2025/02/07 のログ
ご案内:「常世公園」に牛丸 瑞璃さんが現れました。
ご案内:「常世公園」に追影切人さんが現れました。
■牛丸 瑞璃 >
公園に面した道を、三人の影が並んで歩いていく。。
夕焼けに染まった葉が冷たい風に撫でられて、
時折、木々の間から冷たい風が吹き抜ける。
帰宅途中の学生達のざわめきは、今日は少しばかり控えめだ。
ぽつぽつ、と何人かが足早に歩き去っていくのみだった。
今日は随分と冷え込んでいて、皆駆け足で帰っていくのだ。
『いや、おつかれな牛丸~。しかし、今日の授業は楽で助かったなぁ』
褐色の人狼少女――戌上は、自らの狼耳を撫でながら、
三人の中央を歩く金髪の少女の方へと声をかけた。
「おつかれ~。
いやぁ~、今日の応用魔術学、ほとんど雑談で終わってたねぇ」
牛丸と呼ばれた金髪の少女は、笑顔で答える。
世に美しき女は数あれど、この少女の放つ雰囲気、色香は――
異彩を放っている。
眩しい夕焼けの中でも、一段と鮮明に刻まれていた。
まるで、美に耽溺した人形職人が、
魂を尽くして精緻に創り上げた人形に、
そのまま魂が込められたかのようである。
『……あれで単位が取れるなら助かる』
黒髪赤目の吸血鬼――アイヴィは、淡々とした口調で言葉を放つ。
『そういえば聞いたぜ? 例の特典ポスター。
あれ目当てに、行列ができたんだろ?
大変だよな、お前も』
「いや、あれは別にあたしが好きでやった訳じゃ――」
ニヤニヤと笑う戌上に、困ったように柳眉を下げる牛丸。
そして、そんな折に。
少女は、遠くにある視線を感じ取る。
慣れた、その視線を。
「――ごめん、ちょっと用事思い出した!
先に帰っててー!」
ぱん、と両手を合わせて、牛丸はそのまま小走りで公園へと向かう。
視線を感じた先だ。
残された二人は――慣れたことなのだろう。
顔を見合せれば、こちらも足早に去っていった。
■追影切人 > ここで時間は、三人の少女たちが談笑しながら公園付近に差し掛かる少し手前まで戻る。
「…さて、ぼちぼちミズリの奴に【月蝕姫】の情報を聞いておきてぇ所…なんだが…。」
フリーダムな廬山やキキ、一カ所に留まっていることが多いつるぎと違って、アイツは顔が広い。
つまり、一対一で接触するタイミングが中々訪れないという事でもある。
常世公園のベンチに座り込みつつ、ハァ…と、嘆息。変に気を回す必要も無いが、これも感情の厄介さというものか。
…と、聞こえてきた声に僅かに目を丸くする。少女たちの声…何気ない会話だが、聞き覚えのある声が一つ。
(…おいおい、どんなタイミングだよ…。)
やれやれ、と思いながらベンチ越しに顔だけを公園の外に向ける。
とはいえ、強い気配や視線を向けた訳ではない…用があるのはあくまで一人だけ。
他の二人には悪いが、彼女たちは今回の話には無関係であり…そもそも聞かせられない。
「……お、向こうも気付いたか。」
まぁ、こういうピンポイントの視線の圧力?というのは割と慣れたものだ。
別に圧を掛けた訳ではなく、”用があるからちょっと面貸せ”くらいの心持ち…まさにチンピラ。
彼女が公園に入ってくれば、少し離れた場所のベンチに腰を下ろしている隻眼にラフに気崩した風紀の制服の男が目に留まるだろう。
隻眼をそちらに向ければ、「よぅ」と気だるげな、だが男らしい挨拶を一つ。
「…ダチと帰り途中だったのに悪ぃな。タイミングが良かったのもあるが、オマエにちょいと聞いておきたい事があったもんでよ。」
と、以前ならまずする事すら無かった軽い気遣いと謝罪は交えつつ。
廬山から既にカルテで情報は貰った――あとはコイツから情報を仕入れたら、ぼちぼち動き出さなければならない。
■牛丸 瑞璃 >
「Lo sabía!
変な視線向けてくる誰かサンは誰かなぁ~……なーんて。
気になって来てみたら、やっぱり。
こんなところで、なーに油売ってんの?」
公園に到着するなり声をかけてくる青年に、
右手を腰にやりながら、ちょっと悪戯っぽくクスクスと笑って、
顔を覗き込む。そうして、周囲を見渡して誰も人が居ないことを確認すれば、
そちらへと近づいていく。
「えっ、素直に謝るんだ。見直したぞ追影クン。
……と、ちょっと待ってね。
悪いけど、流石にこのままキミと話し込むのはちょっとな~」
そうして出てきた謝罪の言葉には、そのように返しながら、
ベンチの空いているスペースにちょこん、と腰を下ろした。
そうして手慣れた様子でサングラスとマスク、帽子をササッと身につけた後、
少しだけサングラスをずらして、見上げるように青年へと視線をやった。
公園で男と二人で話していた、などと噂になったら面倒だ。
「ふーん。聞きたいこと?
このタイミングであたしに接触して話を聞きに来るなんて、
まぁ八割方残滓の件だろうけど」
■追影切人 > 「…人を変質者みたいに言うんじゃねーよ…感覚的に、人狼と吸血鬼だろ?さっきのダチ連中。
あいつらの感覚を素通りしてオマエにピンポイントで視線の感覚向けるの地味に面倒なんだぞ…。」
言葉にするとそれだけなのだが、さらりとおかしな事をやっている…が、まぁ平常運転。
しかし、『本性』は兎も角として普通に会話する分にはコイツが一番楽で助かる。
「…周囲に誰もいねーし、隠れてる気配とか感覚もねぇけどな…あと、俺だって謝罪くらいするわ!」
と、半眼でツッコミは一応入れておきつつ。隣に腰を下ろしたミズリが、ささっと変装?するのを横目に。
まぁ、こいつの交友関係とか諸々は朧気に理解はしているので、特にそこは何も言わない。
(…ま、そもそも一級監視対象がタイマンとはいえ揃ってるのは普通にアレだしな…。)
「あー…9・5割はそれ。残り0・5割は献血ポスター見たけど、オマエ何やってんの?ってツッコミ。」
と、そこまで話してから一息。あまり時間を取らせるのも悪いので、寄り道はここまでだ。
「――察しの通り、オマエが前に潰した【月蝕姫】の生前の情報が欲しい。…本人そのものじゃねぇとはいえ、残滓とやり合う時に活用出来るかもしれねぇからな。」
7人中、6人は過去に自分と廬山、そして隣の少女がそれぞれ”始末”している。
最後の一人は、未だに誰が始末したか”上”は黙秘しているが…大体予想はつく。
「…まぁ、あまり時間を取らせるのも悪ぃし、用件は本当にそれだけだ。」
と、そういう気遣いも一応は出来る程度に成長はしているらしい。実際、一緒に居る所を見られると面倒だ。
特に彼女の方が――一応変装はしているが。あくまで一応である。
■牛丸 瑞璃 >
「あれ、違ったっけ?
キミの眼球運動の妙は良いとして、
そういうの気にするんだったら、それこそ端末でやり取りすれば良いのに。
あたし達が外でコソコソ会ってんの、まずいっしょ~? 色々さ」
サングラス越しに覗く瞳。
深い蒼に彩られたそれは、まるで深い海のようだ。
「それって勘でしょ?
この学園じゃ、あらゆる物理的・非物理的干渉が考えられるんだから。
二重三重に手を打っておくのは――大切大切。
いくらキミみたいな達人が隣に居たとしてもね?
というわけで、はい。応用魔術学の先生直伝、人避けの魔術っと。
さっき習ったばかりだけどね」
そうして鞄から札を取り出せば、何事か呟いて空に投げ放った。
札が宙空で燃え尽きた瞬間、
公園に揺れる草木が、吹き抜ける風が、全ての音を失ったかのように静まり返った。
足元を見れば蟻が、二、三匹、
ふらふらと公園の外へ向けて歩いていくのが見えるだろう。
「いや、何やってるも何も、上に頼まれたから仕方なく……
あの手のは、写真集で懲りたからもうやりたくないって言ったんだけどな~……」
今や常世島では――その筋の者からすれば、
伝説の稀覯本の一冊となっている、彼女の水着写真集である。
「月蝕姫チャンかぁ。そうか、やっぱりあの子の残滓も出てるんだ。
あの子は……あたしのとこで飾ってるけど、なるほどね~。
……ま、資料は残ってないだろうし、
語るのはこっちの口だけか」
そう口にして、瑞璃は彼女のことについて語りだす。
「まず異能、知ってったっけ?」
■追影切人 > 「いや、それ言ったら監視対象なんてどいつもこいつも変質者通り越して奇人変人しかいねーだろ…。
…つーか、俺は一級の連中に自発的に連絡するの禁止されてんだよ…。」
受けるのは可能だが、こちらから接触するのは何故かアウトらしい。よく分からん。
まぁ、そもそもこの男のアドレスは何故か監視対象連中に広まりつつあるのだが。
サングラス越しに覗く青は、まるで深海のソレだ――底が見えない。
「達人じゃねーけどな…あーそりゃ助かる。魔術っつーのはつくづく便利だな。」
残念ながら男は魔術適性がほぼ無く、たった一つの魔術以外は使う事も覚える事も出来ない。
そして、その魔術はこういう時には全く役に立たない。
彼女が呟いたのは簡易詠唱だろうか?投げられた札が、中空で燃えつきた――瞬間。
周囲の空気が明らかに変わる。男にとって魔術というのものはそれなりに長くこの島に居るのに”新鮮”だ。
「…あーー…聞いた事あるな。オマエの水着写真集だっけ?稀覯本になってるとか何とか。」
勿論、男も実物を見た事は無いが…表紙の画像のみ何処かで見た記憶がある。勿論中身は全く知らない。
「…オマエの”趣味”は相変わらずわっかんねぇな…と、なるとやっぱ【残滓】は抜け殻みてぇなもんか…。」
彼女が”飾ってる”というなら、生前の人格などはほぼそちらであろう。
―—つまり、【月蝕姫】の残滓は…例の呪いによる再現情報に近い、のかもしれない。
「いんや、何も。廬山の奴が担当した2人とお前が担当した【月蝕姫】…あと首謀者の馬鹿の4人についてはコードネームと性別以外は知らん。」
肩を竦めて。あくまで男が把握しているのは、自分が始末を担当した3人のみ。
■牛丸 瑞璃 >
「ふーん、変なルール。
あたしのとこもまぁ、あーだこーだうるさく言われるし、
配信は、動画限定にされた上、
チェック後に風紀委員会から代理アップロード……って感じになっては居るし」
ベンチの下、足をぶらぶらとさせながら、そんなことを言う瑞璃ではあったが、
あまり不満に思っているような声色ではなかった。
「――そ。今も市場に出回ると、色々界隈で騒ぎになるらしくて……。
うちのチャンネル登録者が色々争ったりもして大変だったから、
ちょっと苦い思い出かな~、なんて」
こちらは、先の話に比べてかなりげんなりとした様子だった。
「うん、毎日可愛がってあげてるしね~」
一瞬走る、ノイズ。
笑顔で語る瑞璃。
1人の人間を飾って、可愛がっている。
そのような事実を、先に友人たちと授業の話をしていたのと同じような軽さで――
まるで日常の一部であるかのように――語る。
「Claro, claro。やっぱり何も知らないんだ。
じゃあ一つ、アドバイス。
もし異能がそのままだとしたら、人混みは避けた方が良いよ。
地獄絵図ができあがるから」
そうして、言葉を続ける瑞璃。
「目測だけど、半径20mほどを巻き込んで、
視線を受けた人間の狂気を駆り立てる異能なんだよ。
いや、眼の前で落第街の連中が殺し合うもんだから、大変だったよ。
グラム・アン脚本のゾンビ映画だってあんなにグロテスクな描写はしないよ。
サイコーに刺激的だったなぁ……インスピレーションの衝撃! ってカンジ」
何処か夢見る乙女のように、両の拳をきゅっと顎の下に置いて、
空に目をやる瑞璃。
■追影切人 > 「…そういや、オマエの配信とか動画って見た事ねぇな…まぁそっち方面興味なかったのもあるが。」
ふと気づいたように。それに、不満そうな口ぶりに見えて、声色からしてそうでもなさそうだ。
で、何だかんだコイツも気苦労みたいなのはあるらしい。「…オマエも変な所で苦労してんな」と、小さく吐息。
だが、一瞬…ほんの僅か、走ったノイズに隻眼を細めた。
彼女の異能を大まかにしか男は知らないが、少なくとも――あぁ、あちらにとっては無限地獄だろう。
そして、それを聞いて男が思うのは…「オマエ、本当にサイコだよなぁ…」と、意外と軽い口ぶり。
目の前の相手の本性も、そして自分の根源も。どちらも真っ当ではないのはとっくの昔から分かっている。
―—そもそも、真っ当な奴は監視対象にならないしなれない。
「…半径20メートル…成程、その範囲内に無差別に狂気を振りまく感じか。」
そして、一級に指定されたぐらいだからその狂気に駆り立てる強制力は相当のものなのだろう。
最初から狂気に至っている者には効果は無さそうだが、落第街の連中だとて術中に嵌り易そうだ。
「…あーーうん、オマエの…何だ、その…芸術家肌?な所も俺にゃよくわかんねぇけど…。
取り敢えず能力は理解した。あとは…そうだな、容姿と大まかな性格…まぁ、性格に関してはミズリが感じた印象でもいい。」
そもそも、毎日可愛がっているなら、彼女異常に【月蝕姫】を知るものは居ないかもしれないが。