2025/08/02 のログ
ご案内:「天ぷら屋「旬衣」」にラヴェータさんが現れました。
ご案内:「天ぷら屋「旬衣」」に神代理央さんが現れました。
■ラヴェータ > 扶桑百貨店の天ぷら屋、空調の効いた和風の店内で席に座ってメニューを眺める。
土曜日の昼食時であるために店内は混雑しているが、予約システムとは偉大である。
お陰でクッション付きの席を広々と使って待つことができる。
夏野菜や魚介の天ぷら、素麺やざる蕎麦といったさっぱりとした麺類、
そして和菓子を代表としたデザートが並ぶメニューの価格は、高級とまではいかないが、庶民の懐にはやや重い。
それでも、添えられたいくつかの品々の写真からは、その価格以上に食欲をそそられる。
待ち合わせの時間になる前だというのに、早く来ないかと内心急かす気持ちが沸いてくる。
「事前調査はやはり大事だな」
自画自賛しながら尻尾を揺らす。
恐らくもう数分もしないうちに来るであろう待ち人の事も含め、口元が緩んでしまう。
■神代理央 >
君がお冷に口をつけ始める頃。
時計の針が、あと数分で待ち合わせの時刻になる事を示す頃。
店員に案内され、席に現れるのは金髪紅眼の小柄な少年が一人。
「……すまない、待たせてしまったか?」
と、僅かに気遣いと謝罪の色を含めた視線と言葉を投げかけながら君の対面に腰掛ける少年。
何時もの様に手に下げた本革製の書類鞄は元の形よりも僅かに膨らみ、それなりの量が詰め込まれている事を訴えている。
「もう少し早く着く予定だったのだが、少し会議が長引いてな。しかし…」
ちら、と腕時計に視線を落として。
「…お前がもう着いているとは思わなかったぞ?そんなに私との再会を心待ちにしていてくれたのかな、ラヴェータ?」
なんて、くすくすと笑いながら。
お互いの前にメニューを置いておくのだろう。
■ラヴェータ > 「ああ、待ったとも。
早く座れ、さぁ」
少年が入店してきたことは察知していたが、席の傍まで来て初めて其方へと視線を向ける。
無自覚に細まった目尻で少年を歓迎する。
その視線をちらりと鞄に向ければ、つい先ほどまで職務に追われていたことがよく分かる。
この後も恐らくそうだろう。
「折角取れた予約がキャンセルになったりでもしたら勿体ないからな。
そうならないように早めに来ただけさ」
この日を楽しみにしていたことに嘘偽りはない。
「暑いから蕎麦か素麺でもどうかと思ってな。
勿論甘味もある」
メニューを開いて見せれば、並ぶのは涼し気な麺類。
そして水ようかんやぜんざいといった和風デザート。
どれも夏季限定の人気メニューだ。
「働き詰めみたいだしな。さっぱりしていくといい」
■神代理央 >
「確かに、最近は夜間の任務でも茹だるばかりだ。我々はなまじっか重装備を整えてしまっているからな。熱中症対策に追われるばかりだよ」
蕎麦か素麺でもどうか、と尋ねる彼女に小さく苦笑いを浮かべつつ賛同の意を込めて頷く。自身も現場に出る立場故、暑さによる消耗には頭を悩ませるばかりだ。
尤も、日中はオフィス。現場に出るのは夜間が多い少年の肌は日光に焼かれる事は無く、欧州の血が与えた病的なまでに白い膚は健在であった。
「では、素麺にでもしておこうか。……こういう食事を取るのは久し振りな気がするな」
それは別に食事を取っていない…と言う訳では無く。
完全栄養食か接待めいたフルコースの極端な二択が多い少年は、こういった様相の食事を取る事があまり無い、と言うだけ。
メニューを開いて食事を選ぶ、と言う行為が久し振りなのだ。
「食後のデザートは……抹茶のアイスクリームにでもしておこうか。ラヴェータは何にするんだ?」
自分の注文を決めた少年は、メニューをぱたんと閉じて再度君に視線を向け直すのだろう。
■ラヴェータ > 「人間ひいうのは大変だな。
まあ、私も夜間の蒸し暑さは苦手だが……」
そうそう熱中症などで倒れるほどひ弱ではないが、それでも暑いものは暑いし不快なものは不快だ。
人間はそこに更に命の危険もあるというのだから、気の毒だ。
「私も中々無い経験だな」
その意味するところは少年と全く異なるが。
極端な食事は稀、多少遊び歩こうともそれなりに庶民的に暮らしている狐にとってこのような店に来てまで食事をすることは中々無い。
ここに来たのはたまの奮発兼、少年の価値観に合わせたという訳で。
「私は…これと、これだな。
少し前に食べたねっとりとしたのが美味かったんだ」
3種のつゆ付きの素麺と、黒蜜わらび餅を指さす。
近場の店員に「注文を頼む」と声をかけて二人分の注文を伝えるだろう。
もってくるタイミングも指定しておこう。
「デザートはそれでよかったのか?」
店員が去った後、それとなく少年に尋ねる。
甘党の少年が抹茶を選んだことに疑問を持ったのだ。
といっても、抹茶を飲んだこともそのアイスなどを食べたこともない為に、苦いというイメージが先行しているに過ぎないのだが。
■神代理央 >
「それでも任務が終われば歓楽街に繰り出しているらしいからな。元気なものだよ、全く」
と、肩を竦める。まあ、自分達でストレスを発散してくれているのなら構わないのだが、と。
「そう言えば…そうだな。お前とこんな畏まった場所で食事をするのも初めてか。普段のお前ならもっと肩の力が抜けそうな場所を選びそうなものだが…何か心境の変化でもあったのか?」
少年の立場からすれば決して手の届かない店ではない…が、一般生徒が普段通える様な店ではない事は理解している。
それ故に、今日この店を選んだ少女に、興味本位の質問を投げかけつつ…。
「……服装も、何時もより随分と御淑やかじゃないか」
なんて、揶揄う様に笑ってみせる。
普段見慣れた黒い軍服と真逆の服装は、少年から見れば新鮮ではあったのだし。
「む…?ああ、構わない。暑すぎると極度に甘いものより、少しさっぱりした甘味が欲しくなるものでな。それに、抹茶とは言え相応に甘いものだぞ?」
一瞬質問の意図を理解していないかの様に怪訝そうな表情を浮かべるが…直ぐにその意図を察すると、小さく笑って構わないのだ、と頷いてみせて。
「何なら、後で食べさせてやろうか?」
食べさせる、と言うのはまあ、つまり言葉通りの…そう言う事なので。
再び揶揄う様に微笑むのだろう。
■ラヴェータ > 「そういうものか」
抹茶についてよく知らないが、意外と相性も良いし、甘いものらしい。
興味が沸く。
「……なら、後でいただこうか」
そんなところにそのような提案を受けたのだから、望むところだと含みのある笑み返した。
「にしても、心境の変化か……そうだな」
貴様を誘う為に相応しい店を探した、などと言える訳もなく。
「夏と言えば素麺と聞いた。
折角なら旬のうちに良いものを食っておきたくてな」
視線を泳がせないように平然を装って答える。
「服装はここの下見ついでに買った。
学生服やら風紀の制服やら着るようになったし、ついでに私服もと思ってな」
……
「変ではないか?」
少年の見慣れた笑みだが、この時ばかりは少し弱気だ。
このような服装が自分に似合うか、些か不安なのだ。
■神代理央 >
「…成程。旬を…季節を楽しむ、と言うのは良い事だからな。お前がそうやって日常を楽しもうとしてくれるのは、私も嬉しいよ。ラヴェータ」
何時もの調子で応えた少女に小さく微笑んで、ふと、店内にぼんやりと視線を向ける。
平和だ。誰かを害する事も無く、誰かに害される事も無く、穏やかな日常が其処には広がっている。
それを護る為に誰かを傷付ける事を仕事にしているのだから…中々笑えないな、と内心自嘲した、ところに。
「……?」
少女から紡がれるにしては随分と───ほんの僅かにではあっても───弱気な声色に、視線を戻して、ぱちくりと瞳を瞬かせて。
「…変であるものか。とても似合っているよ、ラヴェータ」
「俗な言葉で表すのなら…可愛らしいさ。素敵だよ」
監視対象から外れ、今では多くの交流を持つ…という少女。
であればもう、血と硝煙に塗れた己の言葉よりもきっと、こんな言葉の方が相応しいと思ったから。
だから、静かに微笑んで頷くそれは、間違いなく少女への賞賛の言葉であり。
同時に、嘗ての過去から少女を切り離す儀式めいたものの一端でもあった。
■ラヴェータ > 「……そう言われるとなんだか複雑だな」
誤魔化した回答に対して、そう喜ばれてしまうと、希釈した罪悪感と恥じらいを混ぜ合わせたような感情が沸いてくる。
それと同時に、なんだろう。少年が自分の保護者のように感じる。
それほど間違っていないような気もするが。
「か、かわいいか、そうか。
似合っているか、そうか」
ふふふと、澄んだな笑みが零れそうになるのを堪えて、口元が綻んでしまう。
褒められることを期待していた訳ではない。
信頼出来る相手に最初に見て確認して欲しいというだけのつもりだったのだが……
どうにも、私はとても嬉しくてたまらないらしい。
見えないところで揺れている尻尾が背もたれや座面とこすれあう音が少年にも聞こえるぐらい大きくなる。
「ありがとう、理央」
堪えきれない感情が、遠まわしに変換されることなくそのまま零れる。
滑らかに微笑む口元、赤みを帯びた頬、そして含みの無い瞳で微笑み、疑う余地のないぐらい素直な言葉を少年に返した。
■神代理央 >
「……ふふ、其処まで喜んでくれるとはな」
まあ、目の前の少女は以前から賛辞や賞賛の言葉には素直に喜色を浮かべてくれてはいた。
それでも、音が聞こえる程に尻尾を揺らしている様を伺えば…伝えた甲斐があったのだと思うし、そういう感情を素直に伝えられる様になった少女に対しての自分自身の喜びの感情も含めて。
「礼などいらないさ。魅力的である事はお前の努力が実った結果で、私はその努力を賛辞しただけ。以前に比べれば、随分と物腰も柔らかくなったんじゃないか?」
なんて、クスリと笑って。
微笑んだ少女を見つめ返して。
「…それでも、それがお前の変化と成長と言うのなら私はそれを喜ばしく思うし…」
「それはより一層、お前の魅力を引き立てるものだと私は思うよ。
……その服、私の為に選んでくれたのだろう?」
少しだけ前に身を乗り出して、じ、と少女を見つめて含み笑い。
赤みを帯びた少女の頬を、もう少し染めてみたくなったから。
■ラヴェータ > 「褒めても……何も出ないぞ……っ」
思わず純情を零してしまったこと、そして少年の追撃に顔と視線を逸らす。
茶化すほどの余裕もない。
自分らしくないなんて言葉が浮かぶが、その自分は変わっているのだと、目の前の彼から何度も言われたところだ。
それを……喜んでもらえるのなら……吝かでも……
いや、それも良い、のだろう。
「いや、それは……その……」
更にそんな言葉で追撃されれば、顔が熱くなっていくのを感じる。
その変化を理央が肯定するというのなら―――
「……その通りだ」
―――認める方が、私にとっても嬉しい。
今日着て来る為に買ったのは事実だし、自分にすら素直になれてなかったのは今さっき自覚したところだ。
逆上せてしまいそうなほど熱くなった顔を逸らしたまま、視線だけ少年に合わせ、すぐに逸らした。
近い……!
■神代理央 >
…随分とまあ、可愛らしくなったものだ。
なんて、本心でもそんな言葉を投げかければ揶揄ってる様に聞こえるかもしれない。流石にそれを慮るだけの知識は少年にもあった。
であれば、より少女を褒めてやるべきだろうか。或いは、少し軽口でも挟んだ方が良いのだろうか…と考えていた矢先に、運ばれて来る料理達。
「…もっとお前の可愛らしい所を見ていたかったが…先ずは食事にしようか、ラヴェータ。温くなってしまっては、折角お前が選んでくれた店の料理にも可哀相だからな」
料理によって、縮めた距離も元通り。
それを少しだけ残念に思いつつも、素直に料理を味わう…前に。
「それに────」
「────可愛らしいお前を楽しむのは、何も人の多い場所じゃなくても良いものな?」
とだけ、悪戯心を含めた追撃だけ、入れておこうか。
■ラヴェータ > 助かったという安心感と、何故今という残念な気持ち。
料理が運ばれて来たことで、その二つを同時に味わうことになった。
店員が料理を配膳する様子を脇目に、少年の様子を伺う。
2人の距離が元に戻ったことを確認して、顔を正面に向ける。
まだ顔は熱いが、少しずつ熱が引いている感覚はある。
排熱でもするようにゆっくり息を吐いて、張った心情を整えようとする。
「そうだな、折角予約までしたんだからな。
楽しんでくれれば私も嬉しい」
まだ調子は戻り切らない。
それでも少しずつ落ち着こうと、料理に視線を向けた―――
「……ばかもの」
―――というのに。
視線を料理より更に下へと向けたまま、小さな声でつぶやく。
折角少しは落ち着いたというのに、台無しだ。
それでも、興奮を収めようと手を動かし、箸を手に取る。
「……美味いうちに食べてしまおうか」
視線を合わせられないままそう口にし、手を合わせる。
「いただきます」
随分と覇気のない声だった。
■神代理央 >
そんな可愛らしい少女の反応を、一度敢えて置いておいて。
恙無く食事は進むだろう。他愛の無い雑談。料理の感想。
軽い近況報告等…食事の場に相応しい話が、ゆっくりと、揺蕩う様に進んでいく。
だって、一度落ち着かせてからの方が。
「ところで、この後予定はあるのか?ラヴェータ」
少年の方の器が空になった頃。唐突に口火を切る。
「折角、私の為に似合う装いを纏って。そんなに可愛らしい反応を見せてくれたのだから…」
敵陣を叩く時は、一度此方が退いたのだと思わせてからの方が。
「"この後"も、期待していたのだろう?ラヴェータ」
デザートは、最後に味わう方が良い。
なんて。じ、と少女を見つめる少年の表情は君が見慣れた…見慣れてしまった、少し意地悪そうな…嗜虐的な笑みだったのかもしれない。
■ラヴェータ > 「この後か?特に何もないが―――」
美味な食事と少年との一時にすっかり落ち着きを取り戻した頃。
……いや違う、油断しきっていたその時。
それとなく普通の返事を返したのだが、少年の顔を見て察した。
「―――そ、それは……」
この後。
少年の見慣れた筈の笑みが今は違った風に見える。
かつてこれほど、この笑顔に敵わないと感じたことがあっただろうか。
退いた筈の熱は伏せていただけのようで、瞬く間に思考を攻め落としてしまう。
「……そうだ」
熱が城から運び出した感情はありのままの姿。
隠されることも偽装されることもない素直な感情が姿を露にする。
「理央、貴様の言う通りだ。
……だが、その、前に……忘れたか?」
少年の前に残っているのは、抹茶のアイスクリーム。
こちらのデザートは半分程残してある。
「……くれるのだろう?」
嗚呼、あの時はむしろ揶揄うぐらいのつもりで提案を承諾したのに。
あんな軽率に受け取るべき提案では無かったと、自分を責める。
再び少年を直視出来なくなる。アイスもだ。
顔を伏せると、指も一緒に下を向いた。
■神代理央 >
そう、この後。
まだ日は高い。されど、それだけだ。
別に、日の当たらぬ場所など。他者の目の無い場所など。
そんな場所、幾らでも────
「………ふむ」
そう言えば、と。目の前に鎮座する抹茶色の甘味に視線を落とす。
まだ手は付けていない。少女の言葉に対して、その半円状の甘味に金属製のスプーンをさくり、と差し込んで掬ってみせれば。
「そうだな。折角だ、ゆっくり味わうと良い」
にっこり、と喜色を強く浮かべた笑みを浮かべてみせれば。
「ほら」
「あーん」
少年はアイスクリームを掬ったそのスプーンを
そっと、俯いた少女の目の前に差し出して見せるのだろう。
■ラヴェータ > 少年の言葉と共に差し出されたスプーンが視界に入り込む。
こうなるのは予想していた。
していたからこそ、むしろこちらが……
「……」
ゆっくりと顔をあげれば、スプーンとその向こうの少年の笑顔。
随分と……いい笑顔をしている。
「ぁーー……」
少しの間、口を開けるのを躊躇うが、覚悟を決めて控えめに口を開く。
目を瞑り、少しでも恥じらいを和らげようとしたまま、差し出されたアイスを口に含む。
「……ん」
甘くて冷たい。
口の中でゆっくりと溶かしながら味わう。
抹茶は苦いと見かけたが、上品な甘さだ。
独特の苦みこそがあるが、甘みを際立たせるアクセントのようなもので、全く苦に感じない。
香りがよく、アイスとよくあう。
……この状況とも、よく合う。
そうして吟味する間、耳が何度かぴくぴくと動く。
「……美味しいな」
口の中でアイスが溶け切ってから口を開いた。
満足といった様子だ。
■神代理央 >
「ふふ、そうだろう?本来甘味とは異なる場所にある筈の抹茶が、アイスクリームと混じり合う事で互いの長所を引き出し、他の甘味では出し得ぬ味わい深さを持つ。普段は私もあまり食さぬが、偶に食べると中々趣深いものでな」
流暢に紡ぐ言葉は…けれど別に伝えたい事の本質では無い。
少女が口に含んだ後、そのスプーンで丁寧にアイスを掬って自分も一口。ん、美味しい。
「とはいえまあ、どんな甘味であれ……」
別に抹茶の歴史も抹茶アイスの蘊蓄も語るつもりなど無い。
「お前が美味しそうに食べてくれるのを眺められるのなら、どんなものだって私は構わないのだがね」
満足そうに微笑む少女に向けるのは、穏やかな笑み。
多少の揶揄いは含まれていても、それでも微笑ましそうに君を眺めながら、少年も少しずつアイスクリームを咀嚼して。
「…ところで、ラヴェータ」
その穏やかな笑みは。
「私には、くれないのか?」
やっぱり途中で、少しだけ意地悪そうなものに変わってしまうのだけれど。
■ラヴェータ > 相変わらず甘味に目がないやつだと、抹茶アイスについて流暢に語る様にどこか安心を覚える。
それよりも、今しがた自分が口に含んだスプーンでそのままアイスを救い、その口へ……
「……ふん」
思わずスプーンを目で追ってしまった。
そしてそのまま直視した少年の表情に素直でない反応を返してしまう。
否、素直になれないのではない。もうこの感情を言語化出来る程の余裕がない。
それにしても、こうして嬉しそうにしている少年を眺めていると、此方まで嬉しくなる。
少年の先ほどの言葉は、まさしくこういう感情について言っているのだろう。
「……元よりそのつもりだ」
それは想定済みだ。
手元に残しておいたわらび餅を楊枝で指し、黒蜜を絡ませてから少年の口の高さにもっていく。
「ほら、その……あーん、だ」
よくあんな飄々とやれるものだ。
■神代理央 >
少女が、元よりそのつもり…と言うのなら。
その差し出された手を、ぱし、と掴もうと手を伸ばしながら…楊枝の先の餅を、口に含もう。
「は…む」
もごもご、と口の中でわらび餅を咀嚼する。
抹茶アイスとはまた違った爽やかな草餅の風味に、どろりと甘い黒蜜が混ざり合う。
これを素直に美味しい、と思う当たりハーフとは言え自分の根っこは日本人なのかな、なんてどうでも良い思考が遠くで笑う。
…そしてもし、少女が少年の手を拒絶しなかったのなら。
少年は少女が伸ばした手を掴んだ儘、餅を味わって…味わいながら、指先で少女の手の甲を軽くなぞろうとするだろうか。
それはまるで、まるで────
■ラヴェータ > 「……っ」
少年の行動は想定の上をいった。
跳ねのけることは容易な筈のその手に抵抗することなく掴まれる。
「なに、を」
手の甲をなぞる指に困惑と、得も言われぬ感触が迸り、片目を反射的に閉じる。
戸惑いながらもその感触に力が抜け、楊枝を持つ手の力が弱まる。
「なんの、つもりだ……?」
片目を閉じたまま尋ねる。
咎めるような意志も、覇気も、拒絶もない。
ただ余裕を損ねた為に言葉を選べなかっただけの質問、もしくは結論ありきの確認作業だ。
■神代理央 >
「何のつもりだ?ほう、そんな分かり切った事を聞くのか、ラヴェータ?」
そう、これはお互いに何を答えるべきか分かり切った事。
事務的な確認作業でもあり、或いは儀式めいた必要不可欠なやり取りでもある。
「今日は、執務室に来客の予定が無いんだ。ラヴェータ」
だから、少女の掌を撫でながら。紡ぐ言葉は淡々とした事実だけ。
「折角だから、お互い積もる話もあるだろう?」
唯、事実を並べるだけのソレは。
「だから────来るよな?ラヴェータ」
最後は、かつての様に。或いは、少女が良く知る少年の様に。
傲岸で傲慢で、その態度は自らへの絶対的な自信と共に発せられる。
少女を自らの巣の中へと誘う言葉となって…紡がれるのだろう。
■ラヴェータ > このやり取りは既に約束された過程。
少年が言葉を紡ぐ度、次ぐ言葉が脳裏に浮かび、実際のやり取りよりも一歩先へと思考が移ろいでゆく。
それに伴い鼓動はペースを上げていく。
そして、予定通りの言葉が聞こえ。
「……はい」
抗う様子などなく、すっかり赤くなって萎縮する少女の口から肯定の言葉が零れ落ちた。
呆けた顔ながら少年の顔を見つめ、あの日の事も思い出しながら盲目的に感情を高める。
この後どうされるのか、どうなってしまうのかについて、無自覚に期待しているのだった。
ご案内:「天ぷら屋「旬衣」」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「天ぷら屋「旬衣」」からラヴェータさんが去りました。