2024/06/12 のログ
ご案内:「常世公園」にアージェント・ルーフさんが現れました。
アージェント・ルーフ > 「ふあぁっ……」

快晴…とは言わないまでも、視界の範囲では雲が2,3個のみしか見当たらないため、梅雨にしては良く晴れた方だと言えるだろう。
少しだけ傾き始めている太陽の下の公園で、ベンチに腰掛け伸びをする。

何故ここに来たのか、というのは忘れた。いや、忘れたというよりもどうでもいいから覚えてない、と言った方が正しいだろうか。
大方、いい天気だったから気分がてら散歩に行き、気分がてら公園に休憩しに来たのだろう。ボクのことだから大体そうだ。

アージェント・ルーフ > 頬に当たる風の気持ち良さに目を細めつつ、カバンに手を伸ばし、黒色の甘味―板チョコを取り出す。それも最近見つけた、お気に入りのメーカーの物を。

包装紙が風に飛ばされてしまわないよう、丁寧にかつ器用に、銀紙も含めて手早く剥がす。

そして、角から一口齧り付く。

「んふ~、美味しひっ」

いけない、小声とは言えつい声が漏れ出てしまう。でも甘味に勝るものなし。正直に負けを認めようではないか。
目をより一層とろけさせつつも、もう一口チョコを口に頬張る。

アージェント・ルーフ > ふと、子供の声が耳に入る。「○○ちゃん待って~」だとか「あれ買って~」だとか。
子供と言えばと、ふと昔の自分を思い出す。がしかし、目の前に映るような暖かい情景を思い出すことは出来ない。

何時からだったろうか、幼い自分にかの技を教え始めたかと思えば忽然と消えてしまった師を追いかけ始めたのは。
何時からだったろうか、この学園に入ろうと決意したのは。
何時からだったろうか、『学生』という身分、暮らし方に慣れてしまったのは。

そこまで考えて、辞めた。理由は一つ、『楽しくない』から。
何時だってこんな考え方をしているから、友達からはうっかりさんやらなんやら言われるんだろうなぁと考えつつ、いやこんな考えも既にどっかへ消えてしまったのだが、とにかくチョコレートを口に放り込む。

思えば、今手に持ち、咀嚼しているこのチョコレートとやらもそんな考え方を加速させる要因の一つなのだろう。いやまぁ、仕方ないと言えば仕方ない。だって美味しいんだもの。うん。

アージェント・ルーフ > 「んぅ~…!?痛ったぁ~……」

考えを巡らせるうちに、もう一口チョコレートを口に入れようとした瞬間、カチンと歯が空を切る音と共に、口の中に異物が入った感覚がする。そしてそれに続く、左手親指に感じる疼痛。いつの間にかチョコレートは無くなっており、その代わりに自らの親指を口にしていたようだ。

頭に過ぎる他事に気を取られ、誰か人がいれば笑われるような事を犯してしまい、ほんの少し赤面する。と同時に、頭の中の小さい自分が「ボクったら、そんなんだから人からうっかりさんと呼ばれるんだぞっ」と右手でぽんっと自分の頭をたたきながら、舌を出しウインクをしてくる。自分の想像とは言え、何をしているんだろうかこいつは…。

そして、自分を楽しませてくれるモノが全て自らの口に入ってしまい退屈になったため、再び腕を後ろで組み目を閉じる。味覚が休んでいるせいか、他の感覚がより研ぎ澄まされ、子供の喧騒や頬に当たる風がより鮮明に聞こえる気がする。

アージェント・ルーフ > 「っと……あれっ?」

暇だなと思い、パーカーの右ポケットに常備してあるポーカートランプを取り出し、手持ち無沙汰のカード弄りでもしようとし、手を伸ばす、がしかし、そんなものは無いと言わんばかりに右手がポケットの布の感触を伝えてくる。

「あれっ?あれぇっ??」

ちょっと慌てつつ、左手も総動員し、パーカーの左ポケット及び、デニムの全ポケット、カバンの中を探し回る。

と、そこで気づく。そういえば昨日どこかでマジックを披露していた際に、カードにサインをしてもらったり、折り畳んだり、果てには切ってしまい、おおよそ普通には扱えないほどの加工をしてしまったのである。普段から万全のカードを持ち歩くのが当たり前であり、演技を終えてしまったカードは外には持ち運ばないのが殆どであるため、今回も例に漏れず自室に置いてきてしまったのだろう。

そして、そのことを忘れてうっかり外に出てきたしまった、と。

「うわぁ~、参ったなぁ…」

マジックを披露しに来た訳ではないのは幸いではあるが、如何せん、いつも持ち歩いているモノが無いのは心許ない。

アージェント・ルーフ > ともすれば、これからの行動は一択。

「…買いに行くかぁ」

探し回ったせいで少し乱れた服を正し、もう一回伸びをしてベンチからゆっくりと立ち上がる。
仕事道具が一組使い物にならなくなっているし、買い換える機会としては外に居る今が相応しい。

もしかしたら新しい柄のカードが売られているかもしれないなぁ、と出掛ける先のほんの少しの楽しみを見出しつつ、公園を後にする。


あっ、チョコレートも買い足さなきゃだね。

ご案内:「常世公園」からアージェント・ルーフさんが去りました。