2024/10/23 のログ
ご案内:「常世公園」に武知一実さんが現れました。
武知一実 >  
近頃随分と異能の調子が良い。
……いや、異能の調子の良し悪しなんて分かりゃしねえんだから、調子が良いというのは少し言い過ぎかもしれねえ。
正確に言えば、異能の扱い易さが上がった、と言うか何と言うか。
今日も授業で異能を扱う際に、これまでは拡散していた雷が、一点収束するという変化を見せた。
オレとしちゃ、これまで通りにイメージして放っただけなんだが……イメージ以上だったと言わざるを得ない。

「まあ、何がきっかけで良い方に転ぶか分かったもんじゃねえな……」

そんなことを独り言ちながら夕方の公園を歩く。
ちょっと前までこの時間でも明る過ぎるほどだったのが、今はすっかり薄暗い。
季節の移り変わりをこんな風に体感すんのも、よく考えてみりゃ生まれて初めてな気がすンなぁ……

「そんなに経たずに冬になんだよな……」

冬。この学園に来るまでは、年がら年中屋内で過ごしていたからどんなもんなのか実感は沸いてこねえ。
ただ、屋内に居ても静電気がめちゃくちゃ溜まったから、きっとめちゃくちゃ静電気が溜まるんだとは思う。

武知一実 >  
思考を異能の事に戻そう。
ちょうど御誂え向きに地面に空き缶が転がっていたので、それを拾い最寄りのごみ箱目掛け放る。
缶がごみ箱の真上に来たところで、指先を缶へと向けて意識を集中。普段通りに雷を放つ。
放たれた雷は真っ直ぐに直線の軌道を描き、

ギィン!!

と、若干耳障りな音を立てて雷が空き缶を貫いた。
撃ち抜かれた空き缶はごみ箱の中へと落ちる。
以前はこんなにも直線的な、貫通力の高い電撃()なんて出すことは出来なかった。

「知らんうちに技術が上達した……?」

それにしちゃ急過ぎやしねえか。
ベンチに腰掛けながら、今日の授業で聞いた教師の言葉を反芻する。

『操作を要する異能や魔術の場合、術者の精神状態が影響されることも少なくない
 自分でも気付かない様なストレスや、精神的プレッシャー等で異能が十全に機能していない、なんてことはよくある話だ』

特にオレらみてえな精神が育ち切ってない年齢にはぼちぼち見られる事らしい。

武知一実 >  
また、体力が有り余ってる事も異能の操作に関わってくるのだそうだ。
体力および気力が有り余り過ぎると、肉体が無意識下で興奮状態となり、
頭で考えているよりも出力が上がってしまったりと、イメージとは異なる結果に繋がりやすい……んだと。
まあ、その辺はちょっと理解出来る。

喧嘩する前よりも喧嘩の最中や喧嘩がバレて逃げる時なんかの方が異能のキレがよくなったりという事はあった。
緊張と脱力、スポーツや武道なんかでもよく言われてるが、異能にもそれが当てはまることもあるのだそうだ。

肉体の状態にも精神の状態にも影響を受けて、異能の制御はその難しさが変化する。
なので適度に肩の力を抜くために、有り余ってる気力や体力をある程度減衰させることで制御性の向上は飛躍的に変化することもある、という事だった。もっと色々言ってた気がするが、途中で眠くなってあんま憶えてねえや。

「適度な気力や体力の減衰……特に最近になって、となるとだ。
 やっぱあれだよな……まさかこんな直接的な効果があるとは思ってなかったんだが」

気力や体力、総じて言い換えれば精力、って事だよな。
精力を減らすこと……は、最近定期的に減らしてる。
予期してなかったとはいえ、まあ……アイツには今度礼を言っとこう。

武知一実 >  
ダメで元々―――とは端から考えちゃいないが、この収穫は想定外だ。
となれば今後継続して今の関係を続けていく……事には異論は無い。無い、が……

「……むぅ」

最近、というか回を重ねるごとに何だか気恥ずかしい様な、落ち着かない感覚に苛まれる事もある。
それが異質な事なのか、それとも本来そうあるべきなのかが分からねえから、言い出すにも言い出せねえ。

「……ま、ほっときゃ納まるから良いんだけどよ」

ひとまず、今月いっぱいは。ハロウィンやら菓祖祭やらが落ち着くまでは黙ってる事にしよう。
楽しみにしてるところに要らん相談を持ち掛けても仕方ねえ。
よし、と考えが一つまとまったところでオレはベンチから腰を上げた。
そのままスマホを取り出し、画面を一瞥してからすぐに仕舞う。

「……今日は無いと思うけど、一応帰っとくか」

少しばかり気怠さの燻る体を敢えて無視して、オレは帰路についたのだった。

ご案内:「常世公園」から武知一実さんが去りました。