学生街の中にある大きめの公園。「常世公園」と名付けられている。
普通の公園にありそうなものは基本的に存在する。遊具なども存在している。
遊具のほかに自動販売機、池などもあり、住民の憩いの場となっている。
参加者(0):ROM(1)
Time:08:13:51 更新
ご案内:「常世公園」から緋月さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から蒼空 奏さんが去りました。
■緋月 >
保健委員。その言葉を聞いて、笑顔を浮かべた顔の額に小さな汗。
「あ、ああ…保健委員ですか! 確かに、それは適任かもしれませんね!
うん、良い所属先だと、思います!」
焦るような口調。――新入生の少女は知る由もないだろうが、この少女、以前に保健室を通り越して
病院の方のお世話になった前科があるのだ。
保健委員の職場は医療施設群にも及ぶ。
以前のような大怪我をして病院に運ばれ、そこで顔を合わせたら、
(き、気まずすぎる……!)
下手に大怪我ができなくなった、と心中で覚悟を決める。
大怪我して担ぎ込まれて顔を合わせたら、大きく心配させてしまいかねない。
「あ、はい、自主鍛錬などで怪我をした時には、お世話になりますね!」
講義があるのだろう、手を振る少女にこちらも手を振り返し、学園に駆けていく後ろ姿を見送る。
その姿が見えなくなってから、肩の力を抜きながら大きく息を吐く。
「……病院にお世話にならないよう、気を付けないといけませんね…。
その為にも、鍛錬をしっかり重ねないと!」
ふんす、と気合を入れ、再び駆け足を始め、公園を後にする書生服姿の少女であった。
今度は、飛んでくる鳥などにも驚かないよう、心にゆとりを持ちながら。
■蒼空 奏 >
沢山の人との出会い。
その色々はきっと言葉通りに目の前の先輩の糧となったのだろう。
「あ、えっと……部活は所属していませんが、
委員会は保健委員に…。その、少しでも自分の力を役立てたくて」
決して厄介な能力なんかではない、と。自分自身に言い聞かせるためにも。
誰かの役にさえ立っていれば、それだけでこの居場所にいていいのだと思えるから。
そうして話していると、少し遠くから鳴るのは講義終了のチャイムの音。
休み時間を挟み、予鈴を経て次の授業時間となる、そんな合図だった。
「あっ…私もう行かないと……。
えっと…緋月、先輩。もし具合が悪くなったりしたら、保健室に来てくださいね」
…保健室に誘うというのも変な話だけれど。
少し慌ただしく、肩にかけたスクールバッグの位置を直しつつ踵を返した少女──振り返り、控えめに手を振って。
そして学園に向け、駆けてゆくのだった。
■緋月 >
「あはは、少しでも安心して貰えたなら、私としては幸いです。
私も…此処に来てから、沢山の、色んな人に、お世話になりましたから。」
少しでも、そんな事を後から来た人に同じように出来たなら良かったです、と、笑顔を浮かべる。
あまり深くは語らねども、書生服姿の少女もまた、色々あったような雰囲気であった。
「確かに、あの小鳥さんがいなかったらこうしてお話をする事もなかったですね。
恩人…恩人? ともかく、奏さんの心が少しでも軽くなったのなら、小鳥さんも嬉しいでしょう。」
小鳥に恩人、というのも妙かも知れないが、新入生の気持ちが軽くなったのなら、良い事である。
こういった出会いがあって、良い学園生活を送って貰えればいいのだが。
「――そういえば、奏さんは部活動や委員会には入りましたか?」
そんな事を軽く訊ねる。そういった活動に参加すれば、出会いの機会が増えるだろうか、と。
■蒼空 奏 >
異能を持った生徒の集まる学園。
当然、自分と同じような境遇の人も多いだろうことは、理解っていた。
そうでなくても、人と違う何かに考える必然に迫られることは、きっと。
「私もこの学園に来て、異能の力に困ってる人が多いことも知って…。
でもおかげで、私が此処じゃ特別じゃないんだ、って思えたりもしました」
不気味がられない場所があるだけでも、心は少しだけ楽になるものだった。
それは単なる気休めかもしれないけれど。
頼りない先輩だと苦笑する彼女に、少女は柔和に笑いかける。
「こう言っちゃうと、あんまり前向きじゃないんですけど」
「自分と同じ悩みを持ってる人がいるって、なんだかそれだけで安心しちゃって。
だから、お話できて良かったです。あの小鳥さんに感謝ですね」
孤独感の消失。意識を苛むそれが和らいだことは確かに意味があって…。
■緋月 >
「誰かに力を見せるのは、怖い…ですか。」
その言葉に、少しだけ神妙な雰囲気。
そう言った気持ちは、少しだが分かる気がする。
「……烏滸がましい、と言われるかも知れませんが、分かる気はします。
私も…まあ、色々あったんですが、生まれ故郷を出た時に、自分の持っていた力が「普通ではない」と
知ったので、誰かに見せたり、無暗に使う事をしないよう、気をつける事を覚えました。」
視線を自分の左腰に下ろす。其処には、袴の帯に差されて外套から顔を見せる、中身の入った刀袋。
袋に入っているとはいえ…その中身に思い至る事は、蒼い髪の少女にも難しくはない筈。
「そうですね…うーん、こういう時、何と言えばいいのか…中々、分からないものです。
頼りない先輩で申し訳ありません…。」
たはは、と苦笑しながら頬を指で軽くぽりぽりと。
■蒼空 奏 >
「あ…それでは緋月先輩、ですね」
言葉を交わして少し緊張が解れたのか、柔らかな笑みを浮かべてそう言葉を返す。
あまり自分から他人との距離を縮めようとするタイプではないのは自覚しているし、
こういった対応をしてくれる人は話しやすいなあ…と内心思ったりもしていて。
「そうですね。理解ってはいるんですけど──」
そう、まだ慣れきってはいない。
良い人達もいるし、理解を示してくれる人もいる。
けれど皆が皆そうであるとまでは思えない。
そうした人と出会った時に、どうしても過去を思い出してしまうから。
「なかなか、自分の力を誰かに見せるのはまだ怖くて。
今みたいな時は…つい、使っちゃうんですけど……」
眼の前で痛みを抱えている人がいたら、つい助けたいと思ってしまう。
それが良いことか、悪いことか、よく考えもしないまま。ある意味では衝動的に。
そういった行動が本来はもっと慎重にすべきだとわかっているのに。
そんな葛藤の色が少しだけ見える、そんな苦笑を浮かべて。
■緋月 >
驚いた表情、そこからの、安堵の色の強い表情。
何となくだが予想が付く。「普通ではない力」を持っていると、本人が望んでいなくても、普通ではない生活を
歩まねばならなくなってしまうものだ。
他でもない自分が、かつて旅に出る前にそうだったように。
「今学期から…ああ、新しく転入してきた方ですか!」
編入、という言葉に、思わず懐かしむような表情になる。
「私も、去年の同じ位…いや、もう少し前でしたね。
その位の時期に、此処に編入で入学したんです。
実質、通学を始めたのは夏の休みが終わってからですから、似たようなものですが。」
一年とはいえ、先輩は先輩。以前に自分がお世話になったように、今度は自分の番が来たのだろう。
「最初は戸惑うかも知れませんけど、学園の人達は良い方たちですよ。
困った事があれば、気軽に訊ねたり、相談したりするといいです。」
緊張させないように、気軽にそう告げる。
■蒼空 奏 >
似た能力。
そう聞くと空色の瞳を丸して、驚いたような表情を見せる。
そしてその表情は、すぐに安堵したような、ほっとしたような。
そんな顔へと変わるのだ。
そう、自分の力は珍しい、特別なものではないということに。
「い、いえ…お礼を言われる程のことじゃ…」
気にしないようには言われたけれど、元を正せば…ではあることだし。
ついつい、少し口籠ってしまう。
「あ…学園の生徒さんでしたか…。
私は青空奏といいます。今学期からの編入で…」
名乗りを返しながら、ぺこりと頭を下げた。
さらりと空の色を映したような髪が流れ落ちる。
■緋月 >
「――あ、もしかして、不躾な事を訊いてしまいましたか!? だとしたら申し訳ありません…!
その…今は遠い所にいる、友達が…仕組みは多分、違いますけど、似た能力を使う子でしたので。」
随分と前の事に思える。そういえば、彼女も蒼い髪をしていたっけ。
そんな、遠い日の思い出を我知らず思い出しながら。
「いえ、そのような事など…助かりました。
私では、傷の治りの速度をある程度早めたり、痛みを和らげたりする位が精々ですので。」
ありがとうございます、と頭を下げた拍子に、白に近いライトグレーのポニーテールが尻尾のように揺れる。
改めて向き合うと――背は自分より、少し高い位。
だが、顔立ちはもう少し幼い雰囲気に思える。
年下だろうか、と思いつつ。
「治療の方、ありがとうございます、ええと……
あ、失礼しました。私、緋月と申します。常世学園の学生です。」
名前を訊ねようとして、名乗ってないのを思い出した。
先に名乗るのが筋、というものだろう。
■蒼空 奏 >
「………」
良かった。不気味であるとか、そんな視線は向けられていない。
近しい人や家族からも不思議がられたり、不気味がられた過去から少し、今でも不安になってしまう。
「そ、そんな感じ…みたいです」
自分の力の本質や詳しいことは、自分自身でもまだ全てを理解しているわけではないけれど。
少なくとも嫌がられていないのなら、それだけで。
ゆっくりと立ち上がって。
年の頃は同じか、少し上…くらいだろうか。
そんな少女と向き合って。
「余計なお世話だったらごめんあさい。
でも、私の所為でもあったから……」
■緋月 >
「え、あの…?」
突然、足元に屈み込まれれば、流石に困惑を隠せない書生服姿の少女。
しかし直後、蒼い髪の少女の手から放たれる翠の光、そしてそれが痛めた足をブーツ越しに包むと同時に、
重くはないものの、足が上げていた痛みは…まるで掻き消したかのようになくなってしまう。
(これ、は――――)
思わず、呆然としてしまう。
奇異なものに遭遇したから、ではない。むしろその逆。
「……もしや、治癒の力、ですか?」
恐らく仕組みは異なるだろうが、似たものを受けた事が、ある。
だからだろうか、自然にその言葉が口から出て来た。
奇異なものを見るでも、恐れるでもない、純然たる疑問。
■蒼空 奏 >
「で、でも……」
お気になさらず、と言われても。
バランスを崩した様子から足を痛めたのだろうということは理解る。
「無理はしないで、ええと……」
彼女の足元へと屈み込む。
──どうしよう、と少しだけ思案する。でもその時間は僅かで。
「あの、大丈夫です。動かないで……」
痛めただろう患部へとそっと両手で触れる。
──小鳥を癒したのと同じ、淡い翠の光が暖かく包み…瞬く間にその痛みは嘘だったかに消え失せる。
本当は、人にこの力を使うのことには抵抗があったけれど。
この島、この学園には自分と同じような特別な人は沢山いるから。
まだこの感覚には慣れていないけれど、すぐに思い直すことが出来た。
「……ど、どうですか…?」
恐る恐る、見上げながら問いかける。
……治ったかどうか、ではなく、気味悪がられたりしないだろうか…という不安の色に空色の瞳が揺らいでいた。
■緋月 >
「え…あ、ああ、いえ、お気になさらず。」
横合いからかかった声。それが自分に向けられてのものだと気付くのに、少し時間がかかった。
視線を向ければ、蒼い髪の少女が駆け寄って来るのが見える。
声を返しながら、そちらに向き直り、
「あの高さなら、ぶつかる事もなかったのですし、私の不注意もありましたから。
気に病まれる事はありません――痛っ。」
そう返しはしたが、流石に軽くとは言え痛めた足が少し響く。
これは少し集中して調息を行わないといけないか、と考えたり。