2024/06/20 のログ
ご案内:「常世公園」に先生 手紙さんが現れました。
先生 手紙 >  
公園の広場の外周に、背中合わせになっている一対のベンチがあった。

そこに座っているのは一人の男。紙袋を隣に置き、新聞を広げている。

仮に。そう、仮にだが。


――その場にもう一人が、背中合わせで座ったら。何か……こう、スパイ的な、その、秘密会話ごっこが成立しそうな具合であった。

男の名前は先生手紙。公式年齢21歳。もしそんなことが実際に起こったら即対応して退けるほどの場慣れと、見ず知らずの他人と通じることのない脳内会話を発生させかねないお茶目心を内に同居させるちゃらんぽらんだった。

先生 手紙 >  
ぺらり、と新聞を捲る。

(しまったな……)

内側で反省する。新聞は普通に出回ってる今日の夕刊をコンビニで買ったものだ。

(……英字新聞にすればもっとそれっぽくなったンだが。)

まァそうなると映えは良くなるが内容よくわかんねえので本末転倒なワケだが。紙袋からホットコーヒーと、ドーナツを取り出す。

ばさり、と畳まれて横に置かれた新聞紙が渇いた音を立てた。

先生 手紙 > ――ぽつり、と。

独り言を零さない男の代わりに、灰色の空から一粒。

ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ……

ため息。寝かせてあった傘を差す。

小降り出した雨。にわかに駆けていく人々を遠巻きに見守りながらコーヒーを啜る……

先生 手紙 >  
…………どれだけそうしていただろうか。食事の残骸を紙袋にまとめて入れ、くしゃりと握り潰す。

折った新聞を脇に抱え、立ち上がった。


どうしてか。雑踏に混ざるまでソレからは人間味が――そういう仕組みを与えられた人形のように――感じられず。


「――――、」

先生 手紙 >  
 
雨が弱まる。ちらりと傘から覗かせた瞳は空を、


つい、探してしまうのだった。

ご案内:「常世公園」から先生 手紙さんが去りました。