2024/06/06 のログ
ご案内:「常世公園」に夜合 音夢さんが現れました。
■夜合 音夢 >
ある休日の昼下がり。
少女は前回の反省を活かし、人通りの多そうなベンチ付近を避け、芝生の敷かれたエリアにやってきた。
そこは日当たりも良く、野良猫たちにとって絶好のお昼寝スポットとなっている。
「…………」
一見すると手ぶらに見える少女だが、野良猫の姿を認めると、コートの両袖からシャキン! と猫じゃらしが飛び出した。
それを野良猫に向けて左右にふりふり……すると、猫も乗ってきて姿勢を低くする。
てしっ!
素早く繰り出された猫パンチを紙一重でかわし、煽るようにすぐ傍でふりふり。
てしてしっ!
負けじと連続パンチが綿毛を掠め、少女と猫は互いに「なかなかやるな……」的な雰囲気を醸し出した。
ご案内:「常世公園」に先生 手紙さんが現れました。
■先生 手紙 >
ホットドッグのいいところ。食べながら歩いてても違和感がないタイプの食べ物であること。
というわけでお行儀悪くもぐもぐしながら公園の空きスペースを探していたところ――
(なんかネコ相手に「なかなかやるな……」的な雰囲気を醸し出してる子がおる……)
■夜合 音夢 >
「これならどう?」
両手の猫じゃらしを巧みに操り、左右から翻弄しようとする。
しかし相手も歴戦の猫。迫る猫じゃらしを前足と口で同時に抑えつけた。
流石に無理な体勢で長くは続かない拘束だったが、捉えられたのもまた事実。
「まさか、ついて来られるなんて……うん?」
次の一手を考えようとしたところで、ふと視線を感じて振り返る。
―――ホットドッグを食べ歩く男性と、白熱する猫と少女の目が合った。
■先生 手紙 >
「――――」
ごくん。一人と一匹の視線が自分に向く。男はそっと手を上げ……
もしゃり。残りのホットドッグを自分の口に突っ込んだ。
そして空けた手を下に示す――どうぞ、続けてくださいの意を込めて。
白熱してるっぽいのでここは水を差すべきではないのだろ、とセンジョーは思ったンだ。
■夜合 音夢 >
「…………」
こくり。
小さく頷いて、再び野良猫と対峙する。
……しかし、猫の方は飽きたのか、今のやり取りの間に歩き出してしまった。
両手に猫じゃらしを持ったまま立ち尽くす少女。
「……この勝負、預けた」
やがて静かに目を伏せ、去り行く猫の背中にそう告げて。
顔を上げると今度はこちらを見ていた男性の方へと向き直る。
「ん、終わった」
よほど緊迫した戦い(?)だったのだろう。
額に汗を滲ませる姿には、スポーツ選手のような謎の爽やかさがあった。
■先生 手紙 >
もぐもぐもぐ。ごくん。
食べ終わった頃、少女と猫の世紀の対決(?)は一旦の幕引きとなったようだ。
手提げのビニール袋から水の入ったペットボトルを取り出し、飲む。
「あ、終わったンだ? なンか勝負に茶々入れちゃったみたいでバツが悪ィな……」
見れば額に汗。袋をごそごそする。
「……ナイスファイト。入れた茶々だけど飲む?」
と、やっぱりペットボトルの緑茶を取り出して、見せます。
■夜合 音夢 >
「猫は気まぐれなものだから。気にしないで」
警戒心の強い猫なら気配がした時点で逃げ去っていた。
あの余裕は人慣れしている証左であり、人の都合に左右されたわけではないという表明なのである。
もっとも、猫自身はそこまで深く考えていないかもしれないが……
「いいの? ちょうど喉が渇いてたから、助かる」
それはそれとして厚意には甘えるつもりらしい。
■先生 手紙 >
「そっか。猫のことはさっぱりだからひとつ賢くなったよ」
軽く肩を揺らして笑う。尤も、男は男で普段から猫に興味を持っているわけでもない。無関心だったからこそ、この一戦を見られたのだろう、とも思っていた。
「……ン。どーぞ」
適当な距離まで近づいておっ茶ボトルを差し出す。
「学園の子?おれはそうなンだけど。三年のセンジョーね」
■夜合 音夢 >
「私も、次までにもっと技を磨いておかないと……」
こちらはこちらで妙な方向に関心を向けている。
振るう相手を失った猫じゃらしはコートの中へ引っ込んでいった。
「ん……ありがと。
私は夜合 音夢。同じく3年生」
同学年にしては年齢差を感じる相手を見上げながら、そう答えた。
■先生 手紙 >
――やっぱ猫と戯れるのって難しいンすね。そんな所感。
「お、同学ねーん。今回の中間テスト範囲広くねえ? まァ留年の理由は単位じゃねえンですが!」
わはは。
などと言いつつ芝生の上に座る。ついでに靴も脱ぐ。靴下も。
生の芝生の感触ってイイのでね。
■夜合 音夢 >
「今回のテストはなかなかの強敵……」
少女もあまり勉強が得意な方ではない。
唸るような声を漏らしながら、座る様子を見下ろして。
「……留年してるんだ」
緑茶のボトルを開け、立ったまま口をつけた。
■先生 手紙 >
「一般現代史と数学が個人的に鬼門スね」
文・理どっちも得意といえるほどでもないのがミソである。
「ン。隠してるわけじゃねえし知ってる連中は知ってっからねー。煙草もお酒も飲めるンだ。合法的に」
水を飲んで蓋をする。そしたら今度は手持ち無沙汰に足遊び。芝生を脚の指でにぎにぎしている。
「ねー夜合サン。ひとつ甘えていーい?」
■夜合 音夢 >
「……タバコもお酒も飲める歳なんだ」
つまりは成人しているということで、少女の中では大人に分類される。
目を細め、声音がやや低くなったのを感じるだろう。
芝生に寝転んだ姿勢では、はっきりとは確認できないかもしれないけれど。
「何?」
とはいえ、相手は同学年。
邪険に扱うようなことはせず、ひとまず話を聞くつもりのようだ。
■先生 手紙 >
「そ。つっても同部屋の連中はちびっ子と一年坊とかだからその辺誘えないけどね。もちろん君も」
脚を伸ばして、組んだ手も伸ばす。猫に興味がない男だが。動きはいっそ、猫寄りかもしれない。
「……ン、ン。断ってもいーよ。話続けてくれるンなら、ついでに座ってくれると嬉しいンだ」
見上げて話すの首痛いンだよね、と。何でもないことのように笑うのでした。
■夜合 音夢 >
「そこは弁えてるんだね」
ちょっぴり感心。
少なくとも、周りなどお構いなしにそれらを楽しむ大人とは違うらしい。
「断るかどうかは……内容による」
ペットボトル片手に芝生へ腰を下ろす。
まだ少し距離を感じるものの、話を聞く姿勢に変わりはないのだろう。
■先生 手紙 >
「? そりゃ弁えるでしょ。――って感じでもねェか。そうだね。おれは弁えてるよ」
今に始まったわけではない『印象』の悪さは、分母に対して分子が大く在るからだ。甘んじてろくでなしのレッテルは貼られておく。
「……ン。今のがおねがい。ありがとね、座ってくれてさ」
ししし、と笑った。
■夜合 音夢 >
「ん……動物のいる近くで吸ったりとか、ポイ捨てする人もいるから。
あなたがそういう人じゃないなら、失礼な言い方だった。ごめん」
大人に対する不信は、そう簡単に拭えるものではないけれど。
決めつけるような物言いをしてしまったことに対しては素直に謝意を示して。
それから、お願いの内容に細めていた目を丸くした。
「お願いされるような事でも、お礼を言われるような事でもないと思うけど……」
きょとんとした顔で、毒気の抜かれたように小さく息を吐く。
■先生 手紙 >
「ふは。ヤンキー子猫に優しい案件だ。酒飲んで大声出す奴も、ポイ捨てする喫煙者も夜合サンの思った通り、多いし駄目な連中だよ。嫌ったままでいい」
脚でちょっと抜いた芝生を手で払い。
「……そ?結構なコトだと思うけど。どっちにとってかは知らンけど。三年同士なだけで、はじめましての、おそらく君が良く思っちゃいないであろう年上のヤローと、『座ってお喋りしましょって』いうのに応えてくれるのは」
蓋を開けて水を飲む。自分にとってはこの水と同じことくらい簡単に飲み下せることが、この少女にとってはそうでない可能性だって、十二分にあったのだ。そんなことを、思っている。