2024/07/09 のログ
栖鳳院 飛鳥 > 「あら、それはご親切に、有難う存じますわ」

そう言って、また一礼。
自分はある程度慣れているし、音と宝石魔術があればそこまで問題はない……が、それは自分だからわかる事。
客観的に見れば、盲目の人間が夜に一人で出歩いている、と言うのは危険極まりない行為だ。
ぶっきらぼうだが気遣いの籠った言葉に、感謝を示す。

「ええ、私は目が見えておりません。ああ、どうかお気になさらず。確認事項として大切であるのは、重々承知ですわ」

改めて、自分は『気を遣わせてしまう』存在だと再認識する。
それ自体は仕方のないことではあるが、申し訳なさもどうしても湧き出てくるものだ。

「申し遅れました。私、栖鳳院飛鳥(せいほういんあすか)と申します。どうぞお見知り置きを」

それはそれとして、挨拶を。
気を遣ってくれた人であるし余計に、礼を失することはしたくなかった。

武知 一実 >  
「別に礼を言われる様な事じゃねえさ。
 とやかく言ってるオレだってこうして一人でぶらついてたんだから。
 ま、用心するに越したこた無いって事だけ頭に入れといてくれよ」

まあこんな島で生活してるのだから盲目を補う何かがあるんだろう。
それでも用心はしとくに越したことは無い。
用心を重ねに重ねた上で、明後日の方向から予期せぬもんが飛んでくる事があるのもままある事だ。

「あ、いや。もうちょっと聞き方とかあるだろ、と自分でも思ったんでつい……
 何だか礼儀正しそうな雰囲気だったんで、あんまり不躾な事聞き方すっと悪いかと思ってよ」

言うまでも無くオレの方は育った環境がお世辞にも良いとは言えないし。
こないだもノンデリの誹りを受けたし……まあそれは今は関係ねえ事。

「こりゃご丁寧にどうも。一年の武知一実(たけちかずみ)だ」

向こうが名乗れば釣られて名乗り返す。
こっちから話し掛けたんだからこっちから名乗れば良かったな、と反省しつつ。

栖鳳院 飛鳥 > 「ええ、肝に銘じておきますわ。有難う存じます」

実際、自分は『奇妙な声』の噂を確かめるために来たのだ。
何があるかわからない、用心に越したことはない。まさに言う通り、と言うものだった。

「ふふ、どうかお気になさらず。確かに箱入りで育った身ではありますが、色々な方がおられるというのは心得ておりますし、回りくどさのない率直な言い方と言うのはある種心地よいものですわ」

盲目と言う事になっているため、あまり社交界に顔を出す機会は多くなかったものの……それでも、そこに渦巻く極めて『回りくどい』言葉や、嘘、脚色などなどには辟易したものだ。
寧ろ、隠すのが下手な人の感情は、身体が発する音から察せられてしまうため、余計うんざりさせられた。
それに比べて、飾らず取り繕わず、真っすぐに飛んでくる言葉のなんと心地よい事か。

「武知さん、ですわね。宜しくお願い致しますわ。
……ところで、このところ物騒なことが多かった、と仰っておられましたが、どのようなことがあったのでしょうか?」

占星術部の本来の活動目的は怪異の討伐だ。
そのための情報は部内でも色々仕入れてあるが、そこから漏れている情報があるかもしれない、と思い聞いてみることにした。

武知 一実 >  
「だから礼を言われる……まあいいか。
 
 ……ふぅん、そういうもんか。
 オレもある意味じゃ『箱入り』みたいなもんだったし、分らなくもないっちゃないが。苦労したんだな、アンタも」

同じ括りに入れるのも烏滸がましい気はするが、人それぞれ苦労があるという事でスルーして貰いたい。
さっきから向こうの立ち居振る舞いから漂う品の良さがやっぱり育った環境故かと納得しつつ。

「……あー、かずみんでいい。もしくは一実で。
 どの様な事って……最近だと捕まった機械魔人だかってやつと、
 捕まってないのだと落d……歓楽街の奥の方に出張る変な連中のこととか。」

別に特別な伝手がある訳でも無いから他の所為とも知ってる様な事件くらいしか知らねえが。
それでも今挙げた中でも前者は模倣犯や影響受けた奴が出て来ないとも限らんし、
後者はそいつらの所為で落第街を追われた連中がどこに出て来るか分らん。
どちらもまあ人災だけど、そういう時は得てして善くないモンまで付いてきたりするよな。

「デカいのだとこの二つだけど、デカい事件とかの後って色々と続いたりするからなァ」

このところの気候も相俟って、人の精神が不安定になる条件が揃ってるから、芋づる式に何が起きても不思議じゃねえ、と思う。

栖鳳院 飛鳥 > 「申し訳御座いません、どうにも癖づいてしまっておりまして」

感謝した際、それを口に出すようにと言うのは結構厳しく躾けられたことだ。
しかし、どんなものも時と場合による。礼儀と言えど、状況に合わせて使い分けねばならないと改めて思い直して。

「それでは、一実さん、と。一実さんも、苦労なされたようですね……」

おそらくは『箱入り』と言っても、恵まれた方ではないだろう。
様々可能性は思い起こされるが、深く考えるのはやめておいた。詮索するようで失礼だ。

「機械魔人に、歓楽街奥の変な方々、ですか……ふむ」

一応、両方聞いたことのある話ではある。人災であるため、直接的には怪異が絡んでいるわけではなさそうだ。
しかし。

「(発端に怪異が絡んでいたり、そういった出来事にまつわる負の想念に引き寄せられたりと、そういった可能性はありますわね……)」

それに、ちょうど言及されたように、こう言った事件は後が続いてしまうことはままある。
模倣や便乗……そして、それらに乗る怪異。
その点については改めて、部内で共有と確認をした方がいいかもしれない、などと考えつつ。

「やはり、事件がいくつも発生している、と言うのは恐ろしいものですわね。
それこそ、おちおちお散歩も出来ませんの」

そう言って、物憂げに溜息を吐く。

武知 一実 >  
「ああいや、癖ならしゃーねえさ。
 オレの方こそ細かい事いちいち気にして悪かった」

普段良かれと思ってやることが結果的に風紀に説教される、に行き着くから感謝され慣れしてない。
自分でも気付かない内にヒネて来てたんだろうか……気を付けよっと。

「まあ、オレの方は大したことじゃねえさ」

別に不幸話をしたいわけでもないし、オレの経歴程度の不幸、そこらにごろごろあるだろうし。
相手にだってオレの想像もつかない様な苦労とかもあったろうし。

「少なくともこの辺で影響がありそうなのったらそれくらいか。
 ……後はまあ正規のニュースじゃ取り扱わない様な、眉唾ゴシップ系なら、生徒主体の――ポッドキャストとかで知れるんじゃねえか?」

動画サイト、と言おうとして相手が盲目であることに考えが至る。
まあ音声だけでも内容が分らんでもないが、字幕を要する人工音声動画とか少なくないし、それなら最初から音声のみの方が良いだろう。

「まあ、昔っから物騒には事欠かない島だったみてえだしな。
 自分(テメェ)から首突っ込もうとしない限りは用心しとくで事足りるだろうよ。
 矛盾するようだけど、あんまし不安がっても良くねえしな……お、そうだ」

物憂げな様子の相手――栖鳳院飛鳥、だっけ――の様子を見て、ふと思い立ちスーパーの袋をガサゴソ漁る。
えーと、どこに入れたっけ……。あ、あった。

「七夕は過ぎたけど、今日は空にゃだいぶ星も出てんだ。
 でもアンタ見えねえよな? 勿体ねえから、気分だけでも味わっとけよ、手ぇ出しな」

そう告げて栖鳳……飛鳥が手を出したならば、その上にさっきスーパーで買った金平糖の袋を載せよう。
何種類か味の違う奴が混在してる奴。七夕フェアの在庫処理で安売りしてたのだけど。

栖鳳院 飛鳥 > 「いえいえ、こちらこそ。
と、このままいけば謝り合いになってしまいそうですわね」

ころころと鈴を転がすように笑ってから。

「そんな、大したことではないなどと仰らないでくださいな。
人にはそれぞれ抱えて来たもの、背負ってきたものが御座いますし、それに軽重なんて御座いませんの。
それを誰よりも認めてあげられるのは、自分自身なのですから」

例え謙遜や遠慮の類であっても、言い続けていてはそれが癖になる。
本当に大したことがないのだとしても、それだってその人を構成した一部分だ。
自分自身くらいは、それを大事に扱っても良いのではないか。そう考えていた。

「そうですわね、元々あまり向かわないところですが、歓楽街には近寄らない方がよさそうですわ。
ああ、ポッドキャスト。なるほど、確かにそれが御座いましたわね」

そう言われれば、と得心する。
そう言ったものにあまり触れてこなかったため思い至らなかったが、それこそ噂レベルのものを元に活動を行うことも多い占星術部においては、貴重な情報源になりそうだ。

「確かに、色々物騒な話が絶えないところですわね、この島は。
用心だけはしておくに越したことは御座いませんわ……と、手、でしょうか?」

言いつつ杖を持っていない左手を差し出す。
そこに袋が乗せられれば、指で触ってみたりなどをしつつ。

「何か入っている袋、でしょうか……これは?」

武知 一実 >  
「……ハッ、だな。違いねえ」

釣られて笑ってしまう。まあ、これで手打ちという事で。

「あー……まあ、そうだな。
 アンタの言う事も一理ある。けどまあ、オレのはあんまり大事にしたいもんでもねえからさ」

出来ればさっさと忘れて、無かった事にしたい。
けれどそんな事出来ないとも分かっているから、せめて取るに足らない様な事と思い込んでいたい。それだけだ。
とは言え、それが今の俺を形作ってるのもまた事実で……儘ならんもんだよなァ。

「立ち入り禁止の区画もあって、這入り込んだら風紀に怒られるから、もし用事があって行く時とか気ぃ付けろよ。
 ま、一度くらいなら見えてなかったから迷い込んだ、で言い訳出来るだろうけどよ。
 ネットラジオとかポッドキャスト、スマホでも聴けるらしいから暇な時にでも試してみ。 結構色々あるらしい」

伝聞調なのはオレ自身あんまりそういうものを見聞きしないから。
スマホでたまーに見たり聞いたりする程度。あんまりテンション上がるとスマホ壊しかねんし……。

「アンタ見た目綺麗だし、目が見えてないって知れたら変な奴らが寄って来そうだしな。そういう意味でも気を付けろよ」

まあそんな事オレが言わなくても周りが言ってるだろうが。
……ていうか言わんほうが良くなかったか? そういう目で見るって自分で墓穴掘ってることになんねーかコレ。

「……ああうん、金平糖。安モンだけどな。
 色毎に味が違うんだけど、味なら分かるよな? それで少しは星空眺めてる気分の足しになりゃイイなと思ってよ」

それに、甘いもんでも食えば多少は物憂げな気分もどっか行くだろ。

栖鳳院 飛鳥 > 「左様で御座いますか……でしたらば、これ以上は何か言うべきではありませんわね」

過去への向き合い方も人それぞれ、だ。
相手が大事にしたくない、と言うのであれば、それを尊重するのが筋だろう。

「ええ、風紀の方のお手を煩わせてしまうわけにも御座いませんし、用心いたしますわ。
実は、スマートフォンはあまり使ってこなかったのですが……これを機に、もう少し構ってあげましょうかしら」

ちょっと冗談めかして言いつつ、その後の言葉にはまたころころと笑って。

「あら、お上手ですこと。とはいえ、お褒め頂けるのは喜ばしい事ですわ。有難う存じます」

と、今度は少しからかうように一礼。
事実、それを不快とは感じなかった。所謂下心を感じなかったが故に、余計。
心に裏が無いタイプの人と話すのは、気疲れしないのもあり、心地よかった。

「まあ!有難う存じます!ふふ、確かに星を感じられるお菓子ですわ。
それに、とってもロマンティックですの。ある意味では、風流かもしれませんわね」

金平糖で星空を感じる。
それは、かつて古の雅人達が様々なものを花鳥風月に見立てて楽しんだ風流の世界に通じるものがあるようにも、そして、なんだか心躍る、ロマンティックなものにも感じられた。

「はしたないのですが、ここで頂いてもよろしいでしょうか?」

だからこそ、この見えない星空の下で、この金平糖を味わって見たかった。

武知 一実 >  
「ははっ、悪ぃな。そうしてくれるとオレとしちゃ助かる」

過去(むかし)よりも現在(いま)、そして未来(この先)を考える方が好きな性分としちゃ同意して貰える方が有難い。
栖鳳院の尊重に感謝を述べつつ、切り替える様に一つ息を吐いた。

「さっき言った物騒な事で駆り出されてんのも風紀だしな、少しは労わってやんねえと。
 せっかく持ってんなら使った方が良いし、使いづらいってんなら友達にでも使い方聞けば良いしな。それが話のネタにもなるだろうから」

普通に使ってて壊す心配が無いなら、使えるものは使うに越したことは無え。便利だし。

「むう……喜ばしく思ってねえで注意しろよ?」

どうやら墓穴にはならなかったみてえだが、オレも気を付けようと肝に銘じる。
そう言うところがノンデリだぞ、とまた道場のやつらに言われたらいよいよ凹みかねんし。

「ロマ……ッ!
 面と向かって言われるとえらくこっ恥ずかしいな」

想定してなかった言葉に自分でも分かりやすく動揺した。
なんかこう、ハ〇ボーとかそういうグミ系にすりゃ良かった、とさえ思える。買ってねえけど。

「あ?……ああ、全然構わねえよ。
 アンタにくれてやったんだ、いつどこで食うかなんて好きにしたら良いさ」

何がはしたないのかよう分からん。
けれどまあ、そういう育ちなのだろう、と納得しつつオレは肯きを返す。

栖鳳院 飛鳥 > 「事件が多いと言う事は、どうしても風紀委員の方々に負担が集まっていると言うことですものね……平穏な日々が訪れると良いのですが」

とは言え、正直期待薄であろう。
どうしても異能なんて言うものを扱う以上、力を利用する者、力に溺れる者などは出てくる。
だからこそ、少しでも何かがしたいと思い、占星術部の勧誘を受けたのだから。

「ふふ、分かっておりますわ。私これでも、邪な方を感じ取るのは得手ですのよ?
貴方がそう、不器用な方だというのもなんとなくですがわかりますわ」

『上手くやる』と言う感覚が薄い、と言うべきだろうか。
小細工を弄する事無く、思った通りに行動する。誤解を受けやすい性質でもあるが、根が善良であろうから、大きな問題にはなり辛いだろう……そのような印象を受けていた。

「ロマンティックであることは、何も悪い事ではありませんわ。そのつもりがなくともそうあれるというのは、素晴らしい事だと思いますの」

余計恥ずかしがりそうなことを言いつつ、いいと言われれば、指でなぞるなどして切りやすいところを探り、丁寧に袋を切る。
そして、金平糖を一つ取り出し、口に含んだ。

「まるで、お星さまをいただいているかのよう。金平糖に色々なお味があるように、お星さまにも色々な輝きがあるのでしょうね」

かつて見た星空と、そして口に広がる甘い味。
それらを組み合わせ、自分だけの星空を夢想する。
栖鳳院飛鳥だけの、美しい星空を。

武知 一実 >  
「全くだ。些細な小競り合いくらいなら見逃すくらいしないと潰れちまうってんだよ」

だから喧嘩する度にお説教しに来るのは止めて欲しい。
……物凄く個人的な主観の下に言ってる自覚はある。あるけども。

「感じ取る、ねぇ……まあ夜の公園に一人で来るくらいだから、視力の代わりに特化したもんがあんのか。」

自分の事まで言及されると何だかむず痒い。
咳払いをして誤魔化しつつ、そういう事なら心配して声を掛けたのは杞憂だったな、と振り返って思う。
まあ、知ってたところでどのみち声は掛けてたかもしれんが。

「うぐぅ。 そ、そりゃどーも……オレとしちゃ、せめてそのつもりで発揮したいもんだけどな」

たぶん無理。きっと無理。そんな器用な事が出来てたらノンデリの汚名を被ってない。
金平糖の袋を切って、口へと運ぶ姿をただ眺めながら、つい今しがた言われた自分の不器用さを痛感する。

「そうだな、蒼っぽかったり黄色っぽかったり、赤っぽかったり……オレの目で解るのはそんくらいだけどよ、多分もっと色々あんじゃねえかな」

あんまり人が何か食べてるところを見るのも憚られたので、視線を頭上の星空へと向ける。
正直星の輝きの違いなんて大まかにしか分からなかったが、徒に栖鳳院の想像を否定する必要も無えだろう。

栖鳳院 飛鳥 > 「中々、そうもいかないのでしょうね。小競り合いがとんでもないことになってしまう、なんてこともあり得ますもの」

とは言え、実際どこまで介入すべきか、と言うのは難しい話だとは思う。
やり過ぎては締め付けになってしまうからだ。そう言った匙加減も含め、大変なことなのだなと。

「ええ、左様で御座いますわ。隠し立てするようなものでは御座いませんので申し上げてしまいますと、他の五感が人より発達しておりますの。
音で大まかな風景は感じ取れますし、人の心……と言うよりは、心理に反応して発せられる体の変化も多少は、感じ取れますわ」

脈動、鼓動の変化や、発汗による汗のにおいなど。
人の心理状態と言うのは、思ったよりそう言った形で肉体に出る。
人間の知覚の八割を超える視覚を失った代わりに、その欠損を補うため他が発達する。
自分は少し行き過ぎているのかもしれないが、盲目の人間であればよくある事だ。

「ふふ、この(めし)いた目にも、美しい星空が輝いて見えるようですわ。
このような心地にさせて頂いて、本当に有難う存じます」

そう言って、穏やかに微笑んだ。

「――ところで。
今のお時間、お分かりになられますか?」

そこで、ふと思い出す。
そもそもが結構遅くに出てきているのだ。そこで、それなりに長話をした。
もしかして時間がとんでもないことになっているのではないか、と。

武知 一実 >  
「……だよなぁ」

別に大事にする気は更々無いが、芽は摘んでおくに越したことは無いという事か。
どうにかして風紀に負担を掛けずに喧嘩出来る方法を見つけたいとこだけども……

「やっぱりそうなのか。 へぇ、視覚以外の五感がねえ……」

それは最早異能と呼んでも良さそうなものだが、目が見えなくなった代わりにポンと出来るようになった事でも無いだろう。
経験とそれに基づく知識の集大成、どちらかと言えば技能に近いそれに、オレは素直に感心した。

「そいつぁ良かった。
 いや何、礼には及ばねえさ、単なる気紛れだ」

何だか照れ臭くなって、気障ったらしいことを口走ってしまう。
けれどまあ、一助になったのなら嬉しいもんだ。

「――あ? 今の時間?
 ちょっと待ってろ、えーと……ああ、そろそろ寮なら門限になる頃合いだな
 帰るんなら、近くまで送ってこうか。手ぇ貸すぜ。
 いくら目以外が利くっつっても、気ぃ張ってなきゃだろうし疲れもすんだろ?」

常時無条件で視覚以外で周囲の状況をを察せるなら、オレが来た時にすぐ気付かなかった筈も無いだろうし。
スマホで時間を確認した後、手を差し伸べながらそう申し出る。

栖鳳院 飛鳥 > 「私などはまだまだで、凄い方は『眼で見るより見えている』くらいになるそうですわ」

そういう人に会ったこともあるが、空間認識の広さも精度も桁違いで、心から驚かされたものだ。
それを目指す、と言うのもまた違うが、そこに至るまでを想像すると、深い敬意を抱かずにはいられなかったのを思い出す。

「ふふ、シャイな方ですのね。
と……あら、いけませんわ。警備員の方や寮長さんにご迷惑をおかけしてしまいます。
そうですわね……お願いできますでしょうか?やはり、歩くのはどうしてもゆっくりになってしまいますし……」

やはり、視覚以外の五感が発達しているとはいえ、それも万能ではない。
そもそも、何故視覚が知覚の八割を占めるのかと言えば、それほどまでに周囲を画像として認識できることが有効であるからだ。
いくら補うと言っても、限度はあった。それに伴う不便も。

武知 一実 >  
「へ、へえ……眼で見るよりねえ……」

オレも異能を用いれば似た様な事は出来るが、身体能力でそれが可能となると尋常では無い。
やっぱり凄い奴が居るもんだ、と認識を改めざるを得ないというか。

「むぅ……。
 ま、多少の遅れは見過ごして貰えると思うけどよ、迷惑より心配の方が強そうだ。
 ああ、任せとけ……んじゃあ、お手をどうぞ。左前方に出してるから
 あー、それとも腕を貸した方が良いんだっけか、悪いな、その辺疎くてさっぱり分からねえ」

差し伸べた手の位置を伝えて、栖鳳院が取るのを待つ。
手を取られればそのまま歩みを合わせて公園を後にし、寮の近くまで送り届けたのだった。
オレの方は門限とか無いから、幾分か気楽に帰れるので問題なし。

栖鳳院 飛鳥 > 「そこまでの方は、そうそうおられないのでしょうけれど」

ころころと笑ってから、心配が強そう、と言われ、申し訳なさそうな顔になる。

「確かに……うう、夜の出歩きは気をつけないといけませんわね。
ええ、お手をお借りするだけで大丈夫ですわ。それでは、エスコートをお願い致しますね、一実さん」

そう冗談めかして言うと手を取り、寮近くまで送り届けて貰うのであった。

ご案内:「常世公園」から栖鳳院 飛鳥さんが去りました。
ご案内:「常世公園」から武知 一実さんが去りました。
ご案内:「常世公園」にフォルティさんが現れました。
フォルティ >   
*てぽてぽてぽてぽ*
「ヘッヘッヘッヘッ」

暑いのです

例え足に暑さ対策(肉球カバー)をしていても、暑いものは暑いのです
こう暑くては、日課のパトロールも満足にいきません、これはいけません

「くぅ~~ん」

こういう時は涼むに限ります、そう、水浴びです、此処の公園の水はとても美味しいし冷たいのです

それに公園には動物が沢山います、そう、見守りにはうってつけなのです

フォルティ >  
「わふっ!」

見つけました、目的地の噴水です!
今日も鳥たちが涼んでいますね、でも周りには……

「わぅ……」

誰もいないようです、今の内ですね、リュックサックにカバーを仕舞います
前につけたまま水浴びをしたら怒られました、こういう『服』に当たるものは出来るだけ濡らさない方がいいそうです

体から生えてくる蛇苺の弦をつかってするするとカバーを外してリュックサックに放り込みます
この動きも慣れました、初めの頃はうっかり自分の足をひっかけて絡まったりしたものです

『今でもどん臭い事に変わりはないがな』

おっと……蛇さんも生えてきました
私の体から生えるようになった植物(蛇苺というそうです)の中で偶に出てくるのが、蛇さんの形をした喋る蔓です

『だがまぁ水浴びというのは言い、我もそろそろ水分が欲しくなってきたところだからな、多めに飲んで置け』
『正直こんな事せんでも部室にでも引きこもっていた方がわr』

*ぶちっ*

また何だか小言がうるさくなりそうなのでへびさんの蔓を千切ります、こうすると暫く静かになるので

フォルティ >   
「~~~」

さて、改めて準備が整いました、右ヨシ、左ヨシ、他に邪魔者はいないようです

「わぉ~~ん!!」
*バシャーン*

勢いよく尻尾を振り乱し、噴水へとダイブ!
体が水に包まれ、びっくりした鳥たちが空へと飛んでいきます
思わず追いかけたくなる本能を抑えつつ、そのまま体を大きく震わせて、水をたっぷり体に染み込ませるのです

「ヘッヘッヘッヘッ…… わぅ……♪」

尻尾を激しくふって水を飛ばしながら半身を浸からせる、私がこの身体になって大好きになった行為です
なんでも、植物の『きめら』になったせいではないかとの事ですが、よくわかりません
とはいえ、体の奥底まで染み渡ってくるような感覚は、昔は感じた事がなかったものです

『チッ……貴様、日に日に我の扱いが悪くなっていないか?』

あ、もう生えてきました、植物にとって水は栄養らしいのでそのせいでしょう
面倒なので態と耳を伏せながらこの心地よさに身をゆだねる事にします

フォルティ >   
『それにしても暑いな、こう暑くては直ぐに萎れてしまうぞ』
『貴様、またアレを買ってこい、活力剤というやつだ』

「ばぅっ!」

えぇ、あの緑色の奴、おいしくないのでいやです、暫く生えてくる蔓の数がやたら増えましたし
それに蛇さんもやたらうるさくなったしあんまりいい所もありません

「クゥ~ン……」

舌をだらーんと伸びるだけ伸ばして水を飲みます
パトロールの間の清涼剤、疲れて暑さにやられた体に染みわたっていきますね
とはいえ蛇さんが饒舌なままだとちょっと耳がうるさいのが珠に傷ですが

『いや確かに日光浴だけでも我らは十分に生きていけるがな?』

そうです、それに贅沢はたまにだからいいのです、ちゅーるもジャーキーも毎日食べるとよくないのです
御主人もそういってましたから、私は週に2回……いや3回までしかおねだりしないと決めています

フォルティ >   
「わぅう……わんっ… くぅーん」

しかし、本当に暑い――
水に浸かっているはずなのに、少し出た鼻先や耳がじりじりと熱されるのを感じます
おっと、そうこうしているうちに鳥たちが少しずつ帰ってきました
あまり一人で使うのも悪いので、隅っこの方に移動する事にします

『別に気を使わんでもよかろうに』

もちつもたれつ、ということですよ蛇さん
噴水の縁にまで移動して、置いておいたリュックの中を蔓を使って開きます
蛇さんようではないですが、おやつは実はもってきてあるのです

「わぉ~~ん」
*がさがさ、がさがさ*

ありました、噛む奴です、何でも『ちーずぼーん』というそうです
顔だけを噴水から出して、一本をくわえます

*かみかみかみかみ*

耳をとじてリラックスしながらのおやつたいむ、実に優雅といってもいいでしょう!……
本当はご主人から貰うおやつが一番ですが、それが出来ない事は私は知っています

『貴様用のおやつを食べても我らは美味には感じんのだが……』

うるさい、ちぎりますよ

フォルティ >   
*かみかみ*

しかし本当に

*かみかみ*

暑い……とけてしまいそうです

*かみ、かみ*

「くぅん……」

怪異や悪いやつを探すためのパトロールですが、流石に太陽はやっつけられません
いや、やっつけられたもこまりますね、朝がこなくなってしまいます
こういうのを功罪ある、というのでしょうか

『いや違うと思うぞ』

そして困った事になりました、何時でましょう……
余りの心地よさと先ほどまでの暑さに、くらくなるまで此処からでたくない気持ちが一杯です

そう、寒い時期であのあったかい部屋からでたくなくなるように……
中で眠っていたらご主人に引っ張り出されたのを思い出します

*かみ、かみ*

「ばぅ……」

『この白昼堂々にこんな他者が多い所で異変が起こる事もそうないだろう、我らとしてもかまわんし寝たらどうだ?』

「ばぅっ!」

さすがにそれは迷惑というやつです、迷惑犬になってはいけません
私は立派な守り犬、占星術部の一員として隠れて怪異を討つのです

ですが……もう少しくらいは休んでもきっと怒られないでしょう
噴水の水が吹き上がり、私の頭に降り注ぐ感覚がこそばゆいです

フォルティ >   
「ヘッヘッヘッヘッ」

"おやつ"も噛み終わり、舌を出して涼みながら周囲の様子を見ます
遊んでいる人間、涼んでいる鳥、木々の間から聞こえる蟲のざわめき

「わふっ」

空を丸い、見慣れた物体が飛んでいきます、そしてそれを追いかける同族の姿
どうやら、飼い主と遊んでいるようです

「わぅ……」

私もフリスビーは大好きです、今でも持ち歩いています
でも、生憎いまは遊んでくれる人がいません
主人も……いえ、今はパトロール中、贅沢はいってられませんね

『寂しいなら寂しいと言えばよかr』

*ぶちぶちっ*

フォルティ >   
静かになりました
両手を噴水の縁において顔の前で組み、ゆっくりと平和な時間をかみしめます

―― 自分のご主人と遊ぶ同族はとても楽しそうです

尻尾がたらんと垂れます……ちょっと寂しいです
この姿になる前なら、直ぐに主人の所にはしっていったでしょう

でも、今は主人もいません、"こころざし"を同じくする仲間も、今は別行動中です

「ふわぁ~~~ぅ」

一つ、欠伸が出ました、じりじりとした暑さは変わらず、私以外にも様々な動物たちが噴水に集まってきています

「わふっ」

そろそろ、席を変わる時間でしょうか?
名残惜しいですが噴水から体を出して、周囲に誰もいない事を確かめてから大きく体を震わせます
周囲に水を跳ねさせると、しゅわしゅわとした湯気が私の体から立ち上りました

やはり、あついです

フォルティ >   
「ふわぁ~~~ぅ」

舌を大きく突き出して欠伸をしながら、ゆっくりと足カバーをつけてリュックサックを背負い直します
だいぶ"りふれっしゅ"出来たことでしょう

「わんっ!」

一度太陽を見上げ、大きく吠えます
まだ陽が落ちるまで時間があります、次の休憩所は……訓練場の裏手にしましょう、水道が沢山ありますし

*ぽてぽてぽて*

ふんわりしたカバーに足を包まれながら、威勢よく尻尾をふってパトロールを再開します
ゆっくりと体から生え茂っていく蛇苺を使ってポイ捨てしてあるゴミを拾い、ゴミ箱に投げ入れました

*カランカラン*

公園はきれいに使いましょう

ご案内:「常世公園」からフォルティさんが去りました。