2024/11/09 のログ
鶴博 波都 >   
「そういうこともあったんですね。
 うん……何となく納得です。」
  
 上質な素材のポテンシャルを最大限に引き出す。
 食べるものの舌と腹を満足させるための最大効率の配膳。
 細やかなサービスやホスピタリティ。
 
 大量生産(量産モデル)される一般的な外食ではなく、
 予算を掛けた上で最大効率で美味を目指す高級料理(高級モデル)
 
 前者に慣れた波都の舌では細微なものは感じ取れないものの、
 これがより美味しいものであることだけ理解できる。

「でも、壱さんはすごいですよ。
 プロゲーマーとしてチャンピオンになることも、あの子(Fluegele)を駆って私を助けることも、そうそう出来ません。」

 いじわるそうな口ぶりなので、あまり重くは受け止めずに頬を膨らませる。
 綺麗な青いカクテルドレスの装いとハムスターのように膨らんだ頬がちょっとしたギャップの愛らしさを産む。

「壱さんのことを何も持ってないって言ったら、あの子(Fluegele)が拗ねちゃいます。
 なので異能がなかったとしても、壱さんのことは非異能者(何も持ってない)風紀委員じゃなくて頼れる風紀委員さんでーすっ!」

 そうでなければ、目の前の橘壱はいない。
 鶴博 波都の目から見れば、持たざるものと呼ぶにはあまりにも眩しすぎる。

「真面目に受け取ると、私も壱さんみたいに努力と経験を積むしかないのかもしれません。
 そうですね。物資を届けることや輸送からは、少しはずれちゃいますけど……
 ……AF、申請したら借りれるものでしょうか?」

 小首を傾げる。
 目の前の彼がどうあれ、今自分に出来ることをするしかない。

 たとえばの話として、共通の話題で身近な兵器の名前を口に出した。
 目の前にいる彼が非異能者(何も持ってない)風紀委員としてAFを使って戦場に出るなら、
 それに倣って同じ様に歩むのも一つの手。

 からかい目的の言葉であるとは理解しているものの、
 目の前の彼が取った選択肢が魅力的に映った事は確かだ。
 
  

橘壱 >  
唇に指を当てて、クスクスと笑みを浮かべる。
まぁなんとなくだけど弱気におどおどするタイプじゃないよな。
そうでなきゃ、あんなに運転席で覚悟を決めちゃいない。
けど、そう見えるらしい。異能者(彼女)には。
軽くナプキンで口元を吹けば、人差し指を立てた。

「……もし今テロが起きたとして、
 仮に僕がトランク(コイツ)を持ってなければ、多分太刀打ち出来ない。
 相手が異能者ともなれば、多分グンと勝率は下がる。訓練はしてますけどね」

「それに相手が暗殺のプロとかなら、Fluegeleを付ける前に終わりだ」

それでも数と手札(才能)の数は絶対だ。
舐めちゃいけない。例えその辺りのごろつきでも、
異能者という札が付いてくるだけで勝てるかどうかも怪しい。
此れは異能に限らず、現役(プロゲーマー)時代にも思っている。
それを埋めるためには、努力(出来る事)を重ねるしか無い。
どれだけ果てしなくても、埋まらないかもしれない間でも
勝ち星がほしいというなら、尚の事。

「それに、"逆"ですよ。
 僕がFluegele(コイツ)を見出したんじゃないか。
 Fluegele(コイツ)が僕のことを見出してくれたんだ。
 非異能者(もたざるもの)が出来る唯一の才能、AFの操縦技術を、ね」

起きたこと自体は偶然だ。
それでもあれは、今でも運命だと思っている。
じ、と彼女を見据えていたと思えばはぁ、と気の抜けたように肩を竦めた。

「……とは色々いいましたけど、どんな状況でも負ける気はないですよ。
 すみません。先輩だって色々持ってるのにそんな事いうから、意地悪したくなっただけです」

そんな弱音を吐くなんて格好悪い。
もし仮にこの鋼鉄の翼が砕けたとしても、最後まで足掻くつもりだ。
そう語る壱の顔は清々しく、軽くぶどうジュースで口を潤した。

「勿論乗れますよ。僕の企業は、常世学園に提携してるし、
 風紀用の専用カスタムだってありますから、手配はされるはずです」

それこそ備品と変わりないんだ。
申請すれば、委員会所属なら問題ないはず。

「ただ……僕は軍隊式の訓練を受けてます。
 "それくらい"やらないと結構キツいですよ?操縦。
 僕も初めて乗った時やばかったですからね。こう、ね?」

色々濁して苦笑い。
流石に食事どころでゲロの話はしない。

鶴博 波都 >  
「うーん。よくわからないです。
 キリがない話も気がします……。」

 状況や相性の話は、イマイチ理解できずに首を傾げる。
 そもそも、自分の異能(手札)の使い方すらわかってない。

 才能の方は兎も角として、あればあるだけ有利なのは当然で、どこか机上の空論の様に思えてしまう。
 実際としてはそれらは机上の空論ではないとしても、日常のものとしては実感が湧かないらしい。

「それなら尚更、その子(Fluegele)が拗ねちゃいますよ。
 見出してくれたのにへりくだってちゃ、その子に対してノンデリです。なんて。」

 銀色のトランクに視線をやって、ちょっとからかうように笑ってみせる。
 その後に告げられた言葉からは、ちゃんと前向きな自負心が感じられた。

「んもう……壱さん、意地悪です。
 持っていても使い方のわからない、宝の持ち腐れですけれどね。」

 現状、コントローラブルに運用することは出来ていない。
 如何に手札を持っていようが、使えなければ無いのと同義。

「似たような異能を持っている人が居れば、色々聞けるんですけれど……
 ……壱さん、私のような異能を持っている人に心あたりがありませんか?」

 赤い髪の少女が、お返しとばかりに栗色の瞳でじっと見つめる。
 そもそも自分の異能の使い方が分かってないのだ。

「大丈夫です。過度な負荷なら運転の一環で体験していますから!
 そして鉄道委員だって体力勝負です。"それくらい"なら、なんとかなると思います。」

 にっ、と笑ってみせる。
 異能はともかく、操縦に関してはそれなりの自信があるらしい。
 前回の一件にしても、自信を持つだけの才能があることは伺えるかもしれない。

「AFの手配の申請、してみますね。
 壱さんの名前、借りてもいいですか?」
 

橘壱 >  
「今のうちに頭の片隅にでもおいておくといいですよ。
 別にことの事件っていうのは、何も前線(アソコ)とかばかりじゃないですし」

飽く迄学生街も歓楽街も、他と比べれば治安が良いだけだ。
特に住民()の目があるかどうかは大きい。
情報社会、監視力も大きく発展したが、その分隠蔽する力だってある。
存外、日陰者だってたまに学生街()にいるってのもわからないものだ。
立て指先を軽く折り曲げ、"とはいえ"、と言葉を続ける。

「……けど、ちょっと風紀委員(別管轄)の視線も強いか。
 ごめんなさい。ちょっと話が飛んじゃいましたね」

秩序機関の目線だ。
常に犯罪者を追う彼女には過ぎた考えだ。

「いやノンデリって……そんなにかな……。
 こう見えて結構、唯一無二の相棒だとは思ってるんだけどな」

それこそ一蓮托生の気持ちだ。
なんだか姑みたいだなぁ、って頬を掻いた。

「生憎僕は、波都先輩と似た異能の人は知らないですね。
 けど、それこそ使い方を見つけるための訓練や努力じゃないですか?
 例えば……そう、僕ならずっと兵装の弾を込め続けれるように特化させる、とか」

「後そうだ。郵便屋さんとか?手紙、必ず届けられそうだし」

なんて、面白半分に言ってみた。
けど実際使い方としては適材適所だ。
飽く迄自分なら思いつく範囲を口にして、きょとん、と。

「僕の名前?別にいいですけど……どうしてですか?
 申請するだけなら、波都先輩の名前だけでも出来ますよ?」

鶴博 波都 >  
「……前線って、いろいろと大変なんですね。
 別管轄(風紀委員)との折り合いの難しい話だと……
 半ば引退状態となった上級生の風紀委員会の委員を鉄道公安局に引き抜くことも昔流行って、
 そういった問題を防ぐために「出向」という形が積極的に取られるようになったって話を聞いた事があります。」

 話が飛んだついでに、話題を流す為に先輩から聞いた小話を話題に挙げる。
 とは言え、詳しい話は知らない。雑談の時に挙がった程度の深度だ。

 ただ、それはそれとして常世学園の前線や暗部は色々あるらしい、と言う事を頭の片隅に入れる。

「ふふ、私が言うのもしゃかさんに説法な気もしますけれど……
 それならぜったいに、大丈夫ですね。」

 冗談交じりの言葉ではあったものの、
 唯一無二と言いながら頬を掻く橘壱の仕草を認めれば、嬉しそうに微笑む。

「弾を込め続けるだけで強いんでしょうか……でも、やってみますね。
 練習は大事ですから頑張ります。壱さん。」

 リロード不要の恩恵を理解しない彼女だが、
 良い練習にはなるのかも、と、肯定的に頷いた。

 しかし、郵便に触れるとなるとちょっとだけ仕事の顔を見せる──。

「むっ、壱さん。郵便は物量と人手です。前提として、大量の郵便を捌く輸送能力と人手って大変なんですよ。
 絶対に届けなきゃいけない重要文書や資材なら話は変わりますけど──年賀状なんかはアルバイトを雇う位ですから。」

 年末年始の郵便は戦場だ。
 異能を抜きに郵便の過酷さを知る鉄道委員としては、
 絶対に届けなきゃいけないもの以外は物量と人手になる事を知っている。

 年末商戦からのお年賀は、日常に於ける鉄道委員と生活委員の戦場。

「有名な人のお墨付きがあった方が、通り易いと思って。
 理由はあるとは言っても、素人がいきなり借りる訳ですから。」

 彼の名前を借りた方が、スムーズに手続きが進むだろう。
 AFは企業から学園へ提供されているものであり、その看板である彼の名前があった方が話が通り易いと考えたらしい。
 
「……あ、魚料理の方のメインディッシュが来ました。
 帆立貝のオリーブオイルグリルです。」

 配膳される帆立貝のグリル。
 オリーブオイルで混ぜ込んでしっかり焼かれた帆立貝からはいい匂いがする。

「この後は常世牛サーロイン肉のステーキのハーブバターソースが来るみたいです。
 今焼いていて、程なく来るみたいなので、冷めないうちに食べちゃいましょう!」

 魚介料理に肉料理。そしてこの後はデザート。
 一品一品は少なく見えても、フルコースとして積みあがるとそれなりの量。
 
 

橘壱 >  
「警察的な目線……って、島外(そと)的には言うのかな?
 誰も彼も疑ってたらそれこそキリないですけど、そういう感じ」

「……良くも悪くも"学園"って体裁ですからね。
 ある意味ではこの島って、常に人材不足なのかも」

此処は時代の最先端の都市でもある。
だが、体裁としては"学園"の名を関する以上、卒業生がいる。
島の外に出る義務はないが、唯の島民になるケースだって存在する。
誰も彼もが学園関係者、とまではいかない。
そもそも、流れ着く異邦人の教育とか、そういう問題もある。
引き抜きがどう、というのもさもありなんだ。
何気なく眺めた夜景はとても綺麗だと言うのに、
一つ皮を剥けば意外と問題だらけ。
島だけというわけでもなさそうだが、何とも。
思わず溜息なんて漏れてしまった。ちょっと憂鬱だ。

「(まぁでも、1生徒が考える事でもないか……)」

気持ちを切り替えよう。

「……物資って、波都先輩が思うより重要ですよ?
 この前の戦い、砂蟲(サンドワーム)相手に質量の問題もありましたけど、
 弾薬問題もありました。もし、仮に無限に弾が供給されたら、押し勝ってた

おまけに弾幕における衝撃、制圧に押される相手なら、
それだけで圧殺できるほどの理不尽さが目に見えている。
彼女の異能がどれほどの精度かはわからないけれど、
戦いに身を置く壱からすれば、此れほど頼もしい支援者は中々いないと思っていた

「ぼ、僕が悪かったですって。
 確かに毎年大変だな、とは思いますけどそんなに……」

その苦労は慮るところはあれど熱気が凄い。
思ったより圧の強い説明にたじたじとしながらどうどう、と宥めてみる。

「と言っても、相手も商売ですからね。
 前回の時もそうですし、自己責任ですよ。
 けど、僕の名前を使う以上は、そうですね。
 僕が直々に訓練をお手伝いするのも楽しそうだ」

「波都先輩、扱きがいありそうですから」

ふふん、とちょっと得意気に笑ってやった。
結局、AFも道具だ。ある程度申請許可は必要でも、
余程の理由でもない限り、Noとはこないはずだ。
自分の名前を使えば、尚の事。それにちょっと興味がある。
波都の動かすAFが、何処までやれるのか。自分の良きライバルになるかもしれない。
笑顔の裏では、自分の中の(闘争心)がほくそ笑んでいたのは内緒だ。

「お、ホタテ?凄いいい匂い……。
 うん、そうですね。頂きましょう」

「こういう時、キミの瞳に乾杯、とか言うんですかね?なんて」

冗談交えて、料理に舌鼓だ。
夜の一幕。日常の風景がこうして通り過ぎていくのであった。

ご案内:「扶桑百貨店 展望レストラン「エンピレオ」」から鶴博 波都さんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 展望レストラン「エンピレオ」」から橘壱さんが去りました。