2024/09/09 のログ
ご案内:「常世公園」に蒼き春雪の治癒姫さんが現れました。
ご案内:「常世公園」に緋月さんが現れました。
■緋月 >
「…………。」
黄昏時、夜も程近くなりつつある常世公園。
そこに独り、静かに、公園で人を待つ影。
暗い赤色の外套に書生服を着た、少女の姿。
その手には長物の入った刀袋。
「――そろそろ、時間ですか。」
懐から取り出したオモイカネ8で、時刻を確かめる。
それから、数度の操作でメッセージ履歴の確認。
殆ど使わない機能のため、数える程度にしかメッセージの類は入っていない。
その一番上にあるメッセージを、確かめる。
■メッセージ履歴 >
【To:蒼雪】 【From:緋月】
【Message:
本日――時、常世公園にてお待ちしております】
■緋月 >
たったそれだけの、シンプルなメッセージ。
彼女の事だ、メッセージを送ったならそれよりかなり早い時間に訪れる筈。
だから、敢えて一時間後の時間を指定した上で、更に一時間、早めに待っていた。
「………。」
大きく息を吐き、心拍を鎮めようとする。
動揺はよくない。少しでも――平常の精神に近づけなくては。
■蒼き春雪の治癒姫 >
ひと夏の想い出の、終焉。
■蒼き春雪の治癒姫 > 何となく、予感がしていた。
何の要件もない、シンプルなメッセージ。
時間と場所だけを指定されたソレは。
きっと。
(もう、終わり…だね…。)
貴女様は私の正体という終着点に
私は殺害欲の限界という終着点に
交わるんだろう。
蒼い雪色が、視界に触れる。
やってきたのは、指定された時間の、30分前。
―――やけに来るのが早いのは、あの時と同じだ。
「……」
黙。
「こんばんは~!緋月様ッッ!!」
その挨拶には、ちょっと早いかもしれない。
その猛吹雪のような女は。
今日だって、元気だ。
……。
元気
だ。
■緋月 >
「――あ、蒼雪さん、どうも、こんにちは!」
声をかけられれば、振り返り、手を振って迎える。
――上手く、笑えていたか? 陰りは、見えていなかったか?
そんな自問を押さえ込みつつ、努めて何でもなかったように、声を掛ける。
「――すみません、こんな時間にお呼び出しして。
…あ、もしかして、呼び出し時間、間違えていましたか?」
白々しい事を。自分でもため息が出る。
……さあ、始めよう。
「……突然呼んで、すみませんでした。
少し、お話がしたくなって。
ほら、この夏の間、色んな所に行ったなぁ、と思い出したら…
何となく、お話がしたくなりまして。
ご迷惑でしたら、すみませんでした…。」
――始めよう。
この夏の、終わりの時を。
幻から覚める、時間だ。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「そうでしたか。」
近づいて
「そうですね。」
にこやかに
「そう、…だね。」
頷いて
「―――はい。」
「お話いたしましょう!いつでも、歓迎しますからねッ」
「ですからそんな迷惑なんてあろうはずがございません!」
その"いつでも"は。
もう。
二度とないんだろう。
だからこそ
そのお話は
宝物のようだ
「楽しい夏でした。」
「あの時、憧れた貴女様と共に!」
「初めて会った時はご無礼を致しましたけれど」
「お食事に出かけたり、映画を見に行ったり、泳ぎに行ったり。」
「ふふ……」
■緋月 >
「すみませ――――いや、ありがとうございます。」
謝罪ではなく、感謝の言葉。
思い出話にまで付き合ってくれる事には、感謝の言葉しか思いつかない。
「……最初に遇った時は、ホントにびっくりしましたよ。
いきなり突飛な事を言われてしまいましたから。」
本当にアレは驚いた。
色々と突飛過ぎた事と、今まで会った事のないタイプの人だったので。
「お食事――あの、七夕の時期の、でしたね。
おいしかったですよね、あのパフェ。うん…本当に。
もう一度食べに行きたいですが…流石に、時期外れですよね。
そもそも、季節限定の筈でしたし。
――あの時は、お互い、お願い事もしましたよね。
お願い、叶いましたか?」
そんな、他愛もない思い出話。と、ちょっと意地の悪いかもしれない質問。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「あの気持ちは……本当ですよ。」
「昨日のことのように思い出せますのに。」
「懐かしいですね。」
「季節限定―――か。」
「であれば、もうその機会はないかもしれませんね…」
私も、期間限定だったんだ。
「願い事です、か。」
「覚えていて、くれたんですね。」
「ふふっ。」
触れれば、融けそうな程に、
はかなげに笑った。
「―――叶いませんでした。」
はっきりと、言い切ってしまった。
「でも、もう。良いんです。それで。」
■緋月 >
「覚えてますよ、それは。
誰かと一緒にお菓子を食べに行くなんて、ほとんどない経験でしたし。」
小さく笑う。
願い事は叶わなかった、という言葉に、軽く苦笑
「――そう、ですか。
世の中っていうのは無情ですね。私のお願いも、生憎と叶いませんでした。」
本当に、世の中は儘ならぬものだ。
――最も、己の場合、半分は自身が望んだ結果だったが。
「プールも、楽しかったですよね。
水浴びや泳ぐ練習でない、単純に遊ぶだけの水遊びは…あれが初めてでした。
滑った時は痛かったですけど。
あの時は水着を貸し出して貰えて、本当に助かりました。」
結局、水着を新しく買いに行く暇がなかった。
それだけは、少し……心残りだった。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「……そうですか。」
お互いの願いは、叶わなかったんだ。
いや。
(私がその願いを打ち砕いたのかな?)
「ごめんなさいね。」
自然と、叶わなかったって言葉に一言、重ねた。
「えぇ。」
「私も実は…あんなふうに、何も考えずに、水遊び」
「それも誰かと。」
「貴女様と共に。」
「あの猛暑日の中、冷ややかな場所…凄く心地よきものでしたね」
「――ふふふ」
「ああ、今でも思い出せますよ」
「貴女様にも、あんな一面があったのだなんて。」
近づいてみて、初めてわかる事。
あの時、彼を斬らんと凛々しく刀を携えていた美しき貴女様は、
私の傍で慌てた様子で滑った姿を見せて下さった。
緩く目を細める。
―――うん。
「今日も貴女様は、」
「お美しいですね。」
■緋月 >
「またそんな事を――。」
気が付くとかけられている言葉。
思わず苦笑してしまう。
最も、心からの言葉であるのは分かるので、未だに少し戸惑いこそすれ、
決して気分を害するものではない。
「――映画にも、行きましたよね。
終わってからはお互い議論になってしまいましたけど。
ああしてお話するのも、悪くなかった…いいえ、楽しかったです、とても。
今度は、何も考えず、笑って見られる映画を…見に行きたかった、ですね。」
――ああ、駄目だ。
顔は取り繕えても、言葉で、少しだけ、ボロが出てしまった。
本当に、肝心な時に、駄目だ。
「――そう言えば、蒼雪さん。
雪白は、大切にして下さってますか?
折角の姉妹刀ですから、少し気になってしまいまして。」
――あの刀を見た時は、本当にうれしかったものだ。
大事にしてくれているのなら、とても、嬉しい。
■蒼き春雪の治癒姫 > 「―――そう、ですね。」
分かっている。
もう、分かっているんだ。
ボロが出ているなんて、気にしない。
真っ直ぐに肯定する。
そして。
「無論です」
「離さずに、持っているんです。今も…」
すらり、と貴女様の半身として示されたソレをまねて作った蒼白い刀身を、
着物の狭間からどういう原理か抜き出して行って見せる。
なんだか、その顔は、とても愛おしそうで、自慢げで。
「私が、これを本来の目的で使う事は――来ないでしょうけれど」
来ないといいな。
「貴女様との大切な想い出として」
「……終わりまで持って行こうと、思います。」
まるで、これから。
最後に向かうみたい。
■緋月 >
「――そうですか。良かった。
いつも持ち歩いて下さってて、とても、嬉しいです。多分、この子も。
大事にして、あげてください。」
取り出して見せてくれた一振りを見て、ふわりと笑顔。
軽く、手にした刀袋を示す。
其処に在るのは、蒼い少女の持つ刀の姉妹とも言える一振り。
「……本当に、この夏は色々な事が、ありましたね。
今まで過ごした夏の中で、きっと…一番、思い出に残りそうな、ひと夏。」
軽く、空を仰ぐ。
既に太陽は傾き切り、空の色は、まるで血を思わせるような赤に変じたようにも見える。
――ああ、夏が、また一日、終わっていく。
「――本当に、ありがとう。
私と、この夏を過ごしてくれて。」
あなたの、思いを、
「あなたに出会えなかったら――きっと、私の夏は、
全く違うものに、なってしまっていたでしょう。」
――教えて、ください。
「――――蒼雪さん、」
私の、こころは――――
■終わりの質問 >
「――――あなたは、一体誰ですか?」
■蒼き春雪の治癒姫 > 「答えないと…いけませんか。」
目を、閉じる。
そうか。
ついにこの時が来た。
来てしまったんだ。
楽しい時間を過ごすのは。
もう。
終わりなんだ。
「私は――」
「わた、しは…」
「―――わたし、は…」
■蒼き春雪の治癒姫 >
「私はちゆき。」
「誰にもなれないまま死んじゃった―――」
「何者でもない"おばけ"です。」
■蒼き春雪の治癒姫 > 「っふふ。」
「私こそ、ありがとうございました。…素晴らしいひと夏の想い出を」
「蒼春を。」
儚き笑みは
はらりと舞い散り
泡沫へ消え行く
幽かな
雪の様
■緋月 >
「――――蒼春千癒姫。」
その答えに、一言。彼女の本当の名前を口に出す。
……その顔に、笑顔はもうない。
否、表情がない。
あるのは、痛ましい雰囲気だけ。
「公安委員会・総合怪異監査部、副部長。
『蒼雪の治癒姫』の二つ名で知られた、極めて強力な治癒の異能の持ち主。
総合怪異監査部は、彼女の異能の力によって不滅の軍団として、知られていた。」
ひとつひとつ、答え合わせを行うように、淡々と、語られる。
「しかし、副部長・蒼春千癒姫は1年前、怪異監査中にその消息を絶つ。
「不死身の軍団」の根幹を失った総合怪異監査部は壊滅。
総合怪異監査部を壊滅に追いやった怪異の正体については、今に至るまで不明。
蒼春千癒姫は遺体が見つからず、生死不明扱いとして
捜索願が出されているが――未だ、目撃情報は存在しない。」
――そこまでを告げると、小さく息を吐く。
僅かに震える、息遣い。
「――ごめんなさい。
公安委員には、秘密の伝手があって…あなたの事を知りたかったから、
お願いして調べて貰っていたんです。
まさか……こんな調査結果が出て来るなんて、思わなかった。」
その謝罪の言葉と共に、右手をゆらり、と顔に近づける。
「――私、あなたに秘密にしてたことが、あります。
実は私……死者の姿を、見る事が出来るんですよ。
驚きました、か?」
■最期の証明 >
その言葉と共に目だけを出して顔を覆うように、書生服姿の少女は己の手を顔に押し当てる。
次の瞬間、蒼い炎がその双眸に宿る。
それは、彼女が継承した神器の力による、死者観測の能力。
死したる者、その双眸から逃れる事、能わず。
――最も、彼女に向けたくなかった瞳であり、
……最も、彼女に向けねばならなかった瞳。
■蒼き春雪の治癒姫 > 告げられた言葉に、目を閉じたまま頷く。
その言葉は
全部、正しくて。
全部、懐かしくて。
全部、苦しかった。
聞きながら、仄かに、泣いていた。
「……恐らく。」
「緋月様なら。」
「答えに辿り着くと、思っていたんです。」
うん。
きっと。
確信をされていたんだろう。
でも。
まだ。
誤魔化せる。
「―――死者を、見るか。」
「そう……ですか。流石ですね、緋月様。」
「だから私を"見て"頂けたのでしょうか…なんて。」
驚いた様子は、ない。
貴女様になら、きっと。
そんな、おとぎ話のような事すら、出来てしまえたって、
不思議ではないから。
「この、学園で。」
「"おばけ"なんて。珍しくも。」
「ないでしょう?」
そう。
そうだ。
この学園で、死んだはずものが生き返って。
それが日常に溶け込むなんて。
何も珍しい事ではない。
貴女の双眸には、
炎を通して見る先には
"完全なる死者である"という答えが導き出される事だろう。
「――……」
或いは。
もっと。
もっと深い答えが。
おばけなんて、もんじゃない。
そんな答えまで。
見出されてしまうのだろうか。
もしそうだとしたら。
嫌だ。
こんな
汚れた
薄汚い
殺害欲を以って
貴女様と
接していたなど
嫌だ
嫌だ
嫌だ
やめて
見ないでほしい
それ以上
見られた、なら
い、
や
「……!」
「ね、お、おばけ……です。」
「私、は……ぁ……ッ!」
■蒼き春雪の治癒姫 >
「……ただの、何者でもない、おばけ、なん、ですよ……ッ!!」
■緋月 >
「――――――――。」
本当に、その言葉の通りならば、どれ程良かった事だろう。
既に幾度か死したる者と相対した結果、死者によっても、
見え方が変わって来る事が、既に彼女には分かっていた。
本当に――彼女が、その言葉通り、何者でもない、ただの「お化け」だったなら…どれだけ良かった事だろう。
現実は無情だった。
既に相対した以上、嫌でもその蒼く燃える双眸は、真実を告げて来る。
「――本当に、ただのお化けだったなら…私も、どれだけ、救われた事か…。
それならば、ただ――道を示すだけでも良かった。
留まっているだけの死者ならば、道を示せば、それでよかった――!」
――本当に、彼女が叫ぶ言葉の通りなら、どれ程互いに、救われた事だろう――。
流れる涙を覆い隠すように、その顔面が黒い狼の仮面に覆い隠される。
哀しみを噛み殺すような、苦痛に満ちた声。
■決別と悲哀 >
「――あなたは……"紅き屍骸"、だったのですね…!」
■蒼き春雪の治癒姫 > その言葉は。
終焉の合図だった。
「……はい。」
もう。
戻れない。
死んだ者が二度と生き返らないように。
その言葉は、今の二人の関係を、二度と戻らないようにしてしまった。
「…………ごめんなさい。」
「黙っていて、ごめんなさい。」
黒き狼の仮面は
私に対して怒りと悲哀をぶつけるような顔をしているような気がした。
―――。
―――。
―――。
静寂。
季節外れの、嫌に冷たい風。
「おばけじゃなくて、ごめんなさい。」
「だけど。」
「だけど!」
「―――貴女のファンだって気持ちも!」
「―――ひと夏の想い出が楽しかったって事も!」
「―――雪白と共に人生を終えるつもりなのもッ!」
「全部、本当だからッッ!!」
今の今まで、騙して来たなんてことは、ないんだ。
殺すために、貴女を傷つけるために、なんて、そんなことは、ないんだ。
…今なお、殺害欲を抑え込んで、必死に叫び散らす。
「だから」
「だからね。」
「緋月様」
「私」
「私は―――」
「時間切れになったら、」
「―――殺害欲に飲まれて貴女を傷つけるような」
「本当の"紅き屍骸"のソレになり果てる前に」
■蒼き春雪の治癒姫 >
「永遠にこの世から消えるよ、"おばけ"として。」
■緋月 >
「……………わけ……」
黒い仮面の下から、くぐもった声。
かろうじて、涙を堪えるような、そんな響きが混じるような。
「疑うわけ…ないじゃないですか……!」
必死に何かを堪えようとする声は、
目の前の屍骸が自分を騙そうとしたなどと、思いもしない事を叫ぶ。
「一緒にお菓子食べたのも!
プールで遊んだのも!
二人で映画を見に行ったのも!
騙す為の嘘っぱちだなんて、信じない!
だって…あんなに、楽しそうだったから……!!」
その叫びに、狼の仮面の相貌の炎が大きく揺らめく。
――まるで、己の継承者の代わりに、涙を流すように、蒼い炎が揺らめく。
「でも……でも…!
紅き屍骸は、生も死も、歪んでしまっている…!
こんな、存在が許されない…在る事が哀し過ぎるモノは――――!」
その先の声が――出せない。
肩が、小さく揺れている。
――本当に消える心算ならば、不意を打てば、この場を逃げる事が出来るかも、知れないが。
■蒼き春雪の治癒姫 >
「ああ、よかった……!!」
「…ありがとう、本当に。」
「貴女様と、このひと夏を共にできて、本当に、本当に、良かった」
■蒼き春雪の治癒姫 > 「楽しかったよ、貴女様との蒼春。」
■夜 > 夜の帳が降りる。
蒼色の吹雪は忽然と姿を消して、
もうそこには、いない。
残るのは。
零れた雫に濡れた、
雪融けの証のみ。
ご案内:「常世公園」から蒼き春雪の治癒姫さんが去りました。
■緋月 >
「――――ぁ、」
夜のとばりのその向こうへ。
まるで溶けるように、その姿を、あのひとは消してしまった。
おばけのように、あるいは、夏に溶けて消える雪のように。
「――――ひどい…!」
その言葉と共に、狼の仮面は青白い炎と共に掻き消える。
その下から現れたのは、涙でぐしゃぐしゃになった、一人の少女の顔。
「言うだけ言って――勝手に、消えるなんて…!
そんなの…そんなの……!」
がくり、と、膝を付く、
ずしゃ、と地面に着いた手が、堅い地面を引っ掻く。
■慟哭 >
「ほんとうに…楽しかったのは、私だって同じなのに……!
ありがとうの、ひとつも、言わせてくれない、なんて……!!」
■夏のおわり >
――――公園には、暫しの間、叫ぶような泣き声が響いていた。
まるで、寄る辺を失った、孤独な狼のような声が。
ご案内:「常世公園」から緋月さんが去りました。