2024/10/11 のログ
ご案内:「常世公園」にリリィさんが現れました。
リリィ >  
その日一日、ポンコツ淫魔は頗るゴキゲンだったそうだ。


堆く積み上がる問題がひとつでも解決の兆しを見せたわけではない。
お世話になっている病院では相変わらずのポンコツっぷりでたくさん失敗もした。
腹の虫とて「え?自分レギュラーっすけど?」みたいな感じで元気にぐーぐー鳴いている。

だけど兎に角ゴキゲンだった。にっこにこで一日を過ごしていた。
なぜならば、手の甲に貼られた可愛らしい女児用の絆創膏を見ると元気になれたからだ。

リリィ >  
「えへへー。」

手を翳してデフォルメされたうさちゃんと見つめあう。
それだけでなんでもできる気がしたし、空腹だって気にならなかった。

駄菓子菓子――じゃなかった。だがしかし。
絆創膏は元気を分けてはくれるけど、それだけでポンコツが万能になれるわけでもなく、
空腹はむしろ気にならないからこそいつもより間食という名の(もはや主食か?)バナナを補給する回数が減っていることにも気が付かなかった。

更に言えば、ただでさえ無駄にでけぇ乳が邪魔で足許が見えずよく転ぶのに、うさちゃんと見つめあっていれば当然足許は疎かになるわけで――

リリィ >  

「アッ。」


リリィ >  
そら転びますよね。

リリィ >  
ちいさい子も遊ぶ公園は手入れが行き届いているが、そんなもんこのポンコツ淫魔には関係ねぇ。
何故ならばこいつは自分の足に引っ掛かって転ぶからだ。

ぐらりと身体が前に傾く――スローモーションで傾き流れていく見慣れた景色――嗚呼、またかぁ。帰ったらシャワー借りなくちゃ……――

最早なんの感動もなく襲い来るであろう衝撃を受け入れたその時、
ふと視界に掠めたうさちゃんフェイス――

――あたち、汚れちゃうの……?(裏声)

そんな悲しげな声が聞こえてきた気がして、ポンコツは、

リリィ >  
「ふッ……ンヌベシッ!!」

辛うじて地についていた爪先で地面を蹴り、
自ら跳躍することで僅かながらでも滞空時間を稼ぎ、
その間隙を逃すことなく手足をピンと伸ばした上で背筋をフル稼働――

見事なるエビ反りの体勢で、無駄にでけぇ乳をクッションとしすることにより、うさちゃんを――守ったッ!!

リリィ >  
尚、ポンコツ淫魔自身は胸が潰れる苦しみと、
反動で顔面を思いっきり打ち付けるというツーコンボを喰らって、地面に沈む。

リリィ >  
――よくよく見ると、うさちゃん絆創膏が貼り付けられていない方の手が「b」の形になっている……。

しかしポンコツ淫魔は起き上がらない。否、起き上がれない。
先の回避――回避??動作で残り僅かであったエネルギーを全て使い切ったのであった。完全なる電池切れだ。
要するに、はらへだった。一歩も動けん。ぐーぐー。

ご案内:「常世公園」に武知一実さんが現れました。
武知一実 >  
常世渋谷からの帰り道。
相も変わらず近道になる、公園を突っ切る道を、やや足早に進んでいた。
早いとこ帰って、手持ちのスニーカーと新品のパーカーで気に入る組み合わせがあるか試したい。
そんな気持ちで居た―――のだが。

「何か面白いもの落ちてねえかとは思ったよ。思ったが。
 アレは……ちょっと毛色が違うタイプの面白いもん、だろ……」

公園の中に見覚えのある白い髪のナース服が倒れていた。
倒れているというのはあまりに両手両足を伸ばしていて、何だか地面と同化しようとしているというか、どうかしているというか……。

「………リリィ?」

オレは、正直無視しようかどうか少し考えた末にナース服へと近づく。
見覚えのある角と、尻尾。やっぱ見なきゃ良かったかな、と思いつつ声も掛けてみる。
出来れば、出来れば別人(別淫魔)であって欲しい、と微かに願いつつ。

リリィ >  
うつ伏せで真っ直ぐ手足を伸ばし、片方の手はb。
愉快といえば愉快だが、見方を変えれば不審者といった体。
成る程確かにどうかしているといって差し支えない。

そんなどうかしているポンコツ淫魔に声をかけるその意気やよし。
――と、このポンコツ淫魔が考えていたかはいざ知らず。

兎も角、上から降る声にのろのろと顔を上げた。
現れるのは残念ながらポンコツ淫魔その人である。

「あ、かずみん様……こんばんはぁ……。」

へらりと笑みを浮かべるが弱々しい。
絆創膏を庇う為に我が身を犠牲にした所為で顔面がめちゃくちゃ痛いのもあるし、
何よりぶっ倒れるくらいにはお腹がすいている。意識がきちんと(?)あるのがむしろ奇跡ってな具合。

武知一実 >  
そう長くもない学生生活の中で、多少は不審者と呼べそうな人物と遭遇する事は、まあ、無くもない。
ただ、公園で地面と同化しようとしてるナース服の不審者ってのは初遭遇だ。
なるほどこういう不審者もいる、と見識が広ま……るわけがあるかよ。

「やっぱりリリィか。 ああ、はいはいこんばんは。
 何やってんだ、こんなとこで……」

願いは虚しくも聞き届けられなかったみてえだ。神なんて居ない。
いや、居たとしてもオレの願いなんて聞く神は居ねえんだろう。構わねえけど……と、それはともかく。
案の定知り合いの野生の淫魔だったので、オレは十分にリリィに近寄るとその場にしゃがみ込む。

「ほら、立てるか?
 手、貸してやるからさっさと立てよ、みっともねえ」

手を差し伸べながら、周囲に誰も居ないことを確認する。
情報が渋滞を起こしてるこの状況、一歩間違われればオレが何かした人みたいにも見えなくもないし。

リリィ >  
神はいないかもしれないが、
男子高校生の日常にささやかな刺激と未知をご提供したポンコツ淫魔ならここにいる。

野生なんて名乗ったのに深い意味はあんまりなかったんだけど、
土まみれの姿は野生っぽいかもしれない。伏線回収完了ってやつ。

「うぅ、ありがとうございますぅ……。」

ともあれ、差し伸べられた手を有り難く取って、のろのろと立ち上がろうとするんだけど、
もそもそと上体を起こして足を畳んだところで力尽きた。
所謂ぺたん座りみたいな体勢でふらふらゆらゆらしている。

お腹が減ってちからがでないよ~。背後にアンパンの擬人化が透けている。

しかも、だ。
強かに顔面を打ち付けたから、トナカイも斯くやといった具合に赤くなった鼻から
これまた赤いものが滴り落ちる。ハナヂ出た。

「わっ……わぁぁ……か、かずみん様……。」

情けない顔で男子高校生を見上げ、助けを求める。

武知一実 >  
リリィに手を貸して立たせようとするものの、結果として倒れ伏してる状態から座り込んでいる状態へとグレードアップさせただけだった。
まあ、小さな進歩に見えるかもしれないが後から振り返れば偉大な進歩だと思う様にしよう。それかはよ忘れよう。

「ふらふらすんな、ガキじゃあるまいし!
 ……ったく、毎度毎度腹減らしやがって」

何だか幼児向けヒーローの姿が透けて見えたが、コイツに重なって見えるべきなのはカバの子供の方だろう。
これで見てくれは一人前に淫魔なのが性質悪い。
……いや、ナース服姿で土埃に塗れて鼻血垂れてる淫魔って淫魔らしいと言っていいのか……? 駄目かも……。

「そんなちいちゃくて可愛いやつみたいな声を出すんじゃねえ
 ったく、ティッシュティッシュ……とりあえず鼻血は拭かねえと」

小ささって言う印象(イメージ)とは正反対な見た目しやがって。
まったく世話の焼ける奴だ。 オレはポケットからティッシュを取り出すと、数枚引っ張り出してリリィの流す鼻血を拭き取り始める。
多分自分で拭く力も無いだろ、こいつ。

「ほら、あとは鼻の根本を強く摘まんでろ。
 何か食えるもん無かったか探しとくから」

とはいえ買い物帰りは買い物帰りでも、衣服しかねえ。
学校で買った何か無いか、とボディバッグを漁り始める。

リリィ >  
「ま、毎回じゃ………………、」

ないとは言えないことに気付いたのは直近のこと。
咄嗟に否定しようとするが“すぐにバレる嘘なんざ吐くだけ損だ”と
教えてくれたのは目の前でせっせと世話を焼いてくれる男子高校生だ。

ぐむ、と引き結んだ口に赤いものが垂れてくる。
慌てて上を向いて悪足掻き。

「んー。」

淫魔として(むしろ人として?)非常に残念な姿だが、
ティッシュが宛がわれたら目を瞑って大人しくしている程度の分別はつく。

ある程度きれいにしてもらったら、言われた通りに鼻付け根辺りを抓みながら。

「お手数おかけしてすみません……。
 ――……あの、お礼はどうしたらいいですか?」

食えるもん、っていわれて、ついつい口の中で爆ぜる微炭酸めくものを思い出す。
無意識に鳴ってしまった喉と気まずさを誤魔化す為にも
バッグを漁る姿へド直球で訊ねてみたが、果たしてこのポンコツ淫魔に出来るお礼はあるのだろうか……。

武知一実 >
「ったく、腹ペコ淫魔が」

呆れた様な、それがコイツのらしさなのだろうという納得感というか、色々綯交ぜになった溜息が零れる。
野生を自称していただけあって、野良犬野良猫と同じようなほっとけ無さがある。 まあ、実際の野良犬野良猫はオレが近づくと一目散に逃げるんだけど。

「よしよし、そのままじっとしてろよ。
 空腹の上に貧血とまで来たらいよいよ手に負えなくなるからな」

ガサゴソとバッグを漁れど家のカギと財布と一応持ち歩いてるスマホと……前に使ったカッターナイフと。
ああクソ、飴玉か何かあったろ、どこ行った。

「あァ?礼?んなもん、とりあえずまともに立てるようになってから言えよ。
 まあ、とりあえず今は何も思い付かねえ、ツケとけ」

一介の男子高校生だったら、この淫魔からのお礼に何を求めるんだろうか、と学友の顔を思い浮かべてみる。
……時間の無駄なので秒で止めた。ツケにしとこ。あわよくばそのまま忘れて貰おう。

「今日に限って何もねえんだよな……また血で良いか?」

こないだ初めて会った時に、容易に身を差し出すなと他でもない当人に言われておいて何だが。
他に何も無いんだから仕方ねえ、と思いつつ、一応はリリィに訊ねてみる。

リリィ >  
「う、うぅ~!」

実際問題常に腹ぺこなので反論が出来ない。
出来ないので、威嚇めいて唸っておいた。迫力は当然ない。

そんなポンコツ淫魔に対し、憎まれ口を叩きながらもせっせと世話を焼いてくれる男子高校生。
なんとも珍妙なる光景が平和な公園で繰り広げられている。
晩に差し掛かる時刻柄、人気があまりないのが救いだろうか。

「面目次第もございません……。」

しょんぼりと肩を窄めるが、
腐っても――否。ポンコツでも淫魔。人外である。
鼻の奥の様子を探りつ、そろそろと手を離したら既に血はとまっていた。

ついずびってしそうになって慌てて止める。

「ツケですか? わかりました、無利子でおねがいします。」

図々しいこと言いながら、バッグからパンとか出てくるのを期待していたが、
どうやら今日は何もないらしい。
育ち盛りの男子高校生でも常に食べ物を持ち歩いているわけではないということか。

残念そうに眉を下げて、仕方なしに非常食のバナナの皮を取り出そうとして、

「えっ。」

短く弾むその声は、困惑と期待が入り交じっていた。
パブロフの犬よろしく溢れた唾液を呑み込む音が続く。

「だ、だっ……だめ、ですよ!ダメですからね!NO!
 たぶんわたし、いま、吸い過ぎちゃうし……かずみん様が貧血になっちゃいます。」

口をへの字に曲げて手でバッテンを作るけれど、
ポンコツ淫魔――悪魔である。凡そ欲望に忠実であるのが性。
前髪でわかりにくいが、期待を悟らせまいと目がめちゃくちゃ泳いでいる。

武知一実 >  
「変わった腹の音だな」

威嚇しとる威嚇しとる。
図星を突かれて、唸るしか出来ない辺りも野良犬っぽいな。
いや、だいぶ色々とタチの悪い野良犬だけどよ。
と、リリィを構いながらオレ自身随分と世話焼きなことに驚きもしている。
多分、成長期の大半を色々と孤独に過ごした所為だろう、そういう事にしとこう。

「ま、アンタにも何か事情があったんだろ。
 普通に歩いてて普通にこけて、さすがに顔面はいかねえだろうしな」

普通に歩いてて普通に事んで顔面いった上でbしてたら、もうどんな顔すれば良いのか分からなくなる。
笑うにも笑えねえし。呆れも通り越すし。だからきっと、事情があったんだと思う事にした。

「この野郎。 すぐ調子に乗りやがって」

(色んな意味で)餓えた男子高生の群れに放り込んでやろうか。
まあ、そんな事どちらの為にも実行したりしやしねえが。
うわぁ、ってドン引きするのが目に見えてるし。出来ればダチのそういう現場を目撃はしたくない。トラウマもあるし。

「別に吸い過ぎるったって、リットル単位で飲まねえだろ?
 こないだだって、ほんのちょっとでだいぶ回復してたし、それに、多少血が抜かれても水飲んで、あとは血糖上げておけば何とかなるもんだ……」

丁度良いところに飴があった。 包装を解いてぽいっと口へと放り込む。
こうしておけば貧血も多少は回避……

………

……

………今、オレ口に何入れた?

リリィ >  
「うきーっ!」

ムキになるあまり、犬でなく猿と化したこいつはこう見えて淫魔である。
角も尻尾も――いっとう邪魔だから消してしまっているけれど、翼だってあって空も飛べるのだ。

恐れられて然るべき悪魔なのだ。ホントダヨ。

「そっ……も、もちろんですよ!
 あ、見てください、これこれ!かわいいでしょう?これ見てたらころんじゃったんです。」

上擦る声で応じた後に、ドヤ!って顔して先程身を挺して庇ったうさちゃん絆創膏を見せつける。明らかな女児用の、ピンクでファンシィな絆創膏。
身体つきだけはらしいから、酷く浮いてはいるだろうけれど――ポンコツ淫魔は自慢げだし、嬉しそう。
宝物でも見せつけるような仕草。

ただまあ、傍から見たら大したことない事情であるのはもしかしたら察せられることかもしれない。

「かずみん様はお人好しだと学びましたからね!」

ふふんと胸を張る。ばいんっ。

「うぅん……そこはわたしの腹の虫の具合とかずみん様の興奮具合によるといいますか。
 てゆーか、そもそも自分で傷付けるのもダメだし、その理由がわたし(淫魔)に精気を差し出す為っていうの……が……?」

説教できる立場でないのは理解の上で、それでも腹ぺこの悪魔に身を差し出すというのがどれほど危険なことなのか
くどくど語ろうとしたところで取り出された飴が口の中に放られるのを見た。

男子高校生の口に。

「えっ……も、もしかして、お預けぷれいってやつですか……?」

動揺のあまり変なことを口走る。
或いはそんないじわるに走ってしまうほど怒っている……?