風紀委員がいますよ?」
なんてしれっと言い放つ。
この手の話、少し思うところはあれど慣れてきた。
せっかくだ。自らの心構えもかねて、"意地悪"することにした。
じぃ、と何というのか今か今かと碧の双眸が彼女を見ている。