2024/09/14 のログ
ご案内:「常世公園」に追影切人さんが現れました。
■追影切人 > 未だにうだるように暑い、残暑厳しい夏の休日の午後。
常世公園の日陰の一角、太陽の位置関係で丁度今は日陰に位置するベンチにだらしなく座り込み。
「………。」
手元の監視対象専用の特殊端末にある画面をじっと隻眼で眺めている。その表情は無、だ。
■特殊指令第■■■号 > 『一級監視対象【凶刃】に【逃亡者】弟切夏輝の”処分”を命ずる』
■追影切人 > 簡潔すぎる命令文。処分対象も”知った名前”だ。…僅かに隻眼を細めて、短いその名前を確認して。
「……チッ。あのアマ…やっぱこうなるじゃねぇか。」
舌打ちを零しつつ、端末を乱暴に懐に捻じ込んだ。そもそも男に拒否権なんて存在しない。
■追影切人 > 別に”アイツ”とそれ程親しかった訳ではないしそんなつもりもない。
そもそも、お互い『何だコイツ?』という感じだったのは馬鹿な男でも覚えている。
ただ、未だに印象に残っている事があるとすれば――…
「…くだらねぇ、どちらにしろぶった斬る事に変わりはねぇんだ。」
例えどんなに身近で親しい相手でも最後は必ず斬り殺す…そんな男からすれば、これも何時もと変わらない。
感情交えず、愉悦に浸らず、ただ作業のように斬って捨てればいい…こちらが返り討ちになるとしても。
それはそれで、だったら己はそこまでの雑魚だったという、それだけの話。
ご案内:「常世公園」に桜 緋彩さんが現れました。
■桜 緋彩 >
本日は非番。
再開した授業も今日は休みだし、学生通りでも行って買い物しようかなぁ、なんて歩いていれば。
通りすがった公園のベンチに、何やら見た事のある姿。
「やあ、追影どのではありませんか」
一級監視対象にして風紀委員の「協力者」。
本部などでたまに遠くに見るぐらいの関係だったが、街中で会うとは。
「こんな暑い日に傘もささずに屋外に居ては、熱中症になりますよ?」
■追影切人 > 「……あぁ?」
日常では何時も気だるそうでチンピラじみていて不愛想だが、今は何故かちょっと機嫌が悪そうな男。
聞き覚えのある声に、そちらを胡乱げに黄金の隻眼で眺めていたが…。
「あー…見覚えある…ような……誰だっけか?」
男も、一応所属は風紀委員会の警邏部なので本庁などにも出入りはしている。
おそらく、彼も彼で相手の姿を見かけた事はあるのだろう、朧げに記憶にもある。
…が、がっつり話した記憶も軽い談笑の記憶も無いので名前は把握していなかったらしい。
「うっせぇな、午前中に面倒な『見回り』だったんだよ。一人体調崩しやがってその代役だ。」
今さっきその午前の仕事が終わり、午後は非番なので帰りの道中にここに立ち寄ったに過ぎない。
一応、男の座るこのベンチはぎりぎり日陰に入ってはいるが、気温がじりじり暑い事に変わりは無い。
■桜 緋彩 >
「お初にお目にかかります。
風紀委員の桜緋彩と申します」
姿勢を正し、一礼。
大げさな所作だが、その動きが身体に染みついている様に自然。
「あぁなるほど、おつかれさまです。
――お隣、宜しいですか?」
苦笑と共に労いの言葉を掛ける。
そしてベンチの隣の隣を示して、座ってもいいか、と。
流石に日向は暑い。
正直少しでも日陰に入りたかった。
■追影切人 > 「…桜ね。…追影切人、風紀の警邏部所属。…つっても俺の名前は知ってたみてぇだが。」
まぁ、明らかに風紀らしくない風貌と雰囲気なので、一度見掛ければ印象に多少は残る…かもしれない。
男と違い、姿勢正しく礼をする彼女に対して会釈を返すでもなく、ただ淡々と眺めていたが。
「お疲れも何も何時ものつまらねぇ雑務…あ?好きにしろよ俺に聞くな。」
苦笑とねぎらいの言葉にもぶっきらぼう。こういう喋りと態度が男の基本だ。
彼女の空気からして、おそらくそんな男の態度は気にもならないだろうが…これで敬遠する風紀の同僚も多い。
隣に座る許可を求められれば、好きにしろとばかりに面倒そうに片手をひらひら振って。
男にとっていちいち隣に座るだけで許可を取る必要も無い、という感じらしい。
――まぁ、クソ暑いのでさっさと日陰で休みたい気持ちは分からないでもないが。
■桜 緋彩 >
「ええ、形はどうあれ風紀委員に所属する人の顔と名前は大体覚えるようにしていますから。
――あと、個人的に少し興味があったと言うのもありますし」
彼のような有名人なら、頑張って覚えようとしなくても、ある程度自然に情報が入ってくるのもあった。
ぶっきらぼうながらも拒絶はしない彼に、もう一度一礼を返し、隣に座る。
同じ屋外でも、日光が遮られればそれなりに過ごしやすい。
「毎年のことではありますが、今年も暑いですねぇ。
流石にこの時期は堪えます」
ポケットから取り出したハンカチで額の汗をぬぐいながら。
それなりに鍛えてはいるつもりだが、それでも暑いのは堪える。
■追影切人 > 「…そりゃ律義な事で。風紀の鑑ってやつか…。」
自分とは全く正反対だ。男は過去に付き合いの奴くらいしか名前も顔も覚えない。
未だに風紀の同僚で顔と名前が一致しない連中ばかりだ…むしろ、覚えている奴を数えた方が早い気がする。
ただ、個人的に少しこちらに興味があるという言葉に、何だそりゃ?とばかりに目を細める。
――こんな風紀らしくも無いチンピラもどきに何の興味があるというのか。
「…ピークは過ぎたんだろうが、残暑はどうせ長引くだろうよ…毎年の事だ。」
相変わらず淡々とぶっきらぼう。表情も仏頂面というか気怠そうで愛想の欠片も無い。
ただ、隣に座るのを拒絶しないし会話の受け答えも意外ときちんとしている。
それなりに社交性はあるようだ…やっぱり愛想の類は何処かに放り投げてきているが。
桜と違い、汗の一つも掻いていないがウンザリする気温と湿度に辟易しているのは彼女と変わらない。
■桜 緋彩 >
「追影どのの異能ですよ。
噂話に聞いた程度ですが、「斬る」異能なのでしょう?
剣士としては気にならない方が少ないと思いますよ」
なんせ剣士と言うのは「斬る」ことに一生を費やしていると言っても過言ではない生き物だ。
良い意味でも悪い意味でも気になるに決まっている。
「こんな暑い中でも外回りは必要なのですから、風紀委員と言うのも楽ではありませんよ。
何やら厄介そうな事件も多いですし」
確かギフターだか何だか、そんな感じの事件が何件か起きている、と。
もう少し涼しくなってから動いてくれればいいのに。
もっと言えば動かなくていいのに。
■追影切人 > 「――今は弱体化してるクソだけどな…。」
異能について聞かれれば僅かに眉を潜めて。斬る異能――人も物も概念も何もかも斬る”だけ”の力。
…だが、それも幾つかの要因で弱体化が著しく、本来の性能には遠く及ばないのが現状。
剣士――というのは男には理解できない。何故なら男は刃物は好きだが剣術使いではない。
ただ斬る事だけに特化した人間に過ぎない。剣術の理念も何も彼には理解できないシロモノだ。
…だが、その剣士が良くも悪くも男の異能に興味があるという。…何だろうかこの何とも言えない居心地の悪い気分は。
「――クソ面倒な事件なんかしょっちゅうあちこちで起きてるだろうよ。
むしろ、火種なんて何処にも、そこら中に燻ってるもんだ…今の騒ぎだって氷山の一角だろ。」
裏側もこっち側も知っている人間としては事件なんて日常茶飯事だ。
いちいち細かい事を気にしてもしょうがないし、風紀といえど限界はある。
「――オマエみたいに真面目そうな風紀は割と損をしがちだからな。」
あくまで桜への彼の印象であり、彼女が生真面目バリバリなのかは知らない。
■桜 緋彩 >
「それでもですよ。
剣の鍛錬も無しに「斬る」ことが出来ると言うのは羨ましくもあり恨めしくもあります。
同時にそれを相手にどこまでやれるのか、と言うのも気になります。
出来れば今度手合わせなどして頂きたいぐらいですよ」
羨ましいと恨めしいと戦いたいは比率的には1:2:7ぐらいだろうか。
戦いたい、と言う言葉を、本心からの笑顔と共に彼へ向ける。
「少なくとも表立っては起きていないでしょう。
確かに何もないのが理想ではありますが、せめて生徒たちが怯えずに済むぐらいにはなって欲しいと言うのは、――まぁ、これも理想ではありますが」
人が集まれば何かしら起きるのだ。
だから自分たちのような、それを止める存在が必要なのである。
「私が、ですか?
――不謹慎ではありますが、どちらかと言うと腕を振るう機会が出来ると言う意味では、むしろ得をしている方だとは思います」
ナイショですよ、と小声で付け足しておいて。
■追影切人 > 「――剣士なんて俺にゃ理解もできねぇし真似もできねぇからな。
…それに、俺にはお前ら剣士みたいな「技巧」…人間が積み重ねたモノが全くねぇ。ただの獣の剣だ。」
剣士より「斬る」事に特化しているが、反面、剣士のような技巧などが彼には全く無い。
――ただ切れ味の良いだけの太刀筋なんて、剣士からすれば対処はそこまで難しくもあるまいに。
しかしまぁ、無駄に良い笑顔をしてくれる。言葉は本心からというのが嫌でも分かる。
「別に斬り合うのはかまわねぇがクソ暑いしダリぃから今からはパス」と、そんな返答。
別に斬り合うのは構わない…むしろ斬り合いは大好きだ。勝ち負けなんてどうでもいい。
「理想は理想でしかねぇが、まぁ何もねぇよりはマシなんじゃねーの?知らんけど。」
自分みたいに、ただ”飼われている”だけの本来風紀に所属しているのがおかしい奴よりはマシだろう。
――理想が無駄に高すぎて、現実とのギャップに磨り潰される奴も一定数は居そうだが。
風紀は止める側だが、男にとって止めるというのはつまり斬る事だ。生死は問わない。
「――何だそりゃ、剣士としての腕試しの延長みたいな感じか?…ま、いいんじゃねぇの?」
むしろ、単純な正義感とかよりそういう方が個人的には好感が持てる。珍しく小さく笑って。
■桜 緋彩 >
「それでも、ですよ。
獣と言うのは、こと闘争に置いて人間よりも優れています。
鍛錬せずとも「斬る」と言う一点において、それはそれで一つの到達点には違いないですから」
獣もなかなか馬鹿にしたものではない。
闘争本能のままにむき出しでぶつけられる殺意は、それだけで脅威だ。
そも一級監視対象なのだ。
異能だけでそう位置付けられたわけでもあるまい。
「まぁ、剣士ですから。
街の秩序を守ることが第一とは思っているとはいえ、やはり腕を振るう機会があると心が躍ってしまう時はあります」
風紀委員としてはあまり良くないとはわかっているけれど。
「しかし、その。
……思っていたよりも結構「風紀委員」をしているのですね」
何もしないよりはマシ、と言う彼の言葉。
彼のことはもうちょっと現実主義者かと思っていた。
こう言っては失礼かもしれないが、思ったよりも風紀委員っぽい台詞に、思わず苦笑してしまった。
■追影切人 > 「――まぁ、鍛錬なんてしても付け焼刃にしかならねーからな…俺にゃ余計なモンだ。」
単純に肉体を鍛える意味での鍛錬ならまだしも、剣の技術を鍛える、というのは彼にはむしろマイナスだ。
獣の剣だからこそ、無軌道で無秩序で荒々しいからこそ生かせる切れ味というものがある。
それに、剣士とは対極に近いながら――「斬る」事への追及は同じようなものだ。
「俺は斬り合いが出来ればそれでいいけどな…もっとシンプルな話…斬れればそれでいい。」
それが男の全てで最後に帰結するもの。刃が人間の形をしている、とでも言おうか。
あくまで男は人間ではあるが、その在り方は荒々しいながら研がれた刀剣そのもの。
「――剣士の性ってやつかね……ま、少しだけ分からないでもねぇわな。」
剣士は理解できないが、腕を振るう…斬り合いに関しては概ね同意だ。
そして、風紀としては良くないとしても彼はむしろそちらを重視している。
――真っ当な風紀委員なんて他の奴らがやればいいのだ。俺は”外れた”ままでいい。
「―――はぁ?俺が?んな訳ねぇだろ、風紀なんて俺にゃ【檻】みてぇなもんだ。」
本気で嫌そうな表情を浮かべる。俺が結構風紀をしている?止めてくれ気持ち悪ぃ。
少なくとも、男は風紀らしい何かを自分からする気は殆どない。
■桜 緋彩 >
「斬り合いが出来ればいい、と言うのは少しわかります。
我々剣士も結局はそこに行きつく訳ですから」
武道は人格形成とかなんとかとよく言うが、結局本質は「目の前の敵をどうぶちのめすか」と言うところに行きつくもの、と言うものだと思う。
流石に相手を殺すことまではするつもりはないが、それ以外は自分と近い感覚。
剣のそのものような彼を、嬉しそうに真っ直ぐ見て。
「いや、失礼しました。
しかし、なんと言うかこう、イメージでは「そんな理想だけ語っててもしゃーねーだろ」くらいは言われそうだったもので」
精一杯声を低くして彼の真似――のつもり。
全く似ていない上に、無理して低い声を出したため少し咳払い。
■追影切人 > 「――まぁ、そういう意味ではオマエと俺は同じ穴の貉なんだろーよ。」
肩を竦めて。この男と纏められるのはアレかもしれないが、男からすれば悪気は特に無い。
ただ、結局行き着く先が同じか似たような所ならば、ついそう漏らしてしまうというもの。
「理想は理想でしかねぇし、実現不可能な大言壮語を吐いてる奴はくたばれ、とは思うけどな。
理想を現実にするために色々やってる奴は居る…それは事実で否定するモンでもねぇだろーよ。
…あと、それは俺の真似か?オマエ案外ノリがイイタイプだったりすんの?」
見た目が謹厳実直というか泰然自若というか、まぁ落ち着いて礼儀正しいイメージが何か強いので。
ちなみに、流石の男も空気は読んで桜のスタイルについては言及しなかった。凛霞とかレイチェルもそうだがこいつもか、とは思う。
無理したのか咳払いする桜を見かねたか、溜息と共に一度ベンチを立つ。
そのまま向かい側の自販機に足を運べば、手早く端末の引き落としでペットボトルのお茶を購入。
「…無理して声真似してんじゃねーよ、ったく。」
そして、無造作に彼女へとペットボトルのお茶を放り投げた。奢りらしい。
■桜 緋彩 >
「そうであろうと思います。
剣が振れればそれでいい、と言う人間であることは理解していますから」
風紀委員として街の秩序を守ることに疑問は感じない。
だが、それはそれとして血生臭い斬り合いに抵抗を感じていないのも確か。
「それ」の優先順位をどこに置いていたか、の差でしかないだろう。
「なるほど。
そう言う意味では現実主義者、とも言えるのでしょうか。
……いえその、忘れてください」
ノリがいいのか、と言われ、恥ずかしそうに顔を背け、ついでに手で顔への視線を遮っておく。
ウケると思ったのだけれどダダ滑りしてしまった。
はずかしい。
「え、あ、っと。
――ありがとう、ございます」
何か投げられた気配に視線を戻せば、飛んでくるペットボトル。
慌てはしたものの難なくキャッチし、それと彼の顔を見比べて、頭を下げる。
■追影切人 > 「――そりゃ、割と話が合いそうで気が楽だ。」
仏頂面のままだが、声色は少しだけ楽しそうだ。
勿論、全く同じではないのは百も承知。だが似たような部分が多い相手は話しやすい。
「それ」の優先順位の差は明確ではあるが、”それ以外”はさして変わらないのかもしれない。
「ふぅん…案外茶目っ気のあるタイプか。面白いなオマエ。」
ペットボトルを無造作に放り投げて渡せば、そんな感想を述べながら再びベンチに戻って腰を下ろし。
「また喉を傷められても面倒だしな。どうせこのクソ暑さだし水分補給も必用だろ。」
ウケはしなかったが、彼なりの配慮らしい。現実主義ではあろうが気遣いも案外出来る男だった。
「――ああ、そうそうさっきの話。桜と斬り合いは面白そうだから今度やろうや。最近斬り甲斐のある奴とやりあってねーし。」
明日の天気でも語るような口調でそう提案する。
■桜 緋彩 >
「む、ぅ」
明らかに気を使われている。
それがわかってしまい、なんとなく居心地が悪い感じだ。
だからと言って揶揄われるのもそれはそれで嫌だし、受け入れるしかない。
そもそもドスベリした自分が悪いのだから。
「――んんっ、ありがとうございます。
このお礼はいずれ必ず」
とりあえず咳払いをしてごまかしておく。
改めてお礼を言って、ありがたくお茶を頂くとしよう。
つめたくておいしい。
「ええ、是非。
私としても、追影どのほどのつわものとの立ち合いは楽しそうですから」
■追影切人 > 別に気を遣ってるつもりはあまり無いのだけど、何か小さく唸ってる桜を横目に見る。
何処となく居心地も悪そうだが、さっきの声真似がスベったのが原因だろう。
男としては単純に面白い女、というくらいの感想で別に悪印象とかは全く無いが。
「…別にそういうのはいいっての。」
礼とか期待した訳でもないし、ただの気紛れに過ぎない。男は少なくともそのつもり。
お茶を飲む桜から視線を逸らしつつ、ベンチの背凭れにだらしなく背中を預けながら。
「ツワモノねぇ…?…ま、いいか。」
自分が強かろうが弱かろうが、最終的に斬り合いが盛り上がればいい。思い切り斬れたら言う事は無い。
逆にこちらが盛大に斬られて負けようが、それはそれで満足で恨みも怒りも無いだろう。
――彼が求めるのは斬り合い、そして斬る事。生死や勝ち負けなんて彼の眼中には無いのだ。
「――あ。…桜、取り敢えずこれ交換しとこうぜ。その方が日程合わせやすいだろ。」
携帯端末を取り出してヒラヒラとそちらに振ってみせる。日時と場所の打ち合わせするなら、こっちでやるのが手っ取り早いし。
■桜 緋彩 >
「いえ、受けた恩は返さねば。
人として当然のことですから」
彼の印象は間違っていない。
基本的にクソ真面目なのだ。
はっきり首を横に振って、そう言うのは良いという言葉をきっぱりと否定。
「ええ、噂ぐらいですが、聞き及んでいますよ。
任務中の斬った張ったの立ち居振る舞いを」
弱体化した異能でも、基礎能力が高いのだろう。
その辺の二級学生など相手にもならない、と言う噂をよく聞く。
「ええもちろん。
――はい、どうぞ」
お茶の蓋を閉めて横に置き、ポケットからオモイカネ8を取り出す。
たぷたぷと若干たどたどしい手付きで操作し、連絡先を交換した。
■追影切人 > 「……そういうもんかねぇ。」
あ、やっぱコイツ何だかんだ基本クソ真面目だな、と思いつつ。
まぁ、それがコイツの長所の一つなんだろうと思う事にする。
男はあまり恩がどうのとは考えていないから、その当たり前の感覚がいまいちピンと来ないが。
「――噂になってんのかよ。クソ面倒臭い…。」
嫌そうに溜息。まぁ、そもそも男の戦闘は割と破壊行為も増えるので嫌でも目立つ。
周囲のモノを片っ端から斬ったりもするから被害も大きい。
別に目立ちたくて派手に立ち回ってる訳でもないので、ただただ面倒だという認識だ。
「……オマエなんか手元が怪しくね?」
あんまり機械に強くないタイプか?と、思いつつも男も人の事はあまり言えないのだが。
それでも端末の操作はかなり慣れているので、慣れた手付きで連絡先交換をしておく。
何か、思ったより連絡先がちまちま増えてきてる気がするな、とか思いつつ端末をまた懐に戻し。
■桜 緋彩 >
「そう言うものです。
人に良くしてもらったら、一つ積んで誰かに回す、そうして世界は回っているのですから」
勿論「誰か」と言うのは本人も含む。
若干説教臭いのも自身の本質の一つだろう。
「そもそも元二級学生の一級監視対象で現風紀委員所属となれば、嫌でも噂になるでしょう。
腕が立つと言うのなら尚更」
噂になるなと言う方が無理ではないだろうか?
とは言えそんな悪い噂はあまり聞かないし、それが威圧になる場合もあるのだから悪いことばかりではないと思う。
彼の場合は戦う前に勝負がつく、と言うのはつまらないかもしれないが。
「お恥ずかしい限りですが、未だにこの手のものは慣れないもので……」
確かこれを手に入れたのは夏休み前か。
さほど使わないこともあり、未だに慣れない。
とは言え文字を打ったりするのは流石に慣れたが。
■追影切人 > 「ふぅん……。」
説教的なアレと判断したのか、そもそも”理解できない”のか。
男は彼女と話していて一番興味なさそうな態度で適当に相槌を打っていた。
彼はそれをしているつもりもする気も無ければ、仮にしていたとしても自覚はおそらく無いだろう。
「悪評だけならまぁ腐るほど俺の耳にも届いてるが。」
むしろ大半が悪評だと思っている。イイ噂なんてまず有り得ない立ち位置でもあるし。
彼女の聞いている話と食い違いが出ているのは、男がそもそも自らに関するうわさで良い類のものを避けているからだろう。
悪評が当たり前でそれに慣れ切ってしまっているから、プラス評価の噂はむしろ疑心暗鬼になりがちだ。
「まぁ、通話とメールだけ出来れば大抵は何とかなるだろ。後はネットに繋いで検索とか。」
その他の細かい機能は正直使いこなせなくてもそこまで致命的に困る事も無い。
現に男だって最低限の機能しかほぼ使っていないので一応根拠というか実感はある。
■桜 緋彩 >
「――まぁ、つまりはそういうことです」
あまり興味なさそうな態度。
自分の悪い癖が出てしまったことを、また咳払いでごまかして。
「悪評、も、確かにそれなりにはありますが。
こうして実際に話して人となりを知れば言うほどのことでもないとわかりますし。
そうしない者の評価など、何のあてにもなりませんよ」
少なくとも、こうして自分と話している彼は、ぶっきらぼうではあるが気配りも出来る男性、と言った風である。
元二級学生と言うだけでことさら悪く言うほどのものでもないと思う。
「そうですよ。
なんとかちゅーぶ?だのえすえぬえす?だの、よくわからないものを使う必要などないのです」
ふんす、と鼻息荒く力説。
使えないわけではなく、使わないだけなのだ。
使おうと思えば使えるし。