2024/06/07 のログ
ご案内:「扶桑百貨店 フードコート」にパリピさんが現れました。
■パリピ >
米国はスーパーソニック社製スポーツサングラス型PC「WISEMAN Mk.III」ミラーシェードモデル。
魔導CPUの躍進により小型軽量化の極北、視認性および異界生物も含めた歩行安全補助を完備した最先端ガジェットだ。
本体の性能にそもそも難があった初代から始まり、劇的な機能性と安全性の向上が行われたもののデザインに難があったMk.IIのセールス不調を乗り越えて、欧州圏のデザイナーを招いての試行錯誤を重ね、ついにひとつの完成を経たモードファッションPC――
ついさっき上階にて数量限定販売されたばかりの流行品で顔を飾ったいかにもなパリピは、フードコート入口のホロ・モニタ・テレヴィジョンコーナーの前で、暇つぶしの島民たちに紛れていた。
「へぇー……VRゲーム……」
お昼すぎのeスポーツ特集の番組にて、機械人形たちがめまぐるしく戦うアクションゲームの観戦モードの模様が映し出される。
タイトルは――テロップ部分に『メタラグ』という愛称は表示されているが……
まったくキャッチしていないわけじゃないが、専門外の分野だ。ここ最近はゲームも進んでんだな、なんて考える。
なにがしかプレイヤーのものと思しき気合の入った音声――台詞が叫ばれていて、とても賑やかだ。
「――なァッ、これどーゆーゲームなの?ロボットが戦ってるケド」
と、傍らにいた何者かに、馴れ馴れしく話しかける。グラサンのシェードのせいで鼻から上の表情は伺えないが、なんともひとりでも楽しそうな口元だった。
ご案内:「扶桑百貨店 フードコート」に橘壱さんが現れました。
■橘壱 >
先日は趣味のためにこの百貨店に訪れた。
今度はただ付近で寄っただけの帰還途中。丁度腹が減ったので腹ごしらえだ。
特に好きなものという区分もない。食べれれば大体のものは好きだ。
この時代が進んだこの世においては、不味い物の方が進んで探すのは難しいだろう。
もっとも、そんな"寄食"に走る人間など気がしれない。
そんなものよりも適当なラーメンなり蕎麦なりで済ませてしまおう。
フードコートの入口に訪れた時には、懐かしい映像が流れていた。
「……へぇ。」
昔の古巣とも言うべきもの。
見覚えのあるロボットたちが、聞き覚えのある駆動音をかき鳴らしている。
覚えている。わかっている。今でも動かせる。
かつては昔のPVに自分のプレイも入った気もしたが、もう昔の話だ。
金属製のトランクを揺らし、懐かしさと過去の栄光に自然と口元が緩んだ。
そんな思い出に浸っている最中、随分と馴れ馴れしい声が飛んできた。
知らない人だ。自分にはないなんともオシャレな雰囲気を出している。
女性…いや、今の御時世見た目は当てにならない。どっちだ?
「……アンタ誰だ?」
思わず、訝しげに問いかけた。
「まぁ、それはそれとして中々に目の付け所がシャープだな。
コイツはメタリックラグナロクというVRゲーム。高度な戦略性とカスタマイズ性が────……。」
それはそれとして、オタクにこういう事を聞くのは拙い。
何故かってオタクは自分の好きなコンテンツに早口になる。
コイツもその類だ。早い、めっちゃ口が回る。ぺらぺらぺらぺら。
それこそみっちり、どうでもいいことまで数分間止めなければ舌が回るぞ…!
■パリピ >
「一般人」
誰、と聞かれればそうこたえるしかない。
少なくともこんなところで出くわした、島民同士のよくあるすれちがい。
常世島は世界全体で見れば狭いが、ひとつのコミュニティとしては超巨大だ。
「エッ、めっちゃ喋るじゃんキミ。はぁー、けっこう歴史の長いタイトルなんだね。
自分の乗機を組むところから始まる対戦ゲームか……
春先の大会の中継みたいだね、コレ」
喋らせる。興味があるかどうかでいえば殆ど聞き流してはいるのだが、必要なところはさらっていた。
「熱そうじゃん。今度やってみよーかな」
唇は上機嫌な表情をつくったままで、そんな対戦模様から画面が切り替わる。
コメンテーターと思しきスーツでキメた中年男が司会進行のeスポーツキャスターで、その隣に座っている気取った風のある西洋人の少年が今日の目玉であるらしい。
背景にはロボットや、格闘家、戦士と思しきキャラクターがポーズをとっている立体映像が投射されている。
『いやあ、今大会も白熱しましたね!メタラグ、いますっごく熱いですよ!
……しかし、プレイヤー間では惜しむ声もありますね』
キャスターがすこし大げさな、はきはきとした発声で、冷めた感じの少年に語りかけている。
背景の画面が切り替わった。そこには、表彰されている黒髪の少年。
『メタラグの対戦界隈といえば!そうっ……!
彼はeスポーツ・シーンを去り、活躍の場を新たにしているようですが……
いまなお!あのプレイを見たいという声は後を断ちません!ねえ!』
――橘壱の過去が映し出された。カメラのフラッシュが、ビデオカメラのレンズが、一身に向けられている。
果たしていつかのキミは、どんな顔をしているのだろう。
「……あ。ニューワールド・ジャーナルに載ってたヤツじゃん。
確かコズミックにスカウトされたって特集組まれてたっけな――」
ニューワールド・ジャーナル。米国経済新聞だ。
日本語訳版は存在しないが、原文であれば安価な月額課金で常世島からも購読できる。
知ってる?と顔を向けたパリピは、しかしそこで言葉を失った。
隣にいた推定ゲーマーの顔を、いままで認識していなかった。この空間には、橘壱がふたりいた。
■橘壱 >
「そんな返しをされたのは初めてだな。
まぁ、島民と考えればそうなるな。」
それこそ、或いは教師。常世学園と言うが、その実一つの国に過ぎない。
ただ、少なくともこんな教師は余り見たことがない。
生徒も教師もごまんと数はいるんだ。知らない某がいても不思議ではない。
「聞かれたことについて答えただけだ。
興味があるのはいいが、ちゃんとやろうとすると値が張るぞ。」
「ゲームそのものより、機材にな。
今なら丁度おあつらえ向きに「WISEMAN Mk.III」とかか。」
それこそかつての時期に比べて、機器の値段は落ち着いた。
だが、ゲームを真面目にやろうとすると相変わらずそれなりの値段はする。
ゲームの敷居の高さは結局はこういった値段の高さの起因するのかもしれない。
よもや、半分以上は聞き流されたとは思わない少年。したり顔で眼鏡をくいっ。
しかし、今はコイツが有名プレイヤーか。知らない顔だな。
悪くない動きをしている。もし、復帰する機会があれば戦ってみたいものだ。
自然と口元は好戦的な笑みを浮かべていた。
「──────……。」
その表情も、モニターシーンが切り替われば随分と冷めきった。
覚えている。ああ、覚えている。何度目かの優勝のシーンだ。
表彰されている少年は、なんとつまらない顔しているんだろう。
それこそ"興味がない"と言った表現が一番適した。事実、興味はない。
ゲームプレイしているその瞬間。メタラグを操り、戦うその時以外は余りにも"無価値"なものだった。
「……こんな顔をしていたんだな、僕。」
ただ、過去の自分にそう言ってやる位には物の考えは少し変わった。
我ながら、なんて顔をしているんだ。思わず、失笑してしまった。
「正確には、コズミックエレトクロニクス社の連中見せつけてしまったんだ。
"アクシデント"で"偶然"乗り込んだ男が、正規パイロット以上の成果を出してしまった。」
「実力主義が根付いた米国だからこそ、ラッキーだったかもな。
……アンタ、そういうのに詳しいんだな。結構情報通?」
■パリピ > 「……コレだけでいいんだね……」
へえ、と感嘆の吐息。とともに、彼が示したガジェットの蔓をなぞった。
「音響デバイスには凝ってるんだけど、映像のほうはほぼデフォルトなんだよな。
WISEMAN用の内蔵マイクロ魔導チップは、いまだと取り寄せになるし――
外付けカードになるか。動画に強い型とかあったら教えてくれよ」
新商品のジレンマ。専用周辺機器は品薄になりがちで、入手製に難がある。
しかし、そういう時にも代替品が多く、ある程度の不便を鑑みなければいくらでも対応ができた。
それが機械工業製品の強さともいえる。
ゲームは普段やらない性質だと、立ち居振る舞いが語っている。
「ああ、ボクは―――」
『正直できすぎてる話だと思いますけどね』
応えようとしたその言葉を、厳然とした映像内の少年の声が遮った。
『たしかにプレイングには目を瞠るものはありますが……
正直、彼のパーソナリティ、非異能者であるという部分をクローズアップしすぎでは?
実力以上の評価がなされているという声も、僕の世代では珍しくありません』
マジかよこいつ、という顔をするキャスターをよそに、少年は饒舌に語りだす。
『彼が現役だったときから、僕は話題先行の政治を感じていましたけどね。だいいち――』
『――ではここで大阪スタジオにお渡しします!現地の石坂さん!よろしくおねがいしまーす!』
なおも語ろうとした若者を押しのけたキャスターの必死さにこたえて、映像が切り替わる。
ふたたび対戦模様になった画面から顔を外したまま、唇は笑みを消した。
「もう頂点はいいのか、チャンピオン?」
アサルトフレーム・パイロットとしてのキャリアにある彼に、何かの慰めがあるわけでもなく。
現在は、どのようにそれと向き合っているのかと。
■橘壱 >
「相当昔には専用のデバイスが必要だったが、今はそれが標準装備になってる。」
本体と中身と操作盤。
昔はどれもこれも外部でバラ売りしたり何だったり、遊ぶのに必要な物理的ハードルは多かった。
だが、人類は今も衰退せず文明を築き上げている。その文明も、文字通り変容した。
何時しか無駄はどんどん削ぎ落とされ、何もかもが内蔵されている。
機能の先鋭(コンパクト)化。自分としては嫌いな流れではない。
「動画、ね。VRやAR表現ならハイマックインダストリアル。
動画一本に極めたいなら一画堂とかは好きだな。」
ロシア発足のIC系バーチャル専門企業のハイマックインダストリアル。
日本の企業ながら、未だ描写技術の観点だけなら何処にも負けない一画堂。
企業の子飼いだからといって、自分の企業に忖度はしない。
いいものを勧めるなら、しっかりとした情報を伝えないとそれこそ販促にならない。
ふん、と鼻を鳴らせばトランクを揺らして腕を組んだ。
「一画堂のパーツはちょっと特殊だからな……汎用性の高いハイマックのが初心者向けだが……。」
そんな話の最中、随分なことを画面越しに言われた。
それは間違いなく、自分に向けて放たれたものだろう。
"政治"。知らない連中からしたらそうだろうし、面白くはなかったろう。
特に、相手を打ち倒し、実力で蹴落とすのが対戦ゲームだ。
今の時代を築く連中もそうだが、現役時代の奴らの"つまらなそうな顔"だって覚えている。
「────…久しぶりに、そう呼ばれたな。」
この常世学園においては、"最も意味のない称号だ"。
レンズの奥の瞳はじっとモニターに向けたまま、少年は微動だにしない。
「……アンタは、自分の実力が評価される事は嬉しいと思うか?」
何気なしに、問いかけた。
■パリピ > 「社会承認は普遍的な欲求だと思うケド」
すこし考え込むようにして、視線を虚空に向ける。
「評価されたらうれしい……というのは、ないかもな。
たいせつなのは、自分の能力で、どのような現実をもたらせたか、だ。
ボクは人前に立ち、感性やもっと原始的な部分に作用するコトをしている。
どれだけ震わせたか……それを示す実績には、達成感を得ている」
立てた人差し指が、虚空を撫でた。
「結果、賞賛を含む承認、そして過程――実感。
どれがもっとも自分のなかで大事な、パフォーマンスがアガる要素なのか。
キミにとっての実力とは、評価とはなんだ……?」
そこで、ふいに。
バンダナでまとめられた髪の毛先を揺らして、踵を返した。
「そこのコロンビアバーガー。ロングシュリンプサンドが好きでさ。奢ってよ。
もしこれからキミのためになるコトが起こっても、一切の貸し借りをなしにできるように」
■橘壱 >
その返答を聞いて、思わず肩を竦めた。
「……聞いといて悪いが、案外そういうモンかって感想だな。
いや、すまない。アンタの返答がつまらなかったとか、そういうわけじゃないんだ。」
「随分と狭い世界で生きてきたし、興味のあること以外は本当にわからなくてね。
他人が同じ価値観を持っているが、存外似たような感覚を持ってる奴もいるんだな、と。」
モニターから目をそらし、窓へと視線を向けた。
曇り無い青空。今日も何処までも広がる空だ。
「概ね同意。ただ、僕の場合少し違う。」
トランクを持たない手が、自然と空へと伸びた。
「──────"自由"。」
「何者にも縛られず、誰にも捉えられない。拒む全てを薙ぎ払う奔放さ。
この世界を自由に出来ることこそが僕が最も重視する実力。」
「……評価まぁ、そこに付随するもの。世間体を黙らせるもの位。
まぁ、要するに自分の楽しいことを続けられる強さかな。」
「そうなるためには、どんな努力も惜しまない。命も、何でもね。」
最も燃えるモノにのめり込み、駆け上がる。山には自分以外の大勢がいる。
それら全てを退けて、頂点に立てばそこにはもう誰もいない。
きっとそれが最も自由な存在だ。事実、メタリックラグナロクじゃ誰も文句は言えなかった。
その強さのためなら何だってする。気軽にいいはしたが、言葉は本気だ。
楽しさを追求するために必要な力。その王者の姿は、"理由なき強さの象徴"。
空を握り込むように力を込めて拳がそれを物語る。のだが……。
「──────…と、思っていたんだが、どうだろうな。」
はらりと広げた手を、戯けるように振ってみせた。
「僕は狭い世界でしか物を知らなくてね。最近、お節介な先輩に指摘されたばかりだ。」
「まぁ、別に奢るのは構わないけどな。名前も知らない奴に、飯は奢れないな。」
何処か挑発的に言ってのければ、一歩踏み込んでその顔を覗き込む。
炎のような瞳だが、火に焼かれることを今更怖がるタマでもない。
■パリピ > 覗き込まれたその瞳は。
ミラーシェードの奥の炎は、このうえなく真剣な色を帯びていた。
少年の言葉を受け止めて、まっすぐ肯定するわけでもなく、否定するわけでもない。
審査。
そこにいるものは、橘壱という人間を測り、評価する単位のひとつ。
社会という枠組みのなかで暮らす以上は避け得ぬ、他者に認識されることで成り立つ存在――その、他者のひとり。
「前提として」
静かに口を開いた。
「ボクとキミが似ている――という感覚を、まずは一旦振り払うべきだ。
自我の認識を他者との類似性で鈍らせるな。
キミはまず、キミ自身をもっと――もっと克明に理解しなければ、羽ばたくことすらできない。
でも、ボクと違う部分をみつけて自己を掘り下げたのは、イエスだ――とても、いい」
立てていた人差し指に並んで、中指。二本になった。ピースサイン。
「つづいて――努力という言葉を、絶対に口にするな。
日本人の悪い癖だ。その言葉は、呪いだ。
うまくいかなかった時の保険になってしまう。この平和な時代だからこそ……、ね」
女と男の半ばの声が、映画の一幕のように、そうして低くささやくと。
「名前……」
ご案内:「扶桑百貨店 フードコート」からパリピさんが去りました。
ご案内:「扶桑百貨店 フードコート」にAAAさんが現れました。
■AAA >
「AAA」
それは、いにしえの――古い、古いビデオゲーム。
オフラインのアーケード筐体において、アルファベット三文字だけで自己証明が行われていた時代に存在していたもの。
名無し。ボタンを連打し、さっさと席を立った者の名前。
「行こうぜ、チャンピオン。
明日のためにその壱は、まず御飯だ」
そうして、フードコートのカウンターへ。
■橘壱 >
その炎が魅力的に見えたのは、きっと真剣だったからかもしれない。
おためごかしではなく、此方を本気で見定めている。
別に他人にどう思われようと興味はないが、自分をどう見るのかは興味がある。
「……アンタも随分と説教臭い人間なんだな。
結構軽い人間に見えるんだが、この島の連中の流行りなのか?お節介。」
そんなつもりはなかったんだが、とは思うが此処までガチな返答が来るとは思わなかった。
茶化すように返しはしたものの、悪い気はしない。
通りすがりにさえ言われるくらい、視野は狭いものなのか。
齢17年のゲームチャンプの世界が余りにも狭い。やれやれ、と思いながら肩を竦めて苦笑い。
「質問の体で答えただけさ。この上で怠けた事は一度もない。
メタリックラグナロクでも、常世学園でもね。」
それこそ失敗なんて考えはしない。
何故なら、根底として"最後に勝てばそれらは全て努力の範疇"になるからだ。
要するにそれを言い訳にするような弱い人間ではない。
ゲーマー時代から、負けた時だって保険にすらしなかった。
少し気だるそうに首を回せば、彼女に合わせて頬を勧める。
「AAA?随分と旧時代的なんだな。
そんなハデな格好してるモンだから、結構流行好きなタイプだと思ったんだがね。」
「"今は"チャンピオンじゃない。
橘壱。好きに呼びなよ。」
■AAA >
「キミが風紀委員会にいながら、突出した個人になり得るなら、ボクにとっては価値がある。
アサルトフレームそのものは、ボク個人の興味をそそる要素ではなかったが。
キミが纏う鎧ではなく、鎧を纏うキミは別だ。キミが投資に値するかどうか……
これはお節介でも、親切でもない――謹厳実直にいこう」
裏表のない言葉が、彼の茶化しに静かに応じた。真面目に話している、と。
「付け替え不能なワンオフかどうか、キミは常に観られているぜ――壱くん?
実績はこれからを視るとして――キミのことが知りたい。
……先輩に恵まれていることだけは、よくわかったケドね?」
そう声音を柔らかくして。
「寓意だよ」
AAAに含まれた意味は、しかし、橘壱の価値にはなにひとつ関係のない話だった。
■AAA >
「――さて、と」
しっかりトーストされたバゲットに、マヨネーズと香辛料、香草で和えられた海老が大量にサンドされていた。
フレンチフライ、カップサラダ、そのほかサイドメニュー。
フルセットはドカ盛りだ。揚げ物多めのトレーを持って対面に座る。
さてキミは、明日のための糧になにを選んだか。
「公演が終わったから、しばらくは好きなモノが食べられるんだー!
このまえはカレーライスたべた。シーフードが好きなんだよ、とーっても。
――ンじゃあ壱、さっきの話の続きなんだケド」
サングラスを外し、コマンドを唱えるとカード型に収納される。それをケースにしまい込んだ。
あらわれたのは西洋の、整った――整いすぎている顔の造作。
親しみの覚えづらい顔。そして同時に湧き上がらせる奇妙な既視感。微弱な精神干渉。
「まず、キミには理想の自分のイメージがある……さっき話してくれたな。
煩わしい束縛を拒否する、ある種の社会的権威とボクは解釈した。
それを構築するものは――……なんだろう、武力?
ありていにいえば、この世でいちばんつよいヤツ――みたいな?」
語られた言葉に、しずかに切り込んだ。
これは、ある意味での。取材のようなものでもある。
「でも、キミは自分の無知を痛感した。
社会に属する人間としての経験の浅さ――……自分の現実を観たわけだな?」