2024/08/01 のログ
灰塚トーコ >  
「『異能の系統分け』?」

首を傾げた拍子に炎が揺れる。
異能学で習ったっけ、と、必死に記憶を探りつつ。

「そうですね、髪の方は実害は……ないといえばないのでいいんですけど。
 苛々したりカッとなったりすると、さっきみたいにうっかり色々燃やしちゃったりするから、それは早くどうにかしたいです。」

貴女には見えまいが、消火の跡は夜闇の下でもまあまあ目立つ。
苦笑を浮かべてサンダルの底で擦り均す。あんまり効果はない。

「あ、ワ!ご丁寧にどうも。わたしはトーコ…灰塚トーコです。
 色々燃やせます。燃やします。いちねんです。よろしくお願いします。」

反射じみてペコリと深々頭を下げたのも貴方にはお見通しだろうか。
顔を上げた後、しまった見えないんだったとでも言いたげに気恥ずかしそうに頬を掻いた。

栖鳳院 飛鳥 > 「ええ、それがどういったタイプの異能なのか、の大雑把な区分ですわ。
先ほど仰った『パイロキネシス』もそうですし、他にも有名なので言えば、サイコキネシス(念動力)、クレヤボヤンス(透視、千里眼)、テレポーテーション(瞬間移動)、魔眼、凍結能力などもそうでしょうか。
そう言ったカテゴライズを、私が最初に学んだ本では『異能の系統分け』と記しておりましたの」

異能と言うのは個人差、個体差が大きいモノであり、一概にこの系統だから、と括るのは危険ではある。
だが、同系統の能力が分かれば、過去の研究などから成る巨大情報網(ビッグデータ)から、扱い方の方針を得ることも出来る。
異能を制御するにあたって、類型の異能と言うのは重要な参考資料と言えるだろう。

「なるほど、心が高ぶった時に燃え上がってしまう……それは難しいですわね。
精神修養である程度制御できるかもしれませんが、それでも咄嗟に心が動いてしまう、と言う事はあるでしょうし……」

中々の暴れ馬さんですのね、と言いつつ、少し考え込む。
とは言え、自分の異能とは別系統の制御の難しさであるため、そうぽんぽんとアイディアが出るわけでもなく。

「何とか制御が出来ると良いのですが……と、こちらこそ有難う存じますわ。
灰塚さん、ですわね。私は二年ですので、一応先輩ですわね。ふふふ」

微笑みつつ、ぺこりと頭を下げたのを感じ取って内心で可愛らしい人だ、と思う。
そう言った仕草が身に着いている、と言う事から、きっといい人たちに囲まれて育ってきたのだろう、とも。

「そうですわね……ええと、焼け跡はそちらの方でしょうか。
それでは、私も少し、異能をお見せしても宜しいでしょうか?」

そう言って、サンダルの音の方に視線(見えていないが)を向ける。

灰塚トーコ >  
背筋を伸ばして真面目な顔で耳を澄ませる。気分は課外授業。

「ナルホド。同一とはいかずとも似通った系統の能力、そのデータさえあれば参考には出来ますもんね!」

ぽんと手を打つ。
兎角、制御、制御、制御!ではなく、その前段階が大事だということか。
またも火花が爆ぜる音。

「なるべく落ち着こうって努力はしてるつもりなんですけどね。出家してお坊さんとかになればよかったかな。」

前半は隠しきれない嘆息が。後半は冗句めかして肩を竦めながら。
しかし貴女の言葉に此方を気遣う優しさを見つければ、嬉しそうに表情を綻ばせる。

「じゃあ、栖鳳院先輩……と、お呼びしても?」

ほんのりと声色に緊張が滲む。
問われ、視線を追って瞬き。

「え?あ、はい。勿論。いいんですか?」

自分のような特徴のない異能ならばともかく―――『宝石魔術』だったか。固有のものでないのかもしれないが、魔術は確か秘匿されがち……と習った覚え。つい訊ねてしまう。

因みに地面は燃えたアイスを落としただけで、すぐに消化したこともあり、焼け焦げというよりかは消火剤で白く汚れているといった風。

栖鳳院 飛鳥 > 「そう言う事ですわ。
幸い、パイロキネシス自体は比較的メジャーな異能ですから、探せば同じような経験をお持ちの方がおられるかもしれませんわね」

無論、異能への向き合い方は人それぞれ。故に、安易に真似ればいいというわけでもない。
だが、やはり参考にはなるだろう、と思いつつ。

「分かりますわ。暴れ馬さんな異能だと、苦労致しますものね。
――ええ、好きに及び頂いて結構ですわ。飛鳥、でもいいんですのよ?」

深い深い実感の籠った声ののち、それを振り払うかのように冗談めかした声で。
言いながら、ポケットから清涼感のある緑色の宝石……ミントグリーンベリルの指輪を取り出し、指にはめる。
そして、それを消化跡の方に向けながら。

「勿論ですわ。では、少し下がってくださいまし。
今から、その跡を少し、処理することに致しますわ」

灰塚トーコ >  
光明見たりと嬉しげに爆ぜる炎の音――が、不意に止む。
おかげでぶつぶつと呟く声がよく聞こえるかもしれない。

「探し……探……図書館とかセンセに聞くのでいいかな……隣の席の人におはようっていうのが精いっぱいなのに、「貴方の能力なぁに?」って……ハードル高ぉない……?」

顎に手を当てて暫くぼやいていたが、冗談めかす声にはっとして顔を上げる。

「えっあ、ぅ……じゃ、じゃあ、わたしのことも、トーコって……ぜひ!」

もじもじと指先を捏ねて告げる中、取り出される指輪に自然と目が向く。
成る程『宝石魔術』と、胸の内でごちてから、言われるまま数歩下がって距離を取る。

「このくらいで大丈夫ですか? ――お願いします。」

適当なところで足を止め、その姿を注視していよう。

栖鳳院 飛鳥 > 「あらあら、なるほど。急に慣れない土地に来ておられるわけですから、対人関係も難しいものがありますわよね」

自分は社交界の経験である程度慣れがあったため順応もまあまあ早かったが、人によってはそうではないだろう。
特に、良くも悪くも交流関係が閉塞しがちな田舎から出て来たとあれば、慣れない人たちとの交流、と言うのはハードルが高く感じられるはずだ。

「ええ、分かりましたわ、トーコさん。是非、お友達になってくださいな」

折角できた縁と言う事もあるし、自分がとっかかりになれれば、と言う思いもあり、そんな提案をしつつ、閉じられた瞼の奥にある『眼』の力をわずかに励起させる。
そして、ミントグリーンベリルの輝きを抽出。コォォ、と宝石が緑色の輝きを放つとともに……消化跡を撫でるかのように、風が吹き始める。

「かつて、人は風を、植物の揺らぎから視覚的に感じ取っていたようですわ。
五行思想においても、風を内包する木行の色は緑。人は、風に緑を感じて参りましたの。
それ故にか、緑色からは風の属性が抽出出来るのですわ」

言いながら風をある程度操る。
砂が飛んでトーコの方に行ってしまわないよう、流す風と抑え込む風を合わせて吹かせる。
しばらくすれば、消化跡は風にさらわれて霧散し、ほとんどわからなくなるだろう。
とは言え、それを視覚で確認できないので。

「そろそろ、大丈夫でしょうか?」

と、問いかける。

灰塚トーコ >  
「……!」

聞かれた!と、思った瞬間に込み上げる羞恥は一際激しく炎を揺り熾す。
先程迄の火花程度の瞬きではなく、ボッ!と、それこそ極々小規模な爆発でも起こったんじゃないかと思わせるような音があって、

「お、おと……ゴホン! ええ、はい、もちろんです。よろしくお願いします。」

一周まわって冷静になった様子だが、取り繕っているだけなのはポニーテールの先の燃え盛り躍る炎を認めれば一目瞭然。
コホンと咳払いをして仕切り直し―――さて。

淡く光る宝石の輝き。風。なんとなくではあるものの、初夏、爽やかな新緑の風……を、思い浮かべる。正否は兎も角。

歌うような言葉と共に吹く風は精細さを持って消化跡だけを綺麗に浚っていった。
暫し見入ってしまったのは致し方ないことだろう。

「す……っごい!すごいです!きれいになりました!」

思わずと言った風にした拍手は称賛を惜しみなく表すか。
ついでにずっと手にしていたアイスが殆ど溶けていることに気付く。

「あ。結構時間、経ってましたね。そろそろ帰らなくちゃ。」

溶けたアイスの片割れは……もったいないから帰ったら冷凍庫で冷やし固めて食べてしまおう。
少し考える素振り。

「せいほ……んんっ、飛鳥先輩は、グミって平気ですか?」

答え次第で手にしていた西瓜味のグミをお裾分けするか。NOと言われたらまた改めてお礼をすることになる。
兎も角、見えないと知りながら、深々頭を下げて。

「色々ありがとうございました。正直不安だったんですけど、なんとかなるかも!って希望が見えた気分です。」

晴れやかな顔で笑った。

栖鳳院 飛鳥 > 「あらあら、そんなに大慌てなさらないで。
申し訳御座いませんわ、実は私、地獄耳ですの」

茶目っ気を含ませて笑いつつ、その後の言葉には喜色を浮かべて。

「まあ、有難う存じますわ。ふふ、これでお友達ですわね」

ニコニコ。
嬉しそうにしつつ、拍手と歓声を受けて宝石魔術を止める。
吹いていた風が止み、元通りの静けさになるだろう。

「お粗末さまで御座いました。
とと、確かに結構なお時間になってしまいましたわね。ええと……」

そう言って、スマートフォンを取り出して耳を当てる。
聞こえてくるのは、まあまあ遅い時刻を告げる機会音声だ。
そして、スマートフォンをしまうと、トーコに笑みを向ける。

「ええ、私割と、何でも食べられますの。
グミだって好きですわ」

そう言って、お裾分けされれば、有難くそれを頂戴するだろう。

「少しでも手助けになれたならば幸いですわ。
何かありましたら、気軽に話して下さいまし」

灰塚トーコ >  
羞恥に赤らむ顔を無言で覆い隠す。
おかげで継ぐ句はくぐもってきこえよう。
 
「はぁい。」

頗る恥ずかしそうな、間延びした声だった。
それも緑色の風が浚ってくれればいいのだけれど。

兎も角!気を取り直し、それならばとグミを二つ三つお裾分けして。

「やさしい先輩とお友達になれて嬉しいです。
 なにかあったら甘えちゃいますね。――それじゃあ、おやすみなさい!」

手を振って駆け出す。
軽やかな足音はやがて失せ、公園は静けさを取り戻すのだろう。

ご案内:「常世公園」から灰塚トーコさんが去りました。
ご案内:「常世公園」から栖鳳院 飛鳥さんが去りました。