2024/07/01 のログ
Dr.イーリス > イーリスの仲間は来ない。しいて言えば、例え来たとしても遠目で応援しているだけで戦闘には参加しない。
奏詩さんに問いに、首を横に振る。

「その段階は既に終えております。スラムで多くの感染者を治した薬品ですからね」

しいて言えば、イーリスは商売が絶望的に下手な事に由来する。
イーリスは必要とあらば自分の技術を善意で惜しみなく無償で提供する事が当然と思っており、自分の技術で稼ぐという知恵が全くない。
そして交渉もあまりうまくないから、力ずくとか言ってしまう。
イーリスが口にした、感染者が広まるのは落第街にとってもこの島にとってもよくない、この言葉がイーリスの本音であり全てだった。
奏詩さんは治療を受けてくれるようで、安堵の息を漏らす。

「ご理解ありがとうございます。それでは、注射致しますね。少しちくりとしますが、我慢してください」

黒いアンドロイドの傍らを通り抜け、奏詩さんに歩み寄る。
再び奏詩さんの隣に座り、アルコール綿で彼の肩を拭くと、注射針を彼の肩に刺した。ちくりとするがあまり痛みは感じないだろう。
ゆっくりと薬を注いでいく。
その後、注射針を抜き、アルコール綿を当てて止血した。

「終わりました。これで薬液が体内を巡り感染の元がなくなって、あなたは感染者ではなくなります。一件落着」

そう口にして、ほんのりと微笑んだ。
イーリスの治療を受けた奏詩さんは、不完全感染者ではなくなった。健康な人に戻ったのだ。

照月奏詩 >  
「猶更理解が難しいな、あっちの組織の場合、損得で動く物じゃないのか?」

 と言いながらもそんな事例のある組織を頭の中で洗い出す。たどり着いたのはひとつの答え。
 常世フェイルド・スチューデント、ストリートチルドレンの集団だったはずだ。なるほど、それならば理解できる。
 ある意味で自分達の同僚。弱者の味方と言える存在達だ。
 もし質問の答え等が納得いかないのなら針の位置に防御を張って防ぐことも考えたが、必要ないと判断。そのまま針を受け入れる。

「……ん、だいぶ楽になった。悪かったな疑って。どうしても疑っちまうんだよビビりだからさ」

 なんて言って相手の笑顔に答えるように。
 そして懐を探って。

「で、ほんのお礼。無理にとは言わないけど、できりゃあっちの子もたすけてやってくれや。そっちとしてもマークされるのは嫌だろうしさ」

 そして彼女に手渡すのはいくらかの金銭。本来は治療用に分けておいたお金だが必要なくなった。
 同時に、今トイレで行われているような小さなカツアゲなど必要のない程度の金額ではある。
 そして立ち上がる

「一応見て見ぬふりも出来ないし、でも助けてもらった以上あんたらの邪魔も出来ない。そういうわけでのお願いって事で」

 体を伸ばして。

「それじゃ、俺はそろそろ行くな。ホントに助かった。今度機会があったらもう少しゆっくり話そうぜ。なんかけっこうバチっちまったからさ」

 なんていって笑って去って行く事だろう。

Dr.イーリス > 「別にあちらの組織でも義理人情で動いてもいいではありませんか。損得でも動く時があるから、公衆トイレの荒事が起きてしまうわけですが」

生きていくために損得で悪い事をする事もある、それは間違いない。だがそれだけではないのが《常世フェイルド・スチューデント》というストリートチルドレンの不良集団。

「よかったです。いえ、その点はお気になさらないでください。不良の身なので、疑いの目を向けるのも自然と言えば自然です。何なら、善良な生徒からの報復もない事はありません」

お金を差し出されると、イーリスは目を輝かせ、明らかに上機嫌な笑みになり受け取る。

「こんなにもお金をわけていただけるなんて……。ありがとうございます。はい、今すぐ、謹んでやめさせます」

スマホを取り出して。

「私です。今すぐ暴行をやめて、お金も全て返した上で、土下座してください。今すぐです。どうして? 優しい人にお金いただきました。その優しい人が、その子を助けてほしいとお願いしているのです。私達は腐っても不良、お金をいただいたご恩、それに対する誠意を示してください」

通話を終える。
イーリスの連絡を聞けば、不良達は既に奪ったお金も被害者の子に返して土下座。被害者の子は困惑しつつ、公衆トイレの裏からダッシュで逃げていったという。

「はい。それではまた、どこかでお会いしましょう。そうですね、今度はゆったりお話できればいいですね」

ゆったり微笑みながら、奏詩さんに手を振って見送るのだった。

ご案内:「常世公園」から照月奏詩さんが去りました。
ご案内:「常世公園」からDr.イーリスさんが去りました。